相乗りで何処までも 【 〆 】

そうだね、ならばこの二つでダブルパフェだ。
(滅多に浮かばない銀色の食材としてアラザンを見せると良い反応が返ってくる。袋を渡せば早速先程見つけた青色のチョコレートと共にグラスに入れていき、黒基調だった相手のパフェにメモリの色が揃う。その状態で隣にグラスが並べられると計6色が乗ったとっておきのパフェが出来上がって相手と目を合わせて無邪気な笑みを見せる。二人だけの特別なパフェに変身後の名前を名付けると自分のグラスから生クリームと緑のキウイを半分程スプーンにとり、相手のグラスから紫色のグミを一つ拝借していつもの組み合わせを作る。馴染みのある色に口元を緩ませては口に運び、楽しみながら食べ進めていき)

俺たちだけにしか作れねぇパフェだな
(二つのパフェを並べ相手の方に笑みを向ければ相手からも無邪気な笑みが返ってきて胸を暖かく満たす。普段の二人とそれぞれが持つメモリの色、それらを知るのはこの世でただ二人だけでだからこそ作ることのできた二つのパフェ。相手は緑のキウイと紫のグミを組み合わせ一番基本の組み合わせでそれらを口へと運んでいく。それならばとこちらは相手のパフェから黄色のキウイを取って青色のチョコを乗せ変幻自在の狙撃が出来る組み合わせを口へと運んだ。そうやって互いのものを交換しながら食べていけばあっという間に器を彩っていた層も飾りもなくなっていく。相手の器の方は最後の層、イチゴジャムの部分へとスプーンが入るようになって「この組み合わせも忘れねぇようにしねぇとな」とブラウニーと共にスプーンを相手のパフェへ入れるとイチゴジャムを絡ませながら引き上げ残しておいたアラザンをかけ一番お熱い組み合わせを作り出し)

手堅い組み合わせだね。ちゃんと食べ切れるか少し心配だったけど心配無かったようだ。
(二種類のパフェを作ったのがいつの間にか合作のような形になって進めていく。それぞれを単品で味わったり交換したり、思うがままの組み合わせで食べ進めていけば器の層もどんどん食べて無くなっていく。ついに一番底の部分も見えるようになればブラウニーにイチゴジャムとアラザンという熱く硬い組み合わせのトッピングをする相手に笑みを浮かべてその様子を見守る。自分もスポンジケーキにジャムとアラザンを乗せ同じ組み合わせで食べながらもすっかり完食に近い状態のグラスに素直な感想を呟く。甘いものが大好きという訳でもなかったが自分達が作ったということもあって無事完食出来そうである。最後の一口分となればスプーンいっぱいにスポンジケーキにイチゴジャムと生クリームを纏わせてから相手の口元に差し出して)

ひとつのパフェでも色々入ってんのに二つありゃ組み合わせ放題だからな。どんどん食べちまった
(熱い炎と硬い金属を模した組み合わせを口の中に入れればメモリの効果に反して甘いイチゴの味とアラザンの噛みごたえある食感が口に広がる。量こそ多いものになってしまったが、様々な食材を交換して食べ合わせを変えていけばあっという間に二つの器はかさがへってしまった。相手も最後の一口に差し掛かったようでスポンジケーキにたっぷりジャムとクリームを纏わせて特別甘い一口を作り出す。その特別な所が差し出されるのを見れば口を緩めて、すぐにはに食いつかずにこちらもスプーンで最後の一口を取り出す。細かく砕けたコーヒーゼリーには生クリームがたっぷりかかりその間にキラキラと砕けたキャンディが垣間見える。その最後の一口を相手に差し出しながら同時に差し出された相手の最後の一口を口に含んで)

