検索 2022-07-09 20:46:55 |
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、これもプランのうちだったのかよ。ほんと……最高の恋人だよお前は。この街を案内したかいがあったってもんだ
(てっきり夕方の風.都.の空を散策するのが目的であくまでもあの光景は偶然だと思っていたがまさかあの瞬間まで計算されたものだったとは思わず驚きの声をあげる。同時にじわじわと幸せが胸にせり上ってくる、気象条件を念入りに調べてくれたこともこの瞬間に間に合うように今日一日のプランを考え時間調整してくれたこともその全てが自分のためなのだと思えば胸に溢れた言葉はなかなか形にする事が出来ずただ強く抱きつくことしかできなかった。しばらく様々な言葉が浮かんでは消えていたが最終的に口にしたのはシンプルでいて普段ならば絶対に言えない言葉、だがそれだけでは胸の気持ちが収まらず相手の首元に頬を寄せてさらに接する部分を増やす。今は全身で相手への想いを伝えたくて仕方がなかった。それに今までで一番美しく風都が見える場所に連れてきてくれた相手は間違いなくこの街を愛する人間のひとりで、この光景は自分が愛するこの街を相手も確かに愛している証明のようでもあってさらに幸せが胸の内に重なっていく。すっかり冷たくなった街の風を浴びながら風.都.タワーを一周する間この光景を目に焼き付ける、今日相手と共にみたこの景色は間違いなく人生の中で一番思い出深い風.都.の景色だ。名残惜しいがハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーはゆっくりと地上に降りて元の空き地へと戻ってくる。相手が最後に用意してくれた最高の贈り物の余韻に浸りながら後ろから抱きしめたままでいると「それじゃあここからは今日一日頑張ってくれた分も含めてご褒美の時間だな」とバッティングセンターでの約束を持ち出して)
これでより一層君を惚れさせることが出来たかな。__ ああ、今からは君にバトンタッチだ。
(せっかく初めての自分主導のデートであれば深く思い出に残るような一日にしたい。そんなこだわりと凝り性な部分も相まって気象条件など細かな所までプランを詰めていればいつの間にか朝に近い時間になっていたのは内緒だ。普段あまり聞かない類の言葉と共に首元に頬を寄せるようにくっつかれるとその温もりと想いが伝わってくるようだった。これも上空で二人きりだからこそ感じられる物だろう。そんな幸せを噛み締めながら若干照れ臭いのを茶化すようにそれらしい言葉を口にしていた。二人で見た綺麗な景色をしっかり記憶に刻んでから空き地に着地する。無事に辿り着いてエンジンを切ったにも関わらず相手に後ろから抱きしめられたままで回された腕に手を添える。この空の旅で自分の考えたプランは終わりでここからは相手がご褒美として提示した夜の時間だ。ゆっくりと暗くなっていく空と人が居ないことをいい事に相手の手を取って指を絡めて繋ぐと「どうやってその場所に行くんだい?」と尋ねて)
任せとけ。こっからハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーに乗って移動すんだけど……その前に用意しなきゃいけねぇもんがあるんだ
(朝から待ちに待ったデートを楽しみ二人きりで最高の景色を眺めたとなれば本音がそのまま口から出るどころか普段は言えないような照れくさい言葉だって言えてしまう。相手により一層惚れたかと言われればそうだとしか答えようがない、これだけの特別な想いを贈られて惚れ直さない方がおかしいだろう。胸いっぱいに相手からの幸せを抱えてエスコート役の交代だ。名目としてはホームランのご褒美だがこれから行く場所は今日一日のお礼とも言える。こちらからも指を絡めて繋がりを強くすると移動の手段を問われバイクだと答える。が、このままではその場所に行くには足りないものがある。相手をここで待たせるのは心苦しいが今から行く場所には必須アイテムがあってそれを調達してこなければならない。名残惜しいもののそっと体を離し、しかし絡めた指はそのままで先ハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーを降りる。そして相手をエスコートするように繋いだ手を支えるように掲げると「ちょっとだけここで待っててくれねぇか?すぐに戻ってくる」と言い添えて)
