相乗りで何処までも 【 〆 】

っ…翔太郎、…ん…ぁ、……は、
（心臓が激しく動いて顔まで赤くなっているのを自覚しながらもなんとか目を合わせて言葉を返せば更に幸せそうに口元を緩ませるものだからまた胸が掻き乱される。これまでも何度も聞いてきた言葉のはずなのに一度生死の瀬戸際まで踏み込んでいた分深く心に響いて嬉しくて仕方ない。そのまま固まっているとまた一つ好意の言葉が告げられて両腕が首へと伸びてくる。自分もまた相手の空間に閉じ込められながら愛おしい相手の名前を紡ぐと引き寄せられるまま唇を重ねる。戯れもなく初めから舌が差し入れられるとこちらからも伸ばして絡めていく。お互いの唾液が混ざって滑りがよくなればますます相手を食らいつくように舌を動かしてその度に水音が弾ける。口づけを続けながらも愛おしい物に触れるように熱持った相手の胸や腹を掌で撫でる。いまはただ相手のことだけに溺れたくて息継ぎの度に甘い声を零しながらも深いキス続け）

…ふ、ァ……ンｯ……ぁｯ…ンんっ……
(相手への想いが溢れて止まらない。何よりも大切で愛おしく唯一無二の大切な存在、そこに今は幸せで満たされた劣情も加わってしまえば衝動を止める手立てはない。こちらから舌を差し入れ互いのものを擦り合わせていたがいつの間にか舌は相手に喰らわれ刺激を享受するものになっていて、節操なく二人の間に水音が弾けて部屋へと響き渡る。その間に再び相手の掌が体を撫でれば、先程よりもさらに熱くなった掌の熱にあてられ体も脳も溶かされていく。蕩けた脳は一週間分の反動で我慢することを放棄していて、掌が弱い所を通過する度に刺激に震え水音の合間に甘く熱く高い声を幾度も漏らす。呼吸すら喰らわれて苦しいのに相手と溶け合うこの行為はただただ幸福で、生理的な涙が頬を伝うも目は蕩けて口元から笑みは消えない。この息苦しくて幸福で相手を感じられる行為にもっと溺れてしまいたい、それこそ溶け合うくらいに。どちらとも分からない唾液を喉を鳴らして飲み込んで唇を僅かに話せば視線を交える。その瞳は熱と色欲と期待に溢れていて「フィリップ、」と誘うように名前を呼べば絡まった足を僅かに上げて下腹部を擽ってやり)

…ん、ぁ……は、…ッあ、…翔太郎、あいしてる
(今だけは二人だけの世界でお互いの発する音や熱だけが全てだ。浮かれた頭は我慢など効かず呼吸すら食らうように舌を絡ませて時折唇に軽く歯を立てて違う刺激を与えながらも相手を征服していく。熱持った相手の身体は触れるたびに敏感に震え、甘く高い声が鼓膜を揺らせば更に脳が蕩けていくようだった。息継ぎすらままならないほど相手を求めて、求められて二人で落ちていくような感覚は背徳的な快楽でもあった。僅かに唇が離れていけば口内に残った唾液を呑み込んで熱い息を零す。見下ろす相手の瞳は熱や色欲などに濡れていてこの世の何よりも官能的に見えた。自分も似たような表情をしているのにも気付かず熱の孕んだ瞳を向けていると誘うように名前を呼ばれて欲に近い所を相手の足が擽られ上擦った声が溢れる。ぞくりと背筋が震えて最後の理性の糸が切れてしまえばあとはこの熱に身を預けるだけだ。余裕のない笑みを浮かべ、相手の名前と最上の愛の言葉を告げると再び唇を重ねながらさらに下へ手を伸ばして）

