相乗りで何処までも 【 〆 】

は、…ッ、フィリップ……悪い、多分加減できねぇ
(口では唾液が混ざり合い肌は密着してそこでもどちらのものと分からない汗が交わり合って互いを隔てるものはどんどん無くなっていく。より互いに密着するようになれば一層甘い声が相手から溢れ出してグラグラと煮えたぎる劣情が体中を支配する。そこに保冷剤によって相手が背中を反らして震えながら甘く啼けば、劣情に加えて支配欲や嗜虐心が満たされ黒く粘度の高い熱は留まる事を知らず、それを相手へ注ぐのもやめられない。不意に相手の手がこちらの手を取って熱で揺れる目で相手の方を見つめる。グズグズに蕩けきった瞳を向けながら続きを強請られ、腰を押し付けられると最後に残っていた正気が焼ききれてしまった。熱く荒い息を吐き出した後に色欲に塗れた声色で相手の名前を呼ぶ。先程喉を晒すように、あるいは差し出すように背中を反らし跳ねた相手の姿が蘇る、あの光景をもっと、何度でも、相手と溶け合いながら乱して見たい。白い喉に、手を這わせた胸板に、舌で愛撫した首筋に、自分のものだという証を刻みたい。脳の隅から隅まで相手が欲しいという欲望で満たされれば、最後に残った理性で断りを入れる。しかしそれは謝罪というよりは宣言のようなもので、そこで全ての正気が尽きると邪魔な布を剥ぎにかかった。)

(/お世話になっております！ここら辺で暗転かと思いましたのでお声がけさせていただきました。本調子ではない二人でグダグダとした時間を過ごせてとても楽しかったです。こういう何気ない1日の場面をできるのも長くやりとりをする中での積み重ねがあるからこそだと思います……熱に浮かされてどんどん暴走してしまう所も検索くんが意地を張ったりとっても妖艶だったりで背後共々ドキドキしながらお返事させていただきました。今回もありがとうございます！
この後の展開ですがいかがしましょう？今回が日常パートでしたので依頼絡みでもいいですしお出かけするような話でも良いと思うのですが、検索様のご希望などございますでしょうか？)

(/こちらこそいつもお世話になっております。そして暗転描写ありがとうございました！一旦こちらだけで失礼します。想定外のトラブルの中でしたが生活感のある二人のやり取りが出来てとても楽しかったです。仰られる通り些細な会話も熱に浮かれた後のやり取りも長く関係に築いている探偵様と探偵君だからこそ存分にやりたいまま描写させて貰っているのでいつも感謝しかありません。二人で悪戯を仕掛ける所も段々と脱線して熱中していく所も楽しんでやり取りさせて頂きました、ありがとうございました！
結構やりたいことはやらせて貰っていると思うのですが、ギャグテイストなら好きな人と付き合いたい高校生前後の依頼人の恋愛相談に乗ったりアプローチの手伝いに巻き込まれたりする話、シリアス系ならメモリや窃盗品などが取引されている闇オークションに変装して潜入する話なども楽しそうかなと思いました。また以前上げてもらった物も興味あるので探偵様が気になるものが出来たらと思います…！)

……誰だ、ッ！！
(茹だる熱さの中で互いの境界線がなくなるまで溶け合った日、翌日に所長と顔合わせれば『フィリップくん、なんか昨日より疲れてない？』と鋭い質問をされてしまいなんとかエアコンのせいで片付けた間一髪の出来事から一週間後、事務所には捜し物の依頼が届いていた。相手が安楽椅子探偵らしく依頼人の行動から無くし物の場所を指摘し、こちらがその場所へ依頼人と赴けば見事に相手の読みは的中して依頼は無事解決となった。礼を言う依頼人と別れた後に軽く街を見て回ったが、その間に妙な視線を感じて固く口を結ぶ。わざと人気のない細道に入ると後ろには誰かがこちらを付ける気配があって、タイミングを見計らい後ろを振り向いた。予想通りそこには一人の人物がいたが、その顔を見て驚愕の表情を浮かべるしかなかった。
依頼解決の電話を相手が受け取ってから暫くの時間が経ったあと、階段を早足で上がっていけば目的の扉が見えていやでも笑みを浮かべていた。気合いを入れるようにひとつ息を吐いたあとに事務所の扉をあければ「ただいまぁー！」と元気よく帰宅の挨拶をして)

