相乗りで何処までも 【 〆 】

こんな見え見えの罠に二人でノコノコ来るわけねぇだろ
(相手が拳銃で背中を軽く押したのを合図にゆっくりと柱の影から出ていき姿を晒す。一瞬緊張が走った敵方だったが目的の人物がここにやって来てしかも捕らえられている現状に一気に勝利を確信して憎たらしい笑みを浮かべていた。あまり良くは無い状況だがこちらが姿を現したことによって向こうの状況が見えてきた。中央に座らされているアキコの両脇に銃を構えた男が二人、その他警備のためかまばらに人がいて奥にいる一層ギラギラとした装飾の椅子に座るのがここを取り仕切っている奴だろう。相手がこちらを軽く蹴って敵の芝居を続ける、それに従うフリをしながらもう一人はここにはいないと相手の正体を隠した。相手の言動に合わせ疲弊している様子を見せるようにしゃがむ途中ガクりと首を俯かせて同時にバランスをなんとか保ったように片膝立ちの状態になる、これならいつでも走り出せる体勢だ。荒い息をわざと吐き出したあとまだ繋がったままのインカムに向け「フィリップ、アキコの隣にいる奴撃て。防弾ベスト着てるから死にはしねぇ」と指示を出す。何よりもまずアキコへと近づくためには混乱を起こさなければ、疲弊している演技を続けつつ相手が動き出すのを待って)

…分かった。なら僕が一発撃ったらインカムを捨てて行動してくれ。
(相手を捕まえた部下の芝居を続けながらも周囲の状況を確認する。所長の傍にいる男2人の他にもまばらに警備の人と奥に指揮官らしき人物が居て状況は依然悪い。相手を蹴って片膝をつかせれば顔を俯かせ疲労しきりながらも虚勢を張る探偵の姿はそこにあってその様子に彼らは終始御満悦だ。内心舌打ちしたい気分になりながらもインカムから相手の声で作戦が共有される。無反応を意識しながら相手に視線を向けると服従しているように見えて今にも走り出そうとせん姿勢だ。恐らく一気に突っ走って所長の拘束を解く作戦だ。一方敵達は自分達に関して調べがついてもう一人は安楽椅子探偵を知ってるためか相手の説明をあっさり信じると『まあ良い。そこのお前、そいつからメモリとドライバーを回収しろ』と自分に指示が下る。発砲すれば自分がターゲットだとバレる、チャンスは一度きりだ。それでも三人で無事に帰るため、そして大事な役目を託してくれた相棒に応えたくて彼らの指示に従うフリをして相手の前に立ち、口の動きが見えないように男達に背を向ける。その状態でこちらからも指示をインカムで伝えると覚悟を決めるように一呼吸ついた。横にズレるように振り返ると所長の両端にいる男の胸に順番に撃ち抜く。突然の裏切りに動揺が広がり一気に自分と相手に銃が向けられるが全体に設定したインカムの傍で発砲音を鳴らすと自分が撃たれたのかと錯覚して彼らの動きが止まる。隙を作ると相手に近い所の敵から同じく防弾ベストの上に銃弾を打ち込み)

