検索 2022-07-09 20:46:55 |
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っ、翔太郎、掴まってッ!
(追撃が加えられそうになるが相手が体当たりしてくれたおかげで何とかなった。今度は相手から攻撃を加えようとするがジャックは意味が掴めないようなことを言いながら反撃してくる。相手も咄嗟に避けまた取っ組み合いになるがその力加減は互角か若干男が上回っているように見えた。推理するゲームの都合上力で解決出来ないようにしているのか、それとも犯人の介入結果か分からないが身体能力が高く設定されているのは分かった。自分が加わって2対1でも怪しいと焦りが生まれる中、2人の更に奥の列車の進行先を見れば今から急カーブに差し掛かるレールが見えた。切り裂きジャックの犯行を止めることがクリア条件なら捕まえるのは必須では無い。一つの案が浮かぶが上手くいく保証はなく失敗すれば事態を悪化させ相手も失ってしまう行為、迷いが過ぎった所でふと鳴.海.荘.吉の言葉が浮かぶ。男の仕事の八割は決断というのなら今がその時だ。背中を押される形で立ち上がり自らのロングパーカーを脱ぐと男の前で手放す。強い風のせいで男の顔にパーカーが張り付き視界を奪うと動きを止めそれを引き剥がそうとする。だがその前に列車が急カーブに差し掛かればバランスを取ることが出来ず相手ごと車体から振り落とされそうになる。だがそれはさせない。出っ張りに足を引っ掛け自分を固定しながらも相手の名前を叫び限界まで腕を伸ばして)
ッ……、フィリップッ!!
(取っ組み合い膠着状態が続くがゆっくりと向こうに押されている気配に決断の時かと思った矢先、男の顔に相手のパーカーが張り付けば一気に向こうの力は緩んだ。同時に急カーブに差し掛かり足場が傾いてジャックの体勢が崩れる、ここが勝機、やることは決まった。男の体を掴むと車両の傾きに合わせて崖の方へ思いっきり男の体を放り投げる、確実にこのゲームをクリアするための勢いを付けるには自らの体ごと崖下に落とすしかない。男の体は宙を待って相手のパーカーを外した頃にはもう深い深い谷へと落ちていくところだった。同時に自らの体も宙に舞いここまで導いてくれた探偵の魂であるハットが風にさらわれ飛んでいく。後は相棒に託そうと体を捻って相手の方を見る、しかしそこに居たのは自らを捕まえようとこちらにめいっぱい手を伸ばす姿だった。名前を呼ばれると目が覚めたような感覚に陥る、最後まで二人で走り続ける約束はこの世界でも有効なはずだ、ここで一人脱落している場合ではない。こちらからも名前を呼んでめいっぱい手を伸ばす。こちらを助け出そうとして二人諸共崖に落ちる可能性より、二人でこのゲームをクリアする方に賭けた。限界まで手を伸ばせばパシンッという音と共に二人の手が繋がる、そのまま体は落ちることなく列車の勢いに煽られ車両の側面へと叩きつけられた。命が無事ならそれでいい、窓の縁に足をかけ相手に助けられながら車両の上へ戻ってくる。極度の緊張から解き放たれて荒れた息を整えながら「ありがとな、相棒」と礼を送っておいた。これで切り裂きジャックの犯行を阻止することが出来た。しかし周りの情景はなにも変わらない「これでクリアじゃねぇのか……?」と困惑する声をあげていると目の前にトンネルが見えて相手と共にかがんでそこを通過する。トンネルを抜けた先には街が広がっていてレールの終着には大きなターミナル駅が見えるが一向に止まる気配もゲームが終わる気配もなくて)
さっきのお返しさ。…もしかして切り裂きジャックの犯行を阻止した上で生存するのがクリア条件だったりして。
