相乗りで何処までも 【 〆 】

え……お前が、俺達に、プレゼント？……どうした？お前風邪でも引いて…いって！！
(未来からやってきた王様と家臣と新たな絆を結んで一週間程、季節はすっかり冬らしくなり街を駆け抜ける風はかなり冷たいものになっていた。厚手のコートとマフラーがかかせなくなってきたこの頃、コーヒーを飲んでいつものように事務所での時間を過ごしていると所長が大袈裟な咳払いと共にこちらへ封筒を差し出してきた。封を開けて中を見てみれば風.都.から少し離れた場所で開催されているイルミネーション会場のチケットが入っている。どうしたのかと問えば『そういえば二人にプレゼントした事無かったから、クリスマスプレゼントよ！』と言われ目を丸くさせる。ケチの代名詞のような所長がまさかそんな大盤振る舞いをするとは思えず困惑したように確認を取ろうとすると容赦なくスリッパが飛んできて思わず声をあげてから額を押さえ)


(/組み合わせを変えるとまた違う一面を引き出せてほんと良かったですよね…実はこちらも魔王組久々に動かしてやり足りないくらいだなと思っておりましたのでクロスオーバー第二弾是非是非やりたいです！良きタイミングでまたクロスオーバーさせましょう！
ではひとまず上ではイルミネーションを見に行くお話を始めさせていただきました。そういえば検索くんはサンタ知りませんでしたね……ですのでぜひ検索くんがサンタに夢中になるお話をやりたいです…！サンタとしてプレゼントを届ける依頼のお話はまたの機会にでもとっておいて、イルミネーションからサンタさんのお話に繋げるのも良いかなと思います！)

…そういえばクリスマスは親しい者同士でプレゼントを渡し合う文化があるそうだね。 ありがとう、アキちゃん。有難く使わせてもらうよ
(すっかり冬本番となり事務所に来るまでの道ですら寒さが突き刺さるような時期がやってきた。あまりの寒さに空調設備のあまりないガレージに籠るのも躊躇われて事務所スペースで報告書の整理を手伝っていると所長が封筒を差し出してきた。中身を確認するとどうやらチケットのようで本人から説明が成されると突然のことについ驚いてしまう。12月後半にクリスマスというイベントがあり、家族でご飯を食べたりプレゼントを渡す日である事は既に知っているがまさか所長から貰えるとは思わなかった。信じられないという反応を示す相手にスリッパが飛んできて騒がしく言い争いをしているのを後目にチケットを確認してみるがちゃんと二枚だ。どうやらこの前の依頼人の知り合いが運営に携わっているらしく格安で譲ってくれたというのが真相だが所長が準備してくれたのには変わりない。相手に代わってお礼を伝えて受け取ると『今日は早く事務所閉めちゃうから二人で楽しんでくること！』と宣言してさっさと帰ってしまった。プレゼントに二人の時間を過ごせるようなものを用意してくれたことに擽ったさを覚えつつ「…らしいけど行ってみるかい？」と相手の様子伺い)

(/初回ありがとうございます。そしてサンタのお話に繋げるのも賛成です。何処かで話題にしたり話の流れで食いついたりしてサンタが来るのを待ち望んだり正体を掴むのを目的にしたりと二人の間でわちゃわちゃ出来たらと思います！/何も無ければ蹴りで大丈夫です。)

せっかくアキコがここまで用意してくれたんだ。有難くプレゼントいただこうぜ。早速出発だ
(どうやらクリスマスプレゼントの真相は厚意で用意してもらった格安チケットで「そういうことかよ」と揶揄いまじりで言うも二人の時間を作ってくれるというこれは二人のことをよく考えてくれているものだ。おまけに事務所を早く閉めると宣言されここまでお膳立てされたのなら存分に二人の時間を楽しむしかないだろう。アキコの去り際に「ありがとよ」と礼を伝えて見送る。これは所長に良いクリスマスプレゼントを送らなければならないとひとつ課題が出来た。二人のことを見守ってくれている事に改めて感謝しつついい加減照れもまじり始めたところで相手からお誘いがかかる。当然答えはイエスだ。イルミネーションを見るとなれば夜の間外出しきりになるだろうと「コートとマフラーしっかり着込んどけよ。バイク乗るし、外出っぱなしだしな」と寒さ対策を促しつつ自らも厚手の上着を身につけたあとハットを頭に乗せ準備が整えば外へと出ていき)