………っ！！
(相手が向こうの指揮官から命令が下され敵に背を向ける形で口元を隠すと相手からも指示を受ける。インカムを使ってこの場にいる人間を怯ませるつもりなのだろう。目で了解の合図を送ればその時を待った。相手が横にズレながら立ち上がると足に力を込める、そしてさながらスタートの合図のように鳴らされた銃声と共にインカムを投げ捨てアキコへ向かって走り出した。駆け抜けると共にス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を再びライブモードへ移行させる、一直線にアキコの元へ駆け寄るとス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.のホーンで腕と体を拘束する縄を引き裂いた。アキコはすぐさま口に貼られていたテープを外すと『翔太郎くん！フィリップくん！』と声をあげる。ようやく所長を助け出すことができた、あとはこの場面を切り抜けるだけだ。しかし視界の外で殺気を持った人影が揺らめき背筋に悪寒が走る、同時に『Sonicwave』と禍々しいガ.イ.ア.ウ.ィ.ス.パ.ーが響いた。視線を音の方に向けた時には何かにぶっ飛ばされてしまい体が飛んで地面へと転がる、体が止まった時には吐き気をもよおすような酷い耳鳴りが響きまともに周囲の音が聞こえなかった。どうやら指揮官がド.ー.パ.ン.ト.メ.モ.リ.を使ったらしい。さらに怪物となった指揮官は高笑いしながらアキコを捕らえ首にマ.ス.カ.レ.イ.ド.・.ド.ー.パ.,ン.ト.のメモリを突きつけ『これをそのまま突き刺したらどうなるか知ってるよな？』と嘲笑いながら問いかけてくる。首にメモリを突きつけられたアキコは恐怖からか一筋涙を流していて)

っ、翔太郎！ アキちゃん！…ッ、よくよく知ってるよ。…アキちゃんにメモリを刺したら僕もこの銃で自殺する。新しいメモリが作れなくなるのは君たちも困るだろう？
(こちらが周りの警備を引き付け倒していく横を相手が走り抜けていく。視界の端で拘束を引き裂くのが見えると聞き馴染みのある所長が聞こえてきて安堵する。あとはここから無事に抜け出すだけ、と二人に視線を向けた途端奥に居た司令官がメモリを自らに突き刺しながら相手の横に現れたかと思えば目にも留まらぬ速度で移動し直後相手が吹き飛ばされた。痛々しい音と共に地面に転がるのを見れば相手の名前を叫ぶがそれだけで終わらず所長を捕らえるとその首に見慣れたメモリを突き付ける。この状況を嘲笑うようにされる問いに苦々しく奥歯を噛み締め奴を睨む。マ.ス.カ.レ.イ.ド.・.ド.ー.パ.,ン.ト.に一度なってしまえばその末路は一つしかない。いつも明るく事務所を照らしてくれる所長が恐怖に怯え涙を流しているのに気付けば怒りと憎悪が湧き上がってファングを使った時のように今すぐにも殺してしまいたい衝動を押し殺すのがやっとだ。所長をド.ー.パ.ン.トにする訳にはいかない。だからといって奴に屈してメモリやドライバーを渡してしまってはこれからの風.都を守る力を失う。転がった相手は相当強く身体を打ったのが直ぐに動けそうには見えない。今は相手の回復と作戦を練るためにも時間が必要だ。ならば自分の身体の価値に賭けようと自らのこめかみに銃を突き付ける。男が指揮官ならば自分のこともその重要性も理解しているはずだ。自分ないし地.球.の.本.棚を人質にすると「何を差し出せば彼女を解放してくれるんだい？」と交渉持ち掛け)

