相乗りで何処までも 【 〆 】

、……ありがとう、フィリップ。お前のことは絶対に誰にも譲らねぇ
(シャントは同じ顔でも言動はかなり子供っぽく、彼と対抗するのは自分が余計に子供っぽく見えるかと思って言葉を切ったが、それを拾い上げるような言葉と共に両頬に手が添えられて顔の向きが変えられる。相手から視線がそらせなくなってこちらに向く相手の瞳を見つめる。そして告げられたのは相手にとって自分が特別だという言葉、これまで何度だって互いに交わした言葉のはずなのに今はそれに心底安心している自分がいた。自分が思っていた以上にこの服を着て同じ顔をする別の人間が相手の隣にいるのが堪えていたらしい。そのまま二人の体が近づいて抱きしめられると、無意識のうちに安堵の息をゆっくりと吐いてこちらからも腕を回して相手を抱きしめる。いつもの温かさがそこにはあって、決して手放したくないものだと何度でも確信を持てた。礼を言いながら軽く擦り寄ったあとに腕の力を強めると独占欲を隠さない言葉が口から溢れだす。 シャントに出会ってから様々な災難に見舞われているが柄にもなく弱気になっていた自分を軽く笑うと「あいつにつられて俺も情けねぇこと言っちまったな」と零して)

…ん。 たまにはそんな日もあるさ。それに君の弱気な所や妬いてる姿を見られるのはちょっと優越感があって嬉しい。
(目を合わせて言葉を紡ぎそのまま抱き締めると長く息を吐くのを感じながら相手からも腕が回された。慰める為に彼を抱き締めた時は特に何も感じなかったが今こうして相手を抱き締めていると暖かな物が心を満たす。こうして感じる匂いも体温も慣れ親しんだ安心出来るものでやはりこっちの方が良い。擦り寄ってくる仕草に少し擽ったいように笑みを零れる。腕の力が強まって独占欲を露わにする言葉が告げられると無意識に口角があがって上機嫌に相槌を返した。心配しなくとも相手に代わる人物など何処にも居ない。笑い声と共に聞こえた呟きに優しい声色で言葉を返す。街の人や依頼人など守るべき人物にはカッコつけたがりな相手だがこうして対等な場所に居て特別な関係である自分にだけ見せてくれる弱い所とか嫉妬心が実は嬉しかったりする。それをこっそり明かしながらも「今日はお疲れ様」と相手を労って)

まぁ俺が情けない姿見せられるのはどっかの王子様と違ってお前だけだからな
(自分がいるべき場所に収まればこうやって相手と抱き合っているだけでも騒動の疲れが癒されていく。ハードボイルド探偵ではない左.翔.太.郎.の姿は相手にしか見せられない、それはすなわち自分にとっても相手が特別なことを示していて、シャントを揶揄うようなことを言いながら少しだけ相手に体重を預けていた。相手から労いの言葉を受け取ると視線を合わせて小さく笑みを浮かべる。ひたすら捕まらないよう逃げ続ける時間だったが流石に走った疲労がたまっている。相手も自分と同じ顔で好き勝手振る舞う王子様には苦労しただろうと「お前も子守りお疲れ様」と冗談交じりに相手を労って)

(/いつもお世話になっております！そろそろ区切りかと思いましてお声がけさせていただきました。探偵とは全く違う人物を好き勝手動かすことができてとても楽しかったです。いつも検索くんに振り回される分こちらが自由に動いてお世話してくれる検索くんを見ることができてとても良かったです。今回もありがとうございます！
この後の展開ですがいかがいたしましょうか？この前上げていただいたオークション潜入や青春の恋の応援どちらでも楽しそうですし、その他にやりたい展開あれば教えていただければ幸いです！)

ならば有難くその役目を頂戴しよう。ここに来たばかりの僕の相手をしていた君の苦労が少しわかった気がするよ。
(更に寄りかかるように体重を預けられるとそれをしっかりと受け止めながらも自分だけが見られる情けない姿を享受することにした。仮にも一国の王子に付き合ったことを子守りと称するのはどうかと思うがあの好奇心旺盛な姿は何となく覚えがあってあの時の相手のような苦労だったかもしれないと呟きを零す。落し物探しが解決したと思えば思わぬ騒動に巻き込まれてドタバタした一日だった。陽も暮れ始めいい時間になってくればゆっくりと腕を解いて「今日はもう事務所を閉めようか」と提案して探偵から休息の時間に移っていき)

