検索 2022-07-09 20:46:55 |
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もちろん、その依頼受けさせてもらう。俺達がお嬢さんを立派なメイドさんにしてみせるぜ
(要領を得なかった依頼人の言葉を集めて相手が整理してみせればどうやら当たりだったらしくコクコクと頷いている。こんな健気な依頼を断れるわけがない。それにメイド喫茶のサービスを体験出来るのなら悪い話ではないだろう。若干の下心もありつつ再びキメ顔を作って依頼を承諾する事にした。「とりあえず客と話す事に慣れねぇとな」と彼女を観察しつつ口にする、振り切ったことをしつつ愛想を振りまくメイドさんならば常に客を見続け会話する事が必要だ。ここで話すのすら彼女はまだたどたどしい、せめて店外のここで普通に接客できるくらいにはならなければ。手始めに「まずはお決まりの挨拶から始めようぜ、お帰りなさいませご主人様ってやつ」とソファを立つ。彼女も立ち上がるとコクンと頷いてこちらの正面に立った。が、しばらく沈黙の時間が続き不思議そうな顔で彼女を覗き込もうとしたところで『おおおぉぉぉかえりなさいませご主人様っ!!!』と居酒屋並の声量の挨拶が飛んできて思わず仰け反る。これはなかなかの荒療治が必要かもしれないとため息をつき)
っ、なかなか熱血的な挨拶だね。とりあえず普通の声量でスムーズに言うのを目標として……そうだ、君がお手本を見せたらどうだい?
(相手も依頼を受けることに賛同すると早速話す事に慣れることから始めることとなった。今の彼女を見る限り客相手はおろか自分達とハッキリ話せるかも怪しい。まずはテンパってしまわないようにこの状況に慣れることが必要だろう。その第一歩として相手は挨拶の練習を提案する。一般の飲食店では聞くことの無い挨拶だがこれもメイド喫茶ならではの出迎えの言葉なのだろう。不思議な文化に感心しつつ立ち上がった二人の様子を見守るが彼女は一向に声を発さない。不思議に思っていると突如大声でそのセリフを読み上げて驚いてしまう。流石にこの調子では客を怖がらせてしまうし何より喫茶店の雰囲気に似つかわしく無い。まずは一般的な声量でハッキリ言えることを第一の目標として設定するがこういう機会はあまり無くどうサポートしていけば良いか分からない、その方法を悩んでいるとふと相手がメイド喫茶の事を知っているようだったことを思い出して人差し指を立てながら相手の方を向く。何か技術を学ぶなら真似をするのが一番、そのためにも相手にお手本役をするのうに提案してみて)
は?俺が?!……、…仕方ねぇな…
(もっと近くで聞いていたら耳にダメージを食らうほどの声量でお迎えの言葉を受け改めて難しい依頼を受けてしまったと実感する。だが一度引き受けた以上引く訳にはいかない、彼女の願いを叶えるのだってこの街の探偵の仕事だ。どうやって矯正するか考えていると相手から手本を見せる案が出された。確かに見本を見せるのは一番手っ取り早いやり方だが真似するのはメイドさんだ、ハードボイルド探偵とは真逆にあるような存在の見本をするのは主義に反する。だがこれも依頼解決のためだ、彼女も『お願いします…!』と頭を下げていてここまでされては引く訳にはいかない。軽く咳払いをしたあと気持ちを整える、メイドのイメージを頭で固めると決心はついた。彼女と相手の方に改めて向き直り口角をあげてニコリと笑顔を作る、軽く頭を下げいつもよりもワントーン声の高さを上げると「お帰りなさいませ、ご主人様っ」と明るく弾んだ声で言うと顔をあげて思いっきり作った笑顔を浮かべて)
…ふふ、なるほど。これがメイド喫茶の挨拶という訳だね。確かに悪くない
(相手に見本の役を提案すれば動揺を見せ拒否しようとするも彼女から頭を下げて頼まれると引き受けることに決めたらしい。こういう所が甘くハードボイルド足り得ない理由なのだが今は面白い物が見れそうだと口を噤んでおく。軽く咳払いしたかと思えば分かりやすく笑顔を作りワントーン高い声で先程のフレーズが述べられる。明るく好印象を受ける見本だったのは間違いないがそれ以上に今の服に似合わないキラキラした仕草とご主人様と呼ぶ弾んだ声が普段の相手を知っているからこそ妙に面白く感じて数秒は我慢するも結局は耐えきれずに笑い声を零す。メイド喫茶ならではの挨拶の魅力に納得する言葉を紡ぐ一方で口元は緩んだまま相手の見本を褒めて「あんな感じで笑顔を見せつつ明るい声を出せば良いはずだ」と彼女に声をかける。彼女は『が、が、頑張ります!』と返事をしながらメモ帳にそのアドバイスを記入していて)
