相乗りで何処までも 【 〆 】

…そうかもしんねぇな。暖かくて綺麗で……お前がいるから
(鼓膜に相手から送られた最高位の好意の言葉が届く、その瞬間に胸が幸福で溢れて自然と口元には笑みが浮かんだ。こちらからその言葉を送る時も相手から受け取る時もその度に相手への想いが溢れていつまでもこの時間が続けばいいとさえ願ってしまう。触れ合う唇は柔らかくてもっと深く入り込んでしまいたいと願いが浮かぶが流石にここでそれは出来そうにない。名残惜しむようにゆっくりと唇同士を擦り合わせながら離す、今日は随分と浮かれた行為が多いのには自覚があるが相手も同じ様子らしい。こちらからも相手へ回す腕に力を込めてさらに体を引き寄せる、口から出るのはやはり普段は言わないようなクサイ言葉だ。この幻想的な空間にいつまでも心奪われてしまいそうだが同時に早く二人きりの空間に行きたいと思いがチラついてその心のまま「そろそろ出るか」と声をかけて)

、いつものハーフボイルドはどうしたんだい。…そうだね、残りも見て回ろうか
(冗談混じりに非現実的なことを口にしたのにあっさり受け入れられてしまうと目を瞬かせる。同時に回された腕に力がこもると厚着越しでもこの力強さと温かさが感じられてお互いの鼓動も聞こえてしまいそうだ。その状態でいつもなら聞けないストレートな言葉が聞こえてくると嬉しさと一旦現実に戻ろうとした分恥ずかしさも混じって軽く擦り寄りながら照れ臭そうに言葉を返す。そのまま抱き合っていたが相手から外に出ることを提案されると名残惜しそうに腕を解いてゆっくりと離れる。まだ公園内を全て回りきれていなくて何より二人になりたいという気持ちもある。再び相手の手をとるともう一度ランタンの景色を眺めてから温室を後にした。メインの道に戻ってきて明かりの少ない道を進んでいると高い木を電飾で彩った物が見えてくる。それなりの高さがあり一番上には煌びやかな星が飾られている。側まで近付いて上を見上げながら「これがクリスマスツリーかい？」と問いかけ)

え、今のハードボイルドだったのか…？____あぁ、かなり立派な類だけどな
(相手の体を抱き締めて温かさを感じる、今や寒さを凌ぐために厚着のコートが邪魔に思える程だ。心のままを言ったつもりだったがいつもは揶揄いの言葉で言われるハーフボイルドを否定する言葉を言われ不思議そうな顔を相手へと向けていた。最後に幻想的なランタンを背負う相手の姿を目に焼き付けてから再び手を取り温室を後にする。元の道へ戻り暫く歩けばイルミネーションで彩られたクリスマスツリーが見えてくる、様々な色が入れ替わり色の組み合わせで様々な雰囲気を見せるツリーを見上げていると相手から確認がはいる。サンタだけでなくクリスマスツリーもきちんと説明していなかったことを思い出しつつ肯定しながら頷くと「今年も事務所にこんくらいのやつ飾る予定だから一緒に用意しようぜ」とツリーの高さを手で示しつつ誘い)

ならこれもクリスマスならではの物だ。 去年も飾っていた奴かい？いいね、今年は情報屋の皆とも色々と交流を深められたし準備の段階から是非手伝いたい
(大きなクリスマスツリーは時間ごとに色が変わり賑やかな様子を見せている。見慣れた木も飾りがあると特別感があって立派なそれを観察するように眺めていた。すると相手が人の高さくらいを手で示しながらクリスマスの準備の話を持ち出す。去年似たような高さのクリスマスツリーを事務所に飾っていた気がする。その時はいつの間にか事務所に飾られていてメインのパーティもその準備を手伝った覚えは無い。今年はクリスマスへの興味があるのは勿論、情報屋の皆とも探偵としても個人としても色々お世話になったのもあって集まられるのを案外楽しみにしている自分が居る。その日に向け相手と一緒に準備をする時間も楽しそうで緩く笑みを浮かべながら賛同の意を示す。辺りはすっかり暗くなり、更に寒くなってきたが楽しみな用事に心は踊るばかりで気にならず「早くクリスマスにならないだろうか」と期待と待ち焦がれる想いを口にして)

