検索 2022-07-09 20:46:55 |
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伊達に今まで祭り参加してきたわけじゃねぇからな。よく見極めろよ?……フィリップ、金魚すくいってのはなハードボイルドな探偵の仕事と一緒だ。獲物を静かに追い詰めその時を待って、でも深追いは厳禁ってな
(久しぶりの金魚すくいで多少不安はあったもののここは過去の経験が生きたようでしっかりと相手の前で格好良くキメる事ができたようだ。感嘆の声にますます機嫌を良くしながら次は相手の様子を見守る。端の方で水面近くに出てきた金魚に狙いを定めたまでは良かったものの、逃げた金魚を追いかけてしまってポイは水に濡れ弱くなり金魚の重さに耐えきれず破れてしまう。こちらも思わず「あ、」と声を出してしまった。こうなれば更なるアドバイスが必要だろう、先程一匹獲得して上機嫌なままに人差し指を立てればニヒルな笑みを口元に浮かべる。そして気取った声でいつものハードボイルド論を展開するとまだ破れていない自分のポイを差し出した。水に濡れている部分も僅かでこれならばまだ使えるはずだ。体を寄せ真剣に水槽を眺めれば「あそこらへんの壁に固まってるとこが狙い目だ」と金魚が群がる部分を指さし)
…なるほど。静かに慎重にその時を見極める…、…ッ! やった! 取れたよ翔太郎!
(金魚を取るという目的に熱中してしまえば水中で金魚を追いかけてしまい、ポイが破れて金魚を逃がしてしまう。悔しい思いをしていると隣に居た相手がニヒルな笑みと気取った声で更なるアドバイスをしてくれる。当の本人がそのハードボイルドな探偵かは引っ掛かる所だが言ってること自体は真っ当だ。今回の敗因は水に濡らしたまま金魚を追いかけてしまってポイを濡らして破けやすくしたのが大きい。ならば逃がさないように追い詰め最小限の水との接触で素早く掬いあげれば取れるということだ。相手のアドバイスを真剣に受け止めポイを受け取ると言われたことを自分なりに噛み締める。反省を活かしもう一度挑戦しようとした所で相手がおすすめの狙いを指さす。壁際に金魚が集まっていて確かに逃げられたとしてもすぐに他に狙いを移しやすい。相手が見守る中、集中してポイを近づけ今度は手早くかつ的確に金魚をすくいあげる。今度は意識したおかげがポイが必要以上に濡れる前に掬いあげることが出来てそのまま器に移した。ポイは一部破けてしまったが上手く金魚を捉えすくうことが出来れば取れた金魚と相手の顔を交互に見て無邪気に喜んで)
今度こそ決めろよ、相棒。……よしっ!よくやったフィリップ!
(こちらがハードボイルドになぞらえアドバイスを送ればそれを噛み締めるように呟いた後相手が水槽に漂う金魚へと集中する。せっかく初めての金魚すくいに挑戦するなら上手く金魚を掬いあげられた時の喜びも体験して欲しい。しかしそれが叶うかは相手の次の一手次第だ。固唾を飲んで見守っていると相手は狙いを定めポイを金魚の方へ移動させる。やがて僅かに浸かったポイの上に金魚がのり水面にあげられた。ポイは金魚が暴れるのと共に破けて一瞬ヒヤリとしたが、逃げるまえに金魚は器の中へと収まった。思わず自分がとったかのようにガッツポーズを作って喜んで相手の方をみれば、相手はそれ以上の喜びようで眩しい笑顔をこちらと金魚とに向けていて、この薄暗くなった祭り会場ではより一層輝いて見えた。その様子に思わず顔を緩ませながら健闘を称えるように軽く背中を叩く。無事に一匹ずつ金魚を捕まえることができたが、ここで問題になるのはこの金魚を持って帰るか否かの問題だ。持って帰るなら事務所だが、世話を継続的にできるかという問題が絡んでくる。店員に同じ内容を質問されれば「金魚飼いたいか?」と相手の方を見て問いかけて)
