相乗りで何処までも 【 〆 】

ああ、早くメモリを破壊してしまった方が良い。…変身！　空に逃げられたなら撃ち落とすまでだ。
（メモリの効果か酷く高揚した様子の怪物の攻撃を相手に抱えられる形で横に回避する。ドライバーが腰に現れると相手の怒りが意識として伝わってくる。正規の手段では必ず刻印するコネクタはメモリの能力を安定させる他身体に蓄積する毒素を軽減させる作用を持つ。それもなしに未熟な子供の身体にメモリを使用する行為はどんな悪影響があるか分からない。返事をすると疾風のメモリを起動してドライバーに挿入する。意識とメモリを転送し、地面に倒れていく自分の身体を尻目に変身を果たす。その姿に一団からざわめきが起こるが再び襲い掛かってきた怪物に拳を打ち込む。肉弾戦は不利だと感じたのか翼をはためかせ上空に逃げようとするのを見ると相手側のメモリを青に変えて風を纏った弾を打ち出す。それによって制御が乱れたところをもう一発今度は体に当てれば怪物は地面に落ちてきて身体を打ち付ける。その様子を見れば「翔太郎、一気に決めてしまおう」と声を掛けて）

口だけはご立派だな。あぁ、ぶっ放すぞ！
(二人で一人の姿へと変身を果たせば今度は向こうが動揺する番だった。がむしゃらに向かってくる怪物は格闘の技術もなく難なく対抗することができる。翼を活かして空へ飛び上がるもそれならばとメモリを変えてマグナムから弾を放った。有利なはずの空でさえ簡単に攻撃されてしまい怪物は地面に落ちれば『くそ！なんなんだよ！』とイラつきを隠さない叫びをあげる。その様子を煽るように鼻で笑えば相手の合図で共にトドメの一撃を叩き込もうとマ.キ.シ.マ.ム.ド.ラ,イ.ブを発動させた。銃口を怪物へ向け『ト,リ.ガ.ー.エ.ア.ロ.バ.ス.タ.ー.！』と気合いの乗った声と共に風を纏った弾丸を連続で打ち出す。怪物は弾丸を喰らいよろけるも無理やり体を捻って攻撃から逃れる、そこそこの威力の弾丸を喰らいダメージを受けているはずなのに未だ動いた体に驚きを隠せなかった。いくらかダメージは通ったようで怪物は地面を転がり元の男子生徒へ戻る、しかしメモリを壊すのに至らなかった。それならばメモリを回収するしかないと近寄ろうとすると別の男子生徒が『まっつんパス！』と声をあげる。その声に反応した彼は声をあげた男子生徒へメモリを投げてよこす。すると今度はその男子がメモリを自らコネクタのない腕へと突き刺した。仮面の下で目を見開くと「あいつらメモリ使い回してんのかよ！」と驚愕の声をあげるしかない、あの危険物を仲間内で共有しているなんて。こちらが驚いている間に怪物は『みんな逃げろ！』と声をあげこちらへ向かって風を起こし牽制してくる。その間茜ちゃんは先程怪物になっていた男子を抱えてその場を去ってしまって)

っ…居ない。…恐らくあのメモリは非正規の方法で入手した代物だ。そしてあの様子を見る限り彼女が家に帰ってこない原因もメモリが関わっているのは間違いないだろうね
（相手に合図をしてとどめの一撃を放つが直撃を避けられると仮面の下で動揺を見せる。それでも蓄積したダメージで怪物は転がり元の姿に戻る。どうやらメモリは破壊されていないようで近づいて回収しようとすると別の男子が声を掛けメモリがそちらへ投げられる。そしてそのメモリを今度はその男子が腕に突き刺して怪物に変化する姿を見ては相手と同じように目を見開く。その間に怪物は風を起こして他の者に声をかけていて、一際強い突風に飛ばされまいと踏ん張って風が止んだ時には彼らの姿は消えていた。変身を解いて相手の隣に並び立つとあのメモリについて意見を述べる。コネクタがない点や未成年の手に渡っていることから売人から正式に買ったものでないのは容易に推測が立つ。その上本来使用者１人しか使えないメモリを使い回しているとなれば相当悪い状況なのは明らかで眉をひそめる。今回の依頼内容でもある彼女が帰ってこない理由もそこにあるだろうと考えれば「どうする、翔太郎」と相棒の様子を伺って）