……あぁ、クリスマスパーティーは事務所主催だからな、普段世話になってるぶん全力でもてなしてやらねぇと
(相手からクリスマスの準備をしたいと言われるとゆっくりと口元に笑みが浮かぶ、何よりその理由が情報屋達との繋がりである事にふわりと心は暖かくなった。去年、毎年の事だからとひとりで準備をして開催されたクリスマスパーティーに相手もなんとなくその場にはいたのだがしっかりと参加はしていなかったように思う。しかしこの一年で相手の交友関係も随分広がった、風.都.の中でも癖が強い奴らばかりだが彼らと縁を深めているのは相手がこの街にさらに馴染み暮らしている証拠のようにも思える。しかもパーティーのホスト側になるのだ、誰かを喜ばせる嬉しさを相手が知ってくれているならこれ程嬉しいことは無い上、相手が共にいるならばパーティーの準備をするのがますます楽しみになるというものだ。相手がクリスマスを待ち焦がれるように呟くとこちらも同じく期待と楽しみが膨れあがって繋がり絡まる指を軽く握ると「俺もお前と過ごせるクリスマスが楽しみだ」とツリーを見上げ呟いて)

ああ。…クリスマスまで風邪を引くわけにはいかないしそろそろ帰ろうか。
（こちらが準備に参加したい意思を伝えると相手の口元に笑みが浮かぶ。他所に関心がない頃ならば準備はおろかパーティにすら参加するのが億劫だっただろうが今は情報屋の彼らに感謝を伝えたり同じ時間を過ごしたりしたいと素直に思う。それに相手とならば準備の段階から楽しいに違いない。相手に合わせてツリーを見上げると繋がった手が軽く握られて零れる笑みと共に相槌を打つ。これから数日間忙しくなりそうな予感に手を握り返しながらも順路の先を見れば先ほど入ってきた出入り口が見える。どうやらメインの場所は一周出来たようだ。まだ綺麗なイルミネーションの光景を見ていたい気持ちはあるが防寒しているとはいえ長い間外に居ては体調を崩してしまう。また二人の空間に行きたいという感情がちらつくとしっかりこの光景を目に焼き付けながら帰宅を提案して）

そうだな、帰って体暖めねぇと
(いつもの事務所のクリスマスパーティーに今年は相手にサンタが訪れるという大きなイベントも出来てしまった。そのどれもが去年とは違う様相になりそうで、相手がどんな表情を見せるのか今から楽しみで仕方がない。ちょうどイルミネーションも一通り見終わったようで帰宅を提案されると頷き返す。心は暖かく幸せでいっぱいだが実際体は冷えていて指先や耳の端は赤くなっていそうだ。クリスマスを大いに満喫する為にも風邪を引くわけにはいかない、それに胸に降り積もった想いを抱えたまま二人きりの空間に駆け込んでしまいたかった。相手の目の中に光るイルミネーションの光を記憶に焼き付けた後に手を繋いだまま会場を後にする。イルミネーションに夢中になっている間はなにも感じなかったがいざ駐車場に戻りバイクに跨ってみるとしっかり手足はかじかんでいる。早いところ風呂で体を温めた方が良さそうだ。相手を後ろに乗せエンジンをかけると家へとバイクを走らせて)

＿…ただいま。室内というだけでも暖かく感じるよ
（相手も帰宅する旨に賛成を示すと手を繋いだまま退場門へと向かう。駐車場に戻ると辺りの暗さも相まって身体を突き刺すような寒さを再確認して白い息が漏れた。家まで遠いことを考えれば帰る選択をして正解だっただろう。すぐさま相手の後ろに乗り込むとお互いの体温を分け合うように相手に抱き着いて掴まりながら帰宅の途につく。バイクによって夜の寒さを帯びた風を浴びて家に着くころには随分と身体は冷え切ってしまった。バイクを停めると急いで降りて二人の家に入る。暖房も何もつけてないが閉じられた室内というだけでも外より暖かく感じて帰宅の挨拶と共に感想を口にする。コートやマフラーといった防寒着を脱ぎながら自分の手先がかなり冷たいことに気付けば同じくコートなどを脱いでいる相手の後ろにこっそり近づいて「えいっ」という掛け声と共にその首筋に手を押し当てて）

