相乗りで何処までも 【 〆 】

…ん、明日は忙しくなりそうだからね。ゲームの中で寝るというのも可笑しな話だけど、おやすみ。
（相手の背中と頭を撫でながら大丈夫と告げれば相手の腕の力は緩んで表情も幾らか柔らかくなる。今自分たちの背中に乗っている物は重たく状況も良いとは言えないがやるべき事はいつもと変わらない。二人で一人の探偵として事件を解決してあの家に帰るだけだ。頬に手を添えられ指で撫でられると心地よさそうに僅かに目を細めながら身を任せる。この温もりを現実でも感じるためにもためにも明日が勝負だ。唇に慣れ親しんだ柔らかな感触を覚えると胸に溢れる愛おしさに更に口元を緩めつつ相手の言葉に頷く。催眠状態で眠っているにも等しいゲーム内で寝るという行為も変な話だが時間を進めるという意味でもこのまま寝てしまうのが良いだろう。布団を肩辺りまで引っ張ってきて二人の上に掛けるともう少しだけ擦り寄ってから就寝の挨拶を告げ、瞼を閉じて眠りに落ちていき）

あぁ、切り裂きジャックを捕まえるって大仕事のためにゆっくり寝るか。おやすみ……
(重なる唇の感触はいつもと変わらないものでこれが仮想空間が作る幻だとしても心地好いのは変わらない。布団が肩まで掛けられて相手がこちらへ擦り寄ってくる、その体を柔らかく抱き寄せた後に目を瞑って眠りへと落ちていった。そもそも睡眠状態で仮想空間にいるのだから実際に寝たのかどうかは定かではないが窓から朝日が差し込めば自然と目を開ける。一瞬見慣れぬ部屋に戸惑うものの隣に相手が眠っているのを見れば事の顛末を思い出す。ひとまず体は一晩眠ったのと同じように回復していて今日一日歩き回るのに支障はなさそうだ。相手を優しく叩いて「フィリップ、朝だ起きろ」と名前を呼んで起こす。モリアーティ教授が約束通り動いたのならば今朝の朝刊に例の広告が載っているはずだ。手早く着替えを済ませ二人の準備が整った頃合に例の女性が扉をノックして入ってくる。一緒に眠っているところを見られなくてよかったと内心安堵していると『朝刊が届いたわよ！』と弾んだ声で部屋へと入ってきて二人に新聞を差し出し)

広告は…ちゃんとあるね。この前と同じ読み方をするならば…今宵オペラ劇場の掃除をされたし。オペラ劇場…まさか、アイリーンアドラー？ 確か彼女はホームズにとって特別な人物だったはずだ。
(誰かに名前を呼ばれて意識が浮上して目を開いた。見知らぬ部屋に相手の姿があってまだゲームの中であることを思い出す。朝の挨拶をすれば今回の主目的である朝刊を確認する為に手早く着替えと準備を済ませると丁度良いタイミングで女性がやってくる。差し出された朝刊を礼を伝えながら受け取ると早速中を確認する。新聞の端の方にこれまでと同じ会社による広告を見つければ彼が約束を守ってくれたことに一安心する。そこに書かれた文字を同じ解読方法で読んでいけば一つの文章が浮かび上がる。掃除が殺害の暗喩だとしてターゲットは誰かと考えた所でホームズの作中にオペラ歌手が居たことを思い出す。その名前を上げた後、彼女がホームズにとって唯一認めた女性かつ特別な人物であることを思い出せば若干沈んだ声でそれを相手に伝えた。教授がホームズの宿敵で憎く思っているのならばその大切な人を襲わせようとする可能性は十分にありえる。もう片方の新聞の面にオペラ劇場の公演スケジュールが記載してあり、そこには彼女の名前があることからほぼ間違いないだろう。切り裂きジャックの犯行が成功しても失敗しても教授にとって利になるような指示に思う所はあるがそうも言ってられない状況だ。全てを終わらせるためにも「オペラ劇場に先回りして待ち伏せしようか」と提案して)