(/こちらこそいつもお世話になっております！ 探偵君にそっくりでありながら普段では見れないような無邪気でちょっぴり世間知らずなシャント君と絡むことが出来てとても楽しかったです。探偵君にしてもらった事を今度は王子様にしたり嫉妬する探偵君が見れたりして充実したお話でした。ありがとうございます！上記は蹴ってもらって大丈夫です。
悩むのですが日常回っぽく恋の応援をする話はいかがでしょうか？相談に乗って手伝いしながらも恋愛事情について突っ込まれて誤魔化したり話を聞きながら初期のことを思い出したり出来たら楽しそうかなと思っております…！)

___おぅどうした、そんな深刻そうな顔して
(自分とそっくりの王子が自国に帰ってから1週間程、シャントから無事に帰国したあと執事と義弟に罪を数えさせることができたと報告を受けやるべき事を成し遂げたのだと風の街で笑みを浮かべていれば事務所の扉が開く音がしてそちらの方へ目を向けた。扉から事務所に入ってきたのは顔見知りの男子高校生だ、いつかクイーンとエリザベスに紹介してもらってそれとなく話をしたのを覚えている。声をかけつつ近づいてみれば彼はかなり深刻そうな顔で顔を俯かせていて、相当な悩みを抱えているのが一目でわかった。なにかの事件に巻き込まれたのだろうかとその顔を窺いながら何があったのか聞き出そうとして)


(/恋の応援しているはずがこちらのこと探られたり初々しさに懐かしかったり恥ずかしかったりできそうですし、是非恋を応援するお話にしましょう！物陰から様子を見守ったりインカムを使って指示出したりして拗れてしまったりと楽しい日常が過ごせそうです。ひとまず導入らしきものを置いておきますので、お好きなように改変していただきつつ乗っかっていただければと思います！/なにもなければこちら蹴りで大丈夫です！)

…。『……こういう話できる人、左さん以外に居なくて』
(あの騒動から一週間ほど、無事にシャントは自国に帰り二人の罪を告発したという報告を受ける。今回の件で国を守ることの意識が強まったようで王になる為の勉強などにより一層力を注ぐつもりらしい。届いた手紙に添えられていたシャントの写真に映る背後の建造物についてスツールに座って好奇心のまま調べていると事務所の扉が開いた。入ってきたのはクイーンやエリザベスと同じくらいの歳の男性で制服から見ても高校生だろう。顔見知りのようで相手が声をかけている、こういう依頼内容の確認などは専ら相手や所長に任せている為出番があるまで待っていようと読書を再開する。一方で男子高校生は入口で立ち尽くしていたままだったがやがてポツポツ話し出すと意を決したように顔を上げて『菜月ちゃんと付き合うために恋愛相談に乗ってください！』と告げて)

はァっ？！あのな、ここ探偵事務所だぞ……ったく、その菜月ちゃんってのはどういう子なんだ？
(彼、豪の顔がますます深刻になっていくのにつられ真剣に彼の顔を見つめる。自分にしか相談できない話ときけば意を決してここに来たのだろうという思いが汲み取れてじっと要件が話されるのを待った。しかし彼の口から出てきたのは全く予想だにしない内容で、そもそも依頼でもなく思わず声をあげてしまった。だが悩みを抱えてこちらを頼りに来た彼を無下にすることはできない、内容は恋愛沙汰とはいえ自分だけならと選んでここにきたのだ。それならば応えてやるのもこの街にすむ大人の努めだろう、これも風.都.の人の困り事を解消する一環かと考えれば豪にソファへ座るよう促した。向かいの席に座るとまずは意中の相手である菜月ちゃんについて問いかけて)