ぐ、笑うんじゃねぇ!……待てフィリップ。見本は多ければ多いほど良い。ならお前も見本見せてやった方がいいだろ?お前に会いに来てくれるお客様をお出迎えするイメージだ
(色々なものを押し込めて全力でメイドとして挨拶をしてみせたわけだが数秒の間の後相手が笑い出すと作っていた笑顔は崩壊し抗議の声をあげる。ぎこちない笑顔になっている自覚はあったが声量や声を出すタイミング等は何となく伝わったのだろう、彼女はメモにペンを走らせていてこちらもやった甲斐があったというものだ。しかし相手はこちらの見本の補足をするという大変美味しいポジションに収まっている、こちらだけ醜態を晒して終わりとは不平等だ。逃がさないとばかりに相手の肩に手をおけば相手にも挨拶の見本を見せるように迫る。相手は先程までメイド喫茶を知らなかった身だが今のでだいたい雰囲気は掴めたはずだ。さらに具体的なイメージを与え情景を思い描けるようにしてやる、彼女もやる気に火がついているのかメモを握りしめたまま相手を見つめていて)
え、でも僕はメイド喫茶の事を知らないのだが…。 あくまで僕のイメージと君の真似だけども…
(つい声に出して笑ってしまうと相手から抗議の声があがる。だがぎこちない笑みと作ったような声で告げられるお決まりのセリフは変にツボに入って口元は緩みっぱなしだ。助言をしつつ二人が依頼を遂行していく様を面白がるという傍観者ポジションにいた訳だが急に肩を持たれ自分にも見本をやるように迫られると思わず目を見開く。そもそもメイド喫茶の存在はさっき知ったばかりで実物を見ていないのに見本をしろなど無理な話だ。そう主張して逃げるように逸らした視線の先には期待の目をした彼女がこちらを見ていて逃げ場がないことを悟る。わざとらしく溜息をついて渋々引き受けると教えてもらったイメージと相手の真似によるものだと前提を置いてから一息つく。会いに来てくれる人としてクリスマスパーティの参加者を頭に思い浮かべると照れ臭さの残った軽い笑みを作る。一瞬躊躇の色を見せながらも「おかえりなさいませ、ご主人様」と軽く張った明るめの声で挨拶を告げて真似るように頭を下げる。顔を上げるまでは何とか笑顔を保つが挨拶の流れが終了すると表情をくずし「こんな感じだろう」と問いかけて)
…、……………
(相手はこのまま傍観者のポジションに収まろうとしていたようだがそうはいかない。同じ鳴.海.探.偵.事.務.所.の探偵なら相手にもきっちり依頼解決のため動いてもらわねば。深々とため息をつく相手に期待の目を向けつつ既に笑いそうになるのを堪えて様子を見守る。どう笑ってやろうかと考えていたが相手が照れ臭そうにはにかんだ所で目を奪われてしまう。そのまま戸惑いながらも明るく定番の挨拶をする姿があまりにも健気で見事に心臓を撃ち抜かれてしまった。思わず緩みそうになった口に手を添え隠して顔をそらす。油断すれば本音を口から出してしまいそうだ、勉強中の彼女に変な雑音を与えるのは悪手だろう。彼女は彼女で『めいっぱい元気にやる必要はないんですね……』と得るものがあったようだ。熱心にメモを取る姿をみれば軽く咳払いして自分の気持ちを整え彼女の方をみる、二つの見本があれば彼女の挨拶も変わるだろうか。「よし、改めてお嬢さんの番だ。家族とか、話しても緊張しない人のこと思い浮かべながらやってみるといいんじゃねぇか?」と軽くアドバイスも添える。彼女はコクンと頷くと二人の方を向いてゆっくり深呼吸し控えめな笑顔を作って『お、お帰りなさいませご主人様…』と深々と頭を下げながらぎこちないながらも明るい口調で言う。一般的なイメージとは少々違うが「これはこれでいいんじゃねぇか?」相手の方に視線をやり)
なんだい、その反応は。…ああ、健気さが伝わってくる可愛らしい挨拶だ。