…ん、特別美味しい一口だ。パフェとは素晴らしいスイーツだね、翔太郎。毎食これでもいいかもしれないな…
（最後の一口を差し出してみれば相手のパフェからコーヒーゼリーとたっぷりの生クリーム、そしてきらきらと宝石のように光るキャンディが散りばめられた特別な一口分がパフェスプーンに盛られて差し出される。相手と顔を見合わせて笑うとご機嫌にその一口を口に含む。ほろ苦いコーヒーゼリーと優しい甘味の生クリームに細かいキャンディの味でフレーバーがつくのに加え特別な一口となれば特段美味しく感じられて声が弾む。お互いに交換する形で完食を果たせば十分にパフェ作りとパフェ自体を満喫出来たと言えるだろう。食べる際に唇についた生クリームを舐め取って後味を楽しみながらも得た知識を検証出来たことに充実感を覚えると素直な感想を相手に告げる。最後まで楽しんで食べることが出来てお腹も大分満たされた。だが本の知識によれば今回食べたパフェはオリジナルとはいえ数多くあるうちの一つに過ぎない。他の物も食べてみたいという欲が湧くとこれからの食事をずっとパフェで済ませる案を真面目な顔で検討して）

たくさん楽しみが詰まってんのが良い所だよな。…、良いわけねぇだろ！こういうのはたまに食べるから良いんだよ、ご褒美みたいなもんだ
(お互いに最後の一口を食べさせあう、お互いの特別な一口を恋人でしか許されないやり方で交換すれば幸せと照れくささが混じった笑みを浮かべながら咀嚼した。イチゴジャムと生クリームがたっぷり染み込んだ一口は今日一番甘く、パフェに満足したのか唇についた生クリームを舐めとる相手にまた小さく笑みを漏らす。今日だけでパフェを作るところから二つのパフェを満喫する所までやったのだ、しばらくは相手の知的好奇心を満たし続けてくれるだろう。と思ったのも束の間、相手の検索欲は余計に刺激されてしまったのか大真面目な顔で毎食パフェをと言い出して、すかさずツッコミを入れることとなった。栄養が偏りすぎるのは目に見えている上、毎日こんな甘い物を食べるだなんてハードボイルド探偵の名に相応しくない行為だ。それこそ特別な時に食べるものであるパフェ、それならばと「今度何かのご褒美が必要になったら店のパフェ食べに行こうぜ」と代替え案を出し)

…確かに一理あるね。短期間に全て食べてしまうより期間を空けた方が新鮮さも味わえるかもしれない…、！そうしようか、喫茶店のパフェというものも興味がある。
（興味はあるが胃袋には限界がある、ならば毎食パフェにすれば解決ではないかと妙案を口にしてみたがすかさずツッコミをされて不満げな表情を見せる。だがたまに食べるから良いという相手の意見は無視出来ないものだ。頻度が高くないからこそ感じる美味しさや嬉しさと探求心の間で揺れている中、相手から魅力的な代替案が出てくると顔をそちらに向けすぐに食いつく。ご褒美としての約束、そして今度は店で提供されているパフェが食べられると聞けば興味の天秤は相手の案へ傾いていき、期待を前面に出した表情で賛成を示して）

（/いつもお世話になっております。そろそろ区切りが近いのかなと思いましてお声がけさせて頂きました。久々のほのぼの回で二人で平和にパフェ作りが出来てとても楽しくお返事させてもらいました。それぞれ個性の強いパフェだったりパフェと同じく甘いやり取りを重ねたりすることが出来て幸せな空間でした。今回もありがとうございました。
上記を続けてもいいですし、切り替えて次のお話にしてもいいとは思うのですがいかがでしょうか。後者ならばシリアスでもギャグっぽいドタバタ系でも楽しそうですのでご意見伺えたらと思います。）

(/こちらこそお世話になっております。思いつきのパフェ話でしたが、作り始めてからだんだん二人の要素がパフェに加わっていってとても二人らしいお話になったと思います。恋人らしい甘い時間も過ごせてとても幸せなお話に出来ました。こちらこそありがとうございます！
このまま続けるのも悩むのですが、ここはギャグっぽいお話をするのはいかがでしょう？前回あげさせていただいた二人の中身が入れ替わる話か、以前潜入した高校からの依頼でわがまま放題を言う監督の口にした事が全て叶う不可思議な現象を調べて欲しいと依頼がくるお話、とか考えておりました。検索様がやりたいお話などあれば教えてください！)