ありがとう、左さん。菜月ちゃんは今年から俺と同じクラスになったスタイルも良くていつもニコニコしていてその上勉強も出来るめちゃくちゃ可愛い子なんです。委員会が一緒になって話すようになったらますます好きになって、この前も友達グループで夏祭りに行ったりもしたんですけどやっぱりその、二人だけで遊びに行きたいと思って…
（恋愛相談をもちかけたことに相手が声をあげ探偵事務所だと指摘されると場違いなことであることは理解していたのかその表情は曇る。だがソファに案内されるとぱっと表情を明るくしてお礼を言いながら席に座る。意中の彼女について問われると少し恥ずかしそうにしながらもどんな人物かを説明しだす。その時のことを思い出しているのか妙に熱のこもった口調で時折照れくさそうに笑って彼女の好きなところや好きになったきっかけを述べる。友達としては関係を築いているが更にその先に踏み込む為に二人きりで遊びに行きたいと希望を口にすると『なので恋愛経験豊富な左さん流のデートの誘い方を教えてください』と期待を込めた目を向けて）

お前、相当菜月ちゃんの事好きなんだな……ふ、そこまで言われちゃ手伝わないわけにはいかねぇな
(手始めに彼が好きだという子のことを聞いてみればその顔は分かりやすく恋をしている人間がする顔になって、彼女を褒める言葉が次々飛び出しその初々しさには思わず笑ってしまいそうになる。だが豪の真剣さを前にそんな顔は許されず菜月ちゃんを語る豪の話をきけば、最終的にはその真剣さに小さく微笑み感想を零す。それにしても夏祭りに彼もいたとは、相手と二人で歩いているところを見られていなくて良かったと内心安堵する。直後こちらを恋愛における師匠とでも言うように持ち上げられれば、思わず不敵な笑みを浮かべ左手をヒラリと回しながらキメ顔で返事をしてしまった。実際そこまで恋愛経験は豊富ではなく軽くあしらわれていたのが殆どのように思うがそれでも確実に豪よりかは経験豊富だ。相手と長く積み上げてきたものは経験として多いが、恋愛における初手であるデートへの誘い方はそれほどレパートリーが多いわけではない。それらの事情は隠しそれっぽく顎に手をあてると「デートに誘う限りは彼女に喜んで貰わなきゃ意味がねぇ。菜月ちゃんが好きな事とか興味持ってるもん知ってるか？」とさらに情報を聞き出そうとし)

菜月ちゃんの好きな物…確かケーキとかパフェとか甘い物が好きって言っていたような…あと最近は猫の動画を見るのが日課らしいです。
(関与していない間に二人の間で話が進み彼の恋愛相談に相手が乗る形となっている。おそらく彼が思っているほど相手は経験豊富では無いと思うがそんな相手が何を教えるのか興味が湧いてスツールから降りて二人に近い椅子に座り直すと「気にせず続けたまえ」と言葉を向ける。本を開いて読書をする振りをするが聞き耳を立てる目的なのはバレバレだろう。一方で彼は頼れる年上の相手が手伝ってくれるとなれば表情を明るくさせて『頼りになります』と尊敬の眼差しを向ける。早速デートの場所決めに話題が移り彼女の好きな事などを聞かれると真剣な顔で悩み記憶の中から情報を引っ張り出してくる。普段の会話や一緒に遊びに行った時の行動から甘党である事と猫好きであることを思い出せば相手に情報を共有して『何か良いスポットありますかね？』と助言求めて)

なら、デートの行先は簡単だ。繁華街から一本外れた道に新しく出来た猫カフェがある。まだ話題になりきってねぇからそこまで混んでねぇし甘い物も食えて猫とも触れ合える完璧な行き先だ
(豪にアドバイスを送っていると相手が近くの椅子へと移動してくる。気にするなと言うが十中八九この会話に興味があってやりとりを聞きに来たのだろう。ひとまず恋愛経験についてツッコミが入らなかったのに安堵しつつ、こちらに尊敬の眼差しを向けてくる豪をみればますます気は大きくなっていく。彼女の好みをきけばスルスルと答えは出てきてそこにも彼の真剣さをみつつその内容にまたニヒルに笑う、その二つが同時に存在しかつデートとしていくのにピッタリの場所があるのだ。人差し指を立て出来たばかりの猫カフェを勧めれば豪は目を輝かせ『確かにうってつけの場所ですね！』と前のめりに返事をしていた。さらに気を良くすれば「誘い文句はこうだ。ここのチケット貰ったんだがこんな可愛すぎる場所は俺には似合わねぇ。だから可愛い子ちゃんとご一緒したいんだが、いかがかな？」と気取った顔と気取った声で気取ったセリフを言えば、これで行けるとばかりに豪をビシリと指差して)