(半ば相手にリクエストされた形でメイドさんの挨拶をすると当の本人は口に手を添えたまま顔を逸らした。長年一緒にいれば何となくどう感じたのかは伝わってくるものの慣れないことをやらせておいて何もコメントがされないといたたまれない気分だ。それを誤魔化すように相手のカフェオレに口をつけながら気持ちを落ち着かせる。だか本来の目的の彼女には何か参考になったようで加えて相手がアドバイスを添えると小さく頷いて一呼吸置く。そこから控えめな笑顔でぎこちなくも健気に出迎えの挨拶を告げる。ハキハキとはいかないものの慣れきっていない感じが逆に可愛らしく深々頭を下げる所も含めて先程よりもずっと良い。相手の言葉に賛同するように頷いて素直な感想を述べると『そ、そんなこと…』とまた恥ずかしがってしまった。だが目標に向けて大きな一歩だ。この調子で練習していけばちゃんと出来るようになる日も近い。「あと何か定番のフレーズだとかやることはあるのかい?」と二人に次の練習候補を問いかけ)
あー…………まぁ、あるな
(本音がダダ漏れになるのを防ぐために顔を逸らしたが相手はそれが不服そうだ。依頼人の手前相手を可愛いだなんて口にはできないだろう、気にするなと言いたげに軽く手を振ってなだめておくも相手が自分のカフェオレを飲む姿も胸を擽るものがあって平常心を保つのに暫く時間を要した。なんとか彼女に挨拶の練習をさせる流れとし無事事なきを得た。彼女もいい感じに挨拶が出来るようになって良い流れになってきた。これに続いて次の練習をと相手に振られるとまた固まってしまう。彼女のためにと引き受けたがメイド喫茶の練習をするなら当然あそこの雰囲気に準じたことをしなければならないわけで、挨拶どころかそれ以外の全くハードボイルドではないこともしなければならない。だがこれも彼女のためだ、依頼を途中で放り出すことはできない。あらゆるものを飲み込むようにゆっくりと深呼吸をする、相手の方に目を向けると「そこ座ってくれ」とカフェオレの前のソファに座るよう促す。流石にこれは客役がいないと恥ずかしい、とはいえ相手を客にするのも恥ずかしいのだが彼女がメモを取る気満々なのをみれば相手を客役にする他なかった。羞恥を押し殺した微妙な顔を浮かべながらも早くと促すように目線をやり)
ならば一通り練習した方が彼女の為だろう。なるほど、僕がお客さん役という訳だね。
(メイド喫茶については知識は無いが独特の挨拶があるのならその他の接客も個性的な部分があるはずだ。相手にそれを問えば歯切れ悪くも肯定が返ってくる。単に人と話せるようになるのも大事だがメイド喫茶で働くならその特殊な接客もスムーズになった方が良いだろう。依頼の為のアドバイスが半分、メイド喫茶への興味といつもと違う相手が見られるかもしれないという野心が半分で他の言動も練習した方が良いと助言を告げる。何か覚悟を決めるような動作をした相手にソファーに座るように言われるとその意味を察して客役を快く引き受けた。彼女がメモを取る気満々で横で待ち構える中、相手は恥ずかしいのを隠そうと何とも言えない面をしていて密かに愛おしさが募る。依頼者の手前放り出すことも出来ずにやり切ろうとする所が見られるのはちょっとした役得だ。促された通りにソファーに座って相手の方に顔を向けると「可愛らしいメイドさんの見本で頼むよ」と揶揄い混じりに準備が出来たこと告げて)
これも彼女のためだ……んん゛っ…
(相手を客に見立てるためソファに座らせれば『私も失礼して……』と向かいの席に依頼人が座りメモを構える。こうなればもうヤケだ。揶揄い混じりに話しかけてくる相手に予め断りを入れておく、ハードボイルドに反する行為でもこの街のためならばやり遂げてやろう。咳払いをして気持ちを整えると再び口にニコリと笑みを作る。そして相手の方を向いて両手を胸元に添えまたワントーン声色を上げると「ご注文ありがとうございます!それでは、もーっと美味しくなる魔法をかけますねっ」と媚び媚びの声と仕草でメイドの見本を始める。だいぶ偏見の入った所作だが止める事は無い、こういうのは吹っ切れてやったもの勝ちなのだ。胸元に置いていた手をその場でハート型にすると、「もえっもえっきゅんっ!」とかけ声と共にハートを動かし最後には相手の目の前にあるカフェにハートを差し出す。自分で言うのもなんだか見本としては完璧だろう。が、暫くして吹っ切れた分が後から羞恥として襲い来るとその場で固まったままゆっくりと目を逸らして)