…ん……、……あれ、なんで僕が、っ！ え、…
(パフェ作りを楽しみ次のご褒美の約束をした数日後、街で遭遇したのは不思議な能力のド.ー.パ,.ン.トだった。物の性質を入れ替えるというメモリは金属を布のようにペラペラにしたり、逆にマフラーを鉄の塊のような鈍器にしたりと一般常識を覆すような現象ばかり起きた。それでも何とか二人の知恵と力を合わせて倒すことが出来たのだがメモリブレイクの際眩いフラッシュを浴びたのがずっと引っかかっていた。変身を解いても特に変化が無かったことから様子見ということで事務所に戻って事務作業をする。それから仕事を終え家に帰って食事や風呂を済ませても何事も無かったことから気のせいということになって眠った翌朝。何となく意識が浮上してゆっくりと目を開くと腕の中に自分の姿があった。寝ぼけていればスルーしそうになったが本来自分の姿が見える訳がない。何度か瞬きしてみるが状態は変わらず困惑の声をあげるがそれは自分の声ではなく聞き馴染んだ相棒の声だった。思わぬ出来事に動揺すると動揺しながらも「翔太郎、翔太郎」と自分では無い声で名前呼んで相手揺すり)

(/ギャグっぽい話となると片方が初期の頃の自分と入れ替わる話やよくある××しないと出られない部屋で普段はしないような課題を課すのも面白いかなと考えていたのですが以前上げてもらった中身が入れ替わる話はいかがでしょうか？ひとまず上記にてそれっぽく始めさせたので上手く乗って貰えたらと思います/蹴り可能です。)

、なんだよフィリップ……ん、…?……え、なんで俺が……
(いつもならば定刻に起きるはずの体は誰かに揺り起こされる。昨日いつにも増して奇想天外な能力を持つド.ー.パ.ン.ト.を相手にしたせいか肉体的にも精神的にも疲労が溜まっていたのは確かだがそれでも決まった時間に起きるのが探偵の体と言うもの。恋人に揺すって起こされるとは珍しい状況だがまだ寝ぼけているせいか幾分不満気な声を漏らした。しかし口から出たのがいつもとは違う声で違和感を覚える、正確に言えばこの声は聞き馴染みのある相手の声だ。いまだ上手く回らない頭のままゆっくり目を開けると視界に広がっているのは自分の顔で寝ぼけ眼で瞬きをする。なぜ鏡がなどと考えているうちに意識はハッキリして視界に映るものも像を結んでいく。しかし変わらず目の前にあるのは自分の顔でだんだんこれが現実だと認識してくると同時に混乱が襲ってくる。ポツリと再び呟くがやはり聞こえてくるのは相棒の声、流石の異常事態に勢いよく上半身を起こして自身の体を見ればそこには紫色の寝間着を着た相棒の体がある。対して隣を見れば緑色の寝間着を着た自分の体があって訳の分からない状態に「なんじゃこりゃ！！！」と相棒の声で叫ぶしかなく)

(/初期の性格と入れ替わってしまうお話も××しないと出られない部屋に閉じ込められてしまうお話もとても楽しそうですね！ギャグみたいな状況に巻き込まれてしまうのもメモリを使えばどうにでも展開できると思いますので是非是非順番にやっていきましょう。
そして導入ありがとうございます。今回かなり騒がしいお話になりそうですが、依頼が入って上手く地.球.の.本.棚を使えない探偵とかいつもより軽やかに動けちゃう検索くんとか出来ればと思っています。今回も楽しくまいりましょう！/こちら蹴りで大丈夫です)

