相乗りで何処までも 【 〆 】

ちゃんとサンタにお願いが届いて良かったな。なら……これは俺からのクリスマスプレゼントだ
(相手が丁寧に梱包を解いていくのを眺める、知らぬ間に口元が緩んでいるのには気が付かないままだ。箱がゆっくりと開けられて中身を確認した相手にはとびきりの笑顔が浮かんだ、表情からもその声からも存分に喜んでいるのが伝わってきて胸がいっぱいになっていく。サンタの代わりに働いたかいがあったというものだ。大事そうにキーケースを握りしめる相手に心底サンタの話をして良かったと思いを馳せる。十分にクリスマスの醍醐味を味わって貰えただろうがキーケースはこれではまだ完成していない。不意にベッドから降りると昨晩と同じくクローゼットへと近づきもうひとつのプレゼントを取り出す。といっても梱包も何も無い小さな箱だ。ベッドへ戻ってくると相手の隣に座ってフタを開ける、中身は二本の鍵、事務所とこの家の鍵だ。「キーケースにはつける鍵がなきゃ意味ねぇからな」と箱を相手へ差し出して)

ああ、待ち望んでいた甲斐があった。君の？ …！ これで完成かな。
(サンタの存在を知ってから数日間ずっと楽しみにしていたがいざ手元にやってくると口元は緩むばかりだ。相手の言葉に素直に頷くとキーケースに再び視線を向けた。サンタからのプレゼントは受け取ってこれで終わりかと思ったら相手がベットから降りてクローゼットへと向かう。不思議そうにしながら相手を目で追っているとクローゼットから持ってきたのは小さな箱だ。隣に並んだ相手が蓋を開くとそこには二本の鍵があって思わず目を見開く。どうやらあの時の約束を覚えていてくれて準備してくれたらしい。表情を華やかせながらも早速その鍵を手に取るとキーケースに取り付ける。2本目としてこの家の鍵を取り付けて改めてキーケースを持つと鍵が揺れて金属音が鳴る。世界で一つだけのキーケースが出来上がるとますます笑みが深まって完成を呟いてきらきらと輝く目で貰った鍵を見つめていた。相手に顔を向けると「ありがとう、翔太郎。世界で一つだけの宝物だ」と幸せそうな声と笑みで感謝を伝えて)

これで正真正銘お前のキーケースだ、大切にしろよ
(自分からのプレゼントとして二本の鍵を差し出すと相手の顔はさらに華やいだ。朝目覚めた時からずっと相手の喜び溢れる顔を見続けこちらの胸も満たされるばかりで、キーケースに鍵が取り付けられていくのを隣で見守る。紫のキーケースに事務所と家の鍵が取り付けられれば相手のものとしてキーケースが完成する、鍵が揺れて金属音が鳴ると誇らしくそれらが輝いているようにも見えた。幸せそうな笑みで礼を告げられると呼応するように幸せが溢れてくる、恋人が自分の用意したもので喜んでくれる姿は何度みても良い。溢れる気持ちのまま相手の腰へと腕を回して軽く引き寄せると改めて相手の手の中にあるキーケースを眺め「お前のために用意した甲斐があった」と呟くように言い)