…っ、………、
(再度相手が咳払いするとまたにこりと愛想の良い笑みを作る。どんな物が見られるのか楽しみにしていると先程よりも可愛らしさを意識した声と仕草で話しかけられ思わず目を丸くする。その光景に目を奪われていると相手はその調子のまま手はハート型を作り謎の呪文と共にこちらに差し出される。また揶揄おうとおもっていたのに目の前で起きた情報量の多さを処理しきれず目を丸くしてフレーズしてしまう。もう一度頭の中で先程の仕草を再生すると普段とのギャップとそれ故の可愛らしさに気付けば変に鼓動が早くなっていた。依頼人がいる手前何か言わなくてはと思うのに上手く言葉にならず慌てて落ち着きのない口元を掌で隠す。ちらりともう一度見た相手も後から羞恥がやってきたのか固まっていてその姿にすら心臓がうるさくなって仕方ない。顔色に出てないことを祈るばかりだ。これがメイド喫茶の魅力なのか、と明後日の方向に思考が及んでしまう一方そんな事は露知らずの彼女は『さ、流石です…!』と相手の見本の出来を無邪気に褒めていて)
、なんでその反応なんだよ……あとはほら!写真とか撮るんだよな?!可愛らしいポーズとか教えてやれよフィリップ!
(思いっきり吹っ切れてメイド喫茶の代名詞とも言える『おまじない』をして見せたわけだが、吹っ切れた分その反動は大きくこのまま固まっていては顔まで熱が上がって来てしまいそうだ。こういう場合むしろ相手がある程度茶化してくれた方が場が和むというもの。先程のように笑うだけでも良いと相手の方をチラリと見てみるが当の相手は先程の自分のように口元を隠してそっぽを向いている、つまりは同じような事を考えているということだ。中性的な顔立ちの相手ならまだしもこちらがやった媚び媚びのおまじないに動揺するのなんてそれこそ相手くらいなものだろう。そう思えば余計に心臓に悪く鼓動が早くなっていくのが分かる。なんとか突っ込むように呟くもこのままでは依頼人の前でボロが出てしまう、というより既に彼女は二人の間に流れる妙な空気を察したのか交互に顔を見始めていた。これは流れを変えなければならない、強引に次の項目へと移るよう促すと相手に写真を撮る時のポーズをレクチャーするように見本の順番を投げる。彼女も『そちらもお願いします!』とやる気を見せてなんとか意識を逸らすことに成功し)
だって、あまりに普段の君と違い過ぎて…。だから何で僕に振るんだい。 …僕が知ってるのはこうやって顎に手を添えるのと、ハートを作るポーズだ。
(喋れば何かボロが出そうで黙っていれば相手からつっこむような反応がされる。今更になって見本を見せるというのはお互いにとって悪手だったのではと思い直すも依頼の為に止められそうに無い。漸く動くようになった口で言い訳を重ねるがそれも何処かぎこちなくなってしまう。彼女も妙な空気に気づいたのか不思議そうに二人の顔を見始めると更に焦りは募っていく。そんな流れを切り替えようと相手が次なる練習項目に話を持っていくのまでは良かったが何故かこちらに見本の順番を投げるものだから思わず文句を返す。メイド喫茶で撮る写真のポーズなど今の自分には全く知識がないのだから。だが彼女からも期待の目を向けられ、拒否して先程の空気に戻ったり相手から追撃を食らう可能性を考えれば飲み込むしか選択肢は無かった。可愛らしいポーズと言われ考えを巡らせるといつの日か女子高生の情報屋に見せて貰ったプリクラを思い出す。先程の相手のおまじないからしても多少あざとく媚びた方がそれっぽいのだろう。仕方なくソファーから立ち上がると記憶に従って顎のラインにグーにした両手を添え上目遣いになるようなポーズをして見せる。もう一枚の案として先程相手がしたように左胸辺りに手でハートを作ると右側に軽く小首を傾げる。その状態をキープしたまま相手と目が合うと少し悪戯したくなってしまって「これで笑顔を見せれば完成だ」と言いながら相手を見つめながら明るく微笑んで見せて)
そりゃそうだけどよ……ッ、…お嬢さんはやってもいいけど、お前はそれ外でやるなよ!