…その誘い方で君は成功した試しがないだろう。普通に興味があるから君と一緒に行きたいで良いと思うのだけど。
(何事もなく恋愛相談は続いていく。風.都.については相手に勝る人物はそうそういない。新しく出来た店も把握済みのようで彼女の好みに合わせて猫カフェの案を出せば彼も目を輝かせて食いついた。確か猫カフェとは猫と触れ合えることの出来るカフェのことで以前エリザベス達に写真を見せて貰ったことがある。確かに条件にピッタリなチョイスだろう。彼の反応に更に気を良くしたのか続けて気取った態度と台詞で誘い方をレクチャー始めるがその内容は傍から見てもあんまりだ。恋人である自分でもその誘い方はどうかと思うのだから付き合う前の彼女は尚更だろう。傍観を決めるつもりだったが流石に彼が真似するのは不味いと横からその誘い方での今までの成功率をバラす。想い人の嗜好が分かっているのなら変に飾らずストレートに一緒に行きたい旨を伝えれば良いと自分の意見を告げれば『左さんの案も良いですけど俺にはそっちの方が自然そうです』と彼もさりげなくこちらの誘い方に同意して)

な、余計なこと言うなよフィリップ！ぐ、……ま、まぁ行き先はバッチリだろ？菜月ちゃんと友達ではあるんだから、あとは普段通りでいきゃいい
(渾身の決めゼリフを言ったつもりだったが相手から横槍が入り、しかも失敗続きだったことをバラされると思わず声をあげる。実際ハードボイルドに女性を誘って成功した試しはないが豪に伝える必要はないだろう。しかし追い打ちをかけるように豪が相手の誘い文句の方が良いと冷静な判断をすれば、傷に塩を塗り込まれたようで言葉を詰まらせた。軽く咳払いして気を取り直す、既にグループとはいえ夏祭りへ行く仲なのだから誘い方はそれほど重要ではないだろう。問題はその後だ。気追いすぎて変な空気になっても困るし、無理して外面だけ良くしても長く続く関係にはならない。そこは自然体でもいいのだがそれだけでは一歩進んだ関係にはなれないのがネックだ。再び人差し指を立てれば「ただし彼女をエスコートするのを忘れずにな。店までの道調べたりその後の事もある程度考えておいたり、男らしいとこみせねぇと惚れさせられねぇぞ」とそれらしいアドバイスを重ね)

客観的な情報は伝えるべきだろう。 ……、
(変な方向に進まないように事実を伝えれば相手から抗議の声が上がる。こういう言い回しが無ければ一人や二人容易に誘う事が出来そうだがそれはそれで今の自分には不都合だから難儀な話だ。意も介さず平然と返せば悔しそうにしていたが咳払いして話を戻す。行先も決まり誘うことに成功すれば次はデート本番の話に移る。指を立てて話す内容はおおよそまともで彼は『勉強になります』と言いながらいつの間にか取り出したノートにその内容をメモしている。いつも目的地に向け軽い説明を施しながらも迷うことなくスマートに案内してくれる相手は確かに頼りがいのある印象を受けるからそれを習得するというアドバイスは悪くない。そうしてメモを取り終えた彼がノートを見返しながらも『そういえば左さんは今おつき合いしてる人は居るんですか？』と素直な問いかけをする。二人の関係は限られた人達以外には秘密だ。この状況でされる思わぬ問いに思わず反応しそうになるも一瞬相手の方に視線を向ける程度に留め、無関係といった態度を持ちながらも相手の回答に委ね)