(/それでは検索様の上げてくださった展開をやった事ですし、今回は前回上げさせていただいた男爵外伝パロをやらせていただければと！小国の王子が探偵と入れ替わって好き勝手しつつ、王子の方は命を狙われていて間違えて探偵が狙われ……みたいなわちゃわちゃしたギャグ展開が出来ればと思っています！
そして上げていただいたふたつもぜひ後々やらせていただければと！高校生の甘酸っぱい恋の行方をふたりでやいやい言いながら見守るのも闇オークションに潜入して暗い場所と対峙するのも是非ともやらせていただければと思います！
ひとまず導入置いておきますので、いい感じに乗っちゃってください！/なにもなければこちら蹴りで大丈夫です！)

おかえ、り…？ …えっと、何かあったのかい？
(お互いの熱に溺れて気絶するように眠り案の定翌日夏バテに近い状態になりながらも仕事をこなした日から一週間程。家のエアコンも治り探偵業もようやく通常運転し始めた頃に舞い込んだのは何とも平和な探し物の依頼だ。依頼人の話から無くした場所を指摘すれば予想通りそこにあったようで解決した旨の連絡を受ける。少し街をパトロールしてから戻るという相手の話を聞いてから電話を切ればソファーで読書をしながら時間を過ごしていた。区切りの良い所まで読み終えると一旦意識を現実へと戻す。時計を見ればあれから大分経っていたがまだ相手は戻ってきていないようだ。街の人にでも捕まって居るのだろうと考えていくと軽快に階段を登ってくる音が聞こえてきた。そちらに目を向けると勢い良く扉は開かれ元気な帰宅の挨拶をしながら相手が入ってくる。今まで見たこともないような活発な態度に思わず目を見開くも顔も服も間違いなく相手だ。出迎えの言葉を掛けながら本を置いて相手に近付く。テンション高い様子に困惑しながらも何か特別良い事でもあったのかと問いかけて)

そりゃあ依頼をひとつ解決したんだから当然だろう？僕がシャシャっと解決して依頼人の人にも感謝されたし、嬉しいなぁ
(事務所の扉を開ければ記憶にある顔を見つけてパッと顔を明るくさせる。ニコニコと笑顔を浮かべ近づきながら、目的の場所にたどり着けたことで気分はとても晴れやかだ。上機嫌でいれば相手が困惑しているのには気が付かなくて、ご機嫌の理由を問われれば先程『自分』が経験していた出来事を語り始めた。依頼があってそれを解決した、風.都.の探偵として働いたことを語っていればまるで本物の探偵になったようで誇らしげに胸を張る。依頼人があれだけ頭を下げていたのだからさぞ大切なものを見つける事が出来たのだろう。これから探偵として自由に街を歩けるなんて夢のようだ。相手のことを置いてけぼりにしたままこの自由な空間への期待を膨らませていて)

僕…？…やっぱり何か変だ。まさかメモリの影響を受けたんじゃ、
(近づいてきた相手は随分と上機嫌のようでニコニコと笑顔を浮かべているがあまり見たことの無い類の表情だ。その理由を問えば事件を解決したからだと説明を受けるがいつもと違う一人称に引っ掛かりを覚える。確かに依頼が解決すれば自分の事のように喜ぶ人物だがそれ以上の喜びように見える。何処か浮かれたように語る相手に違和感を覚えればぽつりと呟く。この街で何か異変があったならばまず疑うべきはメモリの能力だ。相手が帰り道にその効果を受けたのかもしれないと考えればその両腕を掴んで「何か帰る途中変なことは無かったかい？」と心配そうな表情向けながら問いかけ)