(普段ハードボイルドを貫いているのだからその対極にいるメイドさんの仕草をすればいつもとは全く違う姿を見せることになるのは必然だ。そんな姿を見せて相手が心掴まれているのが嬉しくもあるが最大限の痴態を見せてしまってめちゃくちゃに恥ずかしい。そんな微妙な心境を悟られるのも今は遠慮したい所でなんとか相手に見本の順番を譲ることが出来てなによりだ。彼女の視線も相手へと向いて一旦は心を落ち着けられる。相手はというと女子高生情報屋を参考にしたであろうポーズを披露していて彼女も熱心にメモを取っている。完全に気を抜いた状態で相手を眺めていると相手はもう一つポーズを取って、それは先程自分がしたのと同じハートマークを作るものだった。自分もあれをしていたのかという動揺と相手がすると様になるという感想の相乗効果で胸の内が疼いていたが、相手の視線がこちらへ向いて顔に微笑みが宿るとまたも簡単に心臓を撃ち抜かれてしまった。思わず目を見開き言葉にならない声を発してようとして口は半開きになる、彼女がこちらに背を向けていたのは幸いだっただろう。ここで先程相手が求めたのと同じく何かしら笑ってやらなければならないのに気持ちはこの姿を誰にも見せたくない方へと傾いてしまう。咄嗟に声色を明るくしてふざけた調子に出来たので『恥ずかしいから外でやるな』の意味になって良かったものの、真意は異なっていて曖昧な笑みを浮かべたまま気持ちを誤魔化していて)
やらないよ、今だけだ。 何か参考になったかい?
(普段は決してしないようなポーズをするとさっきの仕返しとばかりに相手の方に向け微笑みを見せた。すると相手の目は見開かれ分かりやすく動揺しているのが伝わってくる。先程自分も似たような感じだったから気持ちはよく分かる。今度は黙ることなく声色明るく茶化すようなコメントがされるがその中には違う意味合いも含まれている気がして口元がニヤけそうになる。それを誤魔化すようにポーズを解いてどちらでも通じる返答をすると背後にいる相手の反応を見せないように彼女に話しかける。自分達と会話するのに慣れたのか『は、はい!何となくイメージが掴めた気がします。』と自然な笑みを見せて答えてくれた。かなり恥ずかしい想いをしたが彼女の糧になってくれたのなら何よりだ。「僕個人の感想だけど、こういうのは役になりきった方がやりやすいと思う。いつもの自分と切り分けてやるべき事に集中すれば何とかなる」と以前女装したりした経験から補足的なアドバイスをすると「君もなにかアドバイスはあるかい?」と話を振って)
ならいい……そうだな、お嬢さんは初対面の人と話すの苦手でもメイドさんしたいんだろ?ならそれだけメイドって仕事が好きって事だ。その気持ちがありゃ客に喜んで貰えるメイドさんになれるはずだ
(なんとか真意を誤魔化したつもりだったが口元が緩まっているのを見るに誤魔化しは失敗したようだ。彼女が振り返って情けない顔を見せてしまう前に相手が話しかければその時間を利用してなんとか表情を元に戻す。当の依頼人は最初よりも自然な口調と笑顔で話していてこれならば接客も問題ないように思えた。相手からアドバイスが送られこちらからもと振られれば彼女のメイドに対する熱量を指摘する。普通ならばあがり症だからとメイドを早々に諦める所を彼女はわざわざ探偵に頼んでまでどうにかしたいと思ったのだ、その気持ちを持っていることを彼女を自覚すればもっと自分に自信が持てることだろう。相変わらず彼女はコクコクと頷いていて『お二人ともありがとうございます』と礼を言われる。その後メモ帳に目線を落としてから顔をあげ『それにちょっと照れてたりちょっと演技っぽかったり、完璧じゃなくても可愛くなるんだなって思えました』と悪気のない真っ直ぐな目で言われてしまえば彼女にはそう見えていたのかと苦笑いを浮かべ)
