検索 2022-07-09 20:46:55 |
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…、……それは遠慮しとく。これで十分だ
(わざとらしい演技をして相手の様子を窺っていれば伏せていた顔が上がってこちらの意図に気がついたのかようやく口元が緩む。それを見ればこちらの顔にはもっと自然な笑みが浮かんでいた。そのまま腕を引っ張られる想定だったか、相手の体はそれ以上に近づいてきて脇の下に両腕が回される。そのまま抱き上げられるようにして体を持ち上げられると思わず笑い声が漏れてこちらからも相手の体を抱き締めた。こちらの思惑は見事成功したらしい。自分のドジから思わぬ形でこちらへの想いを受け取ってしまったことに嬉しさと照れくささを感じて後頭部に頬をピタリと寄せる。いつの間にか随分と相手も心配性になったものだ。穏やかな空気を取り戻したのならコタツを出た目的を果たすべきだろう、「今日の晩飯は囲炉裏使う特別な晩飯なんだ」とまたひとつ相手の好奇心を擽りそうな情報を伝え)
そうかい?残念だ。 囲炉裏…初めて聞く言葉だね。その囲炉裏を使った特別な料理か、興味深い
(相手を立ち上がらせその続きを冗談半分に尋ねると笑い声が聞こえてきてそのまま抱きしめられる。先程の気まずい空気を戻す為の提案なのだろうが素直に力を貸すようにお願いしてくれるのが嬉しくて背中をぽんぽんと撫でながら笑い混じりの軽い口調で言葉を返した。無事にコタツから脱出出来たところで相手から今から食べる夜ご飯の説明がされる。その中で聞き慣れない単語があれば瞬時に反応を示す。相手の言い方的に調理に関わる物だろうが、相手と生活して時折料理を手伝ったりするようになってからも聞いた事のないワードだ。そして今回のご飯はその囲炉裏とやらを使った物と聞けば好奇心を掻き立てるには十分で声と表情に興味と期待の色が乗る。どんなものか想像するだけで口角が吊り上がると「早く見てみたいよ、翔太郎」と背中に回していた手で相手の両腕を掴み急かすようにお願いして)
大広間の真ん中にあった奴のことだ。なら、まずは火起こしからだな
(こちらから囲炉裏という言葉を出せば相手は分かりやすく好奇心を輝かせる、まだ検索したことのないワードだったようだ。途端に弾む声を聞くだけで胸を掴まれる感覚を覚えていると待ちきれない相手の手が腕へと回って少しだけ上半身を離して顔を合わせる.、そこには満面の笑みを浮かべる相手がいてつられて口元が緩んだ。これから取る食事は間違いなくここでしか出来ない体験だ、相手の知的好奇心を満たすにはピッタリのものだろう。相手の期待の目に急かされるようにして腕を掴んでいた手を取り繋ぐと大広間の方に移動してくる。ガランとした分少々寒いがこれからすることを思えばきっと問題はない。大広間の中心が区切られ灰が溜まって中心には炭が組まれており、吹き抜けになっている頭上から真っ直ぐと一本の鎖が降りてきていて「これが囲炉裏だ」と解説を挟みつつ傍に置いてある座布団に座るように促す。囲炉裏の傍には火の起こし方を解説した手順書が置いてあって、ちらりとそれを読んでから大広間の隅にある棚へと近づくとそこには追加の炭と着火剤などがまとめられていた。軍手と着火剤とバーナーを手に取って戻ると「とりあえずひとつの炭に火付ければいいみたいだ」と相手の隣の座布団へと座って)
これが…、用途で言えばコンロに近そうだね。…なるほど、そこから火を大きくしていく訳だ。早速やってみよう!