（/いつもお世話になっております。そろそろかなと思いまして暗転とお声がけさせて頂きました。退院後の二人だけの時間を過ごすことが出来てとても楽しかったです。いつもに増して甘く世話焼きな探偵君や無自覚に距離感の近く素直なところが可愛らしく初めは困惑しながらもいつも以上に二人でいる事を噛みしめるような時間でした。今回もありがとうございます。
これからについてですがこのまま事後や翌朝として続けるのでも新たにお話を続けるのでも良いかなと思うのですが探偵様はいかがでしょうか。後者ならば少し早いですが季節ネタとしてハロウィンや吸血鬼パロだったり以前からお話しているラ.イ.ド.ウ.ォッ.チ継承の話とかも面白いかなと考えております。）

…は、ｯ…フィリップ、…俺もあいしてる
(互いを互いの中に閉じ込めてただ互いの想いや熱や欲望を貪る。相手に口内を喰われ征服される中で唇に鋭い刺激が与えられれば体は素直に反応して背中を逸らして体を跳ねさせた。こちらから名前を呼んで同時に欲望を擽ってやれば相手の体が震えたのが分かって、その瞬間に最後の境界から堕ちたのを悟れば邪な感情を抱えながら口角をあげる。より熱と劣情に素直に揺れるようになった瞳を見上げていれば最上級の好意が伝えられ、上気した顔のまま幸福に溢れた笑みを浮かべる。首に回した手で再び相手を引き寄せながらこちらからも同じ最上級の好意の言葉を送るとそのまま二人欲望のまま堕ちていって)

(/暗転ありがとうございます！探偵から検索くんへの想いが溢れすぎている中でそれを戸惑いつつ受け入れる検索くんに心躍らせながら返信させていただきました。断絶の時間があった分、それ以上に甘い時間を過ごせてとても幸せでした。こちらこそ今回もありがとうございます！
そして次の展開ですがぜひハロウィンと吸血鬼パロなお話をやらせていただければと！欲張りな展開ですが風,都.全体でハロウィンの催しが行われてひとしきり楽しんだ所で一部の人が吸血鬼化し始めてどちらか一方も吸血鬼化してしまい定期的に相手の血を飲まなければいけなくなる……なんてお話はいかがかなと！ラ.イ.ド.ウ.ォッ.チ継承のお話もぜひやりたいのですが季節ものですのでそちらに乗っかってしまうのはいかがでしょうか？)

…トリックオアトリート？
(お互いが側にいることを確かめるように欲に溺れた夜を過ごし、退院したにも関わらず増えた跡や傷を抱えて探偵業にも復帰することになった。所長に改めて心配をかけたことを謝罪すればスリッパで叩かれた後に抱きしめられたり、数日は過保護すぎる相手に鋭いツッコミが入ったりと色々したが傷が癒えていくと共に平和な生活が戻ってきた。暑かった夏も終わりすっかり寒さも感じるようになった頃、事務所で本を読んでいるとコンコンと扉がノックされ、やがて不思議な格好をした子供達が数人中へと入ってきた。事務作業をしていた相手と所長を見つけるなり近付いて元気な声で『トリックオアトリート！』という謎の言葉を告げている。未知の言葉に首を傾げている最中も子供たちはかぼちゃをくり抜いたようなカゴを二人に差し出してお菓子をねだっていて)

(/ではハロウィンと吸血鬼パロなお話に致しましょう！その流れ良いですね。仮装したりお菓子を強請ったりと定番の催しを楽しみつつ吸血鬼化してからのやり取りが出来たら楽しそうです。ちなみにどちらが吸血鬼化するかご希望とかありますか？ひとまずそれらしく上記で始めさせて貰ったので上手く乗って貰えたら助かります…！)