…やはり君の体には僕が、僕の身体には君が居るみたいだね。 すぐに思い浮かぶ原因は昨日のド.ー.パ.ン.トの能力だけど…
(自分の体を揺するというのも奇妙な経験だが呼びかけていれば相手が目を覚ます。そこから聞こえる不満気な声は間違いなく自分の声でその表情が段々と困惑と驚きに変わっていく。身体を起こすとその違和感はより顕著となっていき、目の前の自分の身体が叫び声をあげるのを聞けばその中にいるのが相棒であると確証を持つ。つまり何らかの方法や効果でお互いの身体が入れ替わってしまったのだろう。有り得ないはずの状態だが普段の変身過程や以前猫になってしまったことを考えれば可能性がゼロとも言いきれない。相手の顔で顎に手を添え真剣に悩みこみながらも思い当たる原因を一つあげる。物質の性質を入れ替えるメモリ、もしそれが人の精神に作用するならば今回の事態を引き起こした原因といえるだろう。だがあの時メ.モ.リ.ブ.レ.イクをしたのだから能力は消えているはずでもある。現時点では何も分からないが今日が出勤日であるのは変わらない。「ひとまず状態を整理する為にも事務所に向かおうか」と自分の身体にいる相棒にいつもの調子で提案して)

昨日の時点じゃなにも起こらなかったのにどうなってんだよ……だな。ひとまず遅刻は避けねぇと
(自分の意思で喋っているはずなのに喉から聞こえてくるのはやはり相手の声だ。しかも普段聞かない多少乱暴な言葉遣いに違和感は増すばかり。それは相手にも同じ事が当てはまってこちらの姿形で理智的に話すのはかなり違和感がある。いつもよりふた回りほど賢そうに見えるのに若干理不尽さを覚えるも今回の原因を考えることへ頭を切り替えた。今起きている現象と昨日の散り際の一撃を考えれば原因はやはり昨日破壊したメモリにあるように思う。しかし相手の言うようにメモリは既に破壊されている状態だ。じっくりと考えたいところだがまずは腰を落ち着ける場所に移動すべきだ、相手の提案に同意すればベッドを降りる。身にまとっている寝間着は紫色である意味そこは合っているのだがそれはお互いに色を交換した結果であって本来着ているものではない。訳の分からない状態に頭を悩ませていれば外身が相手であるのをすっかり忘れてしまっていつも通りシャツとスーツズボンに手を伸ばして)

ひとまず昨日使われたメモリをもう一度調べてみて…翔太郎、君が今日着るべきなのはこっちだ
(分からないことばかりだがいつものように調べてみなければどうしようもないだろう。こういう時の切り替えの良さは頼れる相棒そのままで続いてベッドから降りると身支度を始める。背丈はほぼ一緒のため見える視野はさほど変わりないが背中の伸び具合や身体の軽さ等がいつもと違っていて変な感じだ。改めて相手の身体の中にいるのだと実感しながらも手始めに地.球.の.本.棚でメモリ自体を調べるべきだろうと方針を立てる。その傍ら自分の姿で探偵の服に手を伸ばすのを見れば声をかけてそれを止める。精神的にはいつもの服の方が落ち着くだろうが傍から見ればお互いの服を交換しているように見えるだろう。異常事態だがそれをあまり多くの人に知られるのは得策ではない。ならば身体に合わせていつも通りの格好をするべきだと主張すれば長Tシャツとロングパーカーを差し出す。代わりにこちらがシャツとスーツズボンに手を取って寝巻きの上着を脱ぐ。視線を下にやると自分にはない鍛え上げられた身体があって興味深そうにぺたぺたその筋肉を触ってみて)

え？あ……ったく調子狂うぜ……おい、人の体勝手に触るなよ！
(何よりもまずは情報の収集と整理が先だ、ずっとこのままという事態を避けるためにも動きやすい場所へと移動しなければ。相手に同意する返事を返そうとしたところで、着る服が違うと妙なことを言われ振り返れば事を理解する。視界の中に居るのは自分の体、つまり今は相手の服に着替えなければならない。周囲の混乱を避けるためにも見た目はいつも通りにした方が良いだろう、服を交換した状態で出歩いて変な噂が立つのもごめんだ。大人しく差し出された相手の服を受け取れば見慣れないそれを観察する。いつも目にしているはずの服だがゆったりとしたシルエットの服は着慣れず服の前後を確かめながら着る順番を考える。そうしているうちに相手は寝間着を脱いでいたが、いつもと違う体に興味を示したのか筋肉を触り始める。自分で自分の体を触っていることもさることながら、相手に何度も触れられたことがあるはずでも自分の知らぬところで体を観察されるのは何ともむず痒く思わず手首を掴んで動きを静止する。早く着替えろと促すように、そして筋肉を隠すようにアンダーウェアを引っつかむと無理やり着せて)