今からする事にはそれが必要な訳だね? 分かった、ここでご褒美が何か予想でもしながら待っているよ
(絡まった指は上空に居たせいか普段より冷たいが慣れ親しんだものでしっかりと握り返しながら自分のプランが大成功を収めた達成感と幸せに浸っていた。その状態でどうやって行くのかと問うと丁度このバイクを使うという返事がされる。ならば少し遠くなのだろうかと推測を立てつつ更に必要な物があると言われるとますますその場所が気になってくる。手は繋いだまま先に降りた相手にエスコートされるような形でハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーから降りると相手を見つめる。流れ的に言えば急遽決まった予定で、相手が今から行く所やする事に必要というのならば勿論異論はない。軽い笑みと共に了承するとゆっくりと手を解きながらここで待っていると告げる。「待つのは構わないけど僕が他に興味あるものを見つけて検索を始めてしまう前には帰ってきたまえ」と冗談っぽく言葉を添えて相手を見送って)
あぁ、期待は裏切らねぇよ。心配すんな、全速力で飛ばして戻ってくる。リ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ー.の中にでも入って待っててくれ
(相手がバイクから降りると手が解かれる、相手の温もりがこの手からなくなってしまうのは寂しい所もあるがこれからするご褒美のためには一時我慢すべき所だろう。ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.からハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーを操作し一旦リ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ーへと格納するとタ.ー.ビ.ュラ.ーユニットを取り外して通常のバイクの形に戻す。ハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーを手元に呼び寄せると風よけにとリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ー.の方をみやった。この寒い中で相手を長い時間待たせるわけには行かない。冗談を添え笑う相手を見れば上空では見られなかったその顔を正面から見つめることができてまたふわりと幸せが胸に宿る。その心のまま一歩前に踏み出し相手の頬に軽く口付けると文句が飛んでくる前にバイクへと跨ってひらりと手を振り走り出した。脳裏に先程の光景を描き胸には今日一日で降り積もった幸福を胸に抱えてバイクを飛ばすと目的地へと急いだ。それから10分もしないうちに戻ってくると相手の前にバイクを止め「待たせたなフィリップ。後ろ乗ってくれ」と目的地へ移動するため後ろのシートを親指で指し)
ならそうしよう、っ!…狡いだろう、それは。__ 本当に早かったね。
(通常モードに戻したハ.ー.ド.ボ.イ.ル.ダーを相手が呼び寄せながら風除けを提案する。つぐつぐ心配性ではあるが今日は素直にそれに従うことにしよう。こくりと頷いた所で何故か相手が一歩近付き、頬に柔らかな感触が落ちて目を瞬かせる。直ぐにキスされたのだと理解すれば一気に照れが襲いかかってきて文句のひとつでも言おうとするが相手は逃げるようにバイクに跨って走り出してしまう。一人残された頬は僅かに熱持っていてその部位に触れながらぽつり呟いていた。おかげさまで寒さはあまり感じなくなったが言われた通りリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ーの中で帰りを待つ。わざわざバイクを使うならばそれなりに時間がかかるだろうとは思っていたが全速力という言葉通りさほど待たない内にバイクの音が聞こえてきて外で相手を出迎える。分かりやすく手荷物が増えた様子は無さそうだが何を準備したかはその時のお楽しみという奴だろう。促されるまま今度は相手の後ろに跨ると腰に腕を回して「じゃあ頼んだよ、翔太郎」と声をかけて)