、わざわざホームズの関係者狙わせるなんてタチが悪いな……あぁ、ひとまずそのアイリーンってのにこの事を伝えねぇと
(相手と共に朝刊を覗きこめば例の広告を見つけ一安心すると共にこれが殺人の指示なのだと思えば緊張感も胸に過ぎる。広告の文字が解読され出てきたのはオペラ劇場の文字、それだけでは意味が通らなかったがその場所にホームズにとって特別な女性がいるとなれば話は別だ。手に負えなくなった殺人鬼を捕まえさせるためにホームズの弱点を危険に晒すとは、抜け目のないやり口にまた苦々しい顔をするがここで取るべき最良の選択肢はアイリーンを守り切り裂きジャックを捕まえる事だろう。目的地が決まれば相手に返事をして早速行動を開始する。出迎えてくれた時から朝刊を届けてくれた所まで色々と世話になった女性に最後の機会だろうと念入りに礼を伝えるとオペラ劇場へと向かう。新聞の反対面に書かれていた公演スケジュールを見るに舞台が始まるまではもう少し時間がある、最善なのは殺しをしにきた切り裂きジャックが何かをする前に取り押さえる事だがこればっかりは出たとこ勝負だろう。オペラ劇場にたどり着き関係者入口に近づくと当然の如く係員に止められてしまう。しかしホームズの名前を出してアイリーンに会いたい旨を伝えれば『またあの人ですか』と入口の係は慣れた様子で二人を通してくれた。相手へ目配せすると舞台裏へと入っていきターゲットとなっている人物を探して)

…、きっと彼女だ。どうするんだい、一番確実なのは公演を中止してもらう事だろうけど聞き入れて貰えるかは微妙だ。命を狙われていることを伝えるか伏せて護衛をするか君に任せるよ
(開演時間よりも前に劇場に辿り着くことが出来た。有名な公演のようで劇場も広く全ての出入り口を監視するのも難しいだろう。ひとまずターゲットである彼女を見つけようと関係者入口に向かって止められてしまうが相手の上手い交渉口でホームズの名前を出せばすんなり通してくれた。ホームズの助手のような素振りで堂々と中に入れば舞台裏を探していく。ターゲットの名前と基本情報しか知らない状態で見つかるか若干心配だったが控え室のひとつから綺麗な歌声が聞こえてくればそちらに近付いて部屋を覗き込む。そこには凛とした女性が一人で発声の調整をしているようで直感的にこの人物こそがアイリーンであることを理解した。彼女は見つかったが問題はここからだ。被害者を出さないようにするのに最適なのは公演を中止してもらい彼女の傍で警護することだろう。だがホームズの名があるとはいえ新聞の暗号や切り裂きジャックの件を信用して貰えない可能性は少なくない。次点で近くで彼女を護衛することが方法として浮かぶがそれに関しても命を狙われてることを伝えるか伏せるかで対処は変わる。むやみやたらに怖がらせるのも考え物かもしれないと考えればこういう事に長けている相手に一任することにして)

(/再び本体から失礼します。すみません、本日も体調が優れずしばらくお返事できなさそうです……夜に回復しましたら投稿させていただきます。度々申し訳ないです/こちら蹴りで大丈夫です)

(/ご連絡ありがとうございます。ほんと無理はなさらず、返信も夜とは言わず回復しきって余裕がある時で全然構わないのでまずはゆっくりお休みください。楽しいやり取りも探偵様が健康であってこそですし、のんびりお待ちしております。/蹴りで大丈夫です)

そうだな……あからさまに動きすぎちゃジャックに勘づかれて手を出して来ないかもしれねぇ。ベストなのはこのまま公演をする素振りをしつつ直前で開演を中止して、混乱に乗じて乗り込んできたジャックを捕まえるって筋書きだな。どう転ぶにしろアイリーンの身の安全が第一だ、彼女に命の危険があるのを伝えるべきだな
(舞台裏への潜入にあっさりと成功し美しい歌声へ引き寄せられるように控え室をのぞけばそこには一人の女性がいる、脇に用意されている衣装の豪華さから言ってもきっと彼女が今日の舞台の主役、アイリーン・アドラーなのだろう。相手からこれからの動きを任されると暫し考えてから口を開く。教授の指示が有効である今日に捕まえてしまわなければもう一度ジャックに接触する機会を得るのは難しく、この機会を無駄にすることは出来ない。となれば派手な動きは禁物だ、上手くジャックをおびき出さなければならない。普段通り公演が行われる素振りをしつつアイリーンを守るべきだが、彼女がもしもの時にも対処できるよう事前に狙われているのは伝えるべきだろう。方針を固めていると『あら、どなた？』と控え室を覗き込む二人に向かって彼女から声がかかった。「こんにちはお嬢さん、俺達はホームズからの伝言を伝えにきました」といつもの調子で声をかけながら控え室へと入っていく。一瞬驚いた様子を見せたアイリーンだったがこちらの帽子を見ると『確かにあなた達も探偵みたいね』と受け入れられる。特徴的な帽子はよっぽど探偵と結びついているらしい。そして相手へ話した通り命を狙われている事と公演を直前に中止すべきことをホームズからの伝言という体で彼女へと伝えた。彼女は静かにこちらの話を聞き終えると『ホームズが言うなら間違いないでしょうね』と状況を理解してくれる。しかし次の一言は『でも公演は中止しないわ』と舞台を降りないという返事で思わず「え、」と声を漏らしてしまい)