今日はこういう事が多そうだ。 今は自分の身体でもあると思うけど…まあ分かったよ。
(目覚めた時よりは目の前に自分の顔があることも声が違うことも慣れてきたがまだ無意識の行動は抜けきらない。相手も服のことを指摘すれば言いたいことを察したようで顔に合った服に着替えていく。前後や順番に戸惑う相手を他所にこちらも着替えついでに自らの身体を触ってみる。触る感触と触られる感覚を同時に覚えながらも自分にはあまりない筋肉を触れられるのは中々興味深い。良い機会だと検証するように触っていたが手首を捕まれその動きを制される。動かしているのが自分である以上、この身体もある意味自分のモノであると屁理屈をこねてみるも持ち主に駄目と言われると従うしかない。仕方ないとため息をつきながら覚えがある通りにシャツとスボンに着替えていく。緩く首元にネクタイを結ぶと「こんな感じでよかったかい？」と問いかけ)

馬鹿言うな、俺の体だ！…ネクタイはハードボイルドな探偵の基本だぜ？こうやってしっかり………
(体をそれこそ観察するように触り続けるのを静止すれば屁理屈が飛んでくるがここは譲る訳にはいかない。相手が自分の体に触れている時にこちらがどう感じているのか暴かれてしまうような行為は見過ごせなかった。無事体の観察は諦めたようでやれやれとため息をつきつつ着替えを進めていく。最初は手間取ったものの順番さえ分かれば問題がない、いつもよりゆったりとしたシルエットの服はやはり着慣れないがこれも周囲の混乱を防ぐためだ。こちらが着替え終わったところで声をかけられ目を向ける、そこにはゆるゆるのネクタイを首にぶら下げる自分がいてなんとも締まりのない格好だ。相手の顔でニヒルな笑みを浮かべるといつも通りのハードボイルドを謳う、気取った安楽椅子探偵の声が聞こえてくるのもなかなか面白く上機嫌なままネクタイを結び直そうとする。しかしいつか服を貸した時と同様正面から結ぶのには慣れておらず手がもたついてしまった。しかも間近には中身が相手とはいえ自分の顔があってなんとも奇妙な気持ちだ。結局耐えきれずに後ろへと回ると背中側から腕を回して必然的に抱きしめるようになりながらネクタイを結ぶ。いつも柔らかいと感じる相手の体だが対して自分の体を抱きしめるとがっしりとしていて暖かい。いつもこちらを抱き締める時にはこんな感覚なのかと思考が過ぎればそれこそ相手しか知りえない事を暴いてしまった気になって顔に熱が上りそうになった。急いでネクタイを締め終わると「髪も俺がやった方がよさそうだな」と多少早口で言い添えて)

自分の顔が見知った表情を浮かべるのはやっぱり慣れないな。…？ありがとう。 ああ、僕はこのままでも構わないけど今はハードボイルド探偵らしいからね。
(鏡でも見ているかのように普段の服を着た自分の姿が目の前にあるがその表情はニヒルな笑みが浮かびどうも見慣れない。相棒が中にいる何よりの証拠のようではあるが。案外相手も楽しんでいるのか気取ったようで上機嫌でもある態度でネクタイに手をかけられる。首元でネクタイを弄られるのは何処と無く擽ったく信頼してる人にしか許せない距離だろうなと客観的な感想を抱きながらその様子を見守っていたがどうやら正面からは上手くいかないようで後ろに回って抱き締めるような形で再挑戦される。ふと相手の方を見れば僅かに頬が赤い。照れた時などの自分の反応に近しいもののその原因が分からず不思議そうにしつつひとまずネクタイが仕上がると礼を伝えた。早口で髪に話題が移ると素直に頷く。自分にとってはこのままでは支障はないが左.翔.太.郎としてはいつものセットでいるべきなのだろう。相変わらずのこだわりだが今はそんな身体の中にいる訳で何となくその機会を活用しようと悪戯心が芽生える。相手の方に振り向くと「それにお前のカッコイイダーリンだからな」と相手の声で絶対に言わない類の台詞を似せた口調で告げウインクして見せ、時間差で自分でもくすくす笑って)