(何処であろうと相手が側にいなくては意味が無い。二人とも崖から降りてしまうリスクを犯してまで精一杯手を伸ばして名前を呼べば目が合ってその手が繋がる。強く繋がった手を引けば相手の身体が車両に当たるも何とか車両に引き上げることが出来た。賭けに近い行為だったが相手が助かったことに安堵の息を吐く。礼を言われると口元に笑みを浮かべて先程のお返しだと告げた。だが成すべきことはやり遂げたはずなのに何も変化は無い。トンネルをかかんで避けるとその先に駅らしき場所が見える。列車は止まることなく進んでいる。乗客と共に車掌も消えたのを思い出せばもしかしたらこの列車を制御する人はいないのでは無いかと悪い予想が立つ。それを証明するように列車はそのままのスピードで駅に突っ込もうとするのを感じれば冷や汗を感じながら仮説を口にする。このまま突っ込めば大惨事になるのは免れない。ジャックを何とかした上で生存しなければクリア条件を満たさないのかもしれない可能性を考えれば急いで登ってきた梯子を降りる。運転席のある車両に向かえば運転手は居らず制御不能になってしまっている。初めて見る車両ではブレーキの効かせ方も分からず「このままでは駅に突っ込んでしまう」と焦ったように告げて)
生存っつっても……____列車は止められねぇし、車両を切り離すのは二人じゃできねぇな……クソっ……
(ゲームクリアのアナウンスは流れず確実にターミナル駅は近づいてくる。このまま列車が突っ込めば確実に二人とも死亡判定になってしまうだろう。列車は止まるどころかさらにスピードをあげる中、相手が仮説を口にするとドッと冷や汗が吹き出るのが分かる。ここから二人だけで生存する道が本当にあるのだろうか。あの煙幕で乗客どころか車掌も消えて相棒と二人でこの場面を乗り切らなければならない。しかし地.球.の.本.棚.を使えない以上運転席へ行ってみてもブレーキの使い方は分からず、車両の接続部へ駆け寄って繋ぎを外してみようとするがとても二人の力では動かせないものだった。相手の焦る声を聞けば止める術がないことは明白で思わず悪態をついて迫る駅を睨む、これも犯人の妨害だろうか。せっかく切り裂きジャックの犯行を阻止するところまで来たのにここで終わるわけにはいかない。しかし何かないかと思考を巡らせても良い案は浮かばなかった。奥歯を噛み締め小さな範囲を歩き回って落ち着かないでいると、突然二人の目の前の空間に光がチラついた。まるでゲームオーバーになった時のような光の粒子が今度は一箇所に収束して一人の人間を形取る。光の粒子が作り出したのは鹿撃ち帽を被りパイプを手にもった男、それらを見れば目の前の男が誰だかすぐに分かる。シャーロック・ホームズが二人の目の前に現れたのだ。驚愕している間にホームズは『何してる、早く君たちは血塗れになるべきだ』と時折女性の声混じりに一方的に二人へ告げ、再び光の粒子となって消えていってしまった。ホームズがお助けキャラである以上今のはヒントなのだろうが意味はピンと来ない、無意味に体を探るがなにを持っているわけもなく相手の方に視線をやると「血塗れってなんだ?真っ赤になれってことか?!」と焦りを混じらせ叫び)
血塗れ、真っ赤…、もしかして赤ワイン? 翔太郎、貨物車両だ
(ブレーキの使い方も分からず切り離すことも出来ないことに焦りが募る中でも列車はスピードをあげていく。ここまで経ってもゲームクリアの伝達がない辺り無事にこの列車から降りるというのがクリア判定になっているのはほぼ間違いないだろう。何が状況を打破できる方法はないかと必死に考えを巡らせていると空間の一部が煌めいて光の粒子が集まり人の形を成していく。帽子とパイプを持った人物といえばこのゲームでは一人しかいない。思わぬ登場に目を瞬かせていると何やらヒントらしき事を言って再び粒子となって消えていく。恐らく本来のホームズの役割であっただろう助言を受けることが出来たが血塗れとは何のことだろうか。顎に手をやり必死にその意味を解読するようにキーワードと相手の叫んだワードを順に口にする。この時代で真っ赤になれる物を考えていると客室の車両に向かう間、貨物車両に赤ワインの樽が並んでいたことを思い出す。キリストの血とも扱われることを考えれば相手の方を見ながらそのことを伝え、腕を引っ張って急いで貨物列車へ向かう。品質を維持する為かワインの樽が並ぶ場所だけ区切られていてひとつの部屋となっている。扉を閉め「今ここにある樽を全部割ってくれ、そのワインの中に潜れば衝撃を和らげられるかもしれない」と指示と理由を告れば一番近くにあった小さめのワインの樽を床に叩きつける。その勢いで樽が割れると赤ワインが床に広がり触れた靴を赤くして)
ワイン?ワイン塗れでどうやっ、てっ………この大量のワインをクッションにしちまうってわけか。任せろ!