ちゃんと肌身離さず持つよ。…流石僕の好みを知り尽くしたチョイスだ。…翔太郎、僕も渡したい物があるんだ。
(完成したキーケースを相手に見せると自分のことのようにその顔に笑みが浮かぶ。手ぶらでこの部屋に転がり込む事が出来るほど私物は少なかったのに、これで常に持ち歩く自分のモノが一つ増えた。腰に腕が回り軽く抱き寄せられると相手は手元のキーケースを眺め何処か感慨深く呟いた。その言い方がまるで自分が全て用意したといった口調で引っ掛かりを覚える。思えばリクエストとして色は指定していなかったのに相手の色である紫色のキーケースが届いたというのも不思議な話だ。そこから昨夜の妙な相手の様子と繋がれば一つの仮説が浮かんだ。だが嬉しそうな相手の横顔を見れば無闇矢鱈に追及するというのも違う気がしてキーケースを軽く握りしめながら少し遠回しに褒める感想を口にする。そうやって幸せを噛み締めていたが自分が昨日準備した物の存在を思い出すとその話を切り出す。待っててくれ、と相手に伝えてからベットを降りると台所に向かう。台所の戸棚に隠していたハットボックスを取り出すと相手の元に戻ってきた。昨日所長と買い出しに出掛けた時にウ.ィ.ン.ド.ス.ケ.ー.ルに寄るようにお願いして購入した新作のハットだ。検索した際サンタがプレゼントを贈る対象が子供であると知りあの時の相手の微妙な反応の理由に納得した訳だが、ならば自分がサンタの代わりにプレゼントを送ろうと思ったのがコレだ。仮説のことを考えれば結果的に良かったかもしれない。相手の隣に座り直すと「どうやらサンタは大人の元には来ないようだから代わりに僕が良い子の君にプレゼントだ」と箱を差し出して)

ん？…ま、まぁサンタには何でもお見通し……俺に？
(またひとつこちらが贈ったものを相手は持つことになる、しかもそれは自分の色で『見る度に欲しくなる』という言葉を思い出せばちょっとした独占欲も満たされるというものだ。相手の手に渡ったキーケースを眺めていると相手の言葉に引っ掛かりを覚えて思わず向こうを見た。深く考えすぎかもしれないし確信を突くことは言っていない、しかし何処か見透かされたような言葉に慌てて取ってつけたようにサンタの話を切り出していた。だがそれを言い終える前に相手から渡したいものがあると切り出されると目を瞬かせる。そのまま相手はベッドを降りてどこかへ行ってしまい暫く物音がしたあと帰ってきたその手の中にはハットボックスがあってもう一度驚く事となった。隣に座り直した相手がボックスを差し出す、箱を見て次に相手を見ると最初こそ状況が飲めず呆気に取られた顔をしていたが、その理由を聞けば少しづつその顔は照れ笑いに変わっていった。照れを誤魔化すために首後ろに手をやると「良い子って……でも、ありがとな」と礼を伝えつつボックスを受け取る。クリスマス仕様に施されたリボンを解いて梱包を丁寧に外していくと最後にゆっくりと蓋を開ける。中にはあのイルミネーションの日に欲しいものとして答えた新作のハットがあって一気に胸が華やぐと笑みを浮かべ箱の中に入ったハットを丁寧な手つきで取り出して)

条件としては同じだろう？ 僕からプレゼントを贈るという機会もなかなか無かったし、ハットなら何時でも君と居られるからね
(ハットボックスを持って相手の元に戻ってくると分かりやすく驚いた反応を見せていた。まさか自分がプレゼントを貰うとは思ってなかったのだろう。経緯を説明すれば段々と相手の顔が照れ笑いへと変わっていってしてやったりと得意げな表情を見せる。先程自分は受け取る立場だったが隣で自分が送った梱包を開けるのを見るのも妙にどきどきして落ち着かない様子で見守っていた。蓋が開くと中身のハットが見えて相手の表情が嬉しそうに笑うのが分かる。環境や行動範囲などから相手から色んな物を貰ったり二人で一緒にお揃いのものを購入したりしたことはあれど、自分から相手に物を贈るという機会は滅多にない。自分だって貰うだけでなく相手に何かを与えたい、それに相手が欲しがっていたという要素も大きいが相棒にとって特別な意味合いを持つハットをクリスマスの日に贈りたかった。探偵として身につけるものなら自分の代わりにずっと傍に居られるとちょっぴり独占欲の滲んだ説明を話す。そして取り出したハットを一旦預かるといつも相手が被るように頭に乗せてやる。今回新作にはリボンの部分に地球を模したようなバッチがひっそり付いているのが特徴でそのデザインは日頃首にしているネックレスによく似ている。お揃いの要素を含んだハットを身につけていることに満足げに笑うと「よく似合ってるよ」と感想伝えて)