え？あ……な、何言ってるんだよフィリップ！俺はいつも通りだって。その、メモリの影響も受けてない！
(相手が呟いた一言にハッとした表情を浮かべる。どうやら浮かれすぎて探偵になることを忘れかけていたようだ。慌てて弁明しようとするがその前に両腕を掴まれてしまえば焦りは募っていく。しかし相手はこちらを心配するような顔をしていて、それならばいつもと変わらないアピールすればきっと大丈夫だ。両手で相手の腰をポンポンと宥めるように叩きなんともないと首を振る。謎の単語が相手から飛び出すも合わせるように返事をしておいた。とはいえこのまま問い詰められていけばいずれボロが出てしまう。その前に話題をそらさなければ。それにここに来たのは第一段階、真の目的もといお楽しみはこれからだ。今度はこちらから相手の両肩を掴むと「それより外行こうフィリップ！俺行きたい所があるんだ！」とキラキラした目を向けて)

…、ひとまずそういうことにしておこうか。…っ、外？ それは別に構わないけど、
(図星を突かれたという顔をするがこちらの名前を呼ぶ辺り記憶喪失という訳でもないようだ。弁明する姿に違和感はあれど決定的な証拠がある訳でもない。この距離で見ても相手の顔と背丈だ。とはいえメモリの中には影響を受けたことを忘れさせる物や特定の条件下でないと効果が現れないものも多い。それも共に居れば分かることだろうとひとまずは経過観察として含みを持たせた言い方をしながら追及を止める。腕を解放した所で今度は相手から両肩を掴まれて熱心に出かけることをお願いされてまたもや目を見開く。相手から行きたい所があると誘ってくるのは珍しい。先程から普段にはない行動ばかりで困惑するも相棒から期待を込めたキラキラした目を向けられると断われるはずもなく、勢いに押される形で承諾して)

うんうん、そういうことにしておこう！じゃあ早速出発だー！
(相手が疑いを持ったまま了承したのに気がつかず、これで万事解決したと思えば数度頷いてバレなくてセーフ！と内心思いながら晴れやかな顔をしていた。探偵の相棒を納得させられたのならこっちのものだろう。外へ出るのも了承してもらえれば「やった！」と無邪気に笑顔を浮かべる。こうなればいてもたってもいられず、相手の腕をひっつかむとそのまま事務所を飛び出していく。軽快に階段を降りて外の空気をすえば、清々しい気持ちで吐き出す。周囲にピリついた大人がいないだけでこんなにも気持ちがいいなんて知らなかった。だが一応細心の注意をと周囲をキョロキョロと見回す、追手はいないようだ。上手く自分のトラップが機能しているのを確認していると視界に大きな建物が目に入る。見たこともない程巨大な建物に「わぁ…」と目をキラキラさせると相手の方へ振り返り「あそこに行こうフィリップ！」と風.都.タワーをゆびさして)

わ、ちょっと待ちたまえ！ ＿＿風,都,タワーかい？ …分かった、行ってみようか。
(こちらが承諾すれば無邪気な笑みが浮かぶ。何時しか小さくなった時に見せた表情に似ていて何となく懐かしい気持ちになったが腕を掴まれ走り出せば思わず声を上げて引っ張られる形で事務所を後にする。まるでいつもと逆だ。呼びかける声にも止まらず軽快に階段を降りて外に出たかと思えばキョロキョロと辺りを見渡している。隣でその様子を見守っていると目がきらきらと輝き出して風.都.タワーを指さしてキョトンとした反応を返してしまう。この街の象徴をまるで初めて見たという反応に違和感は確信へと変わった。目の前の人物はいつもの相手ではない。だが同時に悪意や策略なども感じ取れなければその目的や原因が分からなくて唇に触れながら少し考え込む。本来ならばすぐにでもそれを探るべきなのだが目の前には上機嫌で楽しみを隠しきれない相手がこちらを見ている。大切な人の顔でそんなことを言われては断る方が難しいだろう。それに共に行動した方が何か分かるかもしれない。相手の案に賛同しながらもス.タ.ッ.グ.フ
.ォ.ンで馴染みの情報屋に最近何か変わったことが起きなかったかと情報を求めるメッセージを送っておく。これで何かあれば情報が入ってくることだろう。操作を終えると相手を連れてタワーの方向へと歩き出す。近くまでやってくればてっぺんを見るには見上げる体勢となりその大きさをより実感できる。「いつ見ても大きいね、流石この街のシンボルだ」と呟きながらも相手の反応伺って)