(血塗れが本当の血の意味ではないのは分かるがそれがなにを示すのか検討もつかない。もうちょっと良いヒントを出してくれと悪態をつきそうになったところで相手が何かを導き出したようで『ワイン』という単語を口にしてそちらを見る。確かにワインなら真っ赤に染まる事ができるがそれと生存方法が繋がらずさらに問いを重ねようとする。が、その前に腕を引かれて二人の体は走り出した。駅は迫りもう時間がないのは明らかだ、ここは相棒を信じる他はない。たどり着いたのはワインだけが保管された専用車両だ。適温を保つためか扉を閉めればそこそこ密閉されている空間、そこで相手の策をきけばようやくヒントとクリア方法が繋がって口角をあげた。確かに真っ赤な液体の中ならば列車が駅に突入する衝撃で体が床や壁に叩きつけられることは無い、まさに真っ赤な血塗れでゴールを迎えることになる。景気よく返事を返して手近にあった小さな樽を壊す。しかしこの空間を真っ赤に満たすにはひとつずつ壊すのでは時間が掛かりすぎる。周囲に目をやると扉の横に緊急用に備えられた斧が二つ壁にかかっていて、両手に取ると「フィリップ!これ使え!」とひとつを相手に投げ渡す。あとは全力で樽を壊し続けるだけだ。相手が頭脳を使いここまで導いたのならこの後は自分が体を使い解決する、いつもとやることは同じだ。斧を振り次々と樽を割っていけばあっという間に車両内は真っ赤なワインで満たされた。駅からの警笛が聞こえハッと顔をあげる。次いで先頭車両が駅へ突っ込み始めたのか耳障りな破壊音が聞こえてくる。急いで相手の方へ寄れば肩を掴み「思いっきり息吸え!」と指示を飛ばして肺に空気を溜め込むと二人の体をワインの中に沈め上から下まで真っ赤に染まって)
ああ、せーの! ___…ここは、…翔太郎!
(ワインの利用方法を告ればピンと来たようで相手も樽を壊し始める。だがこの方法を使うには大量のワインでこの部屋を満たす必要がある。そこで丁度相手が斧を見つけ、投げられた物を受け取ると口元に笑みを浮かべて樽に振り被る。二人で次々とワインを割っていけば室内はあっという間に赤色の液体で満たされ血を浴びたような姿となる。そのタイミングで警笛が鳴り先頭車両の方角から破壊音が聞こえてくると列車が駅に突っ込んだことを悟る。チャンスは一度きり、相手の声がけに力強く頷きこちらからも腕を肩に回して目一杯息を吸うとワインの海に沈む。直ぐに車両全体に激しい衝動が伝わり、目を瞑った状態で潜っていれば方向感覚も掴めず世界が一回転したような感覚を覚えた。何が何なのか分からない、それでも相手の腕を掴む手はそのままにぷつりと意識が途切れた。次に意識が浮上して目を開けるとそこは車両ではなく最初にルール説明を受けた時の薄暗い部屋だった。身体を起こし辺りを見渡すと他の参加者は居らず、相棒だけが転がってるのが見えると急いでそばに寄り名前を呼びながら身体を揺する。ここに戻ってきたということはゲームが終わったという事だ。少しすると『ゲームクリアおめでとう』と女性の声と機械音声が混じりあった声が部屋に響いて)
ん、……フィリッ、プ?、ロンドンじゃねぇ
(相手と共に赤い液体の中へ潜る。赤ワインに身を沈めてもあらゆる物が破壊されていく音はしっかりと耳に届き、次第にそれが大きくなると無意識に相手の体を引き寄せていた。そのまま赤ワインの中できりもみされるように体が回転し、上下が分からなくなると共に意識も手放してしまった。次に意識が浮上した時に聞こえたのは相手の声でその名前を呼びながら目を開け目線を合わせる。すぐに状況を思い出すも目の前に広がっているのは霧の街ではなくこのゲームで最初にやってきた空間だ。ゆっくり立ち上がって周りを見回していると女性の声と機械音声が混じった声が聞こえてくる、それは紛れもなくゲームクリアを成し遂げたことを告げるもので思わず「よしっ!」