君のアドバイスのおかげだ。上手く行くと楽しいものだね。 …、…遠慮しておくよ。今の事務所の環境では一日中適切な水温を保つのは難しいだろうし、狭い場所に閉じ込めておくのは可哀想だ。
(相手の期待を感じながらも教えて貰ったアドバイスに従ってポイで掬いあげると上手く器の中に収まった。その代わりにポイは破れてしまったが一匹掬えた嬉しさの方が強くてガッツポーズを決める相手と喜びを分かち合う。今回ばかりは相手のハードボイルド論も役に立ったようで素直にその感謝を伝えると上手くいった喜びを噛み締めるように笑顔で言葉を呟く。それぞれの器に一匹ずつ収まりポイも破れてしまったからゲームはこれで終わりだ。そこで相手にこのまま持ち帰って飼いたいと問われると器の中で泳ぐ金魚を見て暫し悩み込む。率直に言えば初めて掬いあげた金魚で思い出として持ち帰りたい想いが強い。だが十分な設備を整えるには費用もかかるし、事務所を離れる夜間などはその時期はどうしても水温が上がってしまうだろう。不安定な生活の中で別の命を扱うのは無責任に思えて首を横に振る。その旨を店員にも伝えれば代わりに金魚の形をしたラムネ菓子を貰った。可愛らしいそれに口元を緩めると「これで十分だ」と相手に伝えて)
あぁ、初めて金魚すくったって結果が大事だからな。まぁでも……ちゃんと目に見える成果ってのも欲しいだろ?
(互いの器に金魚が1匹ずつ収まり助言の礼を言われると先程の気取った態度のままニヒルな笑みを浮かべる。今回ばかりはこちらのハードボイルド精神が役に立ったようで突っ込みも揶揄いもなしだ。記念に金魚を持ち帰るか問うがそれは遠慮することになって「そうだな」と同意をしながら器に入っていた金魚を逃がす。金魚が快適に過ごせるような環境を保つのは事務所では難しい、常時資金難である現状を考えても当然の選択だろう。こちらも金魚のラムネを受け取る、金魚を初めて掬えた思い出は心のうちに残しておくのが良さそうだ。とはいえ夏の思い出としてなにかしら形が残るものが欲しいと思うのも確かだ。その条件にピッタリの出店を思いつけば周囲を見回し、目的の店を見つけてニヤリと笑いつつ相手を誘いかけるようにして目線で出店の方を差す。先にあるのはスーパーボールすくいだ。形式は金魚すくいとまったく同じだが貰えるものは手間のかからないスーパーボール、これなら家に持ち帰ることも出来る。相手と連れ立ち店の前に移動すれば「ポイをなるべく濡らさないようにするってのは同じだが、ポイの枠部分に引っ掛けるようにすんのがポイントだ」と他の客が遊んでいる後ろからまたアドバイスを口にし、場所が空いたところに入れば代金を支払って器とポイを受け取り)
…確かにせっかくなら成果も欲しいものだね。 _ さっきのでコツを掴んだことだし、せっかくならどれだけ取れるか勝負しないかい?