、アキコ……フィリップ…………そんなに欲しいなら、くれてやるよ
(耳鳴りは続き船酔いのような吐き気が収まらない、どうやらあのガ.イ.ア.ウ.ィ.ス.パ.ー.と同じく音波による攻撃を受けたようだ。上体をもたげてなんとか怪物とアキコの方を見る、そこには涙を流しながらメモリを突きつけられる所長の姿があって怒りで吐き気も何もかもが吹き飛んだ。口煩くてスリッパを振り回す凶暴な面があっても所長は事務所になくてはならない存在だ、おやっさんの魂を継いだ人間の一人だ、自分達の家族だ、絶対にここで失わせやしない。だが気合いで奮い立ってもまだ体は自由に動かない。怪物が躊躇したのをみれば相手の方へ視線を向ける、そこには自らの頭に銃を突きつける姿があった。相手が本気で自らの頭を撃ち抜く事はないだろうが指揮官と相手とが拮抗状態になったのならここで場を動かせるのは自分だけだろう。稼いでくれた時間を使いなんとか耳鳴りは収まってまだ気持ち悪さはあるものの周囲の音も聞こえるようになってきた。相手に交渉を持ちかけられた怪物は『要求は同じだ、ドライバーとメモリを寄越せ！』と苛立ちの声をあげる。どうやらこちらの戦闘手段を奪うことに必死らしい、喉から手が出るほどドライバーが欲しいといったところか。それならばと次の行動を決める。ふらりと立ち上がると敵が何よりも欲しているドライバーと切札のメモリを取り出した。敵は興奮状態で目の前に取り出された餌に夢中で目が釘付けになっている、ならば次はこれを囮にするしかない。ドライバーにメモリを挿入すると「受け取りな！」とメモリごとドライバーを宙へ高々と投げあげた。すると怪物の目線は上へと向く、その瞬間に再び走り出して手の中にあるス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を握り直す。その勢いのままホーンを怪物の手ごとメモリへと突き刺した。耳障りな悲鳴があがり怪物が仰け反る、同時にアキコを庇うように体を動かすが一緒に倒れ込むのとそれほど変わらない動きとなった。宙に浮いたドライバーをもう取りには行けない、あれが敵の手に渡ればそれで終わりだ。そうなれば頼りになるのは相棒だけ、「フィリップ頼む！」と半ば祈りのような叫び声をあげ後を相手へと託して)

任せ、ろっ！ アキちゃん、入口にリ.ボ,ル.キ.ャ.リ.ーを呼んである。もう仲間はいないはずだから動けるようになったらそこに避難して欲しい。 翔太郎、奴に罪を数えさせる為に半分力貸してくれるかい？
(予想外の行動を取れば怪物の動きは止まる。その視線はこちらだけに注がれていて周囲への警戒は疎かだ。相手ならば何とか立ち上がり突破口を作り抜けてくれるはずだと注意を逸らすように分かりきった交渉内容を問えば苛立ったように声を荒らげる。どうやら相当自分達の変身能力にご執心らしい。ふらりと相手が立ち上がりドライバーを取りだしたのを見れば怪物に視線をそちらに移すように促して注目が逸れた所で後ろに回した手でス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを操作する。相手がメモリを装填したドライバーを宙に放り投げると怪物の目線もそれを追いかける。その隙に相手が走り出して手の中のメモリをホーンで突き刺すと粉々に砕け散り怪物が痛みに仰け反る。そのまま所長と共に倒れ込めば今度こそ引き離すことに成功した。怪物は人質が居なくなったことに苛立ちの唸りをあげるが視線は宙のドライバーに再び向かう。所長を救えてもドライバーが奪われては意味が無い。相棒の祈るような叫びに背中を押され全速力で走って全力で踏み込んだ。怪物も同じく腕を伸ばして奪い取ろうとするが間一髪先にドライバーを掴むと受け身を取って着地する。怪物はこちらに向かって襲いかかってくるが咆哮と共にファングが現れ鋭い牙で応戦してくれる。ライブモードにしたス.タ.ッ.グ.フォ.ンも加勢させると二人が倒れた場所に向かい様子を窺いながら所長には入口に安全な逃げ場所を用意したことを告げる。当初の目的としてはこのまま三人で逃げれば済む話だが大切な仲間であり家族をこんな事に巻き込んだ落とし前を付けてもらわなければ腹の虫が収まりそうにない。その腰に切札のメモリが刺さったままのドライバーを装着させると相手の意志を確認して)

