相乗りで何処までも 【 〆 】

…ん、衣替えってやつかい？
(猫になってしまうというアクシデントとその後の所長のお叱りはあったものの比較的平和な日々を過ごしていた。事務作業も一通り片付ける事が出来れば休日を言い渡され、いつも通り眠った翌朝。正確な体内時計で目を覚ます相手が動き出す気配で意識は浮上するも近頃の気温の低さのせいで動くのが躊躇われる。布団の中に入ったままで居ると相手が何かを確かめるように腹部に手を置く。涼しい季節に買ったこの寝間着は一緒に寝る分は何ともないが部屋で過ごす時やベッドから出る時は少し寒く感じる服装だ。額を撫でられると無意識に軽く擦り寄りながらも買い物の案に微睡んでた目をぱちりと開いて向ける。確か最近所長が急に冷え込み始めた気温に対して衣替えがどうたらと話してるのを思い出すとそのキーワードを口にしながら「買い物行きたい」と要望伝えて)

(/結構前に見た覚えがあります、探偵の聖地的な所に行って楽しむのもシミュレーションとしての殺人事件に巻き込まれたりできそうで楽しそうですね。是非是非やってみたいのでそれまでにもう一度見返しておきたいと思います。
導入ありがとうございます！ 乗っからせてもらったので新しい服や食べ物など街を歩きながら二人で冬支度をしていきましょう。/蹴り可です。)

おはようフィリップ。なら、今日は冬支度の買い物でもするか
(頭を軽く撫でてやるとその手に相手は軽く擦り寄ってきて人間に戻っても変わらない性質に思わず柔らかな笑みを浮かべる。思いつきの発言だったがそれは相手の琴線に触れたようで眠そうだった目が開かれるとこちらへ向いた。風.都.の風も冷えてきたこの頃、休日ならば冬支度をするのにピッタリのタイミングだろう。言いそびれていた朝の挨拶を口にしつつ、軽くポンポンと相手の頭を叩いてやって朝の支度を始めることにした。掛け布団が剥がされるとやはり肌寒い、相手が寝間着を買うならば自分も冬用のものを新しくするかと考えながらベッドを抜け出す。軽い朝食の準備をしつつ着替えを済ませるとテーブルの上にトーストとコーヒーを置いて「お前の寝間着は買うとして、あとは冬用の服ってとこか」とリストアップをしつつ席に着いて)

おはよう。今年は外に出る機会が多いだろうからね、寒さ対策は十分しておきたい。
（二人で出かける用が出来れば眠気を感じていた頭も徐々に冴えてくる。同じく挨拶を返しては相手に続いて布団から出るが日に日にこの時の温度差は大きくなっている気がする。コーヒーのお湯を沸かすのを待つ間に洗顔と着替えを済ませて出かける準備をする。トーストが焼きあがるのとほぼ同じタイミングでコーヒーも淹れ終わるとテーブルに並べていつもの朝食の完成だ。席について手を合わせ、トーストに噛り付きながらも相手の言葉に同意を示す。事務所に来て初めの冬は検索に明け暮れるばかりで殆ど外に出る事が無かった為寒さなど殆ど感じることはなかったが今は家と事務所の往復や仕事、または一緒に出掛ける時など外に出る機会は格段に増えた。暗に今年の冬は沢山外出するつもりなのだと主張しながらも冬支度の重要性を口にする。「他に必要な物は実物を見てから決めようか」と予定を提案しながら朝食を食べ進めて）

冬も外に連れ回す気かよ。そうだな、思いついたもん買ってくか
(こちらも手を合わせてトーストへと齧り付く。どうも相手は季節関係なく好奇心のまま外に飛び出していくつもりらしい。部屋に篭もりっぱなしだった過去のことを思えば今回の買い物は二人の関係が変化したからこその冬支度だろう。冗談めかして返事をするものの相手が外へ行く時は当然自分も一緒にいるつもりでいて口元には笑みが浮かんで満更でもない事を表していた。買い物の大目的は相手の服と定めあとは流れに任せる事にする。今の時期ならば冬に向けての製品もいろいろ出ている頃だ、今日は気の向くままに買い物をすることになりそうだ。トーストを食べ終えて香りの良いコーヒーを飲み終えて再び手を合わせ、食器類を片付ける。準備は万端だ、「よしいくか」とジャケットとハットを身につけると外へと出かけて)