ったく、いつの間に用意したんだよ。……これからはコイツだけ贔屓して被っちまいそうだな…
(ボックスから取り出したハットを愛おしげに眺める。相手は組織がらみもあって一人で外出しないようにしていて外出時はその殆どは自分と出かけている。となると昨日アキコと買い出しに出かけた時に用意してくれたのだろうか、呆れたような口調で言うも口元は緩みっぱなしで説得力はない。ハットに掛かるリボン部分にはウ.ィ.ン.ド.ス.ケ.ー.ルのロゴであり相手の胸元に光るネックレスと同じバッチがついていて相手とお揃いのデザインになっていればより笑みは深まる、新作デザインはいくつかあったはずだがその中でもお揃いのこれを選んでくれたのだろう。相手の言うように今まではお揃いのものを同時に購入することが多くて相手からのプレゼントというものはまだ数が少ない、そのプレゼントが探偵の魂の象徴で、更にそこへ相手からの贈り物という意味が加わればこのハットは何よりも大事なものになりそうだ。相手がハットを手に取りこちらの頭へとそれを乗せる、寝巻きにハットとはなんとも締まらない格好だが相手に頭に乗せられることでこのハットは真に自分のものになったような気がした。相手への愛おしさと溢れて止まない幸福で胸は満たされて照れまじりに小さく笑いを漏らしたあと相手の方へ体を近づけるとその勢いのまま抱きしめて「ありがとな、フィリップ」と改めて礼を伝え)

君のお気に入りになるのなら贈った甲斐があるって物だね。…どういたしまして、最高のクリスマスを君と過ごせて幸せだ。
(呆れたような口調とは裏腹にその口元は緩く、喜んでくれているのが伝わってくる。自分のネックレスに近い地球を模したバッチに気付いたのか更にその笑みが深まるのに気付くと嬉しさと若干の照れ臭さが混ざったものを感じながらその様子を見守っていた。今まで相手のハットの選択には規則性は見られず順番だったり一番近くにあるものだったり様々だった。その中で自分の贈った物が贔屓されるような特別な一つとなるならこれ程嬉しいことは無い。相手の頭にハットを載せてやると見慣れた探偵の完成で年明けからもこの姿が見えると思うと胸は満たされていく。相手が近付いたかと思えばその腕の中に閉じ込められて、こちらからも相手の背中に腕を回す。暖かな温もりを感じると口元は緩んで御礼への感謝とここ数日のクリスマスの感想を柔らかな声で伝えて)

すぐ使い古しちまわねぇようにきっちり手入れしねぇと。……俺も、お前のお陰でいいクリスマスになった。来年も一緒に過ごそうな
(これから出かける際には何かにつけこのハットを選んでしまいそうだ。どのハットもおやっさんから受け継いだものとして大切に扱っているのだがこれはまた特別使用回数が多くなりそうで、その分長く使えるように面倒を見た方が良いだろう。相手からのプレゼントなら尚更長く愛用して常に相手の存在を感じていたい。相手からも背中へ腕が回され二人で寄り添い体温を共有する、その温もりに包まれながら柔らかな声でクリスマスの感想が伝えられると体温以上に暖かなものに包まれて回した腕の力に自然と力が籠る。クリスマスパーティーは毎年恒例ではあるがその他のクリスマスらしいことに力を入れたのはこれが初めてで、これだけ相手の幸せそうな顔が見れたのなら準備したかいがあったというものだ。来年もまた相手と共にこの幸せな時間を過ごすことを誓う、その時までにはいい加減相手にサンタの正体を明かさなければならない。もうとっくに正体がバレていることは気が付かないまま「次のクリスマスで良い子でいろよ」と冗談まじりに言って)