(手を引かれる形でたどり着いたのはこの建物に入っていた時に通った大広間だ。その時は部屋の広さに気を取られて気付かなかったがその中央は四角に区切られていて敷き詰められた灰の上に炭が組まれていて上から垂れ下がる鎖と言い初めて見る空間に興味に目を輝かせる。相手の言った火起こしというワードと炭の組み方からコンロに近い役割でないかと推測しつつ促されるまま座布団の上に座る。相手が何処かへ向かうと確認していた手順書に目を通す。初心者でも起こせるようにと手順と使い方が纏まっていて大体今からすることを把握した。相手が道具を持って戻ってくると初めての体験に弾む声で要領を確認して隣に座った相手に火起こしを起こそうと声をかけた。軍手を片方借りて組んである炭から一番の軽そうな物を目の前の灰の上に持ってくる。着火剤も固形とジェル状の二種類あるようだが火力が出て直ぐにつくのは後者らしく炭の上に塗る。固形の方も炭同士で火が広がるように配置すると「あとは火をつければ良さそうだ」とその役割を相手に振って)
ま、確かにコンロと用途は一緒だが目の前に火があるとまた違うもんだ。よし、つけるぞ……
(隣に座ると相手の好奇心は全開になっている、こちらとしても目の前で火を起こして料理するなんて経験はなく相手につられる形で期待値はあがっていく。相手は早速着火剤をセットし始めて手順書を読んだのと火の回り方を計算したのか次々にその位置を決めていく。こちらは固形の着火剤を適当にばらまこうとしていたのでここは相手に配置を任せた方が良さそうだ。全ての着火剤をセットし終われば火をつける大役を任される。こちらも軍手をはめて期待を煽るようなことを言えばバーナーのツマミを捻ってガスを出しスイッチを操作して火を付ける。勢いよく吹き出す炎をジェル状の着火剤につけるとすぐにバーナーを消して火バサミで着火剤からじわじわと燃え始めた炭を組まれた炭の山の一番下へと入れた。すぐに火がついたかどうか判断できず何度も忙しなく炭の山を覗き込んでいたが、どうやら固形の着火剤にも引火し周囲の炭にも赤色が灯り始めて「これで、いいのか?」と疑問形を発しながら未だ炭の山を覗き込んでいて)
…多分。炭自体にも火はついているみたいだし、あとは安定するのを待つだけだ。
(準備を済ませて相手に役割を任せると早速着火剤の塗った炭に火をつけて積み重なった山の下に入れた。少しすればその炭から固形の着火剤に引火して火は大きくなっていく。相手が疑問を呟くが手順通りとはいえ実際の火起こしの経験が無いため本当に合っているのか判断出来ない。自信なさげに返事しながらこちらも炭の様子を観察する。火のついた炭はパチパチと音を立てていて着火自体には成功してそうだ。まだ高く炎があがっているが手順書によるとここから更に燃やして安定した熾火にするべきらしい。つまり今は待ちの状態だ。手持ち無沙汰な時間だが日常生活で燃え上がる火を見るのは珍しくついつい興味深く観察してしまう。加えてコタツから出て若干の寒さを感じては火に手を近付け「こうやって暖も取れるね」と笑みを浮かべ)
だよな…?パチパチ鳴ってるし…あぁ、目の前に火があるだけでなかなかあったけぇな
(火起こしなんて自分に経験がないのだから相手も当然経験はなく二人して炭を覗き込みながら確信のもてない言葉をやり取りしている。着火剤で一旦は激しく燃えているがその勢いも少しづつ弱まっていて、その中からはパチパチと何かが爆ぜる音が聞こえてきている。相手が計算して着火剤を置いてくれたのも加味すればおそらく炭にも火が着いているはずだがここは待つしかない。しっかり炭が燃えていない状態ではまだこの大広間はひんやりしていて相手に習って火に手をかざす。それだけでじわりと暖かくなるのだからこの炭が本格的に熱を持てばもっとこの囲炉裏の周りは温かさに包まれそうだ。暫くして着火剤がなくなったが未だ炭は赤く、火起こしは成功しているらしい。それを確認すれば「晩飯とってくるからお前は火みといてくれ」と火の番を託していったんキッチンへと移動した。キッチンには大きめのお盆の上に囲炉裏鍋が置かれていて、冷蔵庫から具材やらスープやらを取り出すと中へと入れる。冷蔵庫からもうひとつ木箱を取り出しお盆に乗せ、おひつにご飯を入れれば準備は完了だ。晩御飯一式を乗せたお盆を手に取ると再び囲炉裏へと戻ってきて二人の間にお盆を置き)
こうやって原始的な火を見るのも初めてかもしれない。…ああ、分かった。