了解だ、準備してくる。＿＿運転頼んだよ、翔太郎
（思わぬところから舞い込んできた話だったがチケットに印刷されたイルミネーションの写真は綺麗で早く事務所を締めるという件も含めて自分たちのことを良く考えたクリスマスプレゼントだ。二人きりになったところで流れに乗ってお誘いをかけると早速今日行くことに決まり、寒さ対策の言葉に頷いて一旦ガレージへと戻る。冬用に買ったコートと厚手のマフラーを身に着け外に出る準備をすると事務所の戸締りをしてから相手の後に続く。日が一番短くなる季節なだけあって外は既に薄暗い。吹く風は冷たいが今から行くところを考えれば心は弾んでそれほど気にならなかった。バイクの元にやってくると楽しみなのを滲ませた声でお願いして相手の後ろに乗り込んで）

あぁ任せとけ。しっかり掴まれよ
(相手がガレージから戻ってきてしっかり防寒されているのを確認して事務所を出る。会場はここから少し距離のある場所だがバイクを飛ばせばそれほど時間はかからないだろう。弾んだ声で運転を任せられればこちらも自信を滲ませ返事をする、そこにも隠しきれない期待が乗っていてバイクに二人で乗りこめば会場に向けて出発した。事務所を出た時点で既に薄暗かったがバイクで走るうちにすっかり日は落ちて周囲は暗くなり一層寒さが増す。ヘッドライトを点けて道を走ればやがて会場を案内する看板が見えてきた。大きな公園を丸ごと貸し切ってのイルミネーションのようで各エリアに区切られた場所には様々な種類の電灯が用意されているようだ。会場の入口につくとバイクを停めるが入口付近はライトも少なく薄暗い、おそらく本番のイルミネーションの印象を強めるためわざとここらへんは暗くしているのだろう。バイクを降りると「早速行こうぜ」と相手へ声をかけて)

あぁ、どんなものが見られるか楽しみだ。＿＿…！すごくきれいだ…
(相手から良い返事が聞こえてバイクが走り出す。段々と日が落ちるにつれて周囲は暗くなり下がっていく気温ともろに受ける風のせいで大分寒い。厚着をした相手の腰に抱き着いてくっついていれば幾らか寒さは凌げて暗い夜道を走りながら身を任せていた。それから少しすれば目的地の公園が見えてきて駐車場にバイクを停める。入り口はどちらかといえば薄暗く地味な印象だが本番は中に入ってみてのお楽しみといったところだろうか。バイクを下りて声を掛けられると期待を声に乗せつつ相手の横に並んで入場ゲートへと向かう。受付二人分のチケットを渡すと中に通され順路に従って公園の中に向かう道を進んでいく。緩やかな坂を上り終えると見渡す限りの広大な土地に光が埋め込まれている美しい光景が目の前に広がっていて思わず立ち止まる。グラデーションを描く光の海に加えて周囲の木々や建物も光を纏っていて幻想的な光景に素直な感想が口から零れて）

おぉ……なんつーか、まさに幻想的って感じだ
(相手と共に入場ゲートをくぐって緩やかな坂を登る間はずっと薄暗い空間が続いていた。しかし坂を登りきり視界が開けると一気に景色は様変わりする。あらゆる所で色とりどりの光が揺れ暗いはずの空間を煌々と照らしている。花壇のようなところだけでなく所々に建つ建物にまで色が宿っていてまさに光の海を見ているようだった。そのまま道を進んでいけば光のアーチが見えてくる。トンネル状に組まれたアーチの中には淡い紫色の光が地面に向かって垂れかかるように配置されている、どうやら藤棚を模して作られたアーチらしい。ぼんやりと光るいくつもの輝きが集まり辺りを照らす様は幻想的でいて儚げでもある。会場に来場して最初に通る場所とあって力の入った場所のようだ。相手と並んでアーチの中に入ろうとするがその前にふと立ち止まる。今は夜でここは風.,都の外、人はまばらでそれぞれの時間を過ごすのに夢中だ。それならば条件は整っていて「ここ、風.都.の外だよな」と確認するような事を言いつつその返事が来る前に相手の手を取って)

…翔太郎？ 、じゃあ行こうか。
(一面に広がる灯りは今まで暗かった分眩しく見えてつい目を奪われてしまう。似たようなことを口にしながらそのまま道を進むと光のアーチが現れた。ただトンネル型に電飾が巻き付けられているのではなく、内側には紫色の光が垂れ下がり藤の花を模してあるようだ。幻想的な景色の中に入り込めるような仕掛けに感心しながら早速その中に入ろうとするが隣を歩いていた相手が突然立ち止まってしまう。不思議に思って視線を向けると今の状況を確認するように問われ、同時に手を取られた。一瞬驚くもすぐにその意図を理解すれば口元には笑みが浮かんで指を絡めるように繋ぎ直す。せっかく綺麗な景色なら相手と共にその存在を感じながら見て回りたい。相手に声をかけるとその手を軽く引いてアーチの中に入っていく。周囲がぼんやりとした光、それも淡い紫色で囲まれるのは何だか不思議な気持ちになって「君の色に包まれているみたいだ」と感慨深く呟き)