(/大変お待たせしました。丸一日ゆっくり休んで体調も回復いたしました。季節の変わり目にやられてしまったようです……お気遣いいただいて本当にありがとうございます。いつも楽しく検索様とやりとりさせていただいておりますので、健康に気をつけつつ末永く続けさせていただけると嬉しいです。/こちら蹴りで大丈夫です！)

…そう言われてしまったら駄目とは言いきれないね。ならば客席とステージが同時に監視出来る舞台袖でジャックの襲撃に備える、ということで良いかい？
(相手と方針を固めていると当の本人から声がかかる。少し驚くもちょうど良いと控え室の中に入ると相手がいつもの調子で話しかけ、帽子によって探偵であることを信じて貰えた所で本題を伝える。突飛押しもない事柄ではあるがホームズからの伝言という体が良かったのかすぐに状況を理解してくれて助かったと思ったのも束の間、公演の中止を断られると声には出さずとも目を見開いてしまう。そんな二人の反応を面白がるように彼女が笑い『わざわざここに私の声を聞きにくれたお客様がいるのに中止になんて出来ないわ。…それに、貴方達がホームズの代わりに私を守ってくれるのでしょう？』と告げる。今正に命を狙われているというのに聞いてくれる人の為に舞台に立つ意志を示し、自分達を信用してくれているのが伝わってくればそれを無下に出来そうになかった。仕方ないと言葉を返すと妥協案として舞台袖に隠れて彼女の1番近いところで周囲を警戒する手段を提示する。今までの犯行は全て刺殺が致命傷だったが今回もそれとは限らない。周囲を幅広く警戒しながらいざと言う時にすぐに飛び出せる位置が良いだろう。彼女もそれに頷いて『それで行きましょう。関係者にはそれっぽい理由で話を通しておくからよろしく頼んだわよ、探偵さん』と物怖じせずテキパキと話を進めていく。こういう所がホームズが彼女を一目置く理由なのかもしれない。本番前にリハーサルと打ち合わせがあるからと彼女が控え室を後にすると残された相手に目を向け「ここが正念場だね」と少し緊張したように呟き)

(/いえいえ、回復したようで何よりです。といっても油断ならないのが体調だと思ってますのでキツかったら返信は気にせず何時でもお休みなさってください。上記の話も佳境に差し掛かりそうな頃合ですが探偵様とやり取り、とても楽しくさせて頂いておりますのでいつも通り二人のペースでやって行けたらと思っております！/蹴無視して申し訳ないです、今度こそ蹴り可です。)