ちょっとした用事だったんでな。よし、いくぞ
(上空でこちらへと移った相手の体温が全てなくなってしまわないうちにとバイクを飛ばし急いで用事を済ませて相手の元へ帰ってくる。相手がバイクの後ろへ跨り腰に腕を回されると再びその体温がこちらへと伝わってきて自然と口角があがった。リ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ーには自走でガレージへと帰るように指示を出したあとバイクを発進させる。先程のスピードを重視した走りではなく安全優先の適度な速度で人気のない道を走っていく。やがて道の周囲には木々が増え始めちょっとした山を登る道へと変化した。上空で夕焼けをみた時間から今やすっかり周囲は暗くなってしまって電灯のない道路ではバイクのヘッドライトだけが周囲を照らしていた。そうしてしばらく走り続ければ山道の脇に小さな駐車スペースが現れる、といってもただ地面が広がっているだけの場所だ。そこにバイクを停めれば先の道の方へ視線をやり「ここが目的地だ」と声をかける。真っ暗でたったひとつ電灯が照らされた道の先には古ぼけた看板がひとつあって『展望台』と飾り気のない文字で書かれており)
展望台…、何が見られるのか楽しみだ。
(相手に抱き着くような形で掴まったままバイクは発進し、中心街とは逆の方向へと走っていく。上り坂であることと段々と木々が増え始めたのを見るに山の中に向かうのだろうか。暗く冷えていく空気とは裏腹に予想出来ない行き先にワクワクが募っていき腕に少し力を込めながら変わっていく景色を眺めていた。そのまま走っていると山道の脇に駐車スペースが現れてそこにバイクが停まる。相変わらず辺りは暗いが相手の視線の先には歩いて進む道が続いていて電灯と展望台を示す看板が見える。展望台といえば景色を眺めるための場所だ。声を掛けられ腕を解いてバイクから降りると何があるかを想像しては期待を口にする。周りを見ても知る人ぞ知るといった雰囲気で人が居る気配はない。ならばルールの適応外だと相手の手を取って繋ぐと「エスコート頼めるかい?」と機嫌よくお願いして)
、…もちろんだ
(存在を知らなければ走り去るだけであろう場所にバイクを停める。人がいない上簡素な看板だけではもはや不気味な雰囲気もあるが、人気がないからこそこの場所に意味がある。歩き出そうとしたところで手を取られてそこが繋がると相手に笑みを向けながら指を絡めるようにして繋ぎ直す。最初こそじわりと冷たかった指先はすぐにじんわりと体温を感じられるようになって互いの温かさを共有していた。淡く照らされた細い道を抜けるとすぐにひっそりと佇む小さな展望台が姿を現す。手を繋いだまま螺旋状になっている階段を登るとすぐに展望部について視界が開けた。少々遠目だが風.都.が見える、風.都.タ.ワ.ーも一応目で見える距離だ。正直夜景の眺めでいえばそれほど良くは無い、もっといいスポットはいくらでもある。だがここが特別なのは展望部をぐるりと囲う網目状の柵にたくさんの南京錠がついていることだった。柵で囲われた展望部の中央にやってくるとどの南京錠にも二人分の名前が書かれているのが見える。相手の方へ振り返り正面に立つと「ここの展望台に南京錠をかけた二人は永遠に一緒に居られるって言われてるんだ。いわゆる…カップルの聖地ってとこだな」とこの場の説明をするもその内容が恥ずかしすぎて目が泳ぐ。ようは二人がずっと一緒に居られるようなおまじないをする場所だ。未だふわふわとした気持ちのままポケットを探ると先程急いで買ってきたものを取り出す。その手には南京錠とペンがあって「俺達も付けないか?」と羞恥をなんとか引っ込めながらそれらを差し出し)
…南京錠?、道理でわざわざ人のいないここに連れてきた訳だ。 ああ、勿論。君が急いで準備してくれたようだからね。