あぁ、なるべくいつも通りに…っ、人の体で何してんだ！遊ぶんじゃねぇ！！
(自分達がそもそもパニック状態の瀬戸際にいるのに周囲まで混乱させては事態の収集がつかなくなってしまう。ここは見た目だけでもいつも通りに整えておかなければ。相手同様こちらも髪のセットは向こうに頼んだ方がいいだろう。捜査も絡んでくるならば所長には中身が入れ替わっているのを伝えるべきだろうかと頭の隅で考えつつ話をしていると、近場にいた相手がこちらを振り向いてあろうことか絶対に言わないセリフを放っていた。自分の意志とは関係ないのに堂々と軟派なセリフを口にする自分の姿は恥ずかしいを通り越して意識を飛ばしそうになってしまう、すぐに正気を取り戻すと相手という名の自分の頬を両手で潰してこれ以上の悪戯を阻止した。異常事態だというのに余裕があるものだ、先程相手の体でハードボイルドを語ったのは棚にあげておく。このまま自分だけがダメージを負うのは納得がいかず「ならこっちも…」と相手が絶対に言わないであろうセリフを考える。先程のようなセリフはそもそも言うのが恥ずかしく、ならばと「翔太郎はすごくハードボイルドだね！」と相手の口調を真似て自分を褒めてみて)

この身体なら普段君がしないような言動が出来るなって思ってね。…、確かに僕なら言わないような言葉だ、
（異常事態ではあるのだがこの不思議な体験に対する好奇心や興味の方が強くなってしまうのが自分の性だ。自分の考えた言葉が相手の声帯によって発せられると普段では絶対聞けないそれに笑いが零れる。事情を知らなければ相手による行動だと信じて疑わないだろう。有効な活用方法を見つけてしまえば頬を潰されても悪びれることなく楽しそうにその目的を告げる。ちらりと横の鏡を見れば自分の手が相棒の頬を捕まえて居ていつもと逆の光景に口元がにやけた。すると目の前の自分の顔が何か悩んだ後、馴染みのある声で相棒のハードボイルドさを褒めていて目を瞬かせる。普段の自分の口調や声のトーンがばっちりなのは流石相棒といった所だが自分がしない言動を目の前でしているというのは確かに変な感じというかむず痒い。その一方で今の状況で自身を褒めるようなセリフをチョイスしたことに気付けば揶揄うような言葉投げかけて）

ぐ、……あ゛ー！！とにかく髪だ髪！セットするぞ！
(こちらが叫びながら相手を静止しているというのに相手は目を逸らしてニヤケ顔を浮かべている。それが自分の顔で行われるのだから余計に怒りも積もるというものだ。それらも相まって仕返しの意味も込めて相手が言わないであろう事を口にしたが見事に反撃を食らってしまって口を噤む。相手が自分のことをハードボイルドと言わないのだと主張するならば、遠回しに自分がハードボイルドではない半熟だと認めてしまっているようなものだ。あっさり口で負けてしまい完全にノックアウトされてしまった、当然反論できるはずもなく自分で自分を褒めるような事を言った事に虚しさも感じてしまう。言葉が続かなくなった代わりに全てを振り払うようにひとつ叫べば話題を無理やり髪のセットへと方向転換する。相手の体をくるりと回して洗面台の方へと背中を無理やり押しやって)