お、お前ら今年も来たな
(相手がいなかった時間を埋めるようにその存在を存分に確かめ溺れた日から翌日、相手よりひと足早く所長からはしこたまスリッパと心配を貰っていたはずだが、相手の話の流れで余計なスリッパを数発食らってツッコミを入れ騒がしい日を過ごしていた。その後数日経ち事務所はいったん落ち着きを取り戻したが本日はまた騒がしい日になることだろう。事務所の出入口近くで構えていると複数人が階段をあがってくる音が聞こえてニヤリと口角をあげる。扉があいて入ってきたのは可愛らしい衣装に身を包んだ子供達だ。シーツオバケに魔女にミイラ、三者三様の格好に楽しげな笑みを向けつつ、机の下に隠していたものを取り出す。それは蜘蛛やかぼちゃのシールで装飾された黒いバケツで中にはカラフルなお菓子がたっぷりと入っている。「イタズラは勘弁だな」と気取った声でいいながら子供達に目線を合わせるようしゃがむとカボチャのカゴにお菓子をいくつか入れてやる。子供達は歓声をあげたあとに事務所を出ていった所で、こちらがやり取りしている間に相手が不思議そうな顔をしているのを見ていれば相手へと近づく、そういえばハロウィンのことは教えていなかった。「トリックオアトリートってのはお菓子をくれなきゃイタズラするぞ！って意味だ」と話を切り出す。ハロウィンが日本でいう盆で人ならざるものがこの世にやってくること、そのオバケ達に紛れるためにオバケの格好をすること、あらゆる人が楽しむために合言葉と共にお菓子集めをすること、風.都.では数年前から街をあげてハロウィンを催していることを説明すれば「今日はいろんな客が事務所にくるんだ」と上機嫌に語っていて)

(/ではまずはハロウィンを存分に楽しむことから始めましょう。吸血鬼化するのはどちらでも面白いかなと思っておりまして、前回探偵の方が能力にかかったので検索くんがかかってまた過保護気味になる探偵でも、探偵が吸血鬼になって血を飲むのを我慢するような展開も楽しいかなと思いますので検索様のお好きな方を選んでいただければ！)

…つまり霊に紛れる格好をしながらお菓子を貰い合う一種のお祭りという訳だね。 翔太郎、僕も参加したい！
(子供たちがカゴを差し出すと相手は飾りの着いた黒いバケツからカラフルなお菓子を取り出して楽しげな笑みと共に入れていく。数日前珍しく数種類のお菓子を買っていたのはこの為の物だったらしい。お菓子を貰った子供達は無邪気に喜んで礼を言いながら事務所を出ていった。恒例行事とばかりに行われていた出来事に興味と疑問を抱いていると相手が近付いてきて早速解説が入る。先程の言葉はハロウィンにおける挨拶や合言葉に近い言葉のようでその起源や不思議な格好の理由、今では街をあげての一大イベントになっていることを聞けば次第にその瞳は興味に輝き始める。死者や悪霊を恐れその被害を防ぐために祈りを捧げたり身を隠したりする文化は聞いたことはあるが更にお菓子を集めたり一つのイベントとして楽しんでいたりするのは初めて聞く。要点を自分なりに纏めてみればすっかり好奇心に火がついて相手の両腕を掴むと前のめりに参加の希望を伝えて)

(/ならばお言葉に甘えて探偵君に吸血鬼化して貰っても宜しいでしょうか？鋭くなった牙や吸血行為に検索が興味深そうにしたり本能と理性に揺れる探偵君を誘惑したりと楽しそうです。期間限定ではありますがいつもとは違う弱点が出来たり血を飲んだり眷属化したりとハロウィンと吸血鬼パロを満喫出来ればと思います！)