よし！……あぁ、俺達の大事な所長様を泣かせた罪は重いからな。半分力貸すぜ、相棒___変身っ！
(アキコを庇うように倒れ込みながら宙に舞ったドライバーの行方を追う、相手ならば必ずあれを掴んでくれると信じてその時を待った。走り出した相手は怪物と僅差で勝ってドライバーを手にし思わず感情の乗った声を出す。耳鳴りもだいぶ落ち着いてまともに動けるようになってきた、相手がこちらへと向かう間にアキコの手を引いて立たせてやる。アキコは感極まりすぎたのか涙をべしょべしょに流しながら『じょーだろーぐぅん！ふぃり゛っぶぐぅん！』とまた二人の名前を呼んでいて締まらない顔に思わず笑ってしまった。相手がこちらへとやってきてようやく三人が揃うと相手に促されアキコはその場を駆け足で離れていきそれを守るよう二人で立った。すると相手から腰にドライバーをつけられる、相手と同じく当然このままでは引き下がれない。アキコが流した涙の分、きっちり罪を数えて貰わなければ。ハードボイルド探偵としてはなるべくクールに装うべきだがどうにも発する言葉には怒りが滲み勢いがついてしまう。切札のメモリを改めて手にして起動させるとドライバーに装填し相手の意識ごと疾風のメモリが転送されればドライバーを起動して装甲を纏う。こいつには例の言葉を投げかけなければ気が済まない、いつもよりも力の籠った動作で左手を突きつけながら「さ.ぁ.、.お.前.の.罪.を.数.え.ろ.！」と相手と共に口にして)

さ.ぁ.、.お.前.の.罪.を.数.え.ろ.！ …、あのメモリは移動速度こそ早いが細かな調整は苦手らしい。ならば広域に仕掛ければ勝機はあるはずだ。
（二人の元に寄れば所長は感極まったように泣いているが同じ涙でも先ほどとは違う彼女らしい表情に小さく笑みが零れた。ようやく取り戻せた実感に安堵するもこれだけでは終われない。相手もそのつもりだったようで所長が逃げると二人で彼らの行方を遮るように並び立って言葉を交わす。疾風のメモリを構えドライバーに装填すれば意識ごと相手の元に転送して二人で一人の姿に変身を果たす。怪物を見据え、左手を突き付け相手と声を合わせてお決まりのセリフを投げかける。人質にも逃げられドライバーとメモリを奪うことも叶わなければ怪物は怒り心頭で目にも留まらぬ速度でこちらに突っ込んでくる。一度目はそのスピードについていけずギリギリで弾くのがやっとだったが二度目は早めに横に躱すと怪物は軌道修正できずに真横を通り過ぎていく。今までの行動の様子からメモリの特性を考察すると相手の方のメモリをト.リ.ガーに変えマグナムを手に持つ。再び仕掛けて来ようとする奴に移動しながら風を纏った弾丸を広範囲に打ち込めばあらゆる所から風が吹きその軌道を乱す。怪物の身体がふらついた所に更に連射すれば風圧で吹き飛んでいき、床を転がった。切り札にメモリを戻すと「一気に決めようか、翔太郎」と左側の意識に声を掛けて）

お前の読み通りだな。…あぁ。俺達の渾身の一撃、食らいやがれ！
(二人で一人の姿へと変身を果たし息を合わせいつものセリフを決める。アキコを逃がし相棒と並び立てばもう負ける気はしない。敵は怒りのまま高速移動による攻撃を仕掛けてきて一撃目は弾くだけだったが二撃目は躱してみせる。その二撃だけで相手は敵を分析しメモリが変えられた。短時間で導かれた解は効果抜群で軌道の妨害のあと風で吹き飛ばしてやれば敵は体勢を崩す、アドレナリン全開の体で仮面の下で頼りになる相棒へ口角を上げいた。勝機が見え再びメモリが切札へ戻ると右側からトドメの一撃を呼びかけられる、短く返事をすると怒りと高揚の乗った声で未だ地面に転がる敵を睨みつつドライバーから切札のメモリを取り出した。直ぐさま腰にあるスロットへ差し込めばいつもより力強くそこを叩いてマ.キ.シ.マ.ム.ド.ラ.イ.ブ.を発動させる。周囲に疾風が巻き起こり体を宙へと浮かんでいく、その風にさえ二人の感情が乗ったのかいつもより激しく周囲を渦巻いている気がした。敵へと狙いを定め「ジ,ョ.ー.カ.ー.エ.ク.ス.ト.リ.ー.ム.！」の声と共に半身に別れた体で二連撃の蹴りを叩き込んで)