……ホームズが惚れるのも分かるな。あぁ。俺達の目的は切り裂きジャックを捕まえる事だが、彼女を見捨てるなんて探偵の名折れだ。彼女を守って、ジャックを捕まえるぞ
(あまりにもハッキリと断られ呆気にとられていたがその後も彼女は堂々と胸を張って舞台の続行を宣言する。その上でこちらを信頼されれば彼女の意向に従う他ない、ホームズの名前があるとはいえここまで言われてはこちらもそれに応えるべきだろう。その後も話は滞りなく進み舞台袖での護衛まで決まれば彼女は彼女のやるべきことをやるためにリハーサルへと向かっていく。芯が強くて大胆でおまけにあの歌声となれば人を惹きつけるには十分な魅力の持ち主だ、ホームズも変人なんて呼ばれているようだがその彼でさえ特別な感情を抱いてしまう気持ちも分かる。再び二人きりになれば相手から緊張感を纏った声が聞こえてくる。ゲームクリアの条件を考えればアイリーンの生死は関係がないが命の危険に晒してしまった彼女を見捨てるなんてそれこそおやっさんに顔向けできない行為だ、例えゲームの中だとしても。自らの決意を再び言葉として口に出すと共に互いの緊張をほぐそうと相手の肩に手を置いて軽くそこを叩く。相手の言う通りここからが正念場だ、全てに決着をつけるためにも気合いを入れるよう深く息を吐いていた。やがてリハーサルが終わり舞台裏は慌ただしくなって本番の時間が近づいてくる。控え室に戻ったアイリーンの邪魔にならないよう傍で見守っていたが特に怪しい影は無い。舞台裏の時間は常に周囲に人がいることを考えれば狙われるのは本番中と考えていいだろう。やがて公演の時間となり相手と連れ立ち舞台袖へと移動する。スタッフの動きにも気を配りつつ周囲に目を光らせていればやがて開演のブザーが鳴り幕があがって)

勿論だ、僕たちとホームズを繋げてくれた探偵の名にかけてやり遂げよう。＿＿…、！
（頼れるガジェットやドライバーもなくぶっつけ本番となれば嫌でも緊張してしまう。そんなこちらの状況を察したのか相手に肩を軽く叩かれると一人ではないと実感して詰まっていた息を吐きだした。相手の宣言に頷くとその頭に乗ったハットが視界に入る。犯人の介入によってホームズと共に行動することは阻止されてしまったが探偵の証でもあるこのハットがここまで自分達を繋いでくれた。霧の街と風の街、そのどちらも守る探偵としてこの正念場を乗り越えようと決意を口にした。一度控室に戻った彼女によって話は通されリハーサルの様子を間近で見守ることとなる。その間彼女から台本を見せてもらって公演の流れを確認すると彼女のソロパートとしてステージの中央で歌う場面があることに気付く。注目が集まる公演の盛り上がりだが狙うには絶好の機会だ。そのことを相手に共有していればやがて公演の時間になって舞台袖に移動する。幕があがれば公演は始まり様々な登場人物によって物語が紡がれていく。今のところ怪しい人物や動きは見られず、舞台袖からでも伝わってくる完成度に感心するばかりだ。何事もないまま彼女のソロパートへの差し掛かる。生き別れた大切な人への想いを綴るその場面で演技力の高さ故、劇場が静まり返った瞬間ほんの僅かだが近くで秒針が振れるような音がして思わずそちらの方向を向く。彼女が高らかに歌い始めてその音は?き消えてしまったがこのあたりに時計は無かったはず、相手の腕を叩いてそのことを伝えようとした瞬間舞台の天井が突如爆発を起こす。咄嗟に走り出して舞台上の彼女の腕を強く引けば先ほどまで立っていた場所に重たい照明機材が落ちてきて床が凹んでしまっている。騒然とする会場の中、スタッフしか知らないはずの緊急用の非常口から逃げようとする黒い人影を見つければ「翔太郎、あれ！」とその場所を指さして）

、……っ、フィリップッ！！
(公演は予定通りに始まり舞台袖に待機してアイリーンの周りを見張る。リハーサルの時に見せてもらった台本によれば彼女の周りから人がいなくなるのはこの公演の見せ場であるソロパートだ、これまでの犯行で姿を見せていない以上堂々と正面からナイフで刺しにくることはないだろうが何者にも邪魔をされずに彼女を狙うにはこのタイミングしかない。静かにその時を待てばやがて彼女は一人舞台の上へと立つ、その瞬間に最も静寂を保つべきこのシーンで何かの音が聞こえた。検討をつける前に彼女の声が劇場へ響きわたりその音は聞こえなくなってしまう。相手が隣で動きを見せてそちらに反応しようとした瞬間に舞台の上で爆発音が鳴り響いて思わず上を見あげた。その時にはもう照明が彼女に向かって落ち始めていて、同時に相手は彼女のもとへ走り出している。背筋に悪寒が走って思わず手を伸ばして相手の名前を呼ぶが、何とか相手も彼女も照明から逃れられたようで冷や汗と共に息を吐き出した。命に別状がなかったことに安堵していれば視界の端で何かが動くのが見える、相手もそれを見つけたようで名前を呼ばれると「逃がすかよッ！」と弾けるように走り出した。この状況で逃げ出す奴は一人、あいつが切り裂きジャックだ。素早く駆け寄り非常口を開けるのに手間取っていた男に走り寄る勢いのまま右ストレートを打ち込もうとする。しかし既の所で男はこちらの動きに気づき、あろうことか拳を止められてしまった。一発で沈めるつもりで放った渾身の一撃を止められ驚愕するうちに腕を振りほどかれ男は非常口をくぐり追うように非常口から外へと飛び出していって)