(生体としての金魚は持ち帰らない方が良いという結論に至ったが何か形に残るものが欲しいという気持ちはある。そこで相手がニヤリと笑って視線を移した先を追うとそこにはスーパーボールすくいの文字。その意図を察すればこちらも軽く口角をあげてその意見に同意を示した。スーパーボールなら持ち帰っても問題無いし保存もしやすいだろう。早速店に移動すると相手から更なるアドバイスを受け、場所が空くとその隙間へと入る。代金を渡して受け取ったポイと器は相手の言った通り金魚すくいと同じものですくうものは違えど要領としては同じだろう。一緒にしゃがみこんで早速スーパーボールを掬おうとするがふと良い事を思いつくと相手の方を向いて勝負を持ち掛けて)
ほぉ、俺に挑もうってか?いいぜ、受けてたつ
(再び二人並んで水槽の前にしゃがんでポイを構える。早速掬いはじめようかと思ったところで相手から勝負の提案がなされてニヤリと笑った。相手は初めてポイを持った身であるがこちらも久しぶり、先程掬いあげるコツも理解しただろうし条件はほぼ同じだ。となれば勝負は十分に成り立つというもの、闘争心に火がつけば自信満々の笑みを向けて勝負を受けることにした。勝負となれば相手へのアドバイスはこれ以上なしだ。早速水槽の中に浮かぶスーパーボールに集中する。大小様々なボールが浮かんでいるが一番小さいものを狙い続けるのは男らしくない、ハードボイルドに反する行為だ。それならば水に濡れていない一番強度のある状態でなるべく大きな獲物を狙いたい。一番大きいボールはトラップだとすれば、小さいものよりもふた周りほど大きなものに狙いを付ける。壁際に滞留したところを見計らい紙ではなく枠部分に引っ掛けるようにして掬いあげれば紙が破れることなくボールが器へと収まって「よし、まずはひとつだ」と意気込んで)
…なるほど、枠部分はそう使うんだね。僕も負けてはいられない
(相手に勝負を持ち掛けると予想通り自信満々な笑みと共に乗ってきて闘争心に火がつく。こうやって勝負するのだって夏の楽しみ方の一つだろう。いざ勝負のターンとなるがこういう時に大切なのは冷静な判断力だ。そのため一旦相手の出方を見る為に隣に視線を向ける。どうやら狙いは大きめのスーパーボール、それを器用に枠と紙の段差に引っ掛けるような形で掬いあげるのを見ればアドバイスの意味を理解して感心したような声をあげる。いかに和紙に負荷を掛けずに掬いあげられるのかがポイントなのだろう。意気込むように呟くと自分も目の前のスーパーボールに意識を向ける。自分は確実に数を稼ごうと水流によって流れてくる小さめボールに狙いを向け、斜めにポイを入れ段差に引っ掛ける形で確実に一つ二つと器に入れていく。一点に負荷がかからないように持ち替えながらも「こっちの方がやりやすいね」なんて呟きながら数を重ねていき)
勝負なら負けられねぇからな。……あ
(こちらが一つめのボールを掬いあげる様子を相手はじっと見つめている。まずはこちらの出方を窺い掬う方法をラーニングする作戦だろう。それくらいのハンデは問題ない、むしろそれでも勝ってこそ価値のある勝利になる。続けて近場に流れてきた小さなものを二つほど取るが、やはり取れるのが分かっているものを取っても面白みにかける。勝負ならば確実に個数を積み重ねた方が良いとは分かっているのだが、そこはこちらの信念の問題だ。またひとつ中くらいの大きさのものを掬いあげるが紙が僅かに破れてしまいヒヤリとする。だがまだ大半は残っていてこれで終わりではない。ポイを逆手に持って構えればそこへ先程と同じく中くらいのボールが流れてきた。緑のラメが入った半透明のボールになんとなく相手を重ねればそれに狙いを定める。引っ掛けるようにして緑のボールを掬いあげ、勢いのまま器へ運んだのは良かったが逆手でもったポイでは安定しなくて盛大に紙が破れてしまい、思わず声を出していて)
そろそろ僕も勝負を仕掛けようか。 あとは僕の腕次第という訳だね。