……そうだな。茜ちゃんを連れ帰るってだけじゃ済まなさそうだ……まずは情報収集だ、あのメモリと茜ちゃんについて。検索頼めるか？
(強い風に足止めされ視界が戻った頃には人っ子一人居らず悪態をつく。事態は想像以上に悪い、メモリを所有していることがそもそもあってはならない事だがそのメモリをコネクタなしに使っている上仲間内で使いまわしているのだ。最初に使用した彼氏の男の様子を見るにメモリの影響を受けて精神に異常をきたしているのは明らかで放っておけば取り返しのつかないことになるのは目に見えている。相手も大方同じ見解のようで同意を示し頷く、彼女がオーナーの元に帰れないのはあのメモリが深く関わっているはずだ。捜査の方針を問われれば目線を下に向け考えを巡らせる。茜ちゃんに会い説得して連れ帰ればそれで終わると思っていた依頼は非正規品のメモリと繋がりを持っていた、となればもっと足元を固め腰を据えて挑まなければならない。早く彼女を救うためにも足だけで稼げなかった情報が必要だ。ここは相棒の出番だろう。相手の方に視線をやれば二つのキーワードを相手に伝え検索を頼み)

勿論だ、帰ったら直ぐに調べにかかるよ。＿＿では、検索を始めよう。…どうやら彼らが彼女に接触したのは１ヶ月前、そして今のように共に動くようになったのは二週間程前でこの数日間は殆ど一緒に過ごしているようだ。そしてメモリの方だけど…これだけじゃ絞りきれないみたいだ。 何かキーワードは思いつかないかい？
(単なる人探しであったはずの依頼にはこの街の闇が絡んでいた。一筋縄ではいかない展開に今後の方針を尋ねると伏せられた視線がこちらを向いて検索を頼まれる。ひとつの事について深く調べるのは自分の方が得意だ。深く頷いて了承すると検索と今後の方針を立てるため共に事務所へと戻った。ガレージに入れば早速手を広げて地.球.の.本.棚へアクセスする。まずは彼女の行動履歴を洗い出そうと検索を試みる。個人名では直ぐに本は見つかり意識の中でパラパラとそれを捲る。そこであの数人が一緒に行動するようになった経緯を見つけると意識外にいる相手に口頭で伝える。だがそれに至った動機など心の内は調べることが出来ず得られる情報はこれくらいのようだ。次にメモリについて戦った時の特徴などから『翼』『羽根』『メモリの使い回し』等のキーワードで検索を試みると本は減っていくがそれでもまだ本棚2つ分くらいは残っていて困ったようにそれを伝える。流石にこれを全て目を通す時間はない。更に絞り込むため相手に更なるキーワードを求めて)

___ってことはこの1ヶ月の間に何か変化があったってわけか……キーワード…高跳び。そうだ、茜ちゃんは陸上部に入って高跳びやってたはずだ。ちょうどここ1ヶ月くらいが陸上競技の大会の時期だしそれがきっかけかもしれねぇ。ならキーワードは、ジャンプだ
(二人で一旦ガレージへ戻り体制を立て直すべく検索が開始される。目を瞑り検索を開始する相手の正面に立ちまずは彼女に関する検索結果を聞いた。あの連中とつるむ時期は分かったがどんな心境の変化やきっかけがあってそれに至ったかは分からない。別角度からの調査が必要なようだ。続いてメモリの方は簡単に絞リ込めていないようだ。あのド.ー,パ,ン.ト,の外見はどうとでも取れる見た目や特徴でそれらしい技も使ってこずこれという言葉に絞るのは難しい。相手からキーワードを求められるがすぐに良いものは浮かんでこなかった。考えが難航していると脳裏に彼女の姿が浮かぶ、浮かない顔をしていたが最後彼氏を自称していた男子に手を貸して逃げたあたり力づくで服従させられているわけではなさそうだ。彼女とメモリ、二つを考えた時にひとつの記憶を思い出す。いつか自分の学校生活を語ってくれた時に高跳びで好成績を残せていると嬉しそうに話してくれていた。彼女が陸上部で行う高跳びと1ヶ月前から連中とつるみだした事実とが繋がる、それならばメモリとも繋がるかもしれない。相手が目を瞑っているのも気にせずニヒルな笑みを浮かべれば指をパチンと鳴らし追加のキーワードを告げて)