っ、残念だが俺はここでお菓子を配る役目が……
(早速子供達が事務所に訪れ例年通りハロウィンが始まりつい浮かれて解説を始めてしまったがすぐに嫌な予感が頭を過ぎる。その予感は当然のように当たって解説を進めるにつれて相手の目がキラキラと好奇心に輝きだした。こうなればもうこの後の展開は読める。すっかり知識の探求に火をつけてしまったようで腕を掴まれれば参加をお願いされてしまった。ハロウィンは当初子供のためのイベントだったが最近は幅広い年代が各々好きな格好をしてイベントに参加していて年齢という意味で浮くことはない。しかしこの街のハードボイルドな探偵としてはハロウィンに浮かれて仮装なんて言語道断だ。あくまでもお菓子を配る側に徹すると言い訳をしようとしたが、ひょいと所長にお菓子の入ったカゴを取り上げられてしまうと『じゃあ私がここでお菓子配っとく！』と元気よく返されてしまう。要らぬアシストに「馬鹿、アキコ！！」と思わず叫んでしまうがこうなればもう逃げ道はなくなってしまった。もう一度相手の方をみる。そこには相変わらずキラキラと好奇心に輝く目があって、それを見つめていればいつも最後には相手のお願いを聞いてしまうのだ。やれやれとため息を着きつつも口角は上がり気味で「なんか仮装買いに行くか」とハロウィンに参加することを決めて)

(/では探偵が吸血鬼化することにしましょう。我慢している所を検索くんに誘惑されて翻弄される探偵がもう目に浮かびます。この季節にピッタリのお話存分に楽しむことにしましょう。一点お聞きしておきたいのですがあまりそちらの方面に詳しくなく、眷属化する、というのはどのような状態になるのでしょうか……？？)

ほら、アキちゃんもそう言ってくれている。…ふふ、そう来なくては。じゃあ早速見に行こう
(普段の違う格好に興味深いイベントの趣旨、それが街で盛大に行われているのならば乗っからない理由はないだろう。知識の探求に目を輝かせると相手に参加を持ちかける。相手はいつも通りハードボイルドらしくないという理由で逃げようとするが近くでその様子を見ていた所長がお菓子を配る役割を引き受けると申し出る。思わぬアシストにこれ幸いと更に半歩踏み込んで畳み掛けるように声を掛けると逃げていた視線がこちらを向く。困ったように溜息をつき、だけどその口角が僅かに上がっていることは見逃さない。参加の言葉が投げられるとぱぁと表情を明るくして無邪気に喜ぶと善は急げとばかりに「アキちゃん、あとの仕事は任せても良いかい？」と所長に許可を強請る。ご機嫌な所長から許可が降りると早速相手の手を引いて事務所を飛び出そうとし)

(/こちらもゆるふわ知識しかないのですが吸血鬼側の血を与えたり特別な場所や強く意志を持って噛むことで二人の精気が混ざって人間側が吸血鬼と同族かそれに近しい存在に段々と近づいていく、みたいに認識してます。精気を交わした者の血が一等美味しいとか色々ある中で吸血鬼側と同じ不老不死の生き物になる契約といった感じなので人間のままでいて欲しい気持ちと同族にしたい・なりたい気持ちで揺れたり出来そうかなとも思ったのですがあくまで案の一部ですのでお好きに動かして貰えたらと思います！)

まぁハードボイルドな探偵もたまには隙をみせて親しみやすさを持ってもらわねぇとッ？！おいフィリップ！！
(所長の追い風が加わればもう相手を止めるものは何も無い。相手と共に参加を決めればその顔は気持ち良い程に明るくなって、こんな嬉しそうな顔を見せられてはこちらも文句を言うことはできなくなってしまう。どうやら後のことは所長に任せて良いようだ、あの大量のお菓子を配る仕事は所長に任せることとしよう。両手をひらりと動かしてハードボイルド探偵が仮装を行う理由をつらつらと並べ始めるも、全てを言い終える前に相手に手を引かれてしまった。相手に引っ張られながら慌ててハットを手に取り騒がしいままに事務所を飛び出す。外はいつもの風車と共にハロウィンの装飾が至る所に施されていて、オバケやカボチャや蜘蛛やらが楽しげに街を舞っている。道行く人々もちょっとした頭飾りから本格的な仮装まで様々な格好をしていて街全体がハロウィンに浮かれているようだ。ハロウィンは始まったばかりだが早々に着替えてこの空気に加わった方が相手の好奇心も満たされる事だろう。まずは仮装の手はずを整えようと繁華街へ向かいパーティーグッズを扱っている大型の雑貨店へと入る。店にたどり着き中に入ればこの日の為にか一番目立つところに大きく仮装のグッズのコーナーが出来上がっていて「すげぇ数だな…」と思わず圧倒されていて)