これが風.都.タワー…街の象徴なのに黄金じゃないのか。不思議だな……よし！上に行こう！
(大きな風車を指させば相手はキョトンとした顔をして何か考え始めてしまって、こちらも頭の上にハテナマークを浮かべながら首を傾げる。何か問題でもあるのかと思ったがやがて了承の返事がされるとパッと顔を明るくさせた。自分が行きたい所へ心のまま行けるなんて、最高の最高だ。浮かれながらこれから行く大きな建物を眺めれば当然相手がどこかに連絡をとったことには気づかなかった。タワーの下について見上げるほど大きな風車を口を開けっ放しのまま見つめていたが、相手からこれが街の象徴だと聞かされると不思議そうな顔を浮かべる。街を象徴するならば黄金像と相場が決まっていると思っていたがこれも文化の違いだろうか。大きな建物があるなら登らない手はない、相手を引き連れて館内に入ると展望台のチケットカウンターへ向かう。その間に相手のス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.にはメッセージが2件届いていて、ウ.ォ.,ッ.チ.ャ.,マ.ン.からは街に異変は無いが街の人に鳴.海.探.,偵.事..務.所の場所を聞く翔ちゃんをみた、というメッセージが、エリザベスからは『翔ちゃんが王子様みたいな白い服着て走っててめっちゃウケた』というメッセージが届いていた。カウンターで展望台のチケットを2枚頼むと共にブラックのクレジットカードを受付へ渡して購入を完了させると、ニコニコとした顔で戻ってきて相手へ一枚渡し「早く上に行こうよ！」と弾んだ声で言えば相手を展望台へのエレベーターへと連れていき)

翔太郎が二人、ってことは…。 あ、ありがとう。＿ ここから風.都の街が一望出来るみたいだね。アレが夏祭りをしていた神社であの一本道が商店街だ。
(タワーの下で街のシンボルだと話せば頓珍漢な感想が返ってくる。一瞬黄金に輝く風.都.タ.ワーを想像すれば小さく笑みを浮かべる。相手に連れられるまま館内に入れば率先してチケットカウンターを向かうのを見届け、その間にメッセージを確認する。1通目はありえない行動を取る相手の情報で2通目は普段と違う白い服を着た相手の情報。それぞれ近い時刻で違う場所で目撃されている。付き合いが長い彼らが相棒を見間違える可能性は考えにくい。そこから導き出される結論が頭に浮かんだ所で相手がニコニコしながら戻ってきてチケットが渡される。もし推理通りなら目の前の人物が元々王子様らしい服を着ていたという別人だ。入れ替わっていたのなら今までの言動も辻褄が合うがそれにしては瓜二つ過ぎる見た目で礼を言いながらも思わずまじまじとその顔を見てしまう。入れ替わった相棒のことは心配ではあるが、何かあれば連絡なりあるだろう。手を引かれるままエレベーターに乗ると二人にまた新しい目撃情報などがあったら教えて欲しいとお願いし、監視という名目で入れ替わった相手の企みに乗ることにした。エレベーターは段々と上がっていき展望台の階にたどり着く。ふ.う.と.く.んのパネルやこの街の案内などの展示がある中、360度ガラス張りの窓が設置してあってそこからは街の景色がよく見える。試しに近くのガラスに相手を連れて近付くといつも相棒が自分にするように指をさして何があるかを説明しながら反応伺い)