…ビンゴだ、翔太郎。どうやらアレはプテロサウルス、つまり翼竜の記憶を宿したメモリだ。翼竜は初めて空を飛んだ脊椎動物とされていて例えばその中のケツァルコアトルスは一度に2メートルもジャンプをして一気に飛び立ったのでは無いかとも言われている。高い飛翔能力で一気に飛び上がったり獲物を捉えるために急降下したりするらしい。…そしてココ最近この特徴に当てはまる巨大な影の目撃情報が近くの学校であがっているみたいだ
(絞りきれない本を前に助言を求めると暫し相手が悩み込む。あと1つでもワードがあれば絞りきれるはずだがその一手は検討がつかない。そのまま待っていると相手が何か思いついたようで彼女の要素をあげていく。先程の結果とも一致した情報に追加のワードとして『ジャンプ』を加えるとみるみる内に本は減っていき手元に一冊だけ残る。意識を現実に戻して瞼を開けると目の前にいる相手に軽い笑みを見せて当たりだと告げる。本を開いて中身を確認しながらホワイトボードに近づけばペンでその結果を書き出していく。あのメモリの正体は鳥ではなく爬虫類に分類される翼竜様類だ。発表されている論文の中では高いジャンプ力や飛翔能力を持ち三畳紀から白亜紀を空を自由に飛んでいたとされる翼竜、そのメモリの能力を書き出していけば相手の言っていた高飛びの競技と少しばかりリンクしているようにも思えた。パラパラと本を見ていく中で気になる記述を見つけると相手の方を向き直りメモリを使った行動と思われる目撃情報を告げて)

高い飛翔能力か。早くメモリ破壊しねぇとな……あいつら遊び半分でメモリ使って回ってんのか
(最後のキーワードによって本は絞られたようで目を開けた相手にキザな笑みを向ける。ホワイトボードに並べられていく文字を追いかけていけば確かにあのド.ー.パ.ン.ト.と特性が一致した。そして最後のキーワードにもなっていた飛翔能力、それが導き出されたのは茜ちゃんの情報からだ。そうなるとますます彼女がメモリを使用している可能性は高い。危険なメモリに危険な使用法をしているのならば早くあれを破壊してしまわなければ。さらに追加の情報でそれらしき影が目撃されているのを聞き眉間にシワが寄る。あの時メモリを使った二人は力を誇示したいという気持ちがかなり前に出ていた、到底手にすることの出来ない過ぎた力を使いたくて仕方がないのだろう。目撃情報だけで終わっていればいいのだが「そいつに襲われたって情報はねぇのか？」と彼らの痕跡を追うのを試みて)

襲撃情報は…あった、どうやら目撃情報があった日にその学校の陸上部の部員が何者かに襲われ怪我をしているみたいだね。ド.ー.パ.ン.トの仕業とは確定していないけど襲われた部員は皆メモリを使い回していた彼らよりも大会で上位を取った人物だ、これが襲撃の動機だろうか
(メモリには複数人使えると言った特別な記述は無かった。ならば彼らが勝手に使いまわしているか何かしら特別な手が加えられた改造品であることは間違いない。早く破壊した方が良さそうとお互いが思う中目撃情報を告れば相手の眉間にシワが寄る。更なる情報を問われ本を目で追っているとそれらしき文を見つけその情報を共有する。目撃情報と同日に起きた犯人不明の襲撃事件、そしてその被害者が大会で彼らより上位の成績だったとなれば繋がりが見えてくる。メモリの力を誇示したいという気持ちが強まって自分達を負けさせた人を襲って気持ちを晴らしているのかもしれない。ここで一度その大会の結果について調べ「彼らより上位だった学校が近所にもうひとつあるみたいだ」とその学校名を伝えて)