(/なるほど把握いたしました。だんだん検索くんの血が一番美味しくなっていってしまって葛藤するとかも出来そうですね……！そこらへんの要素もゆるふわに入れていきながら好きなところ取り入れていきましょう。教えていただきありがとうございました！/なにもなければこちら蹴りで大丈夫です)

凄い、街が全部ハロウィン仕様だ！…これが仮装か、種類豊富で悩んでしまうね
(相手がまた何やら言っているようだかハロウィンというイベントを満喫する方が先だ。相手の手を引いて事務所を飛び出すと街の至る所にハロウィンの装飾がされていて更にキラキラと目を輝かせる。大通りへと入れば先程の子供たちのような仮装をしている人や髪飾りがハロウィン仕様になっている人なども増えてきて街全体でイベントを楽しむというのは本当のようだ。キョロキョロと辺りを観察しながら歩いていると相手に導かれて大型の雑貨店へと入る。入ってからすぐの一番目立つ場所に仮装コーナーが出来ていてヴァンパイアや魔女、狼男など定番らしいものからナース服やチャイナ服などコスプレに近いものまで揃っている。小物まで含めればかなりの種類がありここから一つ選ぶとなると悩んでしまいそうだ。それらを順番に見ていると『あ、翔ちゃんとフィリップ君だ！』と聞き馴染みのある声が聞こえてきて顔を向ける。そこには既に小悪魔のような仮装をしたクイーンとエリザベスの姿があってこちらに近付いてくると『二人も仮装買いに来たんだ？』と微笑ましい笑みと共に問いかけられて)

あぁ、何の仮装するか決めるだけで大変そうだ……よぉ、フィリップがどうしても仮装したいって言うから付き合ってやってんだよ
(相手は様変わりした街の様子に相変わらず瞳を煌めかせていてちらりとその様子を横目で盗み見るとハロウィンを仮装して楽しむのも悪くないのではと思えてきてしまう。今までお菓子を渡す側として参加することはあっても仮装して貰いに行く側は初めてでそういう意味では相手と立場は同じ、山ほどある衣装を前に自然と機嫌も上向きになってしまうというものだ。ひとまず女装ものはナシとしてハロウィンに寄せるかコスプレのように楽しむかだけでも決めるべきだろうか。肌に傷があるよう見せるタトゥーシールやカラーコンタクトまでありどこまで拘るか難しい、相手がどこまで望むかにも寄るかと相談しようと思った矢先に聞き慣れた声がしてそちらへ目を向ける。そこにいたのは女子高生の情報屋の二人で、既に準備万端の状態でこちらへ近づいてくる。ハロウィンなんてこの二人がいかにも好きそうなイベントだ、自分はあくまでも相手の付き添いなのだと主張しつつ「なかなか似合ってんな」と二人の装いを褒めていて)

ああ、それは悪魔の格好かい？ 僕達もどれにするか悩んでいた所で…
(あくまで付き添いと主張する相手に二人は若干意味深な視線を向けていたが自らの装いを褒められると気合いを入れたのだと嬉しそうにしている。相手の言葉に同意しつつそのモチーフを聞けばどうやら当たりだったようで先がフォークのように尖ったステッキを片手に軽いポーズを決めている。こういった類の服は日常では着ることはなく、イベントごとならではの格好と言えるだろう。その特別感と非日常感にワクワクしながらも今の状態を口にしていると『じゃあアタシ達が二人をプロデュースしてあげる！』とエリザベスが言い出してクイーンもそれに同意している姿に思わずぱちりと目を瞬かせる。『翔ちゃんのセンスだといつもと変わらない』『せっかくやるなら思い切りやらなきゃ損』と何時しか二人の間で盛り上がっていて相棒の元にはクイーン、自分にはエリザベスがやって来る。どうやら自分達には拒否権は無いらしく完成したらココに再集合という約束でそれぞれ彼女達にプロデュースされる形になり、早速腕を引かれて衣装選びの運びとなり)