(相手は相変わらず大きめのものを狙う方針のようで相手らしい作戦に笑みが零れた。こちらは確実にとれる小さめの物を狙って数を増やしていたが相手に明確に勝ったというには同じく大きめのものを狙う必要があるだろう。意気込むように呟くともう一回り大きな黄色と青のスーパーボールに挑戦ししてみる。上手く器に移すのに成功した所で隣いた相手のポイの紙が盛大に破けてしまう。かなり切れ目が入ってしまったようでアレでは続行不可能だろう。となればこちらのチャンスだ。ニヤリと笑ってポイを構えて次の狙いを定める。すると丁度紫のラメが煌めく半透明の大きめなボールが流れてきてそれに合わせてポイを入水させる。先程と同じく段差を使ってすくいあげるが予想以上に重かったようで亀裂が入って焦りが募る。だが相手の色をしたこのボールは何としても欲しくて和紙の上を転がして何とか器に移す。だが同時にポイの紙も破けてしまって「あ、」と短く声が出た。これで自分のゲームも終了だ。数で言えばこちらが多いが大きさ的に言えば同じくらいか相手が若干多いくらいだろうか。「これ、判定どうするんだい?」と思わず尋ねて)
……なんとも言えねぇ結果だな
(こちらのポイが敗れてしまいあとは相手の結果を待つことになる。相手は小さなボールを狙い数を稼いでいたようだがここにきて大きめのものも狙い始めているようだ。相手が次に狙いを定めたのは紫が輝く半透明のボールだ。それまでは金魚すくいのセオリー通り深追いはせず確実に狙えるものをすくっていた相手だったが、ここにきて紫のボールはなんとしても欲しかったのか無理やりボールを器に移せばポイには大きな穴が空いてしまった。互いにポイが破れて成果を比べるもどうにも勝敗が付け難い中身で唸りながら二つの器を見つめる。助けを求めるように店員へ目を向ければ、しばし二人の器をみたあと今度は二人の顔を見て「こっちの兄ちゃんの勝ちだな」と相手の方を指す。どうやら年下に花を持たせる結果としたようだ。「おっちゃんが言うならお前の勝ちだ」と諦めたように両手を挙げ敗北を認めた。破れたポイを店員に渡すと獲得したうち二つ持って帰ってもいいと言われ、赤と銀が混じったような少し小さめのボールと最後に獲得した緑のラメが入ったボールを選んで)
やった、僕の勝ちだ。じゃあこれとこの二つにしよう。
(どちらとも言えない勝負の結果を問えば客観的意見を求めるためか相手は店主に目を向ける。店主も少し悩んでいる様子だったがこちらを指さして勝ちを宣言されるとそれが気遣いだと気付かず無邪気に喜ぶ。相手も負けを認めれば得意げに勝ちを宣言した。ポイを店員に手渡すと勝者だからと三つ持ち帰っても良いと言われ最後に取った紫のラメの入ったボールと青黄の小さなボールを選ぶと少量の水と共に袋に詰めて貰った。祭りの灯りを反射してキラキラと光る様は宝石のようで掬った思い出と共に世界で唯一のお土産となれば暫しそれを嬉しそうに見つめていた。家に帰ってもこれを見れば今日の事を鮮明に思い出すことが出来るだろう。大切な思い出を噛み締めた所で相手の方を振り返り「勝負に負けた人には当然罰ゲームだ」と意気揚々と宣言をする。そしてその内容も既に決めてある。相手の手を取れば早速人の波をかき分けて目的地へ向かう。たどり着いたのは夏祭りに合わせて開催されているお化け屋敷の会場だ。例年行われていると検索で調べはついていたが今年は風.都.出身のホラー作家がプロデュースしているようでより気合いの入った内容らしい。いつの日か内容を伝えず脅かされた仕返しも含めて「夏らしいチョイスだろう?」と告げて)
は?罰ゲーム?ちょ、フィリップ!___まぁ確かに夏らしい罰ゲームだな。でも俺一人で入ってもつまんねぇし、当然一緒に入るだろ?
(二人が選んだスーパーボールがそれぞれ袋に詰められる。緑、紫をはじめ並んだ色は二人で一人の姿を表す色ばかりで、無意識にしろ意識的にしろ二人の色を互いが選んでいる事実に胸が暖かくなっていた。そんなほっこりした気分の中で唐突に相手から『罰ゲーム』の名前が出ると予想外の単語に思わず間抜けな声を出してしまう。詳しい話を聞く前に手を引かれて移動が始まってしまい、たどり着いたのはお化け屋敷だった。確か毎年催されているものだったはずだが自分の記憶の中ではもっと文化祭規模の可愛らしいものだったはずだ。だが今年の気合いの入れようは凄まじくホラー作家プロデュースの名に恥じないおどろおどろしさが外側から既に漏れだしていた。つい先日暗い場所で得体の知れないものに追いかけ回される経験はしたばかりだが今回はまた違うテイストのものに追いかけ回されそうだ。罰ゲームというならば一人で行くべきだろうがこういうのは一人で入ったって意味が無い。誰かと叫びながら進むのが醍醐味だろう、今度はこちらから相手の腕を掴むとそのままお化け屋敷の中へと連れ込もうとして)