君が一緒なら何処にでも行っていいのだろう？ ＿＿朝も大分冷えてきたね、とりあえずは服の調達だろうか
（夏でも冬でも外の世界には興味が尽きることはない。冗談めかした返事がされるがその口元は笑みが浮かんでいて悪く思ってないのは一目瞭然だ。外に出る事が許された時の約束を引っ張り出してきては当然という表情を見せながら声を弾ませていた。以前も買い出しに出かけたが季節が変わればそのラインナップも変わっていることだろう。予定をかっちり決め過ぎず赴くままに見て回ろうと決めると手を合わせて食事を終える。簡単に片づけを済ませて準備をすると相手の言葉に頷いて家を後にした。外に出れば肌で分かるほど空気は冷えていてぽつり呟く。Tシャツにロングパーカーのいつもの恰好では日中ならともかく日が低い時間帯は寒く感じそうだ。前回と同じく商店街の方向に歩きながら第一の目的地として服の調達を提案したところでふと事務所に届いていたハガキを思い出せば「確かW.I.N.DS.C.AL.Eの新作も最近発売されてなかったかい？」と相手の愛用ブランドの話を振ってみて）

一番必要なもんだしな、お前の服まだまだ少ねぇし。俺達の服といやW.I.N.D,S.C.AL.Eだ、新作チェックとお前の服買いに行くか
(いつかの約束を持ち出されると「そうだったな」と気取った調子で返す、あの時は相手の安全の為だったが今はそれよりも傍にいたいという気持ちの方が上回っている。口には出さずとも相手にはお見通しだろうと思いつつ外へと繰り出した。こちらはジャケットを着ていれば問題ないが相手は羽織るものがなくもうそろそろ見た目にも寒い。第一目標である服を優先するのに同意すれば、御用達ブランドの案内が来ていたのを相手に言われて思い出す。愛すべきこの街で生まれたブランドで街と同じく愛着のある店だ、相手が服装にさえ興味を示さなかった時期には勝手に選んで無理やり着せていたものだが、今の相手なら服を選ぶ楽しみも分かる。自分の服を買うにしてもこの店一択だ、行先が決まると慣れた道を歩き店へと向かった。季節を先取りする店内はすっかり秋冬モードで店に入ってすぐの店頭には暖かそうな服を着たマネキンが飾られている。いろいろと見て回りたいがまずは相手の服だろう、相手が好みそうなゆったりとしたシルエットの服を探しながら店内を歩き出して)

防寒性で言えば上着を買うべきかな、この上にも着れそうな物…
(ここに来たばかりの時に連れ回されて一式購入したこの服も相手のこだわり抜かれた服も同じブランドの物で、ある意味二人にとって一番馴染み深い店だと言えるだろう。当初は着せられた服だったが今では割と気にいっていてせっかくならば冬服も同じ所で揃えたい。相手の言葉に頷けば店の方へと向かう。店内に入れば既に秋や冬の服装が並んでいてスタイルの見本とばかりにマネキンも飾られている。幅広いジャンルの服があるが相手について行けば男女共有のゆったりしたデザインの服装の場所にたどり着く。そこには自分が来ている物と同じロングパーカーや長袖Tシャツも置かれている。だが今回の目的を考えれば防寒性のある服を探すべきだろう。以前ならばなんでもいいと相手に丸投げしただろうが今は捜査時に邪魔にならないもの、今の服装を大きく変えないものなど選ぶ基準やこだわりが自分の中で出来ていて呟きながらも服を見て回る。真剣な顔で悩みつつ何となく目に付いた一枚ジャケットを取り出すと自分の身体に宛てがいながらも「選ぶコツとかはあるのかい？」とこういうのに詳しそうな相手に聞いてみて)

一番大事なのはバランスだな。お前の場合今の状態がかなり個性的だから派手なヤツは避けるとして……ロングコートにしてパーカーを隠しちまうか、色味を抑えたジャケットにしてパーカーを見せるようにするか……
(初めてここに連れてきた時は勝手に検索を始めたり知らぬ間に居なくなっていたりとかなり騒がしかったが今では随分と状況が変わっていた。相手が好んで着る服も決まってきて今や真剣にどの服にするか悩んでいる。着れればなんでもいいとこちらに丸投げだった頃とは大違いだ。陳列された服を眺める相手の横顔を微笑ましく観察していると、相手はひとつのジャケットを手にしてこちらにアドバイスを求めてくる。基本スーツでこちらの系統の服は専門外だが基本的な事は同じだろう、ファッションにおいて一番キモになる一言を出す。相手の基本的な服装はロングパーカーと長袖シャツだがそれに合わせるとなるとそれらの服を見せるか隠すかの二択になるだろうか。話しながらシンプルな色合いのゆったりとしたロングコートとカッチリしたジャケットとを例として取り出すも「ま、結局は個人の感性だけどな」と最後には身も蓋もないことを付け加えて)