は？ちょ、待て待て！勝手なこと言うな！！
(女子高生二人の格好を褒めてこちらが何を着るか迷っていると相談したまでは良かったが、次にエリザベスから飛び出した言葉には相手の隣で同じく目を瞬かせる。そこからこちらの悪口混じりの言い分が並べられ、こちらが口を挟む間もなくクイーンに仮装をプロデュースされることが決まってしまった。一応文句を叫ぶも聞き入れられることなく腕を引かれて仮装の準備が始まってしまう。ひとまずクイーンに女装は絶対にしないと伝えるも意味深な視線と共に『私がそんなプロデュースすると思ってる？』と自信に溢れたことを言われてしまえば彼女に任せる他なくなってしまった。今の彼女の格好を考えればセンスの面では保証されているのである意味安心かもしれない。クイーンは仮装コーナーをちらりと見た後に直ぐ様ひとつの袋を手にして『翔ちゃんは絶対ヴァンパイアが似合うよ』と自信満々に衣装を差し出される。ヴァンパイアならばハロウィンの王道でカッコ良さの面でも文句はない。好感触な返事をするとクイーンはその後も大量に細々としたものを買い込んでいた。雑貨店の片隅にはこの日のためにか着替えのコーナーが用意されていてブースに押し込められると着替えが言い渡される。拒否権は存在しないようで言われるがまま着替え始めた。腕周りがふわりと膨らみ手首と首周りにフリルのあるルネッサンスシャツに光沢のある濃い紅のベストを着込んで胸元には真紅のブローチを付ける。その上から外側が黒、内が光沢銀に輝く高襟マントを羽織れば着替えは終わりだ。着替え終わったことをクイーンに告ればこれで終わりではないらしくバラバラと購入品が目の前に広げられる。あとはもうされるがままだ、一日だけ染色できるという液を髪に塗られて茶髪は白髪へと代わり前髪の右側だけを後ろに流され逆に左側は少々目にかかるように調整される。顔には薄らと何かを塗られると顔色は白くなり、唇は鮮血を思わせる色に塗られ、左の口端に血糊を僅かに付けられた。極めつけに赤色のカラコンを装着すればようやく完成を告げられた。なかなか好きに弄られたが出来上がりはかなり満足のいくものでせっかくやるならここまでやるべきという彼女の主張も分かる。クイーンに礼を伝えたあと彼女と共に集合場所へと戻って)