…、僕達が目障りなら直接手を出しに来れば良い。二度とアキちゃんには手を出すな
（勝機を前に相手に声を掛ければいつもより感情の乗った返事がされる。どちらか片方が感情的になっていれば普段はもう片方がバランスを取るために冷静になることが多いが今は大事な所長を巻き込まれ同じだけ怒りに燃えている。マ.キ.シ.マ.ム.ド.ラ.イ.ブ.が発動して疾風によって高く浮かび上がるがその風も感情を反映させるように激しく渦巻いている。声を合わせ二連撃の蹴りを叩き込めば怪物は大きく仰け反り呻き声をあげながら爆発を起こす。メモリが排出され砕け散るのだけでは気持ちは収まらず直接それを踏みつぶして粉々にしながら言葉を向ける。組織に敵対する以上自分達の存在を気に入らない者達がこうして潰しにかかってくるのは想定の範囲内で理解も出来る。だが自分達に繋がりがあるというだけで力のない所長を初めとする仲間たちに手を出すのは許せない。低く怒りを込めた言葉を吐き出し男が気力の限界で気絶したのを見届けるとドライバーに手を掛け変身を解く。自らの身体を起こしてジャケットやインカムなどの装備をその場に脱ぎ捨てると「あとは警察に任せてアキちゃんと一緒に帰ろうか」と声を掛けて）

……あぁ、あいつの泣き顔を存分に笑ってやらねぇとな
(トドメが決まればメモリが排出され砕け散る、脅しをかけるように敵の目の前で更にそれを踏み潰した。手荒な行為だが今後二度とこんなことが起こらないように、アキコに限らず自分達と繋がる人々に危害が及ばないように必要な事だ。意識を共有しているおかげで自分が言いたい事は相手が言ってくれる、本来ならば宥めなければならない場面だろうがこれくらい言ってやらなければ気が済まなかった。変身が解除されると努めて大きく深呼吸して気持ちを落ち着ける。アキコはまだ恐怖やパニックから抜け切っていないだろう、そんな状態でこちらもヒートアップして会いにいけばしっちゃかめっちゃかになるのは目に見えている。こちらへ声を掛ける相手に目を向ける、三人とも無事にこの局面を切り抜けられたことへの安堵と達成感が小さな笑みとなって顔に滲んで冗談混じりの返事を返していた。バ.ッ.ト,シ.ョ.ッ.ト.をライブモードにすると三階に置いてきたハットとパーカーの回収を頼み相手と連れ立ち敵の拠点を去る。建物を出ればリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ー.の前に逃げていたアキコの姿が見える、こちらに気がついたのをみれば軽く手を上げて無事を知らせた。途端にアキコの顔はまた泣きそうに涙目になってそのまま駆け寄ってくると二人まとめて抱きしめられてしまい)

アキちゃんの目が赤くなると共に君の顔も赤く腫れそうだ＿＿ わ、…メ.モ.リ.ブ.レ,イ.クしたしもう大丈夫だよ。…アキちゃんが無事で良かった。
(変身を解いて視線を向けると相手と目が合う。メモリを破壊するという一区切りはついたもののまだ感情は昂ったままで落ち着かない。それでも相手が傍に居てくれると緊張の糸は解けて緩やかに熱が冷めていく。相手が小さな笑みを浮かべながら所長の泣き顔について触れるとその後に起こる出来事が容易に想像出来てこちらも口元を軽く緩ませ言葉を返した。来た道を戻り1階の入口から外に出ると所長の姿が見えた。こちらの存在に気付いた途端涙目になって駆け寄ってきて勢い良く二人まとめて抱きしめられると突然のことに思わず声をあげる。二人を抱き締める所長の腕は震えていて捕らえられている間相当怖かったのが伝わってくる。こちらからも所長と、共に成し遂げた相手の背中に腕を回して抱きしめると安心させる言葉を掛ける。涙目だった所長は二人の無事を確認するといよいよグズグズと泣き始めてしまって二人の名前とありがとうしか言えてない。窮地を乗り越えいつも通りの三人の空気になると怒りの中に隠れていた不安や無事に取り戻せた安堵が表に出てきてぎゅっと二人を抱きしめると噛み締めるように呟いて)