え、……そりゃまぁ、いるに決まってんだろ？でも他の奴には言うなよ、探偵の私生活はミステリアスじゃなきゃいけねぇ
(豪と菜月ちゃんは友達としては良好なのだからあとは好きかもと思わせる何かがあれば十分関係を進歩させられるはずだ。こちらのアドバイスに今度は相手から横槍も入らず、相手の言う客観的な視点からみてもおかしいことではないらしい。ノートまで取りはじめた豪に微笑ましさを感じていれば唐突な質問に一瞬固まってしまった。相手からの視線を感じるも何も言わないあたりこちらに回答を委ねたといったところだろう。二人の関係はなるべく大っぴらにはしたくない、隣のこいつが恋人だなんて口が裂けても言えない。だがこれだけ堂々と恋愛指南をしたのに当の本人が恋人がいないというのはなんとも箔にかける話だ。少しの間を置いてから当然だとでも言いたげにすました顔で返事をし、恋人がいるという事実だけは伝えそれ以上言及しないことでこの場の体裁を保つ。ついでに恋人が居ることを言いふらさないよう釘を刺しておき)

もちろん言いませんよ！ そっか…ちなみにその人はどんな人なんですか？ どういう所が好きで、どうやっておつき合いされたんですか？
(思わぬ質問に動揺しそうになるも何とか平然を保ってあとのことは相手に委ねる。彼もまさかここ二人に繋がりがあるとは思わないだろう。意気揚々と相談に乗った手前、居ないとも言えないのかすました顔で恋人がいる旨の返事をしていた。周りに言いふらさないようにいつもの気取った言い方をするが肝心の彼は身近な成功例に興奮しているようで相手の約束には頷くも表情を明るくしたままだ。やがて興味の矛先は相手の恋愛事情に移ったようでメモを構えると相手の恋人について純粋な目を向けながら次々質問していき)

そ、れは………そいつは散々俺の事好き勝手に振り回す奴で…でもそれがそいつと一緒に居たい理由のひとつだ。何よりそいつはこの世で一番信頼できて俺の命を預けられる唯一の存在で、俺の全てを見せてもいいと思ってる。……俺の情けねぇところも受け入れてくれると思ったから今の関係を変えても良いって決心がついて夏祭りの時に好きだって伝えたんだ
(上手く話題を交わしたつもりだったが豪はさらに恋人のことを深堀りして言葉に詰まる。なにせ当の恋人はすぐ近くにいて、相手のどこが好きかなんて話を目の前でするなんて恥ずかしいにも程があるだろう。相手もその場から動く気配はない、しかしここでこれ以上語らないのは恋愛相談を受けている身としては不誠実で自分の言葉も軽くなってしまう。なるべく相手から顔を背けて相手の存在を感じないようにして軽く呼吸をすると口を開く。滑り出しこそ相手を揶揄うような所から始まったが、考え話していくうちに段々と胸には相手への想いが溢れ、敢えて顔を背けているおかげか滑らかに言葉が出ていた。怒涛の質問内容だったがいつも感じている事を纏めて言葉にするだけならば簡単に答えることができる。あの夏祭りでひとつ関係が加わった時の事を思い出せば自然と口には笑みが浮かぶが、ふと我に返って豪の方をみれば恋人を語るだなんてこちらが見せたことのない顔をしていたせいかポカン口をあけていてやっと羞恥が襲いきた。しかも近くには相手がいるわけで今の内容を聞いていたのは確実、それにもまた羞恥が重なると顔を赤くなるのを必死に抑えながらこれ以上何か喋るのは危険だと判断し「お前も恋人いるんだから答えてやれよ」と無理やり話を向こうへ振って)