(繋いでいた手がより強く結びつくように指が絡まって体温を共有しながら道を歩く。そこにはひっそりと佇む展望台があって手を引かれるまま螺旋階段を登っていった。視界が開けて柵の外には夜の街が広がっていて全体を一望することが出来るがわざわざバイクを走らせて来るには中途半端な景色だ。この街を良く知っている相手がこの景色を見せたがるだろうかと疑問を抱いていると周囲を囲う柵に見慣れないものがついていることに気付く。よくよく見てみると南京錠のようでよく見かけるタイプの物からカラフルに色が塗られた物まであってその一つ一つに二人分の名前が書かれていた。その意図が分からずにいると相手が目を泳がしながらも説明してくれて【カップルの聖地】という浮かれた響きの言葉に目を瞬かせる。そして相手がポケットを探り錠とペンを取り出したのを見れば漸く相手がしたい事が分かって思わず口角があがる。南京錠をかけるとずっと一緒に居られるなどハードボイルドらしからぬジンクスやおまじないの類の噂だが、相手はそれを信じて準備と案内をしてくれたのだ、断る理由など一つもない。愛おしさと幸せが胸に募るのを感じながら少しからかい交じりに承諾の返事をすると南京錠とペンを受け取った。近くに小さなテーブルを見つけると一旦そちらに移動して「普通に名前を書けばいいのかい?」と手順を問いかけて)
、そりゃこうゆうのしなくでも俺達は永遠に一緒だけどな、こう……カップルならこういう事やるの定番らしいからな、だからご褒美だ
(相手の口角があがればこの場にきた意味を理解したようで胸がザワつくのは止まらない。承諾の返事は返ってきたが一緒に揶揄いまじりの言葉も飛んできて必死に言い訳を始めた。恋人の聖地だの二人でやるおまじないだの、下手すれば高校生レベルの恋愛与太話で普段ならば絶対にここへ誘うようなことはしなかっただろう。だが待ち合わせてデートに出かけるなんてそれこそ付き合いたてのカップルのようなことをして定番のデートコースを巡ったのだ、その流れでのご褒美となればカップルらしい事をしようと思ったのだ。焦って言い訳をしたせいで余計に恥ずかしいセリフを口にしたのは気付かぬまま、相手がテーブルへ近付いたのに併せて隣へと移動する。本来ならばこの関係は隠すべきもので名前を堂々と書くのはまずい。だがここは車やバイクでなければ来ることができないような場所だ、そうそう知り合いに南京錠を見られることはないだろう。アルファベットや名前を書かない等の選択肢もあったが相手の問いに頷くと「俺達の名前そのまま書いちまおうぜ」と吹っ切れたように答えて)
…なるほど、それはとっておきのご褒美のようだ。 、分かった、どうせならお互いの名前を書くことにしようか。
(相手にしては浮ついた場所に連れてきたことを少しからかってみれば必死に言い訳を始めるがその言葉の方がよっぽどストレートで恥ずかしいことには気付いてないようだ。何も無くとも永遠に一緒という言葉に口元はニヤけるばかりだが今はスルーしておくことにする。ますます笑みを深めて上機嫌になるとご褒美という言葉を強調して感想を口にした。デートの続きというならカップルらしいことをするべきという相手の意見には賛成だ。だが二人の関係は秘密のはずで名前を書けば見る人には分かってしまう。その事は相手も分かっているはずだがそのまま名前を書いても良いという思い切りの良い返事に目を瞬かせるも直ぐに笑みを浮かべてペンのキャップを取る。そのまま自分の名前を書こうとしたがせっかくなら更に想いを込めるために相手の名前を書くように提案すると錠の左側に比較的丁寧な字で『左.翔.太.郎』と記入して)
普通やらないことじゃねぇとご褒美にならねぇしな。……よし、なら俺も
(今日一日相手にエスコートされ風.都.でデートをしすっかり舞い上がっているのは事実なのだがそれを大っぴらに出すのはハードボイルド探偵として許されることではない。恋人の聖地で恋人同士でしかできないことなんて大浮かれした人間のやる事だ、あくまでもご褒美だからという点をこちらも強調しておくことにする。南京錠に名前を書き入れようとしたところでお互いの名前を書くことを提案されると「そうするか」と同意してそのまま見守る。何も言わずとも錠の左側に自分の名前が書き入れられていく。相手の文字で自分の名前が書かれていくのは小っ恥ずかしいところもあるが丁寧に書かれた文字はその分想いも詰まっているようで胸に温かなものが広がった。相手が書き終えたのを見ればペンを受け取って錠の右側に文字のバランスを考えながら丁寧な字で恋人の名前である『フィリップ』を書き入れた。これで正真正銘二人だけの南京錠だ、あとはこれを柵に付けるだけだが目につくところに置くのは少々恥ずかしく「ちょっと上に付けるか」と人の目線よりも高い位置を指さして)