バランス…、確かに全体の組み合わせは考えるべきだね。なら、…こっちの方が並んだ時のバランスは良さそうだ、これにしよう。
(服を選ぶというのも寝巻きを買った時以来で普段着となればより一層悩んでしまう。その為こういうことに詳しそうな相手に助言を求めればバランスというキーワードが出てきて同じ言葉を繰り返す。確かに一着一着の好みや機能性も大事だが組み合わせをした時の印象というのも重要だろう。感心したように頷いていると相手が例として二択の違う方向性の上着を取り出して見せてくれる。案としてあげられたその二つを受け取ると相手の腕を引いて姿見鏡の前に向かう。そして相手が隣にいる状態でそれぞれの服を羽織って並んでみた。外に出掛ける時は基本的に相手と共に行動する、ならば自分だけでは無く相手との服装のバランスだって重要な観点だ。二種類をそれぞれ着てみてスーツ姿の相手と並ぶならば丈が腰ほどでその下から色鮮やかなロングパーカーが広がるようなシルエットになるカッチリめのジャケットの方が相性が良いように思えた。良い一着が決まれば誇らしげな笑みを浮かべ、これにすることを相手に伝えて)

ん？……あぁ、こっちの方が相棒って感じがするな
(自分なりのアドバイスと候補を選べば相手はそれらを受け取って鏡の前へと腕を引かれていく。てっきりジャケットを合わせるための移動だと思ったが、こちらの姿も鏡に映るような位置で腕を離された。相手はこちらと並んだ時のバランスも考えているようで、二人で一人が根底にあるその思考回路に思わず小さく笑みを浮かべる。相手が選んだのはロングパーカーを見せるカッチリとしたジャケット、ゆったりとしたロングコートも似合うのだろうがそれだとこちらのスーツ姿とあまりにもテイストが違いすぎる。二人で一人で並び立つなら締まりのある方が良いだろう。誇らしげな笑みにこちらは柔らかく笑みを返す、これで冬が訪れても相手が凍えることはなさそうだ。いつもの長袖シャツやロングパーカーは必要であれば買い足すとして、次に必要なのは寝間着だろうか。以前のような大型店に行ってもいいが、せっかくなら寝間着も同じブランドで揃えたっていいだろう。なんせ自分の寝間着もここで買ったものだ、「寝間着もここで買わねぇか？」とあわよくばお揃いを狙って陳列棚の方を指さし)

なら尚更こっちだ。構わないよ、どれにしようか。
（こちらの言うバランスの意味を理解したようで相手が笑みを浮かべる。一人であればどっちでも構わないが並び立つならそれらしい統一感は欲しい。相手にもカッチリした上着の方が相棒らしいとお墨付きを貰えればこちらを選ぶ頑固たる理由となってロングコートの方を戻し、ジャケットを腕に抱えながら上機嫌に頷いた。これさえあれば冬でも寒さを気にすることなく活動することが出来るだろう。一つ目的を達成したところで相手に寝巻きもここで買う事を提案されると二つ返事で承諾して陳列棚の方へ向かう。大型店よりも品揃えは少ないがその分服と同じくデザイン性を重視したつくりの物が多い。様々な生地や種類がある中で手に取って見比べながらも「何なら君も新しい物を買うかい？」と提案してみて）

そうだな、せっかくだし一緒に買っちまうか
(寝間着が置かれているコーナーへやってくるとこちらの分も買う案が出される。お揃いになれば良いとは思っていたが、せっかくなら二人揃って新調する方がよりお揃いの要素も強まる。相手に同意するよう頷くと隣にならんで寝間着を眺め始めた。いつもならばシルク生地をすぐに選ぶのだが相手と一緒に着るなら二人共が眠りやすい素材のものが良いだろう。それに数は少ないが服と同じくシックなものから全身に可愛らしいデザインが入った緩いものまでデザインの種類は多く、素材まで目を向ければなかなか選ぶのは難航しそうだ。この街独自のブランドであればこの街独自のキャラクターが描かれたものが二人らしいだろうかと水色の下地にふ.う.と.く.ん.が全身に散りばめられたものに手を伸ばしてちらりと柄を確認するが「さすがにハードボイルドな男にこれは似合わねぇな」と手を引っ込める。それぞれ別のものを買うという選択肢をもとより持っていないのには自分で気が付かぬまま寝間着を前に眉をひそめていて)