、あいつら自分より成績の良い奴を潰したってことか。茜ちゃんもそんなことしてるってのか？……あいつらが次襲うとしたらそこだ、行ってみようぜ
(メモリを使って飛んだだけならばまだ可愛いものだったが生身のこちらに容赦なく襲いかかってきたのを考えればそれはあまり期待できない可能性だ。案の定襲撃の情報がヒットする、しかも内容はあろう事か大会の上位選手を狙ったというものだ。大会で負けた腹いせだろう、何も生まない卑劣な行為にいよいよ本格的にお灸を据えなければと眉間のシワが深くなる。一方でこれに彼女が関わっているのを考えればそんなはずは無いと情の部分が叫びだす。前に会った時は確かに高跳びに精を出す女子高生だったはず、信じられないという気持ちの方が大きいが情に流されるのはハードボイルドではない。軽く息を吐くとやはり彼女に事の真相を聞かなければと頭が切り替わった。その間に相手はもうひとつ彼らより上位選手がいる学校を見つけたようだ。力を誇示していた奴らは自分達に鼻先をへし折られイライラしているはず、次に奴らが憂さ晴らしをするのはその学校だろう。相手に声をかけると再び事務所を出て目的の学校へ向かい)

あぁ、今ならまだ部員も学校にいるはずだ。＿＿ とりあえず陸上部の人に事情を伝えて…っ、翔太郎、ド.ー.パ.ン.トだ！
(隣から怒りと困惑の混じった声が聞こえる。なまじ顔見知りなだけあってそんな事を彼女がしているのが信じられないのだろう。だが彼らと共に行動してメモリを使った男子を庇って行方を晦ませた点からも彼女だけがメモリを使っていないというのは考えにくい。情に引っ張られるのではないかと様子を伺っていたが彼らを待ち伏せする為学校に行ってみる事が提案されると頷いて事務所を後にした。目的の学校にたどり着くと校門前の警備員に呼び止められる。視線を移せば以前いじめの調査をした時に行った高校に居た警備員と同じ人で事情を説明すれば自分から学校の方に話を通すと中に入れてくれた。感謝を伝えて中に入ればグラウンドにはまだ部活中の生徒が残っていてその中には陸上部らしき部員も居た。事情を説明して今すぐ安全な所に逃げて貰おうと声をかけようと近付くと突如突風が吹いてグラウンドに砂埃が舞う。目を庇いながら空を見上げるとあの怪物が翼をはためかせていてそれを指さしながら声を上げて)

、やっぱり狙ってきやがったか！危ないっ！！
(学校にやってきたはいいものの部外者である自分達がどう学内に入ろうかと考えていれば警備員に声をかけられる。どうやらこちらの事を知っていたらしくすんなり校内へと入れてもらう事が出来た。感謝を言いつつグラウンドに出ればまずは陸上部に近づき声をかけようとする。しかしその前に突風が吹き相手の指さす方を見れば例のド.ー.パ.ン.ト.が宙で翼をはためかせていた。ほぼ同時にグラウンドの片隅から『あいつらが来た！』と声があがる。そちらへ目を向けると茜ちゃんとその他陸上部員が少し離れた場所からこちらを窺うようにしてひとところにかたまっている。その声を受け怪物は怒りの声をあげるとまた邪魔される前に目的を果たそうとしたのか急降下をしかけてくる、だが狙いが分かっているならまだ間に合う距離だ。地面を蹴り真っ直ぐとひとりポツンと立つ高跳び棒を持った生徒へ駆けよればその子を抱えて地面に転がる、直後怪物が地面を抉るように駆け抜けていき『あああクソっ！！』と興奮状態で叫び声を上げていた。今度こそこいつらをまとめてとっ捕まえなければならない「今度こそ逃がさねぇ」とドライバーを腰に宛てがうと切札のメモリを起動し再び二人で一人の姿へと変身して)