…これで錠は完成だね。堂々と名前を書いたのにそこは気になるのかい?ならこの辺にしようか、
(浮かれた事をしている自覚はあるのか言い訳のように強調されるが永遠に一緒に居られるおまじないをすることをご褒美と相手も認識しているということ自体が甘い証拠だろう。そんな場所に連れてきてくれた相手への想いは募るばかりでその気持ちを刻むように錠に相手の名前を刻んだ。相手にペンを渡せば定位置でもある右側に丁寧な字で自分の名前が書き入れられていき、二種類の字と二人の名前が並ぶ光景に照れと嬉しさが混ざり合ったような感情が押し寄せて変にそわそわしながら見守っていれば世界に一つだけの南京錠が出来上がる。相手の説明によればあとは柵につけるだけだ。相手がその場所として高い位置を指さすと軽いツッコミを入れつつも柵に近づいて指定された上の方につけることに決める。腕の伸ばしてシャックル部分を柵に引っ掛け、繋いでない方の相手の手を取って南京錠の上で自分の手と重ねさせると目線を向ける。せっかくならばこの過程も共同作業という形にしたくて「これも一緒に、…せーの」と声をかけ同時に軽く力を込めるとかちっと音が辺りに響いて二人の南京錠が掛かり)
堂々としすぎんのも考えもんだろ。…、あぁ。……おまじないでも永遠に一緒ってのが増える分には悪い気はしねぇな
(世界にひとつの二人の錠が完成する。柵に付ける位置を指定すればツッコミが入る、きちんと互いの名前を書きたかったのと誰かにバレるのはまずいという相反した考えの結果だ。だが相手も高い位置に付けるのに同意してくれたようで錠が腕を伸ばした位置に引っ掛けられた。そして繋がっていない手を取られると錠の上で二人の手が重なる。一緒に、という言葉にこちらも相手の方を向いて目線を交える、溢れ出る幸福に口元は柔らかく弧を描いて頷いた。相手の合図で南京錠を柵に掛ける、カチャリいう音と共に二人は永遠に一緒にいられるという呪いがかかった。相手とは何度も約束を重ねてきたが同じ内容でもそれは何度でも交わしたい内容でこうやって形となるのも照れくさいが幸せの方が勝る。最初こそ照れを紛らわすように口を動かしていたが次第に胸には幸せが溢れて止まらなくなって一歩近づいて繋いでいた手を相手の後頭部に添えるとそっと口付ける。それと同時に二人の南京錠の上で重ねた手を強く握って)
ああ、君との繋がりを保証してくれる分には幾らあってもいい。…ん、……誓いのキスみたいだ
(目を合わせればこちらの意図は伝わったようで二人の名前が刻まれた南京錠を二人で柵にかける。しっかりとした造りのそれは誰かが故意に外そうとしなければずっとここに残ることだろう。何度も交わしてきた約束を今度は目に見えるものとして残せたことに自然と声が弾む。相手との関係は元々おまじないのような物に頼らないといけない程弱い物ではない。だがよりそれを強固に結び付けてくれるというのならどんなものだって相手としたい。柔らかく隣で笑う相手こそ永遠と一緒に居たい大切な人なのだから。そんな幸せに包まれていると相手が一歩近づいて後頭部に手が添えられる。瞼を閉じてすぐ唇に柔らかな物が触れると強く握られた手をこちらからも握り返した。恋人の聖地で恋人らしいことをする、その最たる行為から伝わってくる体温と溢れてくる幸せに胸だけでなく全身が満たされる心地がして握ってない方の手を相手の背中に添える。暫く触れるだけのキスを続けてそっと離れると至近距離で相手を見つめながら嬉しそうに感想告げて)
誓いのキスでおまじないがもっと強くなったかもな