とガッツポーズをして相棒の方を見やる。ゲームを無事クリアしたことはもちろん二人で一緒にインチキの多いこのゲームをクリア出来たのが嬉しかった。直後周囲の空間が揺らいで赤黒いモヤが染み出し宙へと消える、薄暗かった空間はいくらか明るさを取り戻していた。直後に『ありがとう』と言われるもその声は女性の声だけになっている。続けて『私はノア。このゲームに搭載されているデータです。』と自己紹介が入る。確かこのVRゲームには最新鋭の人工知能が使われていたはずだ。そこから何者かの妨害が入って一部の制御権を奪われたこと、本来よりもクリア難易度があがっていたこと、危険な目にあわせてしまったことを謝罪される。恐らく先程モヤとなって消えたのがメモリの残滓のようなものだったのだろう。メモリ自体は破壊されていたが、データ上で人工知能と結びついてゲームを暴走させた、といったところだろうか。だがメモリの残滓もなくなりゲームもクリアしたとなればここでの問題は解決だ。『さぁ皆さんを起こしましょう。目を閉じて』と促されると相手に目配せしてから目を閉じて)
_…戻ってきた?
(クリアを告げられると相手と目が合って目的を成し遂げた喜びを分かち合う。その後周囲にゲームに入る時に見た物と同じモヤが現れ消えていくのを見れば周囲の空間も明るくなった。その環境の変化に驚いていると今度は女性の声で礼と自己紹介がされる。話をまとめると本来は人工知能に委ねられていたゲームの進行権の一部を外部の介入によって奪われていたという。メモリの力がプログラムにまで作用するとは思わなかったがコンビューターウイルスに近しい物だと思えば納得はいく。最後までシナリオを進めることでノアの方でメモリの影響の対処に当たることができ、ギリギリで制御を取り戻して出現させたのがあの時のホームズらしい。何はともあれゲームをクリアする事が出来れば目的は達成だ。声と相手に従い目を閉じれば再び穏やかに意識が沈んでいく。次に目を開けた時の視界はやけに狭い。ゆっくりと頭部の機械が上がっていき電子音が鳴った後目の前の出入り口用の蓋が開く。仮想現実がリアルだった分まだゲーム内にいる可能性を考えてしまったが周囲からもざわめきが聞こえてくるとこれまでと違う雰囲気を感じる。立ち上がりゲーム機から出るとゲームオーバーになったはずの参加者も機械から出てきて『助かった』『現実に戻ってこれた』と安堵や喜びの声を上げている。その様子を見たゲーム関係者や警察の方からも声が上がり忙しなく動く中で現実に戻ってきた実感が湧いてくれば咄嗟に相手の入っていた機械の方を向いてその存在を確認しようとして)
……、____
(相手と目を合わせたあとに声に従い目を閉じる。次に意識が浮上した時には目を開けているのに視界は薄暗く一瞬ここが何処なのか検討がつかなかった。しかし周囲から機械の駆動音が聞こえ電子音と共に機械が外れ視界が開けていく。周囲のざわめきは段々と大きくなり人々の安堵の声が聞こえてきた。どうやらきちんと全員が目を覚ます事が出来たようだ。ゆっくりとした足取りで機械から出て相手の姿を探せば同じくこちらを探す相手の姿が見えて、無事二人共現実に戻って来れた事を実感しつつ相手の方へと近寄る。周囲の喧騒とは裏腹にハードボイルド探偵としてクールな笑みを浮かべながら「上手くいったみたいだな」と軽く肩を叩く。ゲーム中の風景はある程度外にも共有されていたようでジンさんがこちらへ駆け寄ってくると『よくやった』と労いの言葉をかけられ同じく探偵らしい笑みで応えていた。ゲームの方はクリアしたが一番大きな問題が残っている。そもそものきっかけとなった依頼人を殺した犯人、そこまで突き止めなければ今回の事件は終われない。依頼人が切り裂きジャックを名指ししていたのだからあの男の言動に犯人に繋がる何かがあるはずだ。ジャックが話した中で不可解だったのは車両の上で組み合った時に聞いたあの言葉だろう。周囲が浮かれ騒ぐ中で思考を巡らせると「凶悪な血をノアに乗せて未来に繋ぐ……あいつの望みは血縁者を途切れさせない事、なのか?」と思いついた事を口にしていて)