彼らを監視しておいてくれ。 っ…この短時間でさっきより強くなっているみたいだ。 ここは焦らず確実に行こう
(グラウンドの片隅を見ると他のメンバーが固まって声をあげる。怪物は苛立ちの声をあげ邪魔される前に高飛び棒を持った生徒に急降下をしかける。咄嗟の判断で相手が生徒を抱えて転がりその攻撃を躱す。その事に酷い叫び声をあげる様は異常とも呼べる光景でメモリに精神が蝕まれてしまっている証拠だ。腰にドライバーが現れるとス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンをライブモードにして彼らの監視として放ってから疾風のメモリを構え挿入する。二人で1人の姿になれば大きく旋回して急降下してきた怪物の攻撃を避ける。再び空に戻ろうとする尾を掴まえて地面に叩きつけようとするが大きくなぎ払われ逆にこちらが地面に転がってしまう。怪物が空に飛び立つ隙に素早く体勢を整えるが先程には無かった力強さと更に素早くなった飛翔能力、そしてその成長スピードに少し焦ったように呟く。コネクタがない分身体に馴染み易いのかと思考を巡らせつつドライバーのメモリを黄色と青に変え、追尾する弾で確実にダメージを与えていき)

つまりそんだけメモリの影響を受けてるってことか。力だけじゃ勝てねぇことを教えてやらねぇとな
(相手がス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを飛ばし遠巻きにいる生徒を捕捉する、これで前のように散り散りに逃げられることはないだろう。先程の戦いである程度あの怪物の実力は分かっていたはずだったが容易に捕まえられると思った尾を振り払われて地面を転がされてしまい奥歯を噛む。相手の推測が言葉と思考で流れ込んでくれば早くメモリを破壊しなければ気がせってしまう。冷静でいられるのは隣に相棒がいるからだろう。空中にいる敵に対し最も威力を発揮する姿へ変わると確実に弾丸を打ち込んでいく。どれだけ逃げても追尾してくる弾に怪物は『いい加減ウザイんだよ！！』と猛スピードでこちらへ突っ込んできた。しかし先程の相手の言葉通り焦ってはいけない。ギリギリまで怪物を引きつけると既の所で攻撃を躱し、すれ違いざまにマグナムの銃口を怪物に向けると至近距離でその体を撃ち抜いた。悲鳴をあげる怪物に確かな手応えを感じる、怪物の体が地面に転がるとその姿は元の男子生徒へ戻った。しかしメモリはやはり砕けず地面に転がる。今度こそあの危険なメモリをこの手に取ろうと歩き出した時割って入る人影があった。『止めて！』と悲痛な声をあげたその人物は茜ちゃんでメモリを手に取ると胸に抱え込んでしまい『お願い壊さないで翔太郎兄ちゃん』と涙目で懇願されると動きを止めて)

…だけどそれはあくまでメモリの作用であって、…っ、メモリを使い回した副作用だ、毒素を処理しきれていない、
(いつも以上に共にある相手の意識が気が立っているのを感じれば何も言わずともフォローする側に回って冷静に状況を見るに務める。ギリギリまで引き付け至近距離で直撃した弾は怪物を撃ち抜き転がった怪物は男子生徒へと姿を戻す。地面に転がったメモリを回収しようとすればそれよりも早く人影が動いて彼女が悲痛な声と共にそれを拾って胸に抱えてしまう。無理矢理奪い取ることも出来そうだったが左の意識に合わせて彼女に視線を送っているとぽつりぽつりと彼女が語り出す。ずっと楽しんできた高飛びの競技が最近は上手くいかず記録が伸び悩んでいること、大会でも失敗してしまって親や先生に良い結果を報告出来なかったこと、そしてその時期に陸上部である彼らに誘われて行動するようになったこと。そして彼氏を名乗っていた彼が見知らぬ女性から貰ったこのメモリを勇気を出して使ったら身体が軽くなって空を飛ぶような感覚が掴めたと一連の流れを話すと「皆でコレを使えば何でも出来る気がするの、高飛びの記録だってこのメモリがあれば」と泣きそうな表情でメモリを握り締める。だが今彼女が感じている無敵感はメモリへ恐怖心を失わせる作用の代償に過ぎないもので冷静にそれを指摘しようとする。だがその最中に先程怪物になっていた男子がメモリを刺した方の腕を押さえて蹲り呻き声のような物をあげる。嫌な予感を覚えて男子に駆け寄りその腕を掴むとメモリを刺していた部分が爛れてしまっている。その原因は明らかで苦しむ男子を前に重々しく呟いて)