(暖を取るように手をかざせば相手も並ぶように手を伸ばす。コタツともまた違う火としての熱に触れるのは何だか新鮮だ。不思議と心も落ち着いて炭が燃えるのをみながらポツリと呟いた。そうしていると炎は勢いを無くなり代わりに内側は白く全体的に赤く点っているような状況の炭になる。変わらず暖かいことからも火起こしは成功だろう。そのタイミングで相手が晩飯を取りに行くと聞けば頷いて火の番につく。火バサミで炭の位置を微調整しながら全体的に同じ火力になるように調整すると相手がお盆を持って帰ってくる。鍋のようなものと木箱とおひつに入ったご飯ということは分かるがまだ全容は掴めない。中でも一番気になる木箱に近付くと「開けても良いかい?」と興味津々の顔で問いかけ)
あぁ、多分そん中にもとっておきが入ってるはずだ
(お盆と共に囲炉裏へ戻ってくると炭の配置が変わっている。どうやら相手が熱が均等になるよう調節してくれたようだ。炭は黒色から白と赤色へと姿を変えていて先程手をかざした時よりも遥かに周囲が暖かくなっている。相手の言う原始的な火の威力に改めて感心しつつお盆を置いて再び座布団へと座った。相手の興味はすぐにお盆の上にある夕飯へと移る。真っ先に目に入ったのか木箱へ近づいた相手の瞳は相変わらず好奇心で輝いていて開けたいという相手に頷く、炭の準備が出来たのだからそろそろ調理をする番だ。相手が箱を開けるのを横で見守る、中に入ってるのは串を打たれたヤマメだ。木箱の隣には粗塩も添えられていて「そいつに塩をふって炭の横に串を刺して立て焼くんだ」と調理法を説明し)
…魚だ!…なるほど、炭火で塩焼きという訳だね。
(相手からも許可が出ると恐る恐る箱を開く。そこには姿そのままに串に打たれた魚があって驚きと共に声を上げる。箱には粗塩と丁寧に紙が添えてあってヤマメと呼ばれる川魚だと説明がある。続けて相手から説明があればこの場所ならでは調理方法に期待は高まってい。そもそも男二人の食事では魚が登場することはあまりなく、姿そのままとなれば尚更だ。それを雪に囲まれた家で炭火で焼くとなれば原始的かつ初めての体験に声が弾む。早速串を手に取ると言われた通り満遍なく塩を振っていく。2本目も同様に丁寧に塩をかけると「こっちは君のだ」と差し出す。味付けをすればあとは焼くだけだが炭の方はかなり火力が出ていてすぐに近くに置くと焼ける前に焦げてしまいそうだ。丁度良い場所を探るように串を近付け灰に突き刺す。刺さりが浅くて傾きそうになったのを慌てて直したりしながらも程良い角度で立てることが出来れば「こんな物かな」と満足気に呟き)
あぁ、ここでしかできねぇ食い方だろ?ん、ありがとよ
(相手が箱を開けてその中身をみれば弾んだ声が上がってその喜びようにこちらの胸も弾むというものだ。家で魚を食べるにしても切り身に頼りがちで魚を丸々一匹炭火で塩焼きにしてそのまま食べるなんてここでしか出来ない体験だ。こちらも相手と同じくらい瞳に期待が乗っていることには気が付かないまま相手から塩をふられたヤマメを受け取ると礼を伝える。炭はなかなかの火力になっていてじっくり焼くことを考えればあまり近くに置く訳にもいかない。そもそも近くに置こうにも熱くて手を近づけられず一度「あちっ」と手を引っ込めていた。手が熱さにギリギリ耐えられる距離が適正だろうかと位置を決めて串を突き立てる、あとは焼けるのを待つだけだ。同時に調理するものがもうひとつあって鍋の方の蓋を取ってみせる、中身は豚汁だ。「こっちも火にかけねぇと」と立ち上がると蓋を戻して取っ手を持つ。バランスを崩さないように腕を伸ばすと鉤になっている部分に鍋の取っ手を引っ掛けて)
あとはじっくり焼けるのを待とう。おお、美味しそうだ
(相手もこういった経験は初めてなのか瞳にきらきらと期待を宿していてつい口元が緩む。こちらが突き刺す間相手も場所を探しては近づけ過ぎて慌てて引っ込める様子を見れば笑い声を零していた。二人とも串を立てると一旦座布団に座り直す。丸々一匹なら焼けるのにもそこそこ時間がかかるだろうと考えていると相手が鍋の蓋を開いて興味惹かれるようにそこを覗き込む。そこにはいい具合に切られた具材入の豚汁が入っていて塩焼きにピッタリな汁物に声を弾ませる。そして相手が取ってを持って鎖の先の鉤に引っ掛けるとずっと謎だった使い道が判明して感嘆の声を上げた。鍋も炭火の上に固定されて温められていく。魚の塩焼きに豚汁、ご飯という和食の組み合わせは外食などではたまに見るがこうやって自ら囲炉裏で焼いた物はここでしか味わえない物だろう。あとはそれぞれ出来上がるのを待つだけだがふとおひつに入ったご飯が目に入る。以前和食について調べたことを思い出すと「翔太郎、せっかくならこのご飯でおにぎりを作らないかい?」と無邪気な笑みと共に提案して)