っ、君は奴を追ってくれ。僕は彼女達を保護してから合流する
（力のまま彼女を引っ張ればギリギリ照明が直撃することを回避することが出来た。恐らく先ほどの音は時限装置か何かの音だろう、辺りを十分警戒していたがまさか自分たちが来る前に仕掛けられていたとは。安堵したのも束の間逃げ出す人影を見つければ相手が走り出す。自分を追いかけたいところだが間近で命の危機を感じて動揺している彼女を放っておくわけにもいかない。彼女の背中に手を添えて非難を促しながら相手を視線で追えば非常口の扉に手間取っている男の元に追いつくも拳は受け止められその隙に逃げ去ってしまう。それとほぼ同時に今度は舞台の柱が爆破され瓦礫が飛び散る。幸い自分達がいる逆側の柱だったものの何個仕掛けられたか分からない今ここにいるのは危険だ。それと同時にここで切り裂きジャックを逃してしまったら恐らくゲームオーバーだ。ならばやることは一つ、彼女や客の避難を自分が引き受け相手にそのまま男を追うように指示を飛ばす。男の追跡は相棒に任せて恐怖や混乱に陥っているスタッフや客に劇場の外に出るように促し、彼女を引き連れて自分も関係者用の出入り口から外へ出た。丁度この時代の警察の姿を見つければ事の顛末を手短に説明して彼女を保護のために引き渡す。劇場の方も警察が立ち入り避難誘導や現場検証が行われ始めたのを見ればここは彼らに任せるとして男と相棒の行方を追う。正直あてなど無いがこの近くに大きな駅があったことを思い出すと探偵の勘でそちらへ走り出す。昨日見せてもらった地図頼りに近道通って最短距離で駅への通りに出てくれば丁度男が目の前を駆けていき、その後ろに相手の姿見つけ）

っ、……任せろッ！
(切り裂きジャックを追って外に出ようとした所で再び爆発音が聞こえて思わず立ち止まり相手の姿を探す。幸い相手にもアイリーンにも怪我は無いがこの様子ではいくつ爆弾が仕掛けられているか分からない。一瞬足を止めてしまったが相棒に追跡を託されると短くも力強く返事をしてジャックを追いかけることに集中する。彼女とあの場の混乱は相棒に任せていればきっと大丈夫だ。扉から外へ出ると階段の下を走りさろうとする男の姿が見えて勢いを付けて階段を飛び降りるとその後を追う。だが男との間は一向に縮まらない、足には多少自信があり大抵の人間には追いつけるつもりだが男は同じくらいの速度で前を走っていく。先程拳を受け止められた事と言い身体能力はかなり高いようだ、普通の人間なら捕まえられないよう設定されているあたりこれも妨害のひとつなのだろう。歯を食いしばり「待てッ！」と叫びながら追いかける。男はどこか目的地があるようで迷わず道を選んでいく。昨日見た地図を頭に思い描く、この先にあったのは駅だったはずだ。列車にでも乗って追手をまくつもりなのだろう。ここまで来て逃がすわけにはいかない、見逃せばきっと即ゲームオーバーだ。大通りを駆け抜けていくと視界の端に見覚えのある姿が移って、すぐさまそれが相棒だと認識すると「フィリップ！」とその名を呼んで着いてくるように言う。男はホームを走り抜けて今まさに発車しようとする電車に駆け込んでいく。後を追うように最後尾の車両の展望デッキに飛び乗った。動き出した列車はどんどん速度をあげていく、後ろを振り返りこちらへ駆けてきている相手へと手を伸ばすと「掴まれッ！」と叫んで)