ああ、来年もその次の年も君と一緒にクリスマスを過ごしたい。…どうしようかな、どうやら僕のサンタさんはとびっきり甘そうだから悪い子でもプレゼントくれそうだ。
(着用頻度が増えればそれだけ外出した相手が身につける時間が増える。使用による劣化は仕方ないが大切にするという意識があればハットを破損させるような無茶は多少控えてくれるかもしれない。そんなお守りという意味でも贈ったこのハットを身につける姿がこれから見れると思えば小さく笑い声が零れた。相手の体温を感じながら思ったままのクリスマスの感想を告げると相手の腕に力が篭った。今まで興味もなく他人事のように過ぎていくだけの一日がパーティと相手のおかげで特別な日となった。そしてきっと来年のこの日も同じように過ごすのだとなんの確信もないが信じられる。また一つ大切な予定でスケジュールが埋まると胸は暖かい物で包まれて同意の返事を返す。そんな中サンタにプレゼントを貰う条件について言及されるとこちらには惚けたように返す。一旦顔を上げて相手を見つめると頬に軽く手を添えて悪戯を企むような楽しそうな笑みを見せて)

(/いつもお世話になっております！一区切りついた頃かなと思いましたので次の予定などを相談出来たらと思いお声がけさせていただきました。イルミネーションに続きパーティとサンタさんからのプレゼントを待ち望むやり取りが出来てとても楽しかったです。何とかサンタ代行をやり遂げようと頑張る探偵君が健気でいつも以上に生意気で無邪気な検索を動かしてプレゼントを楽しみにさせて頂きました。今回もありがとうございました！
次の話ですがいかがでしょうか？最近平和な日常回が多かったので前に幾つかあげたものやシリアス系の話でも良いですし、季節ネタで初詣や正月らしいことをするのもアリかなと思いますが探偵様のご意見もお聞かせください！)

なら今まで以上にクリスマスが毎年楽しみになりそうだな………な、お前、いつの間に？！寝る時まではサンタ信じてただろ！
(これまでも顔見知りと一緒に過ごす日としてクリスマスは特別な日ではあったが、相手のおかげでその意味がまた加わってさらに待ち望む日になりそうだ。これからのクリスマスは所長を含めみんなで準備をしてパーティーを楽しんで二人の家で過ごすことになるだろう、その先々までの約束がなされると当然だとまた誓うように相手を抱き寄せていた。サンタの話題をだせば当然相手はまた食いついてくるだろうと思ったのに惚けた返事が返ってきて顔をあげる気配を感じるとこちらも顔をあげ相手と目を合わせる。不思議そうな顔を相手へ向けていれば頬へ手を添えられる、続いた楽しそうな言葉にようやく真意を理解すれば目を見開き焦った声を出していて)

(/こちらこそお世話になっております！前のお話に続いて2人きりの時間を存分に楽しむ事ができました。検索くんの押さえ切れないワクワクした様子が大変可愛らしく、また意図せずに探偵の試練が増えていく過程は面白く返事をしつつどうやって切り抜けようかと背後共々頭を捻っておりました。最後にプレゼントを交換するのも甘い探偵が正体を見破られるのもやりたいことが全部詰め込めて良かったです。こちらこそありがとうございました！
年の瀬ではありますが最近平和なお話が続きましたし、次の話はシリアスなお話が良いかなと思っておりました！以前の話の続きで宗教組織のお話や前にあげていただいた所長が拐われて助けにいく話、または街の人々を人質に撮る爆弾魔のお話なんかも考えておりました。検索様はいかがでしょう？)

やっぱり当たりなのかい？ 昨日やけに眠る位置に拘っていた点やサンタの説明が引っ掛かってはいたけど僕の好みを熟知している辺り君じゃないかと予想はついた。
(抱いていた仮説を検証するように鎌をかけてみればその目を見開かれて焦った声があがる。どうやら正解だったようだ。相手の言う通り起きてプレゼントを見るまでは相手から説明されたサンタという存在について信じていた。だがプレゼントのチョイスに今までの違和感が重なるとその結論を導くのは簡単だった。得意げにその推理に至った説明をすると「来年も楽しみだな、サンタさん」と期待を寄せた瞳と共に告げて)