…へぇ、つまり中国のゾンビの仮装という訳だね。
(どうやら彼女達がプロデュースするのは規定事項のようでこちらはエリザベスに連れられて仮装を見て回る。仮装選びに悩む中で女装も候補に入っていれば少し焦ったが最終的に手渡されたのはキョンシーと呼ばれる不思議な格好の服だ。中国における動く死体だと説明を受けると感心の声をあげるがその間にもカゴに彼女セレクトの小物などか入れられていく。会計を済ませると一式を渡され併設された更衣室に送り出される。全体的に黒を基調とした生地に赤と金で中華風の刺繍が施されていて袖は腕を伸ばしても手が隠れるくらいブカブカだ。上着は腰辺りで左右に深いスリットが入り、その下に足首上辺りで絞られたぶかぶかのズボンを履くことになる。ウエストに柄のついた布を巻きつければおおよそ説明書通りに着ることは出来ただろう。普段より装飾や布地の多い格好に苦戦しながらも更衣室を後にすれば待っていたエリザベスによって仕上げが施される。髪は軽く外ハネと上げている所は編み込みをされヘアピンで固定される。どうせならばとシルバーのカラコンを入れられ、ブルーの下地と明るいファンデーションで顔色も白く化粧が施される。アイラインと目尻を中心に紅のアイシャドウをぽんぽんと重ねられるとますます人ならざるものの見た目となった。赤の中国結びのイヤリングを耳から垂れ下げ、お札のついた帽子を被るとようやく完成のようだ。鏡をみればハロウィンの説明通り死者に紛れそうな完成度で思わず口角が上がる。これならばハロウィンを十分楽しむことが出来るだろう。お礼を伝え一緒に集合場所に向かうとクイーンと見慣れぬ格好をした相手を見つける。見慣れた茶髪は白髪になっていて白い肌に赤い目が際立つ。高級感溢れるシャツとマントは高貴さを演出していて相手の特別な姿に思わず見蕩れてしまう。暫しそうしているもすぐ近くに二人が居るのを思い出すと「、良く似合ってるよ、翔太郎」と褒め言葉を送って)

お、お前はキョンシーか。なかなか不気味に仕上がってんな
(クイーンにネイルの追加を打診されそれを断っていればエリザベスと奇妙な格好の人影が近づいてきてそちらへ目をむける。そこには小悪魔なエリザベスと中華服に身を包んだ顔色の悪い相手の姿があって、日常ではまず見ることのない姿に物珍しげに眺める。いつも奇抜な格好をしているがまた違った方向性の服装だ、編み込みの髪型も凝っている。極めつけは瞳の色でシルバーのカラコンは黒目がより強調されて人間離れしている雰囲気に思わず見入ってしまった。その間に相手がこちらに見蕩れていることは気が付かず、暫く互いを見つめる時間が過ぎていてエリザベスとクイーンとは目論見通りだと二人で笑いあっていた。相手に装いを褒められると「お前もバッチリ似合ってる」と笑みを浮かべる。これで人とオバケで溢れる風.都.を自分達も堂々と歩けそうだ。『私達に頼んで正解だったでしょ？』とエリザベスが得意げな笑みを浮かべれば「あぁ、おかげでハロウィンを全力で楽しめそうだ。ありがとな」と礼を告げれば『じゃあみんなで写真とろ？』と誘いを受ける。ここまで仮装してくれたクイーンのお願いを断るわけにはいかず店を出て表にあるハロウィンの装飾の前の並べばクイーンがセルフィーを撮るためカメラを構えて『もっと寄って！』と声がかかり画角に収まるように身を屈めて)

これで悪霊には襲われずに済みそうだ。＿とっておきの一枚が撮れたね、二人ともありがとう。
(想像以上に気合いの入った仮装になったがせっかくのイベントならば思い切り楽しんだ方が得だろう。相手に褒められると嬉しそうに口元を緩めて仮装の意味を果たせそうだと感想を口にする。この格好を施した二人にお礼を伝えれば写真を撮ることとなった。表の通りに出て丁度ハロウィンの装飾のある場所に並ぶと全員が画角に収まるように屈めて身を寄せ合う。人では無い姿が4人カメラを向いた所でクイーンがシャッターを切り、撮れた写真を見せてくれる。ハロウィンの背景に仮装した姿、まさに今しか撮れない思い出に残る写真だろう。その出来に微笑んで感想を口にすると改めて二人に礼を伝える。どうやら彼女達はこれからハロウィン限定のスイーツを食べに行くようで『後から写真送っておくね』という二人に手を振ってその場で別れた。去っていくエリザベスが『ハロウィンデートいいなあ』と呟いていたのは恥ずかしいので聞いてないことにしておく。改めて相手と2人きりになれば未だ仮装姿は見慣れなくて変な感じはするも「じゃあ行こうか、翔太郎」と言って歩き始め)