今年は特に手が込んでいるという話は聞いていたからね。…え、それは話が違っ、…仕方無い。一緒に回るけど先に君が歩きたまえ。
(勝負と称したにも関わらず罰ゲームの発想は無かったようで間抜けな声をあげる相手の手を引いてお化け屋敷に向かう。何故か分からないが夏といえば肝試しなどの文化が根付いているらしく夏祭りに合わせてこのお化け屋敷も開催されているようだ。特に今年は気合いが入っているという話を小耳に挟んだこともあって目的地に着いた相手の反応を見れば満足げな口調で話す。これならば出てきた相手からハーフボイルドらしいリアクションが見れそうだと高を括っていると突如腕を掴まれ共にお化け屋敷に向こうとすると焦った声をあげる。相手だけが中に入る予定だったのだが腕を引くまま相手が二人分の受付を済ませてしまい不気味な扉の中に通される。薄暗い空間に入り受付によって扉が閉められてしまうと逃げられそうになく、観念したように息を吐く。仕方無いという定を取り繕いながらも一緒に行くことを承諾し、相手を盾にするような形で距離を詰めくっつくと先導するよう促して)
こういうのは一緒に行くから楽しいんだよ!ま、罰ゲームだからな。先頭は任せろ
(どうやら相手は出てくるこちらを待ち構え高みの見物を決め込む気だったようだがそうは問屋が卸さない。一人でおどかされても疲れるだけだ、誰かと、特別相手と一緒に思い出を作ることに意義がある。部屋に入り入口が閉められると途端に周囲は真っ暗だ。平静を装う相手だがちゃっかりこちらの後ろに隠れるのをみれば思わず笑みを浮かべる。相変わらず理屈から外れたものは苦手らしい。最初に押し込められた部屋は和室のような作りになっていて、突然部屋の前方にスポットライトがついて反射的にそちらを見る。そこにはポツンとおかっぱ頭の日本人形が静かに置かれていた。しばらくすると小さな女の子のクスクス笑いが部屋の四方から幾重にも重なって聞こえてきて不安を煽る。突然ピタリとその声が止んだかと思えば直後日本人形の横にある襖が大きな音を立てて開いて思わず体を跳ねさせた。さすがの気合いの入りようだ、ただワーキャー言って参加者を怖がらせるだけのお化け屋敷ではないらしい。「面白くなってきたな」と恐怖とスリルと両方を感じながらニヤリと笑うとその笑顔のまま「腕掴まるか?」と逃げ腰の相手に問いかけ)
確かに一緒に行った方が君の反応を直に見られそうだけど…、! ああ、暗闇に適した興味深い仕掛けだ。揶揄ってるのかい? 別に必要な、っひ
(相手の罰ゲームのはずだがやけに楽しそうなのは気のせいだろうか。引っ掛かるものはあるものの傍に居れば相手の反応を間近で見ることが出来る。それを楽しみにしつつ真っ暗闇に目が慣れてくれば今いる場所が和室のような所であることが確認出来た。相手の後ろに隠れて少し先に進むと突如スポットライトがついて日本人形を照らす。部屋に隠してあるスピーカーか何かからクスクス笑いが聞こえてくるまではそういう仕掛けだと冷静を装っていたが突然大きな音と共に襖が開くと肩を跳ねさせる。その先には何も無かったがいきなり驚かせられる仕掛けは心臓に悪い。未だ心臓がドキドキしながらもニヤリと笑う相手に弱みを見せまいとそれらしい事を口にする。続けて子供扱いしたような問いかけがされるとますます意地を張るようにそれを否定しようとするが何処からか水飛沫が首元にかかると変な声をあげて反射的に相手の腕に抱き着く。ワンテンポ遅れて相手の言う通りになったことに気付くもこれから似たようなことが続くと思えば離れるのも躊躇われて「…はぐれないためにはくっついた方が効率的だろう」と言い訳を重ねると腕を引く形で歩き始め)
そうだな、この前の美術館みたいに離れ離れになっちまったら困るし。ここに一人で取り残されたらまた別世界に連れていかれちまいそうだ