(/それでは所長が拐われて助けに行く話はいかがでしょうか？二人とも冷静にいられない状態で違った形のキレ方をしたりコンビネーションが出来たらと思います…！いつも通り好きな要素を盛り込みつつシリアスな話を展開して行きましょう。上記の話も良い所で切り替えて貰って構いませんのでよろしくお願いします。)

くそ、俺がネタばらしして驚かせる予定だったのに……プレゼント貰えるのは良い子だけって言っただろ？
(やはり相手に真実を隠すことは容易ではないらしい、自ら墓穴を掘った事に今更ながら気づくももう遅かった。なんとかサンタを不思議で幻想的なものとしておきたかったが論理的思考の持ち主の前では歯が立たないらしい。相手の驚いた顔を見る予定だったがあれだけ挙動不審であれば疑いも強まってしまったようだ。得意げな相手に悔しげな顔を向けたあと再び子供に躾をする時の常套句を口にし相手の頬をトントンと軽く叩いていた。)

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……今日アキコくるの遅くねぇか？
(サンタの正体が暴かれてしまったクリスマスから数日、街は一気にクリスマスから新春のムードへと早変わりしクリスマスツリーの代わりに門松が街を飾っている。鳴.海.探.偵.事.務.所.は基本的に休みはないものの場合によっては早上がりもすることになるだろう。そんな少々浮かれた空気の中いつも通り相手と共に事務所へやってきてOPENの札を出し各々の時間を過ごしていたが待てど暮らせど所長がやって来ない。いつもならば事務所を開けて少しすると騒がしい声と共にここへと来るはずなのだがあの声は今はひとつも聞こえて来なかった。ス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を確認してみるも音沙汰はなく「連絡もねぇな」と不安げに呟いて)

(/それでは所長が拐われる話としましょう！所長のためにキレて容赦なくなる二人とてもいいですね…！所長も事務所の大切な一員ですから全力で助けにいきましょう。
そしてまだ本日中に何回か返信できるとは思いますが良い機会なので…今年も大変大変お世話になりました。来年も楽しくやり取りいたしましょう。どうぞよろしくお願いします。よいお年を！/こちら蹴りで大丈夫ですれ)

…確かにそうだね、いつもなら遅れるにしても連絡が入るのに。 体調不良か事故にでもあったのだろうか。…、アキちゃん？
(クリスマスを過ぎた街は一気に年末ムードに移り変わりすっかり年の瀬だ。その空気はすっかり事務所にも届いていて新規の依頼者の姿は殆どなくのんびりした時間を過ごしていた。今朝もいつも通り事務所にやってきてソファーで本を読んでいたが相手の言葉に顔をあげる。きっちり始業時間が決まっている訳では無いがいつもこの頃には所長は来ていて3人分のコーヒーを沸かしていたり事務処理に気合いを入れている頃だ。普段から彼女には振り回されているが休みや遅刻の連絡はちゃんとする人物でこんな時間まで連絡無しに姿を現さないことは今まで無かった。連絡出来ない程体調を崩しているのかそれともここに来るまでに事故か事件に巻き込まれたか、どちらにしろ嫌な予感を覚えて本を置いて相手の元にどうしようか相談しに向かっていると相手のス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.が着信を告げる。電話をかけてきた人物は今話題にあがっていた所長で連絡が来たことに安堵したが何故か一抹の不安が残る。相手に目配せしてからスピーカーモードで電話に出て呼びかけてみると一瞬間が空いて『鳴.海.探.偵.事.務.所の探偵だな？』と変声機を噛ませたような異質な声が聞こえて思わず安心と目を見合わせる。状況を飲み込む前に『早速だがこの携帯の主、お前達の女はこちらで預かった』と言葉が続き)

(/初回ロルありがとうございます、是非是非二人で所長を助けに行きましょう。
こちらこそ今年は大変お世話になりました。探偵様と一緒に本当に濃い1年を過ごさせて貰いました。来年もお互いのペースでやり取りさせてください、よろしくお願いします！)