まさか列車で逃げる気じゃ…っ、ああ！ ギリギリセーフだね、 切り裂きジャックはこの列車内の何処かにいるはずだ。
(どうやら自らの勘と犯人の行動は一致していたようで相手と合流することが出来た。そのまま相手と共に男を追跡するが駅へと入っていきホームを駆け抜けていけばその目的を推測して焦りの声が漏れる。その予想は当たり、男が駆け込んですぐ列車が動き出すと全力で追いかけるもどんどんと速度を増していってしまう。相手も展望デッキに飛び乗ることに成功するが体力の差で追いつけるか怪しい。一瞬相手に全てを託すことが頭に過ぎるも大声と共に手を差し出されると強く返事をしながらも思いっきり足を踏み込んで飛ぶと同時にその手を掴んだ。引き寄せられる勢いのまま展望デッキに飛び乗ることが出来れば咄嗟のコンビネーションに目を合わせて小さく笑みを浮かべながら告げる。ゲームオーバーを回避する為に咄嗟に飛び乗ったのだが逆に考えれば切り裂きジャックも走行している間はこの列車から逃げる事は無い。つまりクリアに向け絶好のチャンスだ。その事を共有しゲームの終わりが近いことを予感しながらも最後尾のドアから列車内へ入っていき)

俺達二人で切り裂きジャックを捕まえるんだろ？……あぁもう列車から降りんのは不可能だ、袋のネズミってやつだな
(動き出した列車は速度を増して相手を置いていこうとする、相手がこちらへ駆け寄る速度を見るに乗り込めるかは微妙な所だった。片手で柵を掴んで思いっきり手を伸ばし相棒を信じて待つ、力強い声と共に相手がこちらへ飛んだのを見ればしっかりとその手を掴んで力の限り引き寄せた。何とか無事に相手を展望デッキへと引き込むとこちらからも目を合わせて得意げな笑みを向ける。何処までも、最後まで、二人で走る約束はこのゲームの中でも健在だ。切り裂きジャックを捕まえこのゲームをクリアするのも二人でなければ。駅を離れた列車はトンネルを抜けて渓谷の脇を走り始めてもう降りることはできない。逃げ場のない列車内ではじっくりと切り裂きジャックを探すことができるだろう。いよいよ迫るクライマックスに不敵な笑みと共に返事をすれば列車の中へと入っていく。後方は貨物列車のようで食料品やワイン、客の大型荷物などが積まれた車両がいくつか続きその後に客車が続く。ざっと数人いる乗客を見回したがそれらしい男はいない、あのままの格好ではこちらに見つかってしまうことを考えれば恐らく変装して乗客の中に混じってしまったのだろう。そのタイミングで車掌らしき人物が同じ車両へとやって来て手招きをしてこちらへと呼び寄せる。存在をアピールするようにハットの縁を持ちながら「この列車に殺人者が紛れている、混乱しねぇようにそいつのことは伏せて乗客をこの車両に集めてくれねぇか？」と耳打ちした。特徴的なハットとそれらしい言い草でやはりホームズを連想したのか車掌はすぐに『わ、分かりました』と返事をすると他の車両の客を呼びに行く。確実に近づいていく殺人鬼との距離に「さぁ、直接対決だ」と気合いを入れるようにニヒルに笑って)