おっと……泣きすぎだろ。明日、目腫れちまうぞ。……あぁ、三人共無事だ
(二人して湧き上がる怒りをゆっくり沈め廃墟ビルの出入口へと向かう、こちらを見たアキコが駆け寄ってきてそれを抱き留めるとまたグズグズと泣き始めてしまった。こちらを抱き締めるアキコの腕が震えているのをみれば相手の腕が二人の背中へと回る、こちらもアキコの背中と相手の腰とに腕を回してアキコの背中を軽く撫でた。だが相手が安心させるような事を言ってもアキコが泣き止む様子はなくて思わず笑いながら揶揄う言葉を口にしてしまった。案の定アキコは泣きながら怒り始めて『翔太郎くんの意地悪！！』とバシバシ肩を叩かれる。いつも通り容赦ないがこれも今こうやって三人が揃っているからこそだ。そうやっていつもの空気を取り戻していると相手の腕に力が籠って心底安堵したような声で呟く。危ない橋を渡ったのも命懸けの賭けをしたのも自覚はある、一歩間違えばこうやって三人で抱き合う事もなかっただろう。改めてその事実を噛み締めるように口にすれば自然とこちらの両腕にも力が籠って大切な存在をこの腕いっぱいに抱き寄せていた。暫く泣き続けたアキコだったがようやく落ち着きを見せ始めている、ふわりと腕の力を緩めると「俺達の事務所に帰るか」と二人の顔を交互に見て声をかけて)

そうだね、今日はアキちゃんのコーヒーが飲みたい気分だ。
(こちらが腕を回すと相手の腕も腰に回されて三人で抱き合うような体勢となる。泣き止む気配のない所長に相手か揶揄う言葉を向ければいつものように声を上げて肩を容赦なく叩く姿に思わず笑い声が零れる。始まりの夜を共にした相手と同じく騒がしく事務所の権利を主張しに来たあの日から所長も事務所に欠かせない大切な存在だ。力いっぱい抱き寄せられてその温もりを強く感じると日常を取り戻せた実感が湧いて漸く真に安堵することが出来たような気がする。所長も落ち着きを見せ少し赤くなった目と視線が重なる。そのタイミングで相手が帰宅を促すと緩く微笑んでその意見に賛成を示す。今は早くいつもの自分達の場所に戻りたい。ゆっくりと腕の力を抜いて離すと所長の方を向いてコーヒーのリクエストをした。『とびっきり美味しいコーヒーいれてあげるから！』と意気込む所長を微笑ましく見つつ裏に停めたハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダ.ーを格納してからリ.ボ.ル.キ.ャ.リーにの三人で乗り込む。かなり狭くはあるがそれも今は悪くない気分で時折騒がしくしながらも事務所へ帰宅を果たして)

お、いいな。なら高級デパートの茶菓子も頼むぜ、いッて！！
(腕を解いて互いの顔をみればようやくアキコの顔にも笑顔が灯る。おやっさんが繋いだ縁は最初こそ不恰好だったが今や一人が欠けるのも想像できない。それを弱みだという輩もいるがそれに何度だってノーを突きつけてこの縁を守りたい。『いつもの顔ぶれ』は決してなくしたくないものになっていた。事務所に帰る事となりリ.ボ.ル.ギ,ャ.リ.ー.へと向かうと相手からアキコへコーヒーのリクエストがなされる。それをいつもの調子で答える姿を見ていつも以上に安らぎを感じながらこちらから揶揄い口調で無茶な追加リクエストを要求する。だがそこは関西の血が流れた人間でどこから取り出したのやらアキコはスリッパを取り出しこちらの額を引っぱたいた。いつもの如く快音が鳴り響いた後「おいアキコ！」と抗議の言葉をあげているうちに三人を乗せたリ.ボ.ル.ギ,ャ.リ.ー.はエンジンをふかして走り出して)