ただいま。思った以上に冷えてるみてぇだしとっとと風呂に、ひゃッ！！おい、フィリップ！！
(冷たい風を受けながらバイクで帰宅すれば会場をあとにする時以上に体は冷えきってしまったらしい、手足の指と鼻先がじわりと痺れるような感覚がある。帰宅の挨拶と共に家へと入ればそれだけでじわりと暖かく厚手のコートやらを脱いでいけば自分の体が冷気を発している感覚さえあった。赤くなった指先を見つつ返事をしていたがそれは完全に油断していたのと同義で、掛け声と共に冷んやり冷えた指がマフラーによって守られていた暖かい首筋に触れると不可抗力で情けない声を出して体を強ばらせてしまった。自分でも予想外におかしな声が出たことが恥ずかしく素早く片手をひっ捕らえて後ろを振り向くと文句がわりに名前を叫ぶ。ここまでの醜態を晒しておいてやられっぱなしは納得がいかない。片手を掴み相手の機動力を奪ったまま「覚悟は出来てんだろうな？」とこちらが口角を上げるとコート類を脱ぎ薄くなった相手の服を素早く捲りあげ脇腹にすっかり冷えた指先を押し当てて)

首元は暖かいみたいだね。ふふ、なんの事だ、ひぃ！
(不意をつくように十分に冷えた手で首筋に触れると殆ど聞いた事のない類の声が聞こえてくすくすと笑い声を零す。マフラーでずっと守られていた首は当然のことながら温かい。その場所で暖を取っていた手は捕まえられてしまうが振り向いた相手の顔に羞恥の色が見えると楽しそうに笑みを浮かべながら揶揄うように感想を口にする。手は握られたままではあるが相手が反撃に出るのは想定済だ。にやりと笑った相手が手を出す前に露出している首を竦めその面積を最小限にしてその部位を守ろうとするが相手の手が伸びたのは首より下。予想に反して腹部の服が捲られ脇腹に直接指先が触れるとその冷たさに身体は跳ねて裏返ったような声が出る。慌ててその手首を捕まえて自分の脇腹から離させると「っ、服の下は反則だろう」と抗議の声あげて)

お前が始めた事なんだから反則もなにもねぇだろ
(相手の片手を捕らえて真正面から向き合うと相手は首を守るようにそこを縮める、しかし残念ながら狙いは別の所だ。厚いコートで守られほとんど外気に触れなかったであろう脇腹を急激に冷やしてやるとこちらと同じように裏帰った声が聞こえてきて満足気に笑う。仕返しは成功といった所だ。相手が慌ててこちらの手を捕まえると観念したとばかりに伸ばしていた手は脱力させつつすました顔でルールもなにもないと言ってのける。先に手を出したのは相手なのだ、それに素肌を触ったという結果だけで言えば同じだろう。そのまま手を引っ込める仕草を一瞬挟んたが、直後脱力させていた手を素早く動かし相手の拘束を突破する。比較的体温を感じる背中に手を伸ばすと冷たい指先で背筋をスっとなぞりながら「早く風呂に入んねぇとな」と動作とは裏腹にまともな返事をしていて)

首元は露出しているから手を伸ばすだけで触れられる場所だけど脇腹は服を捲る手間が挟まるのだからフェアじゃな、いっ、 翔太郎！ なら早く入ってきたまえ。
(てっきり狙うならば同じ首筋だと思ったのに脇腹に冷たい指先が触れて変な反応をしてしまった。仕返しされる可能性は十分に予測していたがその方法には不服がある。露出した首元に触れることとわざわざ服を捲って触れるのとは大きな差があるはずだ。その理屈をつらつらと述べていると観念したのか手を引っ込めようとする仕草が見えて拘束を緩めかける。その瞬間相手が手を動かしてそこから抜け背筋を指先がなぞるとまた変な声が出て軽く仰け反る。慌ててその手を振り払って相手の名を呼ぶが白々しくまともな返答をしていて埒があかない。そもそも手が冷たいからこんな事になっているのだと悪戯を始めた自分のことは棚にあげつつ返答すれば相手の肩に手を置く。力を込めその身体を押して相手の言葉通り風呂場に押し込もうとして)