あそこで祭りがあるのか！楽しそうだなぁ、俺も行ってみたい。それにあの規模の商店街ならこの街のものがたくさん売ってそうだ。次はあそこに……
(相手にチケットを手渡せばこちらをじっと眺められてしまってやはりその真意は分からずキョトンとした顔で首を傾げる。その後は特になにも言われる事もなくそれなら問題なしだろうと展望台へと向かった。エレベーターが上階へとたどり着き展望台へ入れば可愛らしいマスコットのパネルが出迎えてくれて、全方向ガラス張りなのをみれば「わぁ」とまた感嘆する。相手に連れられ展望ガラスへと近づけば眼下には街が広がっていてまた感嘆の声をもらした。いつもバルコニーから見下ろす街の風景よりもここはさらに高くてよく街の様子を見回せる。未経験の高さにすっかり興奮してしまうと探偵であることは抜け落ちてしまって、相手が指差す先を興味深げに眺めた。この国の祭はまだ未経験だが祭りである以上楽しいものに違いない。是非とも参加したいと口にしつつ次に示されたのは商店街だ。未知の文化を知るには庶民の店を見て回るのが一番だと本で読んだ事がある。次に行くべき場所はあそこだろうと言いかけた所で、商店街で追いかけっこをしている人々の姿が見えた。先頭には白い服の男、その後ろから数人の黒服が彼を追いかけている。その光景には良く見覚えがあって、思わず顔を引き攣らせるとサッと相手の前に立って視界を遮り「俺あっちも見たいなー向こうみよう！」と相手を無理やり反対の展望窓へ連れて行こうとして)

ああ、一通りの物は揃うだろうね。…どうかしたのかい？ ＿
(相手が展望ガラスに近付いて感嘆の声を漏らす。簡単に自分の知っている場所を指さして説明すると入れ替わったことなどすっかり忘れているようでこの街の探偵と思えない素直な感想を口にしながら興味深く景色を眺めている。その横顔からは興奮や喜びが読み取れてやはり悪い人物とは思えない。商店街の紹介をすれば関心を持ったようで買い出しに出掛けた事を思い出しながら相手の言葉を肯定していると突然その言葉が途切れる。不思議に思って相手に目を向けるとその顔が引き攣っていて何かあったのかと問いかけながらも再び外の景色を見ようとする。だが横にいたはずの相手が前に立っては視界が遮られ反対側の展望ガラスへと腕を引かれる。困惑の表情で移動しながらも振り返って相手が見ていたであろう商店街辺りを確認すると黒い服を着た数人が裏路地へと入っていくのが見えた。反対側、海の見える方角の展望窓にやって来たところでふと子耳に挟んだ噂を思い出す。ちらりと相手の方を見れば「風.都の街はどうだい？王子様」と周りには聞こえないような声量で話を切り出してみて)

わぁー水平線って本当にどこまでも広がってるんだなぁ……すっごく素敵なとこだ！まだまだ見て周りた、え……な、何言ってるんだよフィリップ。王子様って、なんの事か全然分からないなぁ
(相手はどうやら商店街の追いかけっこをきちんと見れていなかったようで心の中でセーフ！と叫ぶ。これだけ高さがあれば白い服の人物の顔を見られる事もないだろうが万が一もある。リスクヘッジ完璧だと自画自賛しながら海側の展望窓へと近づいた。そこに広がっていたのは海というもので、映像や資料で知識はあったものの初めてみる光景に食い入るようにガラスの向こうの風景を眺める。探偵のフリなど頭からすっぽ抜けた状態で話しかけられると、いつもの調子で返事をしていた。しかし直後に相手が知りえない言葉が挟まっていた事に気がつくと、驚きで顔を引き攣らせながら相手の方をみる。完璧な演技で気づかれていないはずなのに、どうしてそんな単語を言ったのか分からず必死でシラを切ろうとしていた。そのタイミングで相手のス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.にはエリザベスから再びメッセージが届く。『翔ちゃんどうしたの？』という言葉と共に送られてきたのは一本の動画だ。最初はエリザベスがクスクス笑いながら王子のような白い服を着て走る探偵を映し出していたが、知り合いがいることに気がついた探偵は画面の方に近づいてきて、揶揄うように話しかける二人に対し焦った顔を浮かべ『ふざけてる場合じゃねぇんだ！フィリップに商店街に来てくれって連絡頼む！』と画面の中で叫ぶ。直後画面外で『見つけたぞ！』という声が聞こえればそちらの方を苦々しい顔で見た後に探偵はその場から走り去っていって)