…これで全員のようだね。 ここに集まって貰ったのは他でもない、この中に紛れる連続殺人鬼を捕まえる為です。奴の犯行は三件、そして今日の未遂が一件。先の三件の事件では被害者は凄惨に殺されていたがその内二件は最初に喉頭隆起を正面から掻っ切られ声を上げる前に殺されている。その傷口は被害者の右側の方が深く犯人は左利きであることが予想出来る。そして最初の被害者の死体の隣には彼女がはめていた指輪とデザインが同じもう一つの指輪が置かれていた。その指輪は十年前宝飾店で特注で作られた世界で二つだけの品、そして彼女はそれをせめてもの償いだと話していたようだ。
(今は居ないホームズに並ぶ程の探偵になるにはどちらが片方欠けてもならない。そんな二人の一番の根っこのところを思い返しながらも列車の中に入る。中にそれらしい男が見られ無いこととこれまでの犯行の様子から変装して客に紛れていることは容易に想像がついた。ならばこの場で直接その正体を突きつけなければ。相手が車掌を呼び付けここに皆を集めるように伝える。ハードボイルドな笑みを浮かべる相手にこちらも得意げな表情で「バッチリ決めようか」と返して横に並び立つ。やがてぞろぞろとこの車両に乗客が集まってくる。皆何故集められたのか分からないといった表情を浮かべる中、最後に指示を出した車掌が戻ってくるのを確認すればポツリ呟く。これで舞台は整った。さながら小説の探偵のようなシチュエーションに不思議な気持ちを覚えながらも相手に目配せしてから話を切り出す。突然殺人鬼が紛れていると言われると乗客に動揺が走るが気にせず話を続ける。犯人を絞り出す要素は二つ、被害者の傷から推測出来る利き手と最初の被害者に残された指輪だ。ホームズが残した推理資料と朝刊と共に受け取った調査結果、その二つが合わせて考えれば犯人の特徴を推理できる。そして幸いなことに非常口で拳を受け止められた時、相手は切り裂きジャックの手を見ているはずだ。そこで一度話を区切り、最後の美味しい所は探偵の証を被った相手に譲ろうと視線を送って犯人の指摘を促して)

(/背後から失礼致します。話も良いところなのですが所用のため今日から月曜まで日中の返信が難しいか頻度が遅くなると思います。夜や朝方には恐らくお返事出来るとは思うのですが、いつもよりお待たせさせることになりそうで申し訳ないです…。すみませんが把握のほどよろしくお願いします。/蹴で大丈夫です)

犯人は母親に執着してた。だから母親に似た年齢や職種の女性を次々殺し、母親と唯一の繋がりだった指輪をずっと指にはめてたんだ。幼い頃から同じ指輪をはめ続けりゃその指は指輪のサイズにしか成長できずに細くなる。俺の拳が止められた時バッチリ細い指が見えたぜ。犯人は指が一本だけ細い奴、切り裂きジャックはそこのお前だ！
(二人で並び客車に乗客が全員集まるのを待つ。困惑する車内でこれが切り裂きジャックを捕まえる最後のチャンスだろうと思えば、ゆっくりと深呼吸をして気持ちを落ち着けていた。車掌が戻ってきて乗客が全てこの車内に集められた事を悟る。大人数の前で推理を披露するなんてまさに探偵らしい場面だ、ゲームのクライマックスとしても相応しいだろう。目配せを受けまずは相手から一連の事件が語られる。点と点を結びつけていくのは相手の方が得意だ、散りばめられた点を繋いでいけばその糸が真っ直ぐと切り裂きジャックに伸びていく。確実に犯人を追い込んでいる高揚感を覚えていれば再び相手の視線がこちらを向いた。どうやら一番美味しい所を譲ってくれるらしい。ならば相棒としてきっちり決めてやろうではないか。師匠から受け継いだハットに手を添えてニヒルに笑えば話の続きを請け負う。切り裂きジャックの行動の原点は全て母親だ、その執着が産んだ唯一無二の特徴を指摘してやる。そしてそんな不自然な指を持つ人間はこの車両に一人しかいなかった。車両の中程で帽子を被り俯く男に真っ直ぐ人差し指を突きつけ犯人だと、切り裂きジャックだと声高に指摘した。男はゆらりと無表情な顔をあげるとニヤリと不気味な笑みを浮かべ見せつけるように手をこちらに向ける。その手の指の一本は明らかに他よりも細くなっていた。すぐに確保しようと地面を蹴るもその前に男は腕を振りかざし地面に何かを叩きつける、その瞬間に車内は白い煙に包まれた。どうやら煙幕を張られたようで咳き込みながら男が襲ってくる可能性を見据えて身構える。しかし煙がはれると切り裂きジャックどころか乗客と車掌まで全員いなくなっていて目を見開いた。一瞬逃がしてしまったかと思ったが屋根の上から誰かが走る音が聞こえると「フィリップ上だ！！」と相手へ知らせ急いで車両を出ると、車両の間に備えられた梯子を登り車両の上へとあがり)