そんなルール聞いてな、…わかったわかった。風邪引く前にとっとと入ってくる
(こちらはフェアだと思っていたがどうやら相手は不服なようで理論武装で何やらいろいろと反論している。だがこちらがとぼけて背筋をなぞれば言葉が途切れて再びいつもとは違う声が出た。それと同時に仰け反りつつ反応する姿には腹の底が擽られた気分になってゆらりと欲望が揺れたが相手が慌てて叫ぶ姿が愉快で思わず笑ってしまった。してやったり顔を隠さないままでいると体を風呂場の方に押しやられてしまう、冷たい指先でもっと相手に悪戯してやりたい気持ちはあるが流石に風邪を引いてしまいそうだ。相手をあえて宥めるようなことを言いながら先に風呂に入ることにして脱衣場へと向かった。浴室に入りシャワーからお湯を出すと最初はなかなかその温かさが指先から広がらず相当体が冷えたのだと改めて分かる。ゆっくり末端からシャワーを浴びて体温を取り戻したあと体を洗い今や定番となった緑の寝間着を着てリビングに戻ると髪を拭きつつ「待たせたな。お前も早く入って来いよ」と声をかけ)

そうしたまえ。＿＿ おかえり、じゃあ入ってくるよ
(再び冷たい手に反応するのが面白いのかその口元は笑みが浮かんでいる。してやったりといった顔が悔しくもあって強引に風呂場に押しやってしまう。少しは粘られるとも思ったが逆に宥められると何となく子供扱いされたような気分にもなりつつ相手をその場に置いてリビングへと戻った。今日撮った写真を見返したりクリスマスに思いを馳せながら待っていると相手が緑の寝巻きを着て風呂から上がってくる。すっかり見慣れた光景ではあるが紫が相手の色とするなら緑は自分の色でそれを身に付けた姿はやはり愛おしく感じる。もう一度悪戯しようとも思ったが手先は大分温くなってしまっている。今回は素直に出迎えると入れ替わりに肩をぽんと手を置いてから風呂に向かう。シャワーからお湯を浴びると無意識に息が漏れてその温かさを実感する。いつものように頭と身体を洗い終えた時にはかなり体温を取り戻す事が出来てぽかぽかとしたまま体を拭いて紫の寝巻きへと着替えた。髪を軽く拭きながらリビングに戻ってくると「寝たりしてないかい？」と揶揄い混じりに声を掛けながら相手の隣に座って)

お前を置いて先に寝るわけねぇだろ
(こちらが風呂から上がると次は相手の番だ、バトンタッチのように肩を叩いてから風呂場へ向かう相手を見送る。髪を拭き相手を待ちながら近場にあったバ.ッ,ト,シ.,ョ.ッ.ト.へと手を伸ばす。相手は今日の写真を見返していたのだろう、同じく今日撮った写真を見た後写真には残さなかった光の中にいる相手の姿を思い返しているとまたあの空間に戻った気になって小さく笑みを浮かべていた。やがて相手が風呂からあがってくる、すっかりお馴染みとなった紫色の寝間着は相手が自分のものだと示す証拠のようで見る度に胸を擽られる。隣に座った相手を見ればすっかり体は温まったようで末端の赤みは引いている、当然それは良い事なのだがあのイルミネーション会場や部屋に着いた直後に感じた冷たい指先がなくなってしまったのはそれはそれで勿体ないような気もしていた。どうにも矛盾した感情を抱えながら相手に手を伸ばすと後頭部に手を添えて指先と同じく先程まで赤かった耳の縁を親指の腹でゆっくりなぞり「しっかり温まったみてぇだな」とそこの体温を確かめていて)

行きも帰りも運転を任せたからお疲れかと思ってね。…、ああ。すっかりぽかぽかだよ
（相手の横に並ぶとツッコミにも似た返事がされて口元を緩める。仕事終わりの夜に街の外まで遠出したのだ、その間運転をしていた相手はいつもより疲れているはずだが平気そうにしている辺りやはりタフだ。それに例え眠かったとしても意地でも起きてそうな所が容易に想像がついた。一人で温かな気持ちになりながら再度髪を拭こうとするがその前に相手の手が伸びてきて後頭部に添えられる。そのまま耳に指先が触れられそうになると一瞬身構えるも先程のような冷たさはなく寧ろ穏やかな温もりを感じて体から力を抜きながら相槌を打つ。風邪を引かぬようにしっかりと温かいシャワーを浴びたおかげで露出していた部分もちゃんと本来の体温を持つようになっている。縁をなぞられるのに若干くすぐったさはあるが大人しく相手の方をみながらその行為を受け入れていて）