とりあえずこいつを病院に連れてかねぇと。フィリップ、救急車頼む
(メモリを抱え蹲る茜ちゃんの前に立ち静かにその話に耳を傾ける。彼女が苦しんでいたことは間違いなくその弱みに付け込まれてメモリを使ってしまった経緯は同情できる。しかしその力に依存するように溺れてメモリの力で強くなれていることに気が付かず、周りの子がライバルを狙って傷つけるのを隣でただ見ていた事実が悲しかった。茜ちゃんにどう声をかけるか迷っている間に相手は冷静に現実を説明しようとする。しかしその前に先程怪物になっていた男子が苦しみ始め慌ててその腕を確認するとメモリを刺した場所が爛れていた。これがコネクタなしにメモリを使った代償なのだ。その様子をみて他の取り巻きも茜ちゃんも動揺を見せた、自分もああなることを予感したのだろう。相手に救急車を頼むと変身を解き彼女の元に近付いて膝をつき目線を合わせる。泣き腫らす彼女の目を真っ直ぐ見つめ「言いたいことはいろいろあるが…親父さんが茜ちゃんを待ってる。笑顔でただいまって言ってあげてくれ」とこちらからの願いを告げると手を差し出し「メモリを俺に渡してくれ」と続ける。彼女は迷うようにこちらの顔と手のひらとを交互に見たが、やがてゆっくりと体勢を変えると震える手でこちらへとメモリを差し出そうとして)

分かった。っ、今のはまさか…。…彼女が真のメモリの使用者ならメモ.リブ.レイ.ク出来るはずだ、行けるかい？翔太郎
(変身が解かれて救急車の手配を頼まれると短く返事をして手元に戻ってきたス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンで関係各所に連絡を取る。学校の場所と状況を伝える間、相手は彼女の元に膝をつき説得を試みる。真っ直ぐと彼女を見つめ願いを伝えると彼女自らメモリを手放すように促す。連絡が終わりその様子を見守っていると彼女は相手の言葉に心動かされたのかゆっくりとそのメモリを差し出そうとする。だがほんの一瞬、その瞳が赤色のモヤが揺らめいた。見覚えのあるそれに驚いていると彼女は伸ばしていた手を引っ込めて『やっぱり翔太郎兄ちゃんにもコレは渡せない。これがあれば、私は…！』と悲痛な声をあげて袖を捲る。その腕には他の人には無かったコネクタが刻印されていた。どうやら初めに使用した主の使用者は彼女だったようだ。そこにメモリを突き刺すと彼女の姿がド.ー.パ.ン.トへと変わっていく。『私は何処までも飛ぶんだ、私が、私が…！』と叫ぶ様子はメモリの力に飲み込まれた人間そのものだ。その様子を見て動揺しているであろう相手の横に立てばこちらは極めていつも通りに冷静に、やるべきことを告げながら疾風メモリを構えて名前を呼び)

な、茜ちゃんッ！！……あぁ、彼女とあいつらを救えるのは俺達しかいねぇんだからな
(彼女がメモリをこちらへと差し出すのを手を差し出したままじっと見守る、もうすぐこちらの手にメモリが触れそうになった所で内心では彼女ならそうしてくれると信じていた心が報われたようだった。しかし既のところで彼女の目に赤いモヤが揺らめき息を飲むとその間に差し出されていた手は引っ込められてしまう。そして悲痛な声と共に袖が捲られればそこにあったのはコネクタでさらに息を詰まらせた。コネクタにメモリが飲み込まれていくと彼女の姿はみるみる怪物へと変わりうわ言のように発せられる言葉は今まで見てきたメモリ使用者の中でも特に酷い部類のもので動揺して一瞬動きを止めてしまった。だが相手の声が隣から聞こえればそちらへ視線を向けると同時に意識を手元に手繰り寄せやるべきことを見定める。今は彼女がメモリに毒されきっていたことを悲観している場合じゃない、そこから彼女を連れ戻せるのは自分と相棒以外いないのだ。決意を口にだせばドライバーを装着して切札のメモリを再び構える。二人のメモリが起動すれば「変身ッ！」と気合いをいれ口に出し装甲を纏った。怪物が翼を一振りすれば今までとは比べ物にならない風圧が迫り体が後ろへ押しやられる。上空へ飛び立つ怪物を見あげながら「今までダメージを与えても倒しきれてねぇなら狙うべきポイントがあるはずだ」と弱点を探るべきだと怪物を睨み)