どっちにしろこっちから１回連絡取った方が……どうしたアキコ？寝坊でもし…ッ！
(毎日騒がしいうえとんでもないことを言い出す人間ではあるが所長は連絡はきっちり入れてくれる人間だ。未だ家で寝ている可能性もなくはないが相手の言うように所長の身に何かが起こっている可能性は否めない。こちらから連絡をするべきだと思った矢先に手に持っていたス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.から着信音が鳴り響く、渦中の人物の名前がディスプレイに表示されればひとまずは安心だ。スピーカーモードにして電話に出るとまずは揶揄い口調で呼びかける。しかしその言葉を言い終えることは無かった。スピーカーから聞こえて来たのは耳障りな機械的な変声で一気に緊張が体を走る。瞬時に感じた嫌な予感はすぐさま現実となってスピーカーから響いてきた。アキコが何者かに連れ去られた、その事実が明確になるとスっと肝が冷える感覚があった。その感覚は直ぐさま怒りへと変換され持っていたス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を無意識に強く握りながら「誰だお前…アキコは無事なんだろうな？！」と声を張り上げて)

…わざわざ電話してきたという事は目的があるのだろう？
(スピーカーから聞こえてきたのは聞き馴染みのある明るい声ではなく機械的な変声でその異常さは明らかだった。そして所長を誘拐したことが告げられると芯が冷えて行くのがわかる。ス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を強く握った相手が所長の状態を聞けば電話口から何やら指示を出す声と口を塞いでいるであろうテープが剥がされる音がして『翔太郎くん、フィリップくん』と明らかに怯え切羽詰まった所長の声が聞こえてくる。その後所長が何か伝えようとするも短い悲鳴と何か揉め合うような音にかき消されるとその事態の深刻さに息を詰まらせた。絶対に助けに行かなくては。無意識に拳を握り締め電話先の人物への怒りが募る中でも頭は妙に冷静で低い声でその目的を問いただす。すると『流石探偵、話が早い。私達が欲しいのは君たちが持つガ.イ.ア.メ,モ.リだ。君たちのメモリ全てとドライバー、それを持ってくればこの女は解放しよう』と条件が出された。メモリを要求するということは組織かそれに近しい物の犯行でますます眉根を寄せる。他人にこの事を伝えれば所長の命が無い事と交換場所として廃墟ビルが指定されプツンと一方的に通話が切れた。詰まっていた息を意識的に吐き出すと「翔太郎」と相手に視線を送って)

アキコ！心配すんな、絶対に助けてやる！
(手の中にあるス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.を凝視する、所長の安否を問えば向こうの背後で何やら物音がしてようやくアキコの声を聞くことが出来た。しかしそれは明らかに普通ではない声色で咄嗟にこちらからも声をかけるが全てが向こうに伝わったかは分からなかった。相手が冷静に向こうの要求を聞き出すもその声にも怒気が満ちていてこちらと同じく電話の向こうの見えない誰かに怒りを覚えているのが分かる。犯人は要望と場所の指定をすると電話を切ってしまい一瞬の静寂が流れた。悪態をつきながらス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ン.をしまうと相手に名前を呼ばれ視線を合わせる。敵は自分達がメモリとドライバーを所持している事を知っており二人の探偵の弱みを知っている、電話口で物音がしたのをみるに複数犯だろう。受け渡しが廃墟ビルならそれなりの規模の人数がいるかもしれない。敵は間違いなく凶悪でメモリのことを知る組織がらみとなれば相手はここに置いていくのが正解かもしれない。だが相手はこの事務所の大事な仲間であり家族でもある所長を拐い恐怖に陥れている奴らを許せないらしい、自分と同じように、だ。軽く息を吐いてみるが怒りは収まらない、やることは決まっていて「行くぞフィリップ、アキコ助けにいくぞ」と声をかけるとハットを手に取り目深に被って)