(/お世話になっております！そろそろ区切りかと思いましてお声がけさせていただきました。
とにかくやりたいことを詰め込みましたがひとつ問題が出る度に二人で協力してかっこよく突破していく感じがまさに相棒という感じでとてもとても楽しかったです。敵に対してブチ切れる検索くんもいつもとは違った冷徹さがあって痺れました。今回もありがとうございます！
この後の展開ですがいかがしましょうか？もう少しライトめな事件のお話や季節にあわせて正月周りの日常なお話なんかでも良いかと思うのですが検索様はいかがでしょう？)

(/区切りが良さそうでしたので一旦こちらだけで失礼します！
緊張感のある侵入の中策を講じたり身体能力を活用したりと二人ならではのコンビネーションで突破する様子が出来てとても満足のいくお話でした。背後の打ち合わせなしに会話と描写だけで進めていく感じが以前からとても好きで今回も好きに検索を動かせて、また怒りを覚えながらも頭の回るかっこいい探偵君が見られてとても楽しかったです。今回もありがとうございました！
ライトめな事件・話ならばあがり症の新人メイドの練習相手になって欲しいという依頼でメイド喫茶で接客をしてもらう話やネイルに興味を持った検索をきっかけにお互いにマニキュアをぬる話、お正月辺りならば初詣やおせち・お雑煮を食べる話などが浮かぶのですが探偵様の興味のある話ややってみたい話はございますでしょうか？)

それでお嬢さん、あなたの依頼ってのは？
(三人で無事に事務所へと帰り暖かくて香り高い所長が入れてくれたコーヒーをテーブルを囲んで飲んだあの日から一週間ほど、落ち着たアキコに捕まっている間の事を聞いたり警察からの事情聴取に応じたりとしばらく騒動は後を引いたが今はようやくいつも通りの日常を取り戻して穏やかな時間が流れていた。そんな中にやってきた依頼人は大変無口で扉を叩いた後声をかけても事務所内に入ってこず、こちらが扉をあけて何とか招きいれても頷きはしても言葉を発する事はなかった。彼女を依頼人用のソファに座らせるも氷のように固まって動く気配がない、何かしら特殊な事情があるのだろうか。依頼人が話しやすい場を作るのも大事だろう、依頼人が女性一人というのもありいつもより気合いが入り軽く咳払いをするとハードボイルド探偵らしく気取った声で話しかけながらくるりと手を回す。しかし彼女は一向に話し始める気配がなく俯いたままだ、キメ顔のまま待っていたのだが動く気配がない彼女の顔を思わずのぞき込む。すると彼女はふいと顔を背けてしまって地味に傷ついたのだが、その後カタカタと震え出すと『わ、わ、わ、わ、わ、わ、私、！あの、…あの、あの、あの！』とバグった機械のような声を出し始めこちらも焦ってしまうと「ちょ、落ち着いて！」と声をあげ)


(/たくさん候補あげていただきありがとうございます！最近は甘い話、シリアスな話ときたのでギャグ路線に行ければと思っておりまして、ぜひあがり症なメイドのお話をさせていただければと！練習時点で二人が見本見せてわちゃわちゃできたりと楽しそうです。ネイルのお話もぜひいつかやらせていただければ…！ひとまず初回出しておきましたので不具合のあるとこは変えていただきつついい感じに乗っていただければ幸いです！/こちら蹴り可です)