探偵の片割れでずっと彼の相棒をしている僕を欺けると思ったかい？ といっても君の事を誰かに告げる気は…、すまない。 ッ！ これは、どういうこと…ひとまず商店街に行くよ
(どうやら海というのも初めて見るようで食い入るように外を眺めている。見慣れない物に興味を持ち興奮する気持ちは痛い程分かってそれに水を差すのは偲ばれるが確認しなければならない事だ。こちらの問いに上機嫌に答えが返ってくるが王子様という呼び方に気付くと分かりやすく顔を引き攣らせた。嘘のつき方も同じくらい下手な様だ。何故バレたかのかという驚きを見せる相手に得意げな笑みを見せながら語りかける。相手の入れ替わりは指摘したがだからといって責め立てる気も密告する気はさらさらなく事情を聞きたいだけだと話そうとした所でス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.がメッセージの受信を通知する。一言挟んでメッセージを開けばエリザベスからの物で添付してあった動画を再生する。動画には聞いた通り王子様らしい白い服で走ってる姿が写り、撮影に気付くと焦った表情で商店街に来るようにさけんでいる。画面外のやりとりと表情を見るに何かに追われているのだと分かれば冷や汗が出てきて思わず相手に掴みかかって状況を問いただそうとする。だがそんな暇もないかもしれないと焦りが募ると表情を固くして相手の腕を引っ張って強引にエレベーターに乗り込む。下まで降りるとそのまま商店街の方まで走って向かい、近くに到達すればキョロキョロしながら「翔太郎！」と呼びかけ相棒の姿を探し)

うぇ、ぁ……そ、っか………ま、ま、ま、待って ！！大丈夫だいつもの事だし…ひぇ
(なんとかこのまま押し切れないかといろいろ言ってみたが相手は確信を持ってこちらが探偵ではなく王子だと言っているようで、段々語気は弱くなり観念したように項垂れる。だが告発することはないと聞き安心と嬉しさでまた顔を明るくさせていれば、相手の電話らしきものが鳴って一緒に中を覗き込んだ。動画をみれば探偵が追いかけられる様子が映っていて若干の罪悪感を感じて苦笑いしていたが、相手に胸ぐらを掴まれてしまい大慌てでどもりながら状況を説明しようとした。しかしその前に腕を引っ張られてしまうと変な声を出しながら商店街へと連れていかれてしまった。焦る相手を他所に我関せずと珍しい風景をキョロキョロと見回す。しかし直後、首根っこを掴まれ後ろに無理やり引っ張られると「ぎゃっ」と声を出して路地へと連れ込まれてしまった。慌てて振り返ると自分と全く同じ顔をして自分の服を着た探偵の姿があって顔を引き攣らせる。何か言う前に胸ぐらを掴まれてしまうと「やっと見つけたぜ偽物野郎。フィリップも一緒なら話は早ぇな」と睨まれてしまい両手をあげて降参のポーズを示すと「ご、ご、ごめんなさい！許してくれ！」と叫ぶしかなくて)

良かった…。怒る気持ちは分かるけれど一旦話を聞こうじゃないか、翔太郎。 君も話してくれるだろう？
（腕を引っ張ってきて商店街に辿り着けば相棒の姿を探す。その間相手は興味深そうに辺りを見回していて相棒とそっくりの顔で自分と似たような事をしている姿を見るのは何だか変な気分だ。路地のある道に差し掛かった所で後ろから声が聞こえて慌てて相手を追う。そこには動画に映っていた白い服を着た相棒が居て思わず安堵の息をつく。どうやら無事だったようだ。だが相棒は気が収まらないのか胸ぐらを掴んで彼を睨みつけていて二人の間に割って入ると宥めるように相棒の背中を軽く撫でる。世の中には同じ顔の人間が三人いるとは言うがこうやって並んでも二人の顔はそっくりで服装と表情で判別するような状態だ。すっかり弱々しくなった彼に説明を求めればぽつぽつと事情を話し始める。彼は小国の王子で風.都.には姉妹都市の締結の手続きで訪れたという。本国に居る時から周りにはボディーガードや執事がついて回り城の外に出る事も国事以外では殆どないようで窮屈で隙を見て抜け出すこともあったようだが今回も異国の地なのにいつもに増して強い束縛に耐えきれずに逃げ出し、そこで偶然見かけた相棒が自分と瓜二つの顔だったことから今回の行動を起こしたとの話だ。すっかりしゅんとした彼の姿を見れば過去の自分と重なる部分があって突き放すことが出来ずに「…翔太郎、もう少しだけ王子のフリをしてくれないかい？」とお願い持ち掛けて）