血縁者?…このゲームに使われている人工知能は以前DNAの分析と判定に使われていた技術を応用した物だ。当初の開発ではそのDNAのデータを使って自分の先祖を再現して交流するという案もあったらしい。もしもその開発過程で不都合な結果、例えば切り裂きジャックのような連続殺人鬼の子孫だと判明したらその人物はその結果を揉み消したいはずだ
(相手が機械から出てきて近付いてくればこちらも小さく笑みを浮かべてその結果を噛み締める。参加者同士や関係者が戻ってきた喜びや安堵を分かち合ったり警察が事情聴取をする中、刃.野.刑事がこちらに来れば労いの言葉をかけられ、現実での状況が共有される。どうやら現実の方でも最初の説明がされた後ゲームの制御が効かなくなり、その要因を調べながらも参加者がゲームをクリアするまで待つしか無かったらしい。ひとまず命の危機は無くなったがそもそもの目的は依頼者が殺された理由や犯人に繋がる情報を得ることだ。相手の呟きを耳にすればゲームに参加する前開発者がしていた説明を思い出す。元々検査目的で作られた人工知能であること、当初はその技術を利用した体験ゲームが目的だったことを考えると開発者や関係者がサンプルとして自分のDNAを提供してもおかしくはない。ここからは仮説だがその結果として世紀の連続殺人鬼であるジャックの血縁者という判定が出たとしたら既に地位を持つ者なら隠したいと思うことだろう。それにも関わらず依頼人が切り裂きジャックを題材にしたシナリオを書いて全国規模のゲーム化をしようとしたのだ、動機になりうるように思う。すらすらと自らの考えを述べた後に「この仮説が合ってるなら初期の開発メンバーが気になるね」と告げ)
このゲームに関わった人間はみんなそれなりの地位の人間だ。そんなスキャンダラスな事が知れちまえばなんらかのダメージは避けられねぇ……どうやら向こうには心当たりがあるみたいだな
(こちらが呟いた言葉から何か気づきがあったのか相手が情報を繋げ仮説を組み立てていく。やはりこういう事は相棒の得意分野だろう。様々な分野の権威が集結し作られたこのゲームの初期メンバーの中に殺人鬼の子孫がいるなど世間の注目を悪い意味で集めるには十分な話題だ。しかも知ってか知らずかシナリオを書いたミステリー作家はその忌まわしき殺人鬼切り裂きジャックをゲームに登場させてしまったのだ。過去に人工知能がジャックの子孫のDNAを解析したとしてそのデータを保有していたならばジャックにあんなセリフを言わせてもおかしくない。あるいは依頼人がこの事実を知って出来心でシナリオにジャックに子孫がいる事を匂わせるセリフを組み込んだのかもしれない。いずれにせよ相手の推理があたっているなら保身のために人を殺しているなど許されない行為だ。会場を見回すと一角に開発メンバーが集まっている。そこでは参加者が無事で良かったと胸を撫で下ろす人々がいて、しかしその中に一人だけこちらを何度も伺う男をみつけた。刑事と話し真実を持ち帰った探偵二人に対して明らかに挙動不審な行為、静かに呟いた後真っ直ぐその男に近づいていく。男は自分がターゲットになっていることに気がつくと顔を青くして懐に手を入れた。声をかける前に男は叫び声をあげると懐からナイフを取り出す、それはゲーム内で切り裂きジャックが持っていたものと同じナイフだった。だが現実の世界で、しかも運動神経のピークが過ぎた中年の男性が相手となれば負ける事は無い。周囲からは悲鳴があがるが意に介せず襲いかかってきたナイフを弾いて後ろ手に腕を捻って男を床へと伏せさせて)
…!…やはりゲーム内のナイフと同じものだ。君が彼を殺した犯人だろう?