(/あけましておめでとうございます！新年早々シリアスでピリッとした空気ですが今回も楽しんでまいりましょう。またこの一年検索様と楽しくやり取りが出来れば幸いです。どうぞよろしくお願いします！/こちら蹴りで大丈夫です！)

ああ、絶対にアキちゃんを助ける。
(一瞬の静寂の後相手と目を合わせる。何も言わずとも考えている事は同じだろう。敵は自分たちがメモリを持っていることを知っていてわざわざ廃墟ビルを指定する辺り罠があるのは間違いないだろう。リスクを考えれば十分に対策を練って万全な状態で飛び込むべきだが今はそれをする時間や余裕も無い。直接自分達を狙うわけでなく事務所の大切な仲間や家族である所長を拐って思い通りにしようとするのが許せなかった。相手の声がけに力強く頷いて彼女を救い出すことを誓うと身支度を整えてから事務所を後にした。先程の通話の録音から相手のス.タ.ッ.グ,フ,ォ,ンで簡易的な音声分析をするように設定してから二人でバイクに乗り込んで現場へと向かう。人質と考えれば取引が済むまで所長の命は安全だろうがどんな手を使ってくるかは分からない。怒りと焦燥が渦巻いて無意識に相手に抱き着く腕に力が強くなる。やがて人気のほとんど無いエリアにバイクは走っていき目的地である廃墟ビルの前にたどり着くと「…ここだ」と呟いて)

(/あけましておめでとうございます！こうして共に新しい年を迎えられたこと嬉しく思います。久々のシリアスですが楽しくやっていきましょう。今年もどうぞよろしくお願いします。/蹴りで大丈夫です)

……向こうはそれなりの規模みてぇだな。向こうの言いなりになってもアキコの無事が保証されるわけじゃねぇ。ここは相手の裏をかくしかねぇな
(身支度を整えすぐさま事務所を飛び出しバイクで廃墟ビルへと向かう、所長の声は確認できたもののどういう扱いをされているのか分からず今も恐怖の中にいるのは間違いない。街の人を、その中でも特段アキコを泣かせる奴を許せるわけもなかった。バイクは廃ビルの前へとたどり着き中野様子を覗う、入口付近には既に何人かの人影がみえてこちらにはまだ気づいていないようだが到着を待ち構えているといった様子だ。アキコの無事が当然最優先だがここから三人で無事に帰ることが一番の目標だ。となると向こうに素直に従うわけにはいかない。ただでさえ敵に有利な場所に乗り込むのだ、何が起こるか分からない以上正面から太刀打ちはできないだろう。バイクを近場の物陰に止めてビルを見上げる、すると三階部分にある窓が開けっ放しになっているのに気がついて軽く相手の腕を叩くと「あそこから侵入できねぇか？」と侵入経路を指さし)

あそこか、…どうやら近くには人は居ないみたいだ。さっきの音の響き方から見ても一階か二階の奥まった場所にアキちゃん達は居るのかもしれない。
(廃ビルの前には既に幾らか人影が見える。こちらに気付かれてはないようだがそれなりの人員がこの件に関わっているのは間違いなさそうだ。一旦そこを通り過ぎて近くの物陰にバイクを停めた。相手の言う通り素直に従うだけでは無事に所長を取り戻すどころか全滅という可能性もゼロではない。何とか有利に状況を作る必要があるだろう。どう侵入するか悩んでいると相手が上の方にある空いた窓を指さす。早速バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トをライブモードにして偵察に向かわせる。少しして戻ってきたバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トのデータを確認する限りあの部屋の近くには人の活動は見られない。侵入経路としては安全そうだ。ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンの分析結果を見ても音の反響の様子から周りを他の部屋や壁に囲まれた場所であると推察出来る。その情報を共有しながら窓の周りを見てみるが他の建物もなく飛び移るのも難しそうだ。「ス.パ,イ,ダー.シ.ョ.ッ.クで登れそうかい？」と様子確認して)