(唇が重なって相手の唇の感触を感じる、同時に背中に相手の腕が添えられて柔らかく温かで幸せな空間が二人を包んだ。錠の上で重ねた手が相手からも握り返されればそこからも相手の体温が伝わって全身に広がり冬の冷たい気温に反して心は温かな幸せに浸っていた。唇は離れるが互いの距離は離れない、間近にある相手の瞳を真っ直ぐ見つめながら笑みをみせる相手にその言葉に乗っかるような返事を返す。相手との約束や繋がり、呪いその他なんでも重ねられるのならばいくらでも重ねていきたい。分かりきった事でも、何度でも口にして形にしたい。しかし自分で言っておいてさすがにクサイ台詞だったかと照れ笑いを浮かべ小さく笑い声を漏らす。笑い声と共に吐き出した息は白くなって宙へ散っていく、恥ずかしさを誤魔化すため目を閉じて互いの額と鼻先とを触れ合わせるもさすがに体の末端はよく冷えていた。今日は一時も相手から離れたくない、それは寒空の下以外でも続けられる。何せ今日帰る場所は一緒なのだ「そろそろ家帰るか」と声をかけ)
ならもっとするかい? ああ、昨日は別々だったからね。今日はいつも通り君の家に帰ろう。
(今日は朝から待ち合わせてデートして最後に良いご褒美を貰って浮かれっぱなしの一日だった。それも全部隣を歩くのが大切な相手だったこそだ。こちらの言葉に乗っかるような返事がされるとくすくすと笑って冗談っぽく言葉を続ける。相手とならば何度でも約束も誓いもおまじないも重ねたいし触れ合っていたい。だが山の中で夜も深まっていけば辺りの気温は低く額を合わせたお互いの口から吐き出される息もすっかり白い。少し名残惜しいがそろそろ自宅に帰るべきだろう。一夜離れていた分、一緒に夜の時間を過ごすのも楽しみで柔らかな笑みを浮かべて帰ることに賛成すると最後に南京錠を軽く握りしめて「頼んだよ」と祈りを込める。間違いなく二人だけの錠がついているのを確認すれば相手と手を繋ぎ直して螺旋階段を降りていく。そのまま細い道を歩いて駐車場まで戻ってくると来た時と同じく相手の後ろに乗り込み「暗いから安全運転で頼むよ」と茶化しつつもその身体に抱き着いて)
続きは家に帰ってからだ。俺の家じゃなくて俺達の家、だろ?
(このままさらに誓いのキスを重ねこの錠に込める約束をさらに強固にしていくのも悪くないように思える。だがこの吹きっさらしの展望台に長くいればもれなく二人とも風邪を引いてしまうだろう、そうなれば後々スリッパが二発飛んでくるのは間違いない。相手と体が離れて温もりは失われてしまう、しかし再び手が繋がれば確かにそこは暖かく相手の体温を感じることができた。約束の形となった錠を口元を緩ませながらみあげた後二人で連れ立ち展望台を降りる。向かうのは二人の家だ。今では一人で住んでいたのが考えられないほどあの家に相手がいることが当たり前になっている、昨日の夜それを強く感じたのだから間違いはない。バイクに跨り相手がこちらへと抱き着く、今度は背中から相手の体温を感じながら相手の腕に手を添え「任せとけ」と返事をすればバイクを発進させた。しばらく人気のない木々の間をぬけやがて建物かチラホラと見受けられるようになると最後には人々か行き交う風の街へと戻ってくる。嗅ぎなれた風を肌に受けながら走ればやがてバイクは二人の家へとたどり着いて)
_…ただいま。今日は充実した一日だったね、
(帰る場所について訂正が入ると口元に笑みが浮かぶ。相手の家に転がり込む形で住むようになったがあの場所は今や二人の家だ。寒さの中では早くその場所に帰りたくて、背中から体温を感じながら相手の運転に身を任せていた。人気のない木々の間を抜け段々と賑やかな街へと戻っていく。その時間に吹く風は冷たいがそれも好きなこの街の風だと思えば悪くない。やがて見慣れた景色が見えてきて家に辿り着く。バイクが停められると腕を解くが温もりを無くすのは惜しくて夜で家に入るまでだと頭の中で言い訳をしながら相手の手を取って軽く繋ぐ。繋がった手を引きながら家に向かい鍵を開けると中へと入る。リビングに辿りつくと一旦手を離し脱いだ上着をハンガーに掛けて家で過ごす服装となる。思えば今日は朝から待ち合わせの為に早く出かけてこの時間に帰ってきたのだから丸一日外にいたことになる。その間にした事も沢山あって満足げな表情浮かべながら感想口にして)
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