可愛らしくて良いと思うけどね。夜はハードボイルドである必要もないだろう、…これとかどうだろうか。
（相手にお揃いを持ち掛けると快諾されて一緒に寝巻きを見ていく。秋冬用のラインナップだからか基本的なシルク生地やフランネル生地から厚手なものやもこもこした手触りのものまで揃っていてかなり悩んでしまう。そんな中相手が手に取ったのは水色にふ.う.と.く.ん.が散りばめられたファンシーな感じの服だ。これを着ている相手の姿を想像すれば思わず笑みが零れて好意的な反応を示しておく。家の中でしか着ないのだから気取る必要もないと思うのだがそこは相手の拘りというやつだろう。すっかり共通認識としてお揃いを着るという思考で他の物を見ていると厚手寄りのもこもこした生地の物を見つけて取り出してみる。表は手触りが良いが裏は綿で機能性も悪く無さそうだ。カラーバリエーションもそれなりにあるようで相手好みのシックな色合いを見つければ意見伺ってみて）

そりゃそうだが極端すぎるっつーか……お、いいな。それくらいなら許容範囲だし寝やすそうだ
(相手の言う通り二人の家は自分が一番素のままでいられる場所ではあるが、ふ.く.と.く.ん.の寝間着はあまりにも普段とのギャップが大きく気が引ける。他の寝間着へ目を移していると相手が厚手のものを取り出している。見るからに暖かそうな寝間着で見た目は可愛い寄りではあるがそこまで緩くもない、胸元にW.I.N.D,S.C.AL.Eのロゴも入っていていい感じにオシャレだ。これなら寝る時に着る分なら問題ない、むしろ体の熱が逃げなさそうで好感触だ。カラーバリエーションも豊富でいつも通りシックな色合いのラインに手を伸ばしかけてその手を止める。きっと一人ならば迷いなく紫を始めとした色を選んだのだろうが、今回は相手とお揃いで買うことになる。こういう時なんとなくいつもメインメモリの色を選んでしまうが、この寝間着を着るのが二人だけの部屋の中で相手にしかその姿を見せないならばとあるひとつの考えが浮かぶ。いつか相手が初めて家に来た日にこちらの服を着たのを思い出しつつ照れくささを隠しながら「寝間着なら色交換しねぇか？お前が紫で俺が緑」とどこか落ち着かない様子で問いかけ)

、良いアイデアだね。是非君の色を纏いたい。
(相手にしてはカジュアル寄りの見た目の寝巻きだったが返ってきた反応は好感触だ。抱き合って寝るのに必要な暖かさと肌触りはクリアしていてこれならば快適に眠ることが出来るだろう。賛成の意を聞くと何も言わずともメインメモリでもある緑色に手を伸ばそうとする。だがその途中で相手に声をかけられ、色の交換を持ちかけられるとぱちりと目を瞬かせる。相手が緑で、自分が紫。普段とは逆の色を着る意味を察すればふっと口元が緩んで感想を述べる。相手の色を纏って相手と共に寝れば何よりも熟睡出来ることだろう。恥ずかしげもなくストレートに言葉を続けると様々なカラーバリエーションから落ち着いた深紫色の寝間着を手に取り、「僕はこれにしようかな」と相手に見せて)

、たまには違う色もいいだろ？なら俺はこれだな
(思い付きの提案だが相手はその意図を察したようで口元に笑みが浮かぶ。服装の交換とはまた違ったものだが相手の色を纏うという表現は絶妙に特別感を感じさせて嬉しいのだがむず痒い。当然こちらもそういう意味で提案したのだが改めて言葉になると堪らなくなり、誤魔化すような返事をしておくことにした。相手がいつもは自分が選ぶ深紫色のものを選ぶと照れくささもあるがこれを相手が着た時のことを想像して口がニヤケそうになってしまう。なんとか口を結び直してからいつもは選ばない相手の色、新緑色の寝間着を手にして相手へ見せる。滅多なことでは選ばない目も冴える明るい色だ。普段ならば着るのを躊躇する色も相手だけとの空間ならば問題ない、それに相手の色を纏うことになるのだからきっと良く眠れることだろう。小っ恥ずかしい思いを抱えつつも寝間着を選ぶと「他になんか買っとくか？手袋とか帽子とか」と必要なものがないか聞いて)