(通常では辿り着かないであろう動機、これが依頼人が死の淵で残した手掛かりだ。だがまだ仮説段階で具体的な証拠はない。それを今から探ろうといったところで相手の呟きを聞けば同じ方向に目線を向ける。そこにはこのゲームの開発メンバーと思わしき人達がいて最悪の事態を回避したことに安堵したりその後の対応を協議したりする中一人だけ妙な動きをする人物がいた。すると相手が仮にも犯人の可能性がある男に真正面から近づいていていくものだから警戒心の薄い行動に若干呆れながらも後ろをついていく。自分が目をつけられていることに気付いたのか男は懐に手を忍ばせ、叫び声をあげながらナイフを取り出すと突然のことに目を見開く。そのまま男が相手に襲い掛かってくるが生身の素人による真正面からの攻撃にやられるような相棒ではない。あっという間に床に伏せさせたのを見れば弾き飛ばしたナイフを拾い上げる。何となく見覚えがあるように感じたがやはりゲーム内で切り裂きジャックが犯行に使っていたものと同じだ。それを決定的証拠して男に突き付けるともう逃げ場はないと思ったのか抑え込まれたまま小さく頷いた。すぐに警察が駆けつけ現行犯として男の身柄を引き渡し確保されることとなった。ゲームの乗っ取り騒動と大勢の前での開発者による犯行で依然会場はざわめいているがこれでひとまず事件は解決したと言えるだろう。その後改めて部屋やステージの現場検証がなど行われ、ナイフから依頼人の血が検出されたことから殺人容疑でも男が逮捕されたそうだ。自分達も事情聴取を受けることになり、解放されたころには空が暗くなりつつあった。所長に報告するために事務所へ戻りながらも思考を巡らす。今回彼が犯行に及んだのは自分がジャックの子孫であることを知ったからだ。ノアの検査によって知った事実で図らずもジャックの言葉通り同じ殺人の道を歩んでしまったことを考えれば「彼がノアの結果を知ることがなかったら今回の件は起きなかったのだろうか」とぽつり呟いて)
キッカケはノアの結果だったんだろうけど、それでもその結果を受け止めて立ち向かう選択だって出来たはずだ。殺人を決めたのは紛れもなくあいつだろ
(犯人を取り押さえると後ろから着いてきていた相手が切り裂きジャックと同じナイフを使っていることを指摘して、押さえつけていた男は観念したようで犯行を認める。警察に身柄を引き渡したあとも依頼人の殺人周りからゲーム内の話まで細かく事情聴取を受ければあっという間に時間は過ぎてしまって帰路に着く頃には日が傾いていた。所長に帰りが遅いとどやされそうな時間であるのを考えるとまた長い説明をしなければならなさそうだ。19世紀ロンドンへの旅の話をするのは楽しみではあるがスリッパが飛んでこないのを切に願うしかない。ため息が出そうになったところで相手がポツリと呟きを零す。犯人の男にとっては自分が切り裂きジャックの末裔であることも、切り裂きジャックがシナリオに組み込まれてしまったことも予想だにしない出来事だったのだろう。しかし男は他人を犠牲にしてそこから逃げる選択をした、その一歩は間違いなく男の意思であり自分がどうにでもできる範疇にある選択だったはずだ。事実から目を背けて誰かを泣かせたと言うのなら罪を数えさせなければならない。同情の余地はあるが見過ごせないのは間違いない、暗くなっていく風の街を眺めながら「それに、生まれや血縁でそいつがどうなるかなんて決まっちゃいねぇしな」と言い添えて)
…そうだね。 さて、僕たちの事務所に帰ろうか翔太郎。
(自分の知らない出自の情報を急に知らされてその事をきっかけに彼は犯行に及んだ。それはあの施設に居た時より前の記憶を全て失っている自分には無関係とは思えなかった。もしも自分にも目を逸らしたくなるような何かがあったなら、同じ道を辿ってしまうのだろうか。そんな不安が頭を過ぎると表情に影が落ちて思わず呟きが口から溢れた。それを聞いた相手が犯行を決めたのは男自身の意思だと述べると伏せつつあった顔をあげてその横顔を見つめる。厳しくも優しくもあるその考えは今の自分を肯定してくれるもので覆っていた不安の靄が晴れていくような感覚を感じながらも返事をした。何があっても自分は探偵で相手の相棒であることには変わりない。気持ちに整理がつけば表情を幾らか柔らかくして自分たちがいるべき場所に帰ろうと声を掛ける。一時的に霧の街の探偵をしたものだが自分たちが過ごすのはこの風.都.だ。周囲を見渡して誰もいないことを確認すれば少し距離を詰めて相手の手を取る。ゲームの中ではない現実の相手の温もりを感じるとそのまま手を引いて事務所への帰路について)
(/いつもお世話になっております。そろそろ終わりが近いかなと思いましてお声がけさせていただきました。殺人事件の調査と19世紀のロンドンを探索する話でしたが普段は出来ないようなハラハラする展開が出来てとても楽しかったです。話の流れをなぞりながらも二人ならではのロジックや展開を取り入れたこともあって相棒感の強い事件と謎解きになったと思います。探偵君もいつもに増してかっこよくドキドキしながらお返事させて頂きました。今回もありがとうございました。
次回のお話ですがいかがいたしましょうか。今回長めのお話だったので日常系の小話を挟むのもよし、以前提案してもらったものや新しくやりたいことをするのもアリだなと思っていますので探偵様の意見等あればお聞かせください!)