大丈夫だ、そんなにヤワじゃねぇよ。……みたいだな
(親指でなぞる相手の耳の縁は僅かに赤い、寒いからではなく風呂上がりでよく温まっているからだ。それでも手を添えている後頭部よりは冷たくて親指が触れる面積を増やしてなんとなくそこを温めるような動作を繰り返す。こうやって相手と隣あって座っていれば今日あの会場で感じた想いがまたじわじわと戻ってくる、背後にイルミネーションはないが目に焼き付けたあの光景が再び広がるようだった。そんなことを思っていればふと会場で相手が言っていた言葉を思い出す。ちらりと自分の色、紫の寝間着の方を見やってから再び相手へ目線を戻せば「紫を見て俺が欲しくなるならこれ着る度に俺が欲しくなるってことか？」とからかい混じりに問いかけて)

…、まあそういうことになるね。 僕が君の物だって自覚することになって、君の色に包み込まれているとつい本物が欲しくなってしまう
（マッサージでもするかのように耳を撫でるような仕草が続くとリラックスしたように息を吐く。外でイルミネーションを見るのは楽しかったし貴重な経験だったが一番気が抜けるのは二人でこうして家で過ごす時間だろう。そうしていると相手の視線が一旦下へと移った後あの時の発言が持ち出される。そこそこ浮かれていた時の自分の発言を聞かされるのは少し恥ずかしくもあって一瞬言葉を詰まらせるも本心であることには違いなく肯定の言葉を返す。寝巻を着るのは夜の自宅だけということもあるが着替える際にお揃いを購入した時のことや相手自身に想いを寄せるのは間違いない。そしてそれは今も例外なく手を伸ばして相手の頬に触れると優しくそこを撫でる。相手を見つめながら自らの想いを告げるとその箇所を示すように親指でゆっくりと唇をなぞって）

、そうか……ならその願いを叶えてやらねぇと
(揶揄い混じりで投げた言葉で言い訳やらが入ると思ったが相手はこちらの頬を撫でながらすんなりとそれを肯定してみせる。その瞬間にじわじわと戻っていた煌めきの中で抱いた思いが一気に押し戻ってきてぐっと胸を膨らませたように思えた。次いで親指で唇をなぞられるとその意味は十分に理解できる、あの時望んだ続きを今果たしたい。こちらをなぞった親指に軽く口付けてからその手を取って指を絡ませる。もう片方の手は後頭部に添えたまま体をさらに相手の方へと近づけるとゆっくりとした動作で唇同士を重ね合わせる。柔らかで温かな感触を堪能するように長い時間そこを重ねたあと、僅かに離して再度短く口付けた。だがここまでは会場でも出来たことで望むのはその先だ。手始めに先程まで触れていた耳元へと口を近づける。耳の縁に唇を触れさせると「唇よりは冷たいな」と感じたままを口にすれば先程と同じようにそこを温めようと耳の縁をそのまま口にふくんでしまう。軽く吸い付いたあと体温を分けるように舌先で耳の輪郭をなぞり、時折息継ぎのために吐息を漏らすもそれは相手の耳へとかかっていて)

翔太郎…、…んっ、なんで耳、ン…
（強請るように誘うように相手の唇をなぞるとそこにキスが落とされて片方の手と絡まる。相手の言葉に応えるように名前を呼ぶとゆっくりと近づいていく動作に瞼を閉じるとそのまま唇が重なる。外でも中でも柔らかく温かく感じるそこに全ての意識を集中させて幸せな感触を味わう。お互いの鼓動が聞こえそうなほど静かな二人だけの空間で長い間唇を重ねて、離れていくかと思えばまた短く落とされたキスに目を開けて幸せそうに微笑む。近づいた距離感のまま、相手が今度は耳元に近づき軽く唇が触れたかと思えばそこを食むように口内に含まれると思わずぴくりと肩が震える。先ほどの指先は冷たかったが相手の口内と舌は熱くその温度差に小さく吐息が漏れた。困惑と文句の声をあげている間にも相手の吐息が耳にかかると指を絡めた手をぎゅっと握って堪え、愛でられている耳は血が通って薄ら赤色に染まっていき）