あぁ、アキコからのプレゼントしっかり受け取らねぇと
(こちらから手を繋げば相手の顔には笑みが浮かんで互いの指が絡められる、冷たい風が吹くのに反して胸は暖かなもので満たされた。所長がプレゼントとしてくれたのは二人きりの時間だ、それならばこの時間を存分に堪能できることをすべきだろう。こちらからも指を絡ませた手を今一度握り直すと相手に手を引かれる形で紫の光の中へ入っていった。日常では見られない光景を見上げるようにしていると相手の呟きが聞こえてきて思わず笑みを浮かべる。確かに藤の花の色はこちらのメインメモリの色と同じだ。切り札の記憶に入り込んだとしたらこんな光景なのかもしれない。ちらりと相手の方をみやり続いて周囲を伺う。ひっそりとした雰囲気のここには今二人しかいない、そうなると相手ともっと近づきたいという思いは膨らんでしまって、不意に手を離して背後に回ると「色だけでいいのか？」と冗談めかしていいながら腰に腕を回すと後ろから抱きしめて)

っ、今日は随分と大胆だね。この色を見ると君を思い出して君自身が欲しくなってしまう。
(相手からも手を握り返され寒い中確かな温もりを覚えながらアーチの中を進んでいく。あの真っ白な空間から連れ出されて様々な色を知るようになったが一番印象深く心動かされる色はやはり二人のメインメモリの色だろう。そのうちの一つ、相手を象徴するような紫色の光に照らされて薄らその色にお互いが染ったような光景を見ればつい呟きが零れた。すると隣の相手の口元が笑みを描いたのが見えた。目が合ったかと思えば不意に手が解かれ、驚いている隙に腰に腕が回って後ろから抱きしめられる。不意打ちに一瞬身を固めるも聞こえてきた言葉と腕の感覚に暖かい物が胸に溢れて嬉しさが滲む声で思ったことを口にした。こうしてくっつけるのは夜の特権かもしれない。紫色を好ましいと思っているのは事実だがそれは相手の色だからであり、思い浮かべるのも相手の姿だ。回された腕にこちらの手を重ねると軽く後ろに擦り寄って甘えるように言葉を返して)

二人の時間を楽しむんだろ？ならお前にはいつでも紫のもん身につけて俺のこと考えてもらわねぇと
(周囲に人がいないならばより二人の時間を楽しみたくなってしまう。本人が目の前にいるというのに色に包まれているだけで満足するなんてこちらが納得いかない、包まれている気になるだけでなく実際に包まれた方がいいに決まっている。厚手のコートを纏った二人がくっつけば寒さも気にならない程に体も心も暖かい。重なった手を軽く握り返しながらこちらへ擦り寄る感触に心地良さを覚えればこちらからも相手の後頭部に頬を擦り寄せ相手の存在をより感じていた。相手の中ではすっかり紫色と自分が結びついているらしい、こちらが欲しくなるなんていじらしい事を言われてしまえば今すぐどこかへさらってしまいたくなってしまう。紫を見てこちらを求める心が動くならいつだってそう思っていて欲しい、例え自分がいない時でもだ。少々薄暗い願望を口にしながら膨れそうになる気持ちを消化させるため先程擦り寄った後頭部に軽く口付けを落とし)

ああ、クリスマスデートという奴だ。 ん、持つのは構わないけれどそんなものなくても僕の頭の中にはいつも君が居るよ
(クリスマスは家族と過ごすことの多い日だが恋人と過ごす日でもあるらしい。どちらの意味でも大切な相手と2人きりで過ごすこの時間は特別でデートと呼ぶに相応しい機会だろう。手を重ね相手からも後頭部に擦り寄られると幸せとしても擽ったくて柔らかな笑い声が漏れる。触れる所から温かな幸せが広がって後頭部に口づけが落とされたような感覚がするとどくんと鼓動が跳ねた。常に相手のことを考えて欲しいと独占欲にも近い意味で紫のものを持つように提案がされると何個か頭の中で候補を出していく。だが実際は紫色のものがなくとも常に思考の何割かは相手に割かれていて検索に熱中しなければ忘れることは無い。事務所の中も着ている服やアクセも、持っている知識すら相手の存在を感じるのだから。ストレートにそのことを伝えると背後にいて見えない分相手に誓うようにその手を取って手の甲に短くキスを落として)