(こちらはあくまでも善意を装って腕が必要か尋ねたが、最初こそ相手は強がりを発揮してそれならばと腕を引っ込めようとした。しかし相手に対して何やらトラップが発動したようであまり聞いた事のない声と共にこちらの腕に相手が抱きついてくる。どうこの場を切り抜けるのかと相手を見つめていればそれらしい言い訳がなされこのままでいるのが選択されて、やはり意地を張るその姿が可笑しくて揶揄いがいがあって可愛くて、笑いを噛み殺した後に相手に同意する事を言う。しかし続けたのはまるでここには『何か』がいるような言い方でわざと不安を煽るようなことを口にしていた。止まっていても終わらないだろうと襖を抜けて歩き出す、こちらが半歩前に出るようにしながら両脇を格子で挟まれた細い通路を進んだ。格子の隙間から見える向こう側に時折ぼんやり人の目だけが浮かんですぐに消えていく、この世のものでない何かに見張られているような演出はさすがに気味が悪い。格子の道がそろそろ終わろうという所で、先程くぐった襖が音を立てて開く音がして思わず振り返る。するとそこには白装束を着た髪の長い女が血みどろの姿で立っていて、無言でこちらへ走ってくるのをみれば思わず「だああ!」と叫び相手を引っ張りながら細い通路を走り抜けようとして)
ここは、この前の美術館とは違うだろう。ただの作り物だ。 …、うわああ! ッ! …はぁ、…確かあの御札を持って帰るのがルールだったね、…行けそうかい?
(苦し紛れの言い訳も見透かされているような気がするがひとまず同意の言葉が返ってくればこのまま腕を借りる事にする。だが相手は本当に何かが居るような言い草をするものだから違うと分かりつつもそんな気がし始めてくる。それを振り切るように相手を見つめて反論を告げるが腕は縋るように絡ませたままだ。そんな状態で相手の後ろを着いて格子に挟まれた細い通路を進んでいく。隙間から一瞬だけ見える目のような模様や静かな空間に口数を少なくしながら歩いていると襖が空く音がして思わず相手の腕を強く掴む。恐る恐る振り返ると白装束を着た女性が立っていてこちらに向かって走ってくれば相手と共に声を上げながら逃げるように廊下を走り抜ける。最中格子から真っ黒な手が伸びてくると最早声も出なくて無我夢中で走ると野外の庭の様な場所に出てくる。後ろをむくと女性の姿は無く危機を脱したことに安堵の息をつく。全力で走ったせいで若干呼吸が荒い。相手の事を強く握っていたことに気づくとその力を緩めながら辺りを見渡す。庭の先には墓場が立ち並んでいてその途中にはあからさまに怪しい井戸がある。この屋敷のルールとして墓のお札を持ち帰る事があったのを思い出すとそれを指さしながら進んでみるように煽ってみて)
ああああああ!!触んじゃねぇええええ!……はぁ…はぁ……あぁあれが御札か。ハ、あんな見え見えのトラップ余裕だっての
(無我夢中で白装束の女性から逃げていると左右から黒い手が伸びてきてさらに声を挙げる。不気味な黒い手がうねる中を必死に駆け抜け広い場所に出ればようやく息をつくことができる。派手に声を挙げてしまって不甲斐ない姿を見せてしまったかと思ったが、腕を強く握っているのをみるに相手もあまり余裕はないらしい。二人して呼吸を整えながらようやく周囲の状況を見る余裕が出てくればそこは薄暗い庭だった。墓地らしきその場所には持ち帰るよう言われていた御札があるがその道中井戸なんてあからさまなものがあり鼻で笑い飛ばす。相手に煽られるも余裕の表情で答えれば一旦腕を解き一人で奥へと進んでいく。井戸の横を通りすぎる時に何かが出てくるかと身構えたが特に何も起こらず拍子抜けして御札の方に近づく。御札が積まれた木箱の横には入口で見かけたあの日本人形が置いてあった。しかも入口で見かけた時よりも若干髪が伸びている気がする、何をしてくるでもないがいるだけで不気味だ。美術館でみた赤い目の人形を思い出しながら御札を一枚手にする。雰囲気だけで怖がらせるのなんて効きもしないと余裕をみせていたが、御札をとるため眺めていた体をあげた瞬間、突然目の前に黒い塊が振ってきた。それは蜘蛛男を模した人形のようで幾つもