検索 2022-07-09 20:46:55 |
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そうするか。ん、ありがとよ。じゃあ…いただきます
(良い香りを放つ豚汁の鍋に香ばしく焼けていく魚の塩焼き、少々不格好ながらもシンプルなおにぎりが囲炉裏の周りに並べば今日しか食べることの出来ない夕食の完成だ。温泉街についてからつまむ程度にしか食べていない腹はすっかり空っぽで、囲炉裏から立ち上る美味しそうな香りに腹が鳴ってしまいそうだ。相手が豚汁を注いでくれた器を礼を言いながら受け取り、二人の準備が整えば手を合わせてから早速豚汁を手に取る。未だ湯気が立ち上る器の中には根菜や肉がたっぷり入っていて箸で掴んで口へと運ぶと具材と味噌の香りが一気に広がり体に染み渡って思わず唸ってしまった。食べ応えのある豚汁のお供にはおにぎりは最適だろう。四つのおにぎりが並んだ皿へ目を移すとは「これ食っていいか?お前が初めて作ったおにぎり」と相手が最初に握ったものを指さして)
いただきます。…ほっと温まる味だ。え、別に構わないけど…二つ目じゃなくて良いのかい?
(おにぎりと豚汁が出来上がると手を合わせて食事の挨拶をしてから器を手に取る。ゴロゴロと入った具材と一緒に口に運ぶと安心できる味と温かさが身体に染み渡って至福の息が零れた。具材にもほどよく火が通り汁に味が出ていて食べ応えも十分だ。地域性か味噌も普段と少し違う味がして興味深く味わっていると相手が皿に盛ったおにぎりの一つを指さして食べたいとお願いされる。だがそれが最初に作った固くなってしまったおにぎりであれば困惑した反応をしてしまう。美味しく味わうなら二つ目の上達した方を選ぶべきだ。思わず確認するように問うがわざわざ【初めて作った】と強調する辺りこれが食べたいのかもしれない。何となく照れ臭くなって視線を泳がしていたが「なら僕も君が貰った物を貰うよ」と自分も相手が最初に握った物を手に取る。一口食べると形は不格好なものの程良い塩加減で豚汁の後にはピッタリの組み合わせに「美味しい」と笑顔を見せて)
…あぁ、俺はこれがいい。……なかなか食べ応えのあるおにぎりで美味いな
(相手が作ったおにぎりで上手くできたのは当然二つ目の方で、あえて一つ目を選んだことに相手は困惑している。だがだんだんとその意味を理解したのか視線が泳ぎだして小さく笑みを浮かべた。あまりおにぎりを作る機会はないがこの先おにぎりを作ったとして相手が初めて作ったおにぎりは後にも先にもこれしかない。そんな特別なおにぎりは例え相手でも譲りたくない、その小さな特別の席でさえ自分のものにしたかった。相手は誤魔化すようにしてこちらが握った斜めのおにぎりを手に取り口へと運ぶ、どうやら塩加減も問題ないらしく笑顔を見せる相手に胸が華やぐ。どんなものだって自分が作ったものを相手が食べて喜んでいるのは嬉しいものだ。こちらも相手が初めて作ったおにぎりへとかぶりつく、見た目通り密度の高いおにぎりだが適度に塩がきいていてご飯をたくさん食べたくなる豚汁とは相性抜群だ。豚汁を口にして続いて相手のおにぎりを食べればさらに美味さは増して口角はさらに上がる。美味しさに浸っていると突然パチンと炭が弾けた音が聞こえてくる、その音でもうひとつのメイン料理である塩焼きのことを思い出して「こっちもそろそろ良さそうだな」と囲炉裏に立てられた魚へと目をやり)
…それなら何よりだ。本当だ、良い感じに焼きあがっているね。…このままかぶりつけばいいのかな
(初めて作ったおにぎりという些細なことですら自分の物にしたいとお願いされると嬉しさと照れくささが混ざり合った感情がこみ上げてくる。そんなことを言われてしまえば尚更断る理由など無いだろう。動揺を誤魔化すように相手の握ったおにぎりを口にすれば市販の物よりも美味しく感じて表情が緩む。相手も固めなはずのおにぎりを食べて口角をあげているのが目に入れば温かい物が胸に満ちて仕方ない。この美味しさと穏やかな時間を味わえるのならおにぎりを作った甲斐があったというものだろう。豚汁と交互になるようにして食べていると相手が魚について言及する。先ほど回転させた面を見てみるとこちらも良い焼き加減になっていて香ばしい匂いを漂わせている。これ以上は焦げてしまいそうで串を引き抜いて火元から離す。串を回転させて焼きあがった姿を暫し好奇心に輝く目で観察し、一番身の詰まってそうな部分を探す。普段は箸で食べる魚だがせっかくの串焼きならこのまま豪快に食べてしまった方がいいのかと呟く。少し悩んだのち串を両手に持って中央にかぶりつくとパリパリの皮目と脂が乗った身の旨味が感じられて軽く目を開く。味付けは塩だけのシンプルなものだったはずだがそれが素材の味を引き出していて「美味しい…」と?みしめるように感想告げて)
おぅ、そのままいっちまえ。…俺も……いつもより香ばしくてすげぇ美味いな
(囲炉裏の炭火にあたりながら暖かい食事をとる、限りなく穏やかでだからこそ幸せな時間だ。魚もいい具合に焼きあがったらしく相手が串ごと魚を取る、魚の丸焼きなんてそうそう見ることがないものに相手は好奇心で目を輝かせていてこの空間にさらに幸せがかさ増しされていく。焼き魚を観察しながらどう食べるべきか迷う相手にそのまま食べるのを後押しするようなことをいえば相手は串にささった魚にそのままかぶりついた。これだってここでしかできない食べ方だろう。想像以上の味だったのか相手の目が見開かれる、皮がパリッと割れる音とじわりと染みでた脂と相手の表情をみれば途端に食欲はそそられてこちらも串に刺したまま魚へとかぶりついた。家で焼いただけではけしてつかない炭の香りや香ばしさが相まってシンプルな味付けだけでも存分に美味しい。続けざまにもう一口食べたあとにまたおにぎりへと手を伸ばす、これもご飯のお供にピッタリのものだろう。あっという間に一つ目のおにぎりはなくなってしまって、「こっちも貰っとくぞ」と相手が握ったもうひとつのおにぎりを手にとって)
家で普通に焼いただけではこの味にはならないだろうね。炭火で焼いたこその美味しさだ。 ああ、好きに食べたまえ。…だけど、流石にこのサイズは食べ切れるか不安だ、
(相手に背中を押される形で魚にかぶりつくとパリッとした皮の中に脂の乗った身を味わえて感動を覚える。相手もそれにつられて景気よくかぶりつくとその美味しさに似たような反応を示している。きっと家でグリルやフライパンなどで塩焼きをしたのではこの美味しさは味わえないだろう。炭火でじっくりと丸々一匹を焼いたからこその味だ。まさにここでしか食べられない特別な晩飯に口角は上がっておにぎりや豚汁を間に挟みながら食べ進める。どちらもご飯が進むメニューであれば相手はあっという間に一つ目のおにぎりを食べてしまったようで2つ目に手を伸ばしている。その様子に思わず表情を緩めるが残った方のおにぎりを見れば一瞬動きが止まる。相手の手の大きさで作ったおにぎりは一つ目よりもふた回りほど大きく実際に持ってみるとずっしりと重い。今の胃の容量からしても完食への不安を思わず口にしながら一口頬張って)
囲炉裏で調理した晩飯なんて絶対にここでしか食えない味だな。…腹いっぱいになったら俺が食うから好きな量食えよ、俺が握った奴だし
(温かさと料理の匂いに混じり炭が弾ける音と香りも混じりここが特別な空間で、特別な夕飯になっていることは間違いない。いつもより早いペースで豚汁も魚もおにぎりも食べ進めてしまう、相手も食べ進める間ずっと口角が上がりっぱなしで改めてこの宿を今回の旅の目的にして良かったと思っていた。せっかく相手が握ったものだからと二つ目に手を伸ばしたのだが、そうなれば必然的に相手が食べるのはこちらが握ったふた回り大きいおにぎりだ。不安を口にしながら相手がそのおにぎりを持つと華奢な体にミスマッチな大きさに思わず吹き出してしまう。食べ始めはするがおにぎりの大きさに対してあまりにも相手の一口は小さく苦戦するのは目に見えていた。生みだしてしまった以上はこちらにも責任がある、相手が無理をしないようにするためにも「なんなら先に分けとくか?」と声をかけ)
君の観察眼のおかげだね。…君が握った奴だから全部食べ切りたいけど……じゃあ、この分は頼んだ。
(前回は景品の一式のプランで旅館の豪華な食事だったが今回は相手がこの宿を見つけてくれたおかげでこの特別な空間で珍しい食事をとる事が出来ている。二人が楽しむ為の旅行を考えてくれて実際に特別な時間を過ごしているのが嬉しくて、それがこのご飯を美味しくしている要素の一つだろう。あの時この宿を提案してくれた相手を褒めつつ巨大なおにぎりを口にする。相手が気遣って声をかけてくれるが相手が握ってくれたからこそ出来ることなら全部を食べたい。だが夜も宿で過ごすことを考えれば食べ過ぎてダウンするという自体も避けるべきで難解な謎に挑む時のようにおにぎりをみつめながら暫し熟考する。結果として食べられる分だけにしようと妥協すると三分の一程を割って皿に乗せ相手に託す。これでも普段よりは多いが豚汁と焼き魚があれば食べられそうだ。相手の握ったおにぎりと炭火で調理した魚と豚汁を食べ進めている間も外は雪が降っていて静かだ。時折炭がぱちぱちと音を立てるくらいの平和な空間だと改めて感じると「…何だか幸せだね」と思ったことを口にして)
適量食って腹いっぱいになるのが一番だ。……そうだな。お前と飯食ってるだけなのに、ずっと胸があったけぇ…
(ここの宿を見つけたのはたまたまだったがそれでもあの時雑誌で目を止めて本当に良かったと、二人で囲炉裏を囲んで心底思う。その功績を称えられると得意げな笑みを浮かべていた。相手はこちらのおにぎりを手にどうすべきか悩んでしまっておにぎりを凝視して難しい顔をしている、おにぎりを見つめ悩む姿は面白いがそれだけこちらが作ったもの、という点を大事にしてくれているのだろう。それだけ考えてくれるのならば十分だ。悩んだ末に相手は一部を割ってこちらの分として皿に置く、このあともうひとつイベントが残っているのだから万全の状態で挑むためにも無理は禁物だ。皿に乗せられたおにぎりを手に取り豚汁と焼き魚と共に食べ進めていく。その最中に相手がポツリと零した言葉に、こちらも呼応するように胸が華やいだ。特別な場所ではあるが今は二人で夕飯を食べているだけ、だが今この時間は胸を満たして止まなくてきっといつまでも覚えているのだろうと今からでも確信できる。囲炉裏の温かさに包まれているせいかいつもよりすんなりと本音が口から出て、噛み締めるように無意識に笑みを浮かべる。しかし直後キザなことを言ってしまったかと誤魔化すように最後の焼き魚を慌てて口に入れ咀嚼して)
たまにはいいね、こうやって君と二人でゆっくりする時間も。…ごちそうさまでした、とても美味しかった
(おにぎりの分配も決めて食事を再開する。一つ一つは素朴な料理ではあるが相手が見つけてくれた宿で二人で炭火を起こして調理したこの味は何物にも代えがたいくらいに美味しい。胸を満たすこの暖かい感じを言語化するならば幸せが一番近いだろうと呟きを零せば少し間が空いて同意の返事がされる。探偵モードではない素のままの相手が噛みしめるように笑みを浮かべながら言葉を続けるのを聞けば尚更心は弾む。照れ臭くなったのか誤魔化すように焼き魚を口に運ぶ姿にまた口元は弧を描いて笑い声を零した。風.都は守るべき自分達の街だがその分気を配ることも多い。その街を離れて知っている人が相手だけの空間でまったりと過ごせる時間はやはり特別で何気ないことも尊く思える。思ったままの感想を告げながら食べ進め、それぞれ残った最後の一口を味わうように順番に完食すれば手を合わせる。囲炉裏の暖かさと夕食の幸せに心が緩み切ると湧きあがった欲に従って器の類をお盆にまとめて後ろに置く。間に挟まるものが無くなれば相手の座布団に乗って近づいて隣にやってくると何も言わず少し寄りかかるようにくっついて)
違いねぇな。…ごちそうさまでした。いい晩飯だった
(残り少なくなった夕飯を食べながら相手と共にこの穏やかで幸せな時間を噛み締める。風.都が息苦しいわけではないし間違いなく愛すべき街だがこうやって全てのことから離れて相手の事だけを感じ考えながら過ごす時間が最高に幸せなのは間違いがなかった。夕飯を食べ終わると相手に続きこちらも手を合わせる、前回の旅館での夕飯も豪華という意味で忘れられないがこの二人きりの夕飯も同じくらい良い旅の思い出になっただろう。相手が食器類を片付けてお盆を後ろの方へ置く、その時点で相手が何を望んでいるのか察すれば座布団の端へと寄ってスペースを作った。そのまま何を言うでもなく隣にやってきた相手の腰に手を回して軽く引き寄せ、こちらからも体を傾けると後頭部に頬を寄せてくっつける。炭は小さくなっているもののまだしっかりと熱を放っていて、煌々と赤色に燃える炭を見つめながら暫く何をすることもなく相手との時間に浸った。その間にもこの空間と相手への愛おしさは募るばかりで、心のまま軽く頬を擦り寄せると微かにいつもとは違う匂いが鼻を掠める。その正体にはすぐに検討がついて今度は鼻を髪の方へ寄せると「ちょっとだけ炭の匂いがすんな」と楽しげに口にして)
……、これだけ炭に近い距離にいるからね。…君の髪も炭っぽい匂いがする
(相手との幸せな時間を噛みしめながらこの宿ならではの特別な食事を終えると今度は相手自身の温もりが欲しくなって傍に寄る。その意図を察してから端に寄って自分のスペースが作られると擽ったいような気持になりながらくっつけば腰に手が回って引き寄せられた。馴染みのある体温を感じれば体から力が抜けていき緩く隣り合った手を重ねながら目の前の炭火を見つめる。何かをしたり喋ったりすることはないが確かな充実感があってただただ相手が隣にいることを実感していた。そうしていると相手が不意に動いて頬が擦り寄せられそのくすぐったさに視線を向ける。相手は何かに気付いたような反応を示しては髪に鼻先が近づけられ、いつもと違う匂いを指摘されると僅かに目を開く。その原因は明らかでどうやらずっと囲炉裏の傍にいたせいか匂いが移ったようだ。自分に炭の匂いがついたのなら、と自らも相手の髪に鼻先を埋めると確かに少し焦げっぽい炭の匂いが混じっていてくすくす笑いながらそれを伝える。二人ともがこの囲炉裏のある空間に染められたようで軽く擦り寄りながら「今日だけのお揃いの匂いだね」と嬉しそうに告げて)
いつの間にか俺達二人ともこの空間の一員になったわけだ
(いつもの相手の匂いの中に混じる香ばしい香りを堪能していれば相手の体が近づいて鼻先がこちらの髪の中に埋まる。擽ったさを感じて僅かに身を捩りつつ笑いがもれる、相手の匂いが変わっていれば当然同じ場所にいたこちらの匂いも変わっていたようで同じ匂いだと告げられると緩く口角をあげた。こちらへ擦り寄る相手に胸を擽られながら重なった手を指を絡ませるようにして軽く握る。今日だけのお揃い、という言葉に特別感は高まって繋いだ手に軽く力を入れたり緩めたりして相手の存在を感じる。二人だけのこの空間で同じ匂いに染まり暖かな囲炉裏の前で二人だけの時間を過ごせば益々相手への想いは増して、こちらへ擦り寄る後頭部へ軽く口付けを落とした。それだけでは胸に募る想いには到底足りなくて相手の顎に手を添え軽くこちらへ向かせると頬へと口付けを落とす、囲炉裏で温められたそこは体温以上に暖かくて「いつもよりあったけぇな」と感想を零して)
ああ、ちゃんと馴染めたみたいだ。…ん、そうかい?