、……お前の中にいつも俺がいるならそれでいい
(淡い紫に包まれ相手を包み込んで二人の時間に浸る。相手から溢れるように零れる柔らかな笑い声がこの胸を幸せで満たしてならない。いつでも相手の頭の中にいようと紫のものを持つよう提案したわけだが、既に相手の頭の中にはいつでも自分がいるようでその証明のように手の甲に口付けが落とされた。冷たい手の甲に落とされた柔らかで暖かな感触はちらりと覗かせた独占欲さえ包み込むように満たしていって相手の背後で小さく笑う。相手にその表情は見えないだろうが笑みと共に零れた吐息が相手の後頭部にかかっていてどんな表情をしていたかは相手に伝わっているだろう。相手の中にいる自分の存在を確かめ幸せと満足を得たところで名残惜しくも抱きしめていた腕を緩め再び相手の手を取り指を絡ませる。ここも幻想的な風景だがイルミネーション会場はまだまだ広い「次のとこ行こうぜ」と声を掛けると紫のアーチの中を歩き出し)

ああ。＿翔太郎、せっかくだしあの場所で写真を撮るのはどうだい？
（後ろから抱きしめられて唯一見える手の甲に軽くキスを落とせば背後の気配が満足そうに笑うのが分かる。独占欲の滲んだ言葉とともに至福の吐息がかかるのを感じてはどんな表情をしているのか想像がついてこちらの口元まで緩くなった。いつでも相手の存在は自分の中にいるが実在の恋人と触れ合うのはまた違った幸福を覚える。少しの間背中と腕から伝わってくる幸せを?みしめていたがそっと相手の腕が離れて再び手が繋がる。相手の顔を見れば満足そうに微笑んでその先へと歩いていく。紫の光のトンネルを抜けると電飾で彩られた立体物が建つエリアが見えてくる。きらきらと光るお城やシンデレラの馬車を模したイルミネーションが並ぶ中で元々休憩用のベンチがあった場所にも装飾が施され座って写真が撮れるようなスポットを見つける。あからさまに背後に大きなハート形の飾りがあるのも気にせず、相手との思い出の写真が撮りたいという気持ちが先走れば期待に弾んだ声で提案しつつ答えを聞く前にその場所に手を引いて向かい）

え、…あれはあからさま過ぎ……
(相手と再び手を繋いで光のアーチを抜けていく、幻想的な紫の光の先に広がっていたのは童話をモチーフにしたものが並んだファンシーな空間が広がっていた。写真映えしそうな光景が多く撮影スポットとして案内看板が出ている所も多い。その中で相手から案内に則って写真を撮るのを提案される。そこまでは良かったのだが相手の視線が向いた先にはデカデカとした真っピンクなハートの飾りがあった。カップル専用とでも言いたげに煌々と光るベンチに一瞬体を固める、あそこに座るのもなかなか勇気がいるがさらに写真を撮るなんて。羞恥の方が勝って相手を止めようするが時すでに遅く手を引かれてベンチへと連れられてしまう。こうなれば相手を止めることは不可能だ、それにここで渋っても最後には相手のお願いを受け入れる未来はよく見えて「お前が撮りたいって言うなら仕方ねぇな」とせめてもの抵抗で相手のお強請りに付き合っている体をとった。軽く息を吐いて気合いを入れると相手の手を引きベンチへと座る、寒いせいで自然と相手の方に寄って距離を縮めながらバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トを取り出し)

周りに見知った人は居ないのだから良いだろう？ なるべく全体が映るようにして…、
（絶好のフォトスポットで写真を撮りたいと強請ると相手が躊躇を見せる。バレンタインの時といいラブリーな感じはハードボイルドに似つかわしくないという判断なのだろうがせっかくスポットが準備されているのなら利用しない手はないだろう。半ば強引に手を引くと観念したような呟きが聞こえてきて結果的にお願いを叶えてくれる。こういう所が相手の甘い所であり好ましいと思っている点だ。手を繋いだままベンチに隣り合うように座ると相手の方が寄ってきて距離が縮まる。こちらからも距離を詰めてぴったりくっついてからバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トをライブモードにして飛ばす。周りのイルミネーションの光景まで映るように距離感や位置を微調整する指示を送って丁度良い場所を見つけると「じゃあ撮るよ」と声を掛け正面を向く。合図の後シャッターが下りて無事に一枚目を撮影出来たがせっかく相手にわがままを効いて貰えたならと更に悪戯心が疼く。バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トは飛ばせたまま相手の肩に寄りかかるように頭を乗せ甘えるようにくっつくとその状態で二枚目のシャッターが下ろすように指示して恋人らしい光景を写真に収めて）