だな。……お前が警視総監の息子でも大泥棒の末裔でも、お前は俺の相棒だ
(少々クサイような気もしたが思うがままを述べると相手の顔がこちらに向いているのに気がついてこちらも目線を合わせた。ちょうどその顔は少々暗い顔から柔らかなものへ変わるところで、先程の声色と合わせれば凡そなにを考えていたか察しがついた。相手は記憶喪失の身、相手にもいつか出自を知る時が訪れるかもしれない。同じ状況に自分が置かれた時の事を想像したのだろう。だが答えは同じだ、血筋でその人は決まらない、あくまでも選び取るのは自分自身だ。そして相手がこの街を守る選択をし続けると確信している。薄暗くなった道の途中相手と距離が縮まって二人の手が繋がれる。こちらからもしっかり握り返した後、最初は少々茶化した言い草で、しかし最後の言葉は相手の目を見据え真っ直ぐとこちらの本意を伝える。相手が二人で一人の相棒であることは揺るぎない事実だ、この先何処までも。またクサイことを言ってしまったかと目線を前へ戻すと事務所への道を歩いて)
(/こちらこそお世話になっております。映画の内容はかなりうろ覚えでしたが、どちらも脱落することなく二人でゲームクリアでき二人ならではの物語になりましたね!おっしゃる通り今回は相棒感強めで二人だけで危機を乗り越える感じがして毎回とてもワクワクしながらお返事させていただきました。元ネタが元ネタですので検索くんの推理が冴え渡る場面が多く、探偵が相棒として自慢げに横に立っている姿が浮かんで終始楽しい時間でした。こちらこそありがとうございました!
今回は長めでしたし、次のお話はゆったりとした日常かドタバタしたやり取りだと良いかなと思っています。二人でパフェを作るお話や中身が入れ替わってしまうお話など思いついているのですが、検索様はいかがでしょうか?)
…うん。君のハーフボイルドさについて行けるのは僕くらいだろうからね。いつまでも君の相棒だ。
(今の自分がいる場所を確かめるように相手の手を取ればしっかりと握り返される。それだけで安心できて小さく息を吐いた。相手がこちらを向いて茶化したような例をあげながらも最後の言葉は真っ直ぐとこちらを向きながら告げられると僅かに目を開いた後、噛み締めるように素直に頷く。過去の自分が何者だったか分からないが今の自分は間違いなくフィリップであり探偵であり、大切な相棒だ。自分の発言に照れたのか視線が進行方向に向いて再び歩き始めると思わず口角が上がってからかう様な言葉を向けながらも事務所へ帰っていき)
(/入れ替わりネタも是非やりたいのですがのんびりした日常を挟みたいなということでパフェを作る話はいかがでしょうか?ハロウィンでゲットしたお菓子使って盛り付けたりそれぞれ作ったりと楽しそうです。区切りが良いかなと思いますので上記蹴ってもらっても大丈夫です…!)