(浴衣のように分かりやすく違う格好をしている訳だが確かにこの特別な宿の空間に馴染んできたようだ。この場所ならではのお揃いの匂いだと告げれば触れていた手が指先を絡めるように繋がる。強弱をつけて握られると相手の存在をより強く感じるようになって柔らかく微笑んだ。美味しいご飯を食べた後に相手とその幸せを噛み締める事が出来て他の何よりも贅沢な時間だ。思いのままに擦り寄っていれば後頭部にキスが落とされる感覚がした、間を開けずに顎に手が添えられ促されるまま相手の方を向けば柔らかな唇が頬に触れる。その唇だって心地の良い暖かさを持っていて幸せを覚えた身はワガママにもっと欲しくなってしまう。しらっと軽い返事をしながらも繋いでない方の手を相手の足に添えこちらからも顔を近付けると「もっと特別な奴が欲しいな、翔太郎」と強請って)
…、…ったく、俺へのオネダリの仕方をよく分かってんなお前は
(炭火の熱に包まれながら頬へと口付ければいつもより温かいそこにふわりとした幸せが灯るが相手からの反応はやけにあっさりしたものだった。その理由はすぐに判明する、相手の手がこちらの足に乗ると二人の距離はさらに近づいて顔を間近で付き合わせながらより特別なものをねだられてしまった。ストレートでいて可愛げのある言葉と仕草に否応なしに胸がグッと掴まれて思わず笑ってしまう。呆れるような口調で返事をするもこんな可愛い望みを叶えないわけにはいかない。今度は手を頬へと添えて相手の顔を捕らえると目線を交える、そこから顔をゆっくり近づけると唇を重ねた。今度はすぐには離さず、いつもより温かいそこを堪能するように唇を重ね続ける。唇の感触と触れる体と二人にあたり続ける熱とを存分に感じたあと、緩慢な動きで唇を離せば「お望みの特別な奴だ、フィリップ」と親指の腹で頬を撫でて)
だって君の恋人だからね。ん……、これが一番好きだ。
(2人きりの空間で幸せに満たされていれば心は思うままに次を求める。更に距離を近づけてストレートにもっと相手を感じられる行為を望めば相手の口元には笑みが浮かぶ。口調こそ呆れているが声色は乗り気で満更でもなさそうだ。こちらも得意げに笑って恋人だからと主張し、顎にあった手が頬に添えられると期待を込めた瞳で相手を見つめ、願いを叶えるようにゆっくりと近付いてくれば目を閉じてその時を待つ。待ち望んだ柔らかな唇が重なればその胸は満たされて繋いだ手をぎゅっと握る。静かな空間では炭が燃える微かな音と感じる温かさ以外は相手の発する音や触れる体温だけを受け取って意識の殆どを相手に注いでいた。そんな幸せなキスの感触を長く確かめたのち、相手が離れていけばゆっくりと瞼を開く。親指が頬を撫でると嬉しそうに受け入れつつ思ったままを口にした。相手にされるなら何だって嬉しいがその中でもキスは特別な意味合いを持っていて好きな行為だ。オネダリを聞いて貰って幸せだと感じれば是非相手にも同じ気持ちになって欲しくて「君もなにかオネダリは無いのかい?」と試しに聞いてみて)
俺も。……え、…そう、だな……
(相手の願いを聞いて笑みを浮かべると恋人だからと当たり前の返事が返ってくる、だがその当たり前を再確認するような言葉が今は胸を満たしてならない。唇が重なって繋がる手を握られればそれこそこの心ごと掴まれている気がして、ただただ相手だけを感じる幸せな時間を堪能していた。やがて唇が離れ頬を撫でる顔には幸せが浮かんでいる、それを視界に収めるだけでこちらもとびきり幸せでそれは無意識に笑みとして表情に現れている。恋人にしか許されない特別な行為、もう何度相手と口付けを交わしたか分からないが何時だって二人にしか許されないこの行為には幸せを感じるものだ。暖かな空間で相手に触れる感触に浸っていればオネダリを要求されるという何とも奇妙な状況になる。不意打ちの問いかけに目を瞬かせてしまうも相手にして欲しいことなんて山ほどあって目を泳がせた。最終的に望むことはいつでも決まっていて、だが相変わらず自分の望みをストレートに伝えるのは気恥ずかしい。ハードボイルドではない顔を見られないよう額を相手の肩に置いて顔を隠すと暫く間をおいて「…膝枕して、頭撫でて欲しい」と小さな声でオネダリを伝えて)