(/ご連絡ありがとうございます。返信の件承知いたしました。物語もいよいよクライマックスというところですし、ここはじっくりと楽しむためにもお時間に余裕のある時にゆっくりお返事いただければと思います。なにより今週はこちらも度々お待たせしてしまいましたのでお気になさらないでください。いつも通り背後事情優先ですので！切り裂きジャックとの直接対決楽しんでまいりましょう！/こちら蹴りで大丈夫です)

あそこだ！ もう君に逃げ場は無い。観念したまえ。 ッ！…、
(相棒がその特徴をあてはまる人物を指さす。男が向けた手の内一本だけがやけに細く自分達の推理があっていることを証明していた。犯人が分かれば相手が飛び出してその腕を掴もうとするがその前に煙幕のようなものを張られ思わず咳き込みながら周囲を警戒する。まさか目撃者を全員殺すつもりではと身構えるも煙が晴れた時には相手以外誰もいない状況に思わず目を見開く。相手の声に従い耳をすませれば確かに上部から足音のようなものが聞こえる。相手の後を追って梯子を登り車両の上にあがるとかなりのスピードが出ているせいか風は強く足元が落ち着かない。落ちないように気を配りながら少し進めば先頭車両にジャックの姿が見えた。正真正銘逃げ場のないところまで追い詰めることが出来れば男に向け強く言葉を投げかける。彼を捕まえればこのゲームはクリアで現実世界に戻れる。そんな思いから更に数歩近づいて投降を促すとジャックは懐から短剣のようなものを取り出してこちらへ襲いかかってくる。一撃目はすんでのところで回避するも狭い車両の上では下手に動くことは出来ずにまだ距離は近いまま。列車がカーブに差し掛かると体勢を崩しそうになり咄嗟にしゃがんで安定を取ろうとした所に短剣による追撃が襲いかかろうとして)

袋のネズミだな。さぁ、お前の罪を数え、ッ……フィリップッ！
(車両の上にあがれば前方車両へ逃げていく男の姿が見えて後を追う。峡谷を横目にトップスピードで走る車両の上で足を滑らせては一巻の終わりだ、風に煽られないよう気をつけながらもジャックを追いかけ相棒と共に遂に先頭車両へとたどり着く。死と隣り合わせのこの場面で緊張感と高揚感を同時に感じながら叩きつけるように吹き荒れる風を頬でヒリヒリと感じる。相手に続き男を煽るような事を言いながらいつものセリフを決めようとするがその前に男は短剣を取り出しこちらへ襲いかかってきて咄嗟に飛び退いた。こちらは距離が取れたが相手と男とはそれほど離れていない。車両が傾き相手がしゃがんだ所で男が追撃を加えようとしているのが目に移れば咄嗟に名前を呼んで男に体当たりを食らわせ男と共に相手とは離れた所へと転がる。不安定な足場では先に立ち上がれるかどうかで勝負が決まる、しかし体勢を立て直したのはほぼ同時で短剣がこちらへ振り下ろされるのを腕を掴んで止めた。同時に一発食らわせようと拳を放つが今度はこちらが止められてしまう。互いに無理やり腕を振りほどいて再び拳を振るうもその体には届かず、短剣を持つ手を再び止めるも同様にそれ以上は動けない。「いい加減諦めろ」と睨みつけて言うも男は『俺はここで死ぬわけにはいかない。この凶悪な血をノアの方舟に乗せて未来まで繋ぐために生き残る！』と狂ったような口調でピンと来ないことを叫ぶだけだ。男の言葉の意味を考えあぐねている隙に腕が振りほどかれてしまい短剣が降り掛かってくる。既のところで避けるも頬には細く傷がついて冷や汗が流れた。再び組み合う形になるが薄らと僅かにこの男の方が力が上回っているのを感じて心に焦りが生まれる。やはり切り裂きジャックの身体能力は普通では無い水準に設定されている。このまま力押しでは勝てない。足場は不安定で真正面から突破は不可能、その時にちらりと崖の方を見やった。ゲームのクリア条件は切り裂きジャックを止めること、つまり捕まえるだけが解決方法ではない。ここがゲームの世界で誰か一人でもクリアすることが勝つための条件だというのならば、自分の命と引き換えにジャックの命を沈めてしまうという勝利方法もある。相棒に後を託す選択肢が頭によぎりながら、ジャックの体をこのまま逃がさぬように腕の力を込めて強く掴んでいて)