……っ、…なんで僕に振るんだい。…えっと、明確に好きになったきっかけというものはないけど、日々過ごす中でその人が自分の言動にコロコロと表情を変えるのを見てもっと色々な顔が見てみたいと思ったんだ。僕の恋人は決して完ぺきではないけれど根っこの所は誰よりも強くそれでいて優しくて、その人となら何があろうと乗り越えられるし幸せになれると根拠がなくとも信じられる。好きとはそういう特別な感情をさすのだと思うよ。
（更に深堀りするように問われると相手の言葉が詰まる。彼にとっては恋愛指南の一部のつもりだろうがこちらからすれば本人の目の前で相手の好きなところを語れと言われているようなものだ。思わず身を固めていたが相手が顔を背けたと思えば少し間を開けてぽつぽつと話し出す。段々とすらすら述べられていくそれは自分への思いの丈が込められていて最後の方には柔らかな笑みを口元に浮かべるものだから熱が顔に集まっていくのを慌てて手元の本で隠した。当の彼は自分が聞いた以上の告白だったのかぽかんと顔を開けてしまっている。何とも言えない空気となったがこれで彼も満足しただろうとさりげなくその場を立ち去ろうとするもその前に相手から話を振られてツッコミを入れる。悪手極まりない行動だが彼もこちらを向けば誤魔化せる雰囲気でもない。暫しの思考の後、ぎこちなくも今まで感じてきたことを言葉にしていく。誰よりも賑やかで優しくて一緒にいて面白いと思える相手と一番近い所で接してこの先も過ごしていきたいと思っている。多少ぼやかしてはいるがありのままの感情を語っていれば無意識に柔らかな表情になっていた。全てを言い終えた所で二人に聞かれたという事実にじわじわと羞恥が戻ってきて視線が揺れ動きながらも「だから君も、思いがあればなんとかなるはずさ」と強引に結論をまとめようとして）

、………俺達の話はもういいだろ。それよりも菜月ちゃんのこと考えねぇと。ここまでお膳立てしてやってんだ、明日休みだろ？今から誘ってみろよ
(羞恥で呂律が回らなくなる前に強引に相手へ話を振れば抗議の声があがるが聞こえないフリをする。顔が赤くなるのを防ぐ意味もあったが、こちらだけ思いの丈を口にするのはフェアではない。それに相手がどんな風にして自分を語るのか興味があった。最初こそぎこちなかったものの、改めて相手の想いを言葉として聞けば恥ずかしいよりも嬉しさが胸に満ちる。恋人によって自分を形容されるのがこんなにも幸せに感じるものとは思わなかった。浮かびそうになる笑みを噛み殺しつつ相手の方をみればちょうど柔らかな笑みを浮かべた所で、あんな顔でこちらの事を語られれば思考回路はパンクして一気に顔に熱が上がってしまった。慌てて視線をそらして短く何度も静かに呼吸を繰り返して鼓動の高鳴りを抑える。この短時間の言動で心も胸もお腹も体中いっぱいだ。その傍らで豪は真剣に相手の話を聞いて『特別な感情が好きってこと…』と言われた言葉を繰り返している。早くこの空気を変えなければ身が持たない、平静を装い話を彼と菜月ちゃんの方へシフトさせると、善は急げとばかりにデートへ誘うよう促して)

…そうだね。こういうのは後にすればするほど緊張してぎこちなくなる物だ。
(話している間は自分の中の気持ちを整理するようで暖かな気持ちにもなれたがいざ話し終えると自分が何を言ったのかを振り返る時間が出来てしまって一気に羞恥が襲ってくる。それぞれの恋愛事情を明かす場面に見せ掛けてその実恋人同士が思いの丈をぶつけ合ってるとは彼は夢にも思わないだろう。しっかりとこちらの話を受け言葉を噛み締めている彼の傍ら熱もってほんのり赤くなった頬を冷やしていると相手が脱線した話をデートの話へと戻す。明日というのも早急な気もするがこういう物は勢いだと身に染みて知っている。『明日！？そんないきなり…』と躊躇う彼だったが自分からもその案に賛同すると幾らか視線を迷わせた後『…分かりました。今から誘ってみます。』と頷いた。放課後にここを訪れたのを考えれば直接会って約束を取り付けるのも難しいだろう。携帯を取り出すとガチガチに緊張している様子で深呼吸してから発信ボタンを押した。それから二人の提案通り多少噛んだりはしたものの猫カフェへのお誘いをかけて何やら会話を続けている。その途中その顔がぱぁと明るくなりそれから一言二言挟んで通話を切ると嬉しそうに『菜月ちゃん来てくれるらしいです！』と相手に報告して)