こいつのフリを続けんのは構わねぇが、俺の知ってる事と違うな……お前命狙われてんぞ
(自分と同じ顔に掴みかかるというのもおかしな感覚だが、今目の前で自分の服を着ている男がこちらを陥れた人物で違いは無い。どう追求してやろうかと思っていると相手が間に入ってきて胸倉を掴んでいた手を離す。背中を撫でられれば幾分か落ち着いて深呼吸をした後に王子様とやらの話を聞くことにした。王子の名前はシャントというそうで、窮屈な生活をしていたのは理解できたがそれでこちらが巻き込まれたのならたまったものではない。それに自分の顔でもじもじと落ち着かない態度を取るのを見れば蹴り飛ばしたい気分だった。文句を言おうとするがその前に相手からお願いが持ちかけられ言葉を飲み込む。そこには同情の色が浮かんでいて、きっとその生活ぶりとかつての自分を重ねたのだろう。軽く息を吐いてそれを了承するが別問題があった。そこから自分の身に起きたことを説明し始めた。路地裏でシャントに催涙スプレーを掛けられ気を失い目が覚めた時にはこの服を着せられていたが、ドライバーもガジェットも一緒に取られてしまい連絡手段がなくなってしまっていた。とりあえず事務所に戻ろうとしたがたどり着く前に執事だと名乗るアルフレッドに見つかってしまったのだ。アルフレッドと話して大体の事情は察したが、執事はどういう訳か王子を殺そうと画策していたようでこちらへ襲いかかってきたのだ。なんとか逃げたもののその後も執事はじめ黒服に追われているのが現状だ。こちらの話を聞いたシャントはあからさまに動揺して『なんでそんなことに』と声を震えさせていて)

え。…恐らく他国で始末した方が事件や事故に巻き込まれたということに出来て彼らにとって都合が良い話なのだろうね。ここまで話を聞いたんだ、シャントを放っておくわけにはいかない。ひとまず事務所にでも匿って…、
（自分の場合は外に出なかったのは自らの意思というのも大きかったが彼の場合は王子といった立場上のものだ。危険性を考えれば周りの判断も理解は出来るがそれでも相棒と共に外に出るようになって世界が広がった身としては今だけでも思うがままにやりたいことをしてほしいと思う。その気持ちのまま相手にお願いすればこちらの意向を汲んで承諾してくれたものの続いた言葉に目を見開く。それから相手が話し出した内容は入れ替わった所まではおおよそ彼の話と一致していたが執事と黒服に襲われているという想像だにしないものだった。先ほどの焦っていた様子の動画は丁度追われていた時の物なのだろう。当の話を聞いた彼はあからさまに動揺しているが傍にいた物に命を狙われ、もし入れ替わっていなければ既に襲われ息絶えていた可能性があると思えば無理もない。わざわざ他所の国に来ての犯行に推測を口にしながらもその話を聞けばますます彼を放置出来るものではない。穏便に解決する策を練る為にも一旦安全な事務所に戻ろうと提案しかけた所で表通りの方から『居たぞ！』と大声があがり黒服の男が駆け寄ってくる。今の話を聞けば到底捕まるわけにいかず「逃げるよ」と二人に声を掛けるとショックで固まってしまっている彼の手を引いて走り出して）