これで寝巻きの調達も完璧だ。これくらいでいいかな、また寒くなったら買いに来よう。＿ あと冬支度といえば寝具とか暖房器具とかだろうか…、
(相変わらず照れ臭そうな態度の相手と手にした新緑色の寝巻きに笑みが深まる。一人ならばきっと選ばないであろう色、自分が居るからこそ選ぶ色であることが凄く嬉しく感じる。お互いの色を手に取った所で寝巻きを買うという第一目的は達成だ。さらに必要な物を問われるが今日はこれくらいで良いだろう。寒くなってくればバイクのグローブやマフラーなども必要になるかもしれないがその時はそれを口実に出掛けることが出来るだろう。レジに行き会計を済ませ、袋に入れてもらった商品を受け取ると店を後にする。商店街の方に戻ってくるとその他の冬支度について考えていると外から見えるショーウィンドウに布団のようなものが机に被せられ、座ってその中に足を入れて寛ぐぬいぐるみの姿を発見する。見知らぬ光景に思わず足を止め近付くと「翔太郎、アレはなんだい？」と問いかけて)

ん？あぁあれはコタツだな。机の下にヒーターが入ってて冬になると活躍するが……なかなか曲者でな
(お互いの色の寝間着が揃えばひとまずここでの買い物は終了だ。相手の新しい服と二人の新しい寝間着を袋に詰めてもらって店を出る。今日あの寝間着を着るのは暑すぎるだろうかと上の空で歩いていると相手が何かに興味を示したようでそちらへ目をむけた。相手が視線を向けた先にあったのは冬に大活躍するコタツだ、奇しくも先程相手があげていた暖房具にあたるものだがあれには今まで手を出すのを控えていた。相手が興味を持った以上ここから引き離すのは不可能だろう、となればあれの魔力をまずは体験してもらった方がいい。相手を連れ立って店内へ入ると入ってすぐの目立つ場所にコタツのコーナーが出来上がっていて実際に使用できるようにセッティングされている。靴を脱いで一段高くなっている体験のコーナーに踏み入れると「中に入ってみりゃわかる」とコタツを指さして)

曲者？ そんなに特別なものなのかい？
(相手がすぐに答える辺り生活には馴染み深い物のようだ。説明を聞いても暖かそうな印象を受けるが曲者と称する姿に首を傾げる。不思議に思いつつも相手に連れられて店内に入るとコタツと呼んでいた商品が様々な種類並んでいる。その一角には実際に使用例として体験出来る所が用意されているようでブーツを脱いでそのコーナーへと上がる。相手の言い分を聞くに他の暖房器具などとは違う印象を受け思わず問いかけるも好奇心に背中を押されて座って中に足を入れてみる。ヒーターが入っているという言葉通り中は暖かい。布団のようなものが辺りを覆っているおかげでその熱が逃げることなく中に留まり下半身を満遍なくぽかぽかと温める。原理的には足湯にも近いがそれよりもぬくぬくとした心地に「あったかい…」と呟きを零しながら魅力を満喫していて)

……だろ？今はまだ気温が下がりきってねぇからいいけど、周りがキンキンに冷えた真冬にコタツに入っちまったら最後……出れなくなっちまうんだよ
(相手がコタツに入ったのを見届ければこちらもコタツへと足を入れる。前に使った機会は忘れたがヒーターの熱がこもったコタツの中は言わずとも暖かい。相手も存分にこの暖かさを堪能しているようで呟いた言葉に頷き返す。しかし問題はコタツに入ったときではない、今はまだ肌寒い程度の気温でその恩恵は少ないがコタツが真の実力を発揮するのは真冬だろう。ひとたび足を踏み入れてしまえば暖かさが身に染みて抜け出すのはかなり困難になる。コタツを出る出ないは己の胆力の問題であるにも関わらずまるでコタツが悪いような言い方をしながら「コタツ入りながら食うミカンが最高に美味いんだよな」と既にコタツの暖かさに絆されているようなことを口にし)