っ…凄い力だ。弱点…ならドーパントの中にあるメモリを狙うのはどうだろうか、外部から直接破壊すれば彼女も元に戻るはずだ。
(相当メモリに毒されてるのか、それとも一瞬見えたモヤの影響か。どちらにしろ今彼女を止めなければ致命的な事態を招くのは目に見えている。相棒からも決意の言葉が返ってくると再び装甲を纏って怪物と対峙する。怪物が翼を一振りするだけで押しやられる程強い風が起きて更に成長してしまっていることを確認する。ただ攻撃するだけではメモリを壊すことが出来なかった。そこで相手から狙うべきポイント、つまり弱点を狙うことを提案されると一つの候補を出す。ド.ー.パ.ン.トは人が変化したものであるならメモリもそのまま体内に取り込まれている。ならばそこに直接強い攻撃を加えれば排出させずともメ.モリブ.レ.イク出来るはずだ。だがそれを成し遂げるにはメモリのある位置を特定し、正確にかつ強力な一撃を加える必要がある。難易度の高い課題に方法を悩んでいると怪物はこちらに急降下してきて鋭い爪を振り下ろす。地面を転がって間一髪で回避するも上空に戻った怪物は固くした羽根を棘のように投げかけてくる。相手側のメモリを青にして拡散力のある弾で相殺するがこれでは対策を考えたり観察する暇が無い。何とか怪物の攻撃を避け続けていると視界の端に連絡した救急車が到着してあの男子が運ばれていくのが見えた。他の部員はそれを心配そうに見たかと思えばこちらに少しだけ近付いてくる。危ないから避難するように口を開きかけた所で『左の翼の根元！』と切羽詰まった声が上がる。その声に従って怪物を注視すると確かに左の翼の肩側の根元が僅かに凹んでいる。彼女がメモリを刺したのは左腕、そしてド.ー.パ.ン,トになったことのある彼らの感覚を信じるならそこがメモリの位置だと考え「翔太郎、あそこに全力を叩き込もう」と声をかけて)

なるほど、メモリを直接狙えりゃ確実にメ.モ.リ.ブ.レ,イ.クできるってことか。なら場所が分かれば…
(大技を叩き込んでもメモリは破壊できなかった、ならばメモリを直接狙えばいいと相棒から提案がある。ただ体にダメージを叩き込んでも押し切れないのならメモリを直に破壊するというのは理にかなっている。あとはその位置だけだが怪物の猛攻を凌ぐのに精一杯で弱点を見定める時間がなかった。そんな中でメモリを使っていた男子生徒がこちらに向かってその答えを叫ぶ、相手と共に指定された場所へ目を向ければ確かに不自然な窪みがあった。狙うべき場所は決まった、相手の声に「あぁ、渾身のを叩き込んでやろうぜ」と答える。再び棘のような羽が降ってくるのを拡散弾を連射して掃討する、同時にバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.を取り出すと視界が晴れたタイミングでマグナムに装着した。次いでト.リ.ガ.ー.メ.モ.リをスロットに差し込みマ.キ.シ.マ.ム.ド.ラ.イ.ブ.を発動させる。拡散弾が一点に集約され狙うべきポイント、左翼の根元へ銃口を向けると「ト.リ.ガ.ー,バ.ット.シ.ュ.ー.テ.ィ.ン.グ.！」と必殺の一撃を叩き込んだ。怪物が悲鳴をあげ苦しむと同時に高い音を立ててメモリが砕け体外へ排出される、宙を舞っていた怪物はもとの彼女の姿へと戻った。翼を失い落ちていく彼女の元に駆け寄るとその体を受け止める、涙の跡を頬に残しながら意識を失った彼女をみればひとまずメモリを排出できたことに安堵して小さく息を吐き)