お、いい案だなそれ!魚も豚汁も時間かかりそうだし、せっかくならおにぎり作ろうぜ
(こちらが鍋の取っ手を鉤に引っ掛けると相手からは感嘆の声があがる、当然こちらも初めてみる光景で料理をするだけなのに未知の空間に気分は上がりっぱなしだ。真っ赤になった炭の横に魚、上には鍋が設置され囲炉裏から溢れる熱気に体を温められつつ料理が完成するのを待つ。ちらりと窓の外を見やれば未だシンシンと雪が降り続いていて、雪に囲まれた宿で囲炉裏を囲うなんて風の街では絶対にできない時間だ。あとは火にあたりながらのんびり過ごす時間かと思ったが相手からおにぎりを作ろうと提案されると無意識に前のめりになりながら肯定の返事をする。ここまで和食揃いの夕飯なのだ、おにぎりを作ればもっと雰囲気が出るに違いない。早速おひつを持って立ち上がると「水も使うしキッチンの方でやろうぜ」と声をかける。キッチンへとたどり着けばおにぎり用の皿と塩とを用意し)
ああ、そうしよう。 _ おにぎりというくらいだから手のひらで三角形に成形すれば出来そうだ
(準備も終わった所でせっかくならばご飯にも手を入れておにぎりを作る事を提案すれば想像以上に食いつくように反応が返ってきて思わず笑みが零れた。二人で作ればさらに美味しくなるに違いない。火も大分安定して少しくらい離れても大丈夫そうに見えればキッチンに向かうことに頷いて立ち上がり移動する。キッチンに着いて皿と塩が準備される間手を洗ってからおひつの前に立つ。提案した立場ではあるがおにぎりを作った経験は無く正しい手順については分からない。だが以前食べたおにぎりの様子からして単に掌で握って成形すれば出来そうである。見よう見まねと想像で手を濡らして少しの塩を馴染ませると掌に乗るくらいの量のご飯を乗せる。まだ熱くて多少アタフタしながら山形になるように同じ面をぎゅっと握って)
ま、基本はそうだな。…フィリップ、あんまり握りすぎるとご飯の塊になっちまうから、前聞いたやり方だと空気を入れるようにふわっと……
(キッチンに二人で並んで立つとこちらも手を洗う。おにぎりは食べたことはあるものの家で白飯を食べる時にわざわざおにぎりにすることも無く、握った経験は遠い昔にしかない。相手がご飯に手を伸ばしたのを見ればひとまずそれを見守ることにした。ご飯がまだ熱いのか騒がしい動きをする相手を小さく笑いながら見守っていたが、三角にすることを意識しすぎたせいか強い力でご飯を押している。三角にはなるだろうがあれではガチガチのおにぎりが出来上がってしまいそうだ。相手に呼びかけこちらを見るように促す、といってもこちらもいつかの見よう見まねだ。塩をまぶしたご飯を手のひらサイズで取ると握りすぎないよう手の中で転がすようにして三角形を作っていく。米を押さえるのも少しだけだ。最後に少々形を整えて皿の上におにぎりを置く。が、転がし方が悪かったのか皿の上のおにぎりは斜めに偏っていて今にもこけてしまいそうで暫く自作のおにぎりを見つめたあと「難しいな…」と思わず呟いて)
…なるほど、回転させながら握るのか。ああ、ただ握るだけなのにお店の物のようにならないね…。 もう一回やってみよう、
(イメージ上にある三角の形にしようと力を入れていると名前を呼ばれ、一旦動きを止めて視線を向ける。どうやらこれでは駄目らしく相手が見本を見せてくれる。掌にご飯を乗せるところは一緒だが一度に形を作るのではなく転がすようにして少しずつ形を整えていく。確かにこちらの方がご飯を押し固めることなく均等に形を作れそうで感心したように呟く。だが順調そうに見えた相手もお皿に置いてみると全体的に傾いていて綺麗な形とは言えない。自分も手元のおにぎりを転がすようにして握り最終調整を図ってから隣に並べるも詰まってずっしりと硬そうなおにぎりになってしまった。単に三角にするだけの物と思っていたが案外難しく相手に同意するように返事をする。だが大体の雰囲気は掴めた。諦めずにまた同じ手順で掌にご飯を乗せると今度は最初から転がすように軽い力でおにぎりを握っていく。時折全体の様子を確認して調整しながら握って皿に乗せると多少歪でバランスは悪いものの今度は密度の詰まってない三角形が出来上がり「さっきよりも良い感じだ」と上達を喜んで)