まぁルールでいや問題ねぇけど……、…
(相手と共にベンチに座れば後ろから先程とは違いピンク色が自分達を包む、傍からみればかなり浮かれたカップルに見えるだろう。だが相手の言うように今は周りに人はいない、ならばルールも恥じらいも何もないはずなのだがこうも巨大なハートが後ろで存在を主張していると気が気でないというものだ。二人がピタリと密着した状態で1枚目の写真が撮られる、あの画角ではしっかり後ろのハートを含むファンシーな空間まで写っていることだろう。相手のお強請りはこれで果たしたかと思ったがバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トが戻ってくる気配はなく相手がこちらへ寄りかかるように体勢を変える、そこでようやく恋人らしいもう一枚を撮ろうとしているのだと気がついた。このピンク色の空間でさらに恋人らしいポーズを取るのかと羞恥と焦りが生まれるが、同時に恋人がこんな可愛らしい要求をしているのならばそれに応えてやりたい気持ちも生まれる。短い時間ではどちらの気持ちに振り切ることも出来ず急いでこちらへ寄りかかった相手の後頭部に頬を寄せてさらに触れる面積を増やしたが、自分の行動に表情は追いついておらず眉を下げて明らかに緊張した顔の瞬間にシャッターがきられてしまった。変な表情だった自覚はあって相手に目線を向けると「フィリップ、今のなしでもう一枚」とリベンジを要求し)

いいよ、君の好きなタイミングで撮ると良い
(随分と浮かれた行動をしている自覚はあるがここが風,都.の外で夜ということが自重の心を緩めてしまう。一枚目に続いて先程よりも相手に寄りかかってみると触れる場所の鼓動が早まったような気がする。分かりやすい動揺が感じられて思わず口元が緩んでいるとそれに応えるように相手の頬が後頭部に触れる。更に密着するようにくっついたことに心は弾んで緩みきった顔で写真に撮られることとなった。一旦身体を元に戻し、バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トを呼び寄せて写真を確認しようとするがその前に相手の視線を受けリベンジを要求されると一瞬目を瞬かせる。わざわざもう一度撮ろうとしてくれる辺り満更でもないのかもしれないと思えば機嫌は良くなるばかりで相手の提案を受け入れると撮影のタイミングも委ねる。一旦繋いだ手を解くと相手の腰に回して軽く引き寄せる。そのまま寄り掛かるように相手と密着してシャッターが切られるのを待って)

それなら大丈夫だな……、…
(なんとか相手が先程の写真を確認する前にもう一枚撮る流れに持っていくことができた。あの情けない写真はあとでなかったことにするとして、違和感のない恋人同士の写真が撮りたい。シャッターのタイミングもこちらに任されてこれならばおかしな顔の瞬間も撮られないだろうと思ったが、繋がっていた手が解かれて腰に手を回され引き寄せられるとさらに縮まる距離に心臓が跳ねる。こちらからやろうと思っていたのに先手を打たれれば尚更動揺してしまうもので余裕のある表情を作れないでいた。こちらから相手に触れる動作をしなければこの動揺は落ち着かないだろう、何か手段はないかと考え結局は腰に回されていない手を取って軽く指を絡める格好に落ち着きこちらからも相手に寄り添うように体をくっつける。いくらか動揺も薄れれば小さく笑みを浮かべてバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トに指示を出しシャッターを切った、これで自然な恋人らしい写真が撮れただろう。バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トを呼び寄せると相手に見られないうちに二枚目の写真を消してしまおうと空中にいるバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トへ手を伸ばして)

…、それっぽい写真がバッチリ撮れたね。こっちも、…ふふ、
(腰に手を回して引き寄せると相手の動きが固まった気がする。そこから動揺を感じ取れるとまた口角が上がった。身を寄せてくっついたまま様子を伺うように相手の行動を待っているともう片方の手を取られ指を絡めて繋がれる。その温かさにまた幸せを覚えて自然な笑みを浮かべるとその瞬間にシャッターが切られた。相手がバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ,トを呼び寄せて手に取ろうとするがその前にこちらが指示を飛ばすと急に旋回して自分の手元にやってくる。これに関しては普段メンテナンスをしている者の特権だ。ガジェットモードにして最新の写真を確認すると恋人同士の自然体の様子が映っていて満足そうに表情を緩めて感想を口にする。邪魔されない内に2枚目を確認すると顔は寄せているのに眉は下がって焦りや緊張、照れなどが混ざり合った表情を浮かべた相手の姿があって、映る自分も大分緩みきった表情であることには気付かずそのヘンテコさに笑い声を零して)