まあ、完璧なのも良いけど少し抜けていたり弱い所がある方が親しみやすくて良いとも言うからね。君なら大丈夫だ。
(相手がメイドに対する熱量について言葉を向けると彼女はこくこくと頷きながら話を聞く。技術や慣れも勿論重要な点だろうがまずはその仕事にどう向き合うかが大事だ。これまでこの街の探偵をやってきた相手らしいアドバイスに密かに感心を抱く。話を聞き終えた彼女はメモ帳を確認してから真っ直ぐな目で感想を告げるもその何割かは別の理由と分かっていれば一瞬目が泳いだ。だが結論自体は嘘ではなくそれとなく肯定しておいた。メイドさんの接客のイメージがついたのか彼女は立ち上がると『本当にありがとうございました!』と深々と頭を下げる。『私、教えてもらった事を活かして頑張るので、良かったらいつでもお店覗きに来てください。精一杯お給仕させて頂きます!』と告げる彼女は事務所に来た時よりもずっと明るくキラキラしているように見える。何はともあれこの笑顔を見れば素直にやって良かったと思えた。依頼料のやり取りの後、彼女を扉まで見送り終えると事務所は二人きりになり「メイド喫茶とは面白い文化だね」と感想を口にして)
なんなら今度行ってみるか?彼女の事も気になるし
(最後の感想は少々引っかかるものがあったものの相手がそれらしく話をまとめれば彼女も満足気な顔を浮かべている。礼を言う彼女に先程の分を取り返すようにハードボイルドな態度で「また何時でもどうぞ、お嬢さん」と気取った声で見送れば彼女は事務所に入ってあの第一声を放った姿から比べ物にならないほどいい笑顔で帰っていった。事務所だけで解決する依頼ではあったがかなり体力を使ったような気もする。軽く息を吐いていれば事務所に二人になり相手が呟きを零した。どうやらメイド喫茶に興味を持ったようだ。こちらとしても単純にメイド喫茶への興味もあり彼女のその後も気になるところ、彼女の店に行くのは大いに賛成だ。それに今日見本として見せたハードボイルドでない姿は早く上書きしてもらわなければ困る。本物を見ればそちらのインパクトに相手の記憶も持っていかれることだろう。「俺のを忘れて貰わなきゃ困るからな」と小さく呟きいた後真意を隠すよううに「次の休みにでも行くか」と相手の方を見て)
ああ、是非行ってみたい。メイド喫茶ならではの文化やフレーズがあるようだからね。確か…もえっもえっきゅんっ!だっけ、
(メイド喫茶自体に興味を示すと相手から実際に訪れようと提案がされる。彼女がちゃんと接客出来るかを見に行くという目的もあるが何より独特の文化や挨拶にはとても興味がある。ぽつりと小さく聞こえた呟きの後次の休みに行く誘いに頷いて前向きな態度を示すと今日のやり取りを思い出しながら言葉を続ける。相手の方を向いて一瞬ニヤリと笑うと先程相手がした通りに胸元でハートを作ってその時の真似をするように媚び媚びの声で同じフレーズを口にしながら手を動かす。しっかりと最後に相手にハートを差し出す所までやり遂げると口元を緩ませたまま「残念ながら暫くは忘れそうにないよ」と楽しそうに告げて)
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