あぁ、慣れてねぇとこんなに難しいもんなんだな……よし、俺ももう一回
(今にも倒れそうな斜めのおにぎりの横に相手の密度の高そうなおにぎりが置かれる。普段目にする機会も多いはずのおにぎりだがいざ作ってみるとなるとなかなかに難しい。作り方をある程度分かっていてもこの結果なのだから思い描く三角形のおにぎりを作るのは相当難しそうだ。だがまだチャンスはある、相手が再挑戦を始めた横でこちらも手のひらにご飯を乗せて再びおにぎり作りを始めた。相手は手の中でおにぎりを転がす要領を得たのか傍からみればなかなか手際良く見える。最終的には少々バランスは崩れているもののふわりと握られたおにぎりができていて「断然美味そうな見た目になったな」とその上達ぶりを褒める。その間に自分もおにぎりを握っていたわけだが相手の方を見ていたせいでご飯の量を見誤り先程よりも明らかに大きい三角形が手の中を転がっている。だが形はそこそこいいバランスになっていて今更それを崩すのは勿体なく、結局そのままお皿に置けば先程よりふた回りほど大きなおにぎりが出来上がってしまった。また暫し四つ並んだ個性的なおにぎりを見つめたあと「まぁ食えるし問題ねぇ」と見た目を度外視することにして)
ふふ、君のは食べ応えがありそうだ。 そうだね、それに僕達の手作りでもある訳だからきっと美味しいはずさ。
(相手の言う通り簡単そうに見えても実際作ってみると案外難しいもので単なる思いつきからかなり熱中して2つ目を作る。皿に置いたおにぎりを褒められると得意げに口角はつり上がって達成感が満ちる。一方で相手の方を見てみると形こそ綺麗だが明らかに先程よりも大きなおにぎりが出来上がっていてそのサイズ感に一瞬目を丸くして笑い声が零れた。皿に並べばその大きさの違いは歴然で均一性のない四つのおにぎりが並ぶことになる。相手も同じことを思ったのか隣から見た目を度外視する旨の発言が聞こえてくれば得意げな顔を浮かべて同意を示す。調理というには簡単な工程だが二人で作ったこのおにぎりは思い出に残る味になるに違いない。手を洗ってから「そろそろ火の様子も見に行こうか」と声をかけると4つのおにぎりの並んだ皿を手に持って囲炉裏の方に戻って)
だな。見た目にも楽しいしこれで良しってことにしようぜ
(こちらの大きめのおにぎりを皿におけば相手から笑いが漏れる、自覚はあったがやはりなかなかに大きい仕上がりになってしまったようだ。だが相手の言うようにこれも思い出であり二人で作った美味しいおにぎりだ。今回の夕飯は宿側がほとんど用意してくれていたものなだけに握っただけでも二人で作ったこのおにぎりは食卓に一層の彩りと思い出を加えてくれる。こちらも手を洗い相手に続いて囲炉裏の方へと戻る。魚の方はなかなかいい具合に焼けているようで火にあたっていない裏面だけもう少し焼けば完成だろう。魚を反対方向に向けていると今度は鍋の方がグラグラと煮えてくる、どうやらこちらはもう完成しているようだ。腕を伸ばして木の蓋を手に取って開ける、すると鍋からはぶわりと湯気と豚汁のいい匂いが広がって、グツグツ煮込まれている具材をみれば「おぉ、美味そう!」と声をあげ)
あとは反対側を焼くだけだね。 ああ、食欲をそそられる匂いだ。お腹も空いたしゆっくり食べ始めようか
(2人で作った個性的なおにぎりをおひつ代わりに二人の間に置くと焼いていた魚と豚汁の方に目を向ける。少し心配していたがちょうど良いタイミングだったようで炭火に当たっていた側が程良い焦げ目が着いて焼けていれば串を回して方向を変える。こちら側も焼ければ完成だろう。鍋の蓋を相手が取ってあければ湯気と共に良い匂いが漂ってきてとても美味しそうだ。色々買い食いしたとはいえ主食らしき物をあまり食べてないせいかお腹はペコペコで目の前の特別な食事に惹かれて止まない。魚も時期にできることを考えれば食事を始めることを提案してお盆から器を手に取った。おたまで囲炉裏鍋のバランスを崩さないように具だくさんの豚汁を二人分の器に順番によそいその片方を相手に渡して)
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