…、……あぁせっかくしっかり仮装したんだ、本番はこっからだぜ？
(顔色が悪く目の周りも不気味で妖艶に赤い相手の顔に笑顔が浮かぶと何ともチグハグな印象だがこれも仮装の醍醐味なのかもしれない。クイーン達に連れられ小悪魔二人とキョンシーとヴァンパイアといういかにもハロウィンを満喫している写真が撮られれば、ハロウィンならではの一枚が収められてまた思い出深い写真が出来上がった。再び礼をいいつつ女子高生二人を見送ろうとしたが、最後にエリザベスが『デート』なんて言葉を口にすると一気に羞恥が襲いきて目線を泳がせる。冷静になって考えれば恋人と本気で仮装をしてハロウィンを楽しむなんて全力でデートに挑んでいる事に他ならない。生返事をしているクイーンの口元がそれこそ小悪魔のように上がっているのをみればここまで読んでの申し入れだったのかもしれないと思えてきた。だがせっかくこの格好をしたのならば全力で楽しまなければもったいない。気を取り直せば店先に置いてあったフリーペーパーを手にして相手へと見せる。そこには例の合言葉を言えばお菓子が貰える施設の一覧が乗っていて、大きな施設をいくつか回れば記念品を貰えるスタンプラリーの形式にもなっていた。裏面に小さく鳴.海.探,偵.事.務.所の名前があることを誇らしげに紹介したあとに「まずはここに行ってみるのはどうだ？」と洋菓子店を指さして)

本当に街をあげてのお祭りみたいだね。 僕達の事務所の名前もある。ああ、早速お菓子を貰いに行こう。
(彼女達と別れた後相手を見ればしっかり目線が泳いでいる。初めての行事に興味を持った故の提案だったが相手とのデートも兼ねると思えば尚更浮かれてしまいそうだ。何とかキョンシーらしくニヤけるのは我慢しながらも相手がフリーペーパーを手に取れば一緒にそれを覗き込む。ちゃっかり顔のついたかぼちゃを持ったふ.う.と.く.んのイラストと共にハロウィンに参加している施設の一覧が書かれていた。その中にある馴染み深い名前を相手が指さすと先程子供たちが来た理由に納得しつつあの事務所が風.都.の一部であることを改めて実感するようで思わず声が弾んで嬉しそうにその文字を見つめていた。その中でここからも比較的近い洋菓子屋を相手が指させば即座に頷く。せっかく仮装したのならばお約束に則ってお菓子を貰ってみたい。そうと決まれば早速他の仮装した人々に紛れてその洋菓子屋へと移動し始める。やがて目的地にたどり着けば相手とアイコンタクトを交わした後、ハロウィンの装飾がされた店内へと入って店員に「トリックオアトリート！」と合言葉を告げて)

と、トリックオアトリート！
(今やハロウィンは夏祭りと並んでこの街の自慢すべき季節イベントだ。装いも新たに洋菓子店へと歩き始める。お互い顔は人並み外れて色白で目の色さえ違うのにそんな格好をしていてもまったく浮かないのがハロウィンだ。クイーンに持たされたお菓子を入れる用のカボチャ型のバスケットを手に洋菓子店へたどり着くと相手と目配せしてから店内へ入る。いつもシュークリームを買って世話になっている店だが今日はオレンジと黒で統一されたハロウィンの装飾が施されていていつもと違った華やかさがある。店員を目の前にするとやはり少々躊躇したがこの格好で恥ずかしがるなんて今更だろう。相手と共に合言葉を口にすれば店員はクスクス笑い始め『いつもより怖い格好で着てくださってありがとうございます』と小さな袋に詰められたクッキーを手渡された。どうやら顔を覚えられていたらしく、そうなると一気に恥ずかしさが襲いきてそそくさとクッキーを受け取る。とはいえ一店舗目は無事成功だ、カボチャのバスケットにクッキーを入れると「良い調子だな」と相手に目線を向けて)