……了解した。…おいで、翔太郎
(自分にとって特別で幸せに感じる行為が相手にとっても同じように感じるのであれば素直に嬉しい。相手とならば何度だってやりたいし、強請れば与えられることが自分にしか許されていないと思えば優越感に口元は緩む一方だ。自分の願いを叶えて貰ったのなら相手の望みも叶えたくてしてほしいことを問えばその目は瞬いたのち、何かを悩むように泳ぐ。普段からあまり直接的にしてほしいことを言うタイプではないのだが今日は囲炉裏の特別な空間を借りて甘えてほしいと思う。その思いを込めて合わない瞳を見つめていれば額が肩に乗せられる。顔を隠したいのだと察すればこっそり笑いつつ安心させるように背中を撫でていると小さな声でとびっきり甘いオネダリがされた。その内容に心が掴まれるのを感じると溢れる思いのまま側頭部に口づけをして返事をする。その願いを叶える為に一旦手などを解き、相手が寝転がれるように自分の座布団に戻ると足が痺れないよう軽く崩した正座をする。その状態で相手の方を向けば自らの太ももをぽんぽんと叩きながら甘い声で名前を呼んで招き、その頭を優しく撫でて)
……、…フィリップ…
(この特別に暖かな空間のなかでなおも顔を隠しながら自らの願いを口にすれば、当たり前のように承諾の返事がなされて口付けが落とされる。一旦手が離れるのと同時に顔をあげるもやはり素直なオネダリは気恥ずかしくいたたまれなくて戸惑う表情のまま相手の動向を見守る。相手は自分の座布団へと座ってこちらを招くように膝を叩く、あそこに寝転がって身を委ねるのを許されているのだと思えば何とも言えない幸せがまた胸に募って曖昧な笑みを浮かべた。しかし直後頭を撫でられれば、それこそスイッチが切れたように自分の中で諸々を堰き止めていたものが全て流れ出ていって脱力するように吐息を吐く。頭を撫でられる心地良さを覚えて以来すっかりこれがより心のままに振る舞うきっかけになってしまった。甘い声に呼応するように甘えるような柔らかな口調で名前を呼んでから体勢を崩して相手の膝の上へと頭を乗せる。相手の体温に包まれながら目を開ければ視界いっぱいに愛おしい人の姿が広がる至福の場所だ。相手を見上げジッとその瞳を見つめると早くと促すように軽く擦り寄って)
そんなに急かさずとも君の満足いくまで撫でるから安心したまえ。
(気恥ずかしそうにする相手に甘えてもいいと合図を送るように撫でられる心地良さを与えてやればその表情は緩んで脱力したように息を吐いたのが見えた。柔らかな口調で名前を呼ばれるとそれだけで幸福は満ちて膝の上という特等席に相手を招く。膝の上に相手の頭の重さが乗ると嬉しそうな表情を見せながら相手を見下ろす。すっかりスイッチが切り替わったのかじっとこちらを見つめながら促すように擦り寄られると愛おしさに笑い声を零しつつ相手の頭に手を添えてゆっくりとそこを撫で始める。宝物に触れるように優しく手を動かし時折手櫛を通したり髪を軽く持ち上げてパラパラと落としたりと好きに相手を愛でる。囲炉裏の暖かさと相手の体温を感じながら過ごす時間は穏やかで「翔太郎」と何もなくとも大切な人の名前を紡いで頭を撫で続け
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