君が妙にかっこつけるから彼女も言い出しにくいのだろう。
（無事に事務所に戻り事情聴取など色々ありながらも普段通りの日常が返ってきた頃、ドアのノック音が響いた。構わず隅の椅子に座って本を読んでいたがなかなか入ってこないで相手が招いてもぎこちない動きでソファーに座ったきり動かなくなってしまっている。ハードボイルドを意識してか芝居がかった言い方をする相手を他所に簡易キッチンに向かうと小鍋に牛乳を温め、濃いめのコーヒーを淹れる。二つのカップに牛乳とコーヒーを入れてカフェオレを作ると相手の気取った言動を指摘しながら近づいて二人の前にカップを置く。ブンブンと首を振る彼女にカフェオレを勧めると迷った様子を見せるも恐る恐るといったように口をつける。暖かい物を飲んで少しは気持ちが落ち着いたのか『あ、あ、あの、私ここで働いていて…』と鞄から名刺を取り出してこちらに差し出される。受け取った名刺には『ことの』と名前が書いてあり、周りも随分と可愛らしいデザインがされている。加えて所属を表す部分に見たことのない単語が表記されていれば『メイド喫茶 えんじぇる…君の知っている場所かい？』と店名を読み上げながら相手に尋ねて）

別にかっこつけてねぇだろ！……あぁ商店街に近いとこにあるメイド喫茶だろ？あそこで働いてんのか
(完全にテンパっている依頼人を何とか宥めていると相手がミルクがたっぷり入ったカフェオレを持ってきてくれる。ナイスタイミングだが一言余計だ、文句を言いながらも依頼人が落ち着く間こちらも出されたカフェオレを飲み一旦場をリセットする。気持ちがほぐれたのか彼女は名刺を差し出してきてそれを受け取れば意外な内容に目を瞬かせた。可愛らしく彩られた名刺を眺めていれば相手から質問が入る、この街を庭と自称しているが当然このメイド喫茶もチェック済みだ。メイド喫茶としては規模が大きく入店したことはないがいつしかウ.ォ.ッ.チ.ャ.マ,ン.が『あそこは内装完璧で女の子のメイド服も可愛い』なんて息巻いていたはずだ。だがそこまで説明して相手はメイド喫茶自体を知らない事を思い出せば「メイド喫茶ってのは女の子が客のメイドみたいに接してくれるカフェなんだ。彼女はそこで働くメイドさんなんだよ。可愛い服着て料理運んでくれたり一緒に写真撮ったり、客と接することが多いんだが……」とメイド喫茶について説明する。その間に客との距離が密であるこの職業と彼女の姿が全く結びつかずに思わず依頼人の方を見る。視線に気づいた依頼人は『そう…なんです……だから困ってて…ここに…』と小さな声でもじもじしていて)

メイドさん…話を聞いてる限りでは愛想が必要な接客業のようだけど、それが出来るようになりたいというのが依頼かい？
(店の名前を見れば相手はすぐに場所が分かったようで反応を示す。メイド喫茶について説明を受けるとメイドについて詳細なことは分からずとも可愛らしい格好の女の子に接客することを売りにした飲食店なのだと大まかな想像がつく。そういった店は大抵自信満々に振舞ったりアイドルのように愛想を振り撒いたりするもののはずだが目の前の彼女はそういうタイプに見えない。二人の視線を受けた彼女が小声で呟くのを聞けば何となく依頼内容が見えてきた。試しにその内容を整理して問いかけてみると彼女はコクコクと頷いて『他の人には頼めなくて…、ちゃ、ちゃんとした、メイドさんになるための、その…練習相手になってください！』と必死に言葉を紡ぐ。不慣れだと分かりながらどうにか改善しようと事務所を頼ってくれた姿を見れば街の探偵として何とか力になりたいと思えて「僕はそのメイドさんというものに興味もあるし力になりたいけど…、翔太郎はどうだい？」と分かりきった問いを投げかけ)