……どうすっかな、これ
(19世紀末ロンドンへ旅した日、遅い時間に事務所へ帰ってから予想通り所長は『私聞いてない!』のオンパレードだった。とりあえず最新鋭のVRゲームに参加したところでスリッパが一発飛んできたがその後命を賭けたゲームになったくだりを話せば心配そうな顔を浮かべる。こういう所が憎めないのだと決して口には出さずに一連の話をすれば、結局最後は二人だけずるいだの一般公開されたら一番に連れてってなど無茶な話が続いて最後にはいつも通り言い争いで幕を閉じた。そこから一週間ほどして本日の事務所は平和そのものだ。所長も用があるからと先に帰りたまには片付けでもするかと手をつけ始め真っ先に出てきたのがハロウィンで貰ったお菓子の山だった。毎年配るだけだったのが今年は自ら集めたのとコンテストで優勝して山盛り貰ったのでなかなかの量がある。少しずつ消費してはいるもののまだまだ道のりは遠そうだ。どうにか処理する方法はないかと普段は依頼人との打ち合わせを行う入口近くのテーブルにお菓子を広げて腕を組んでおり)
(/ではパフェを作るお話としましょう。ハロウィンのお菓子を使って作るのはナイスアイディアですね!お好み焼きの時のようにそれぞれ作るのも楽しそうです。それでは導入おいておきますのでいつも通りいい感じに乗ってください!/こちら蹴りで大丈夫です!)
翔太郎、君は知っているかい?パフェという食べ物を! パフェは元々フランスの氷菓が起源とされているけど日本に入ってくると様々な手が加えられ今ではその見た目も味も種類豊富な代表的なスイーツの一つだ。この雑誌はいちごパフェやバナナパフェなど定番なものを取り扱っているようだけど中にはソフトクリームが入っているものや揚げ物が乗っているものもあるらしい、実に興味深いね…
(ゲームの世界に入った件から一週間ほど、危険を感じた霧の街とは裏腹に風の街は平和そのもので穏やかな日々を過ごしていた。そんな中あるものに熱中すれば昼からガレージに篭もり検索をしていた。関連書籍を読み切ってインプットを終えれば本を持って螺旋階段を駆け上がる。事務所に出てきてお目当ての人物を入口辺りに見つけるとその勢いのまま相手に駆け寄って得意げな表情と共に話題を振る。何時からか調べた知識を相手にアウトプットするのが習慣ともなっていて相手の話を聞かぬままノンストップでパフェの知識を捲し立てていく。一通り喋り終えると唇に指を添えながらにやりと笑みを浮かべるもふとテーブルの上にある菓子が視界に入ると「これはハロウィンの時のお菓子かい?」と問いかけ)
……っ、……あ゛ーー!!分かった分かった!…あぁ、今年は大量に貰っちまったからな。パフェよりこれをどうするか考える方が先……
(大量のお菓子を前に捨てるのは絶対になしとして、美味しくたくさん食べられる方法を模索するもすぐには思い浮かばない。貰い物である以上近所の子供に配るのも違う、と考えていたところでようやくガレージの方から慌ただしい足音が聞こえてくるのに気がついた。こういう時相手がどういう状態かは察しがつくが逃げる前にガレージの扉が開き静止する前に目の前でマシンガントークが始まってしまった。知識の暴走特急状態の相手を止める術などなく呆気に取られながらパフェに関する知識を受け止めていた。興奮状態の相手が喋り終わる頃にはこちらも限界を迎えていて思わず叫び声をあげ両肩を掴んで落ち着かせようとする。だが相手が意に介することはないだろう、次の検索が始まる前に気をそらせないかと思っていれば相手の興味は机の上に広げられたお菓子へと向いた。目にも鮮やかなハロウィンのお菓子達だがこの平和な日に一気に数を減らしたい所、パフェの話を脇におこうとしたところでふと考えが浮かぶ。パフェは見た目にもこだわるようなものだがこのお菓子の数々はデコレーションにはピッタリなものが多い。パフェならば大量にお菓子を使いなおかつ楽しく美味しく数を減らせるはずだ。良い案は浮かんだものの自らパフェを食べたいと言うのはハードボイルドの名が廃る、それならばと「なぁフィリップ、そのパフェ作ってみたくないか?」と相手の知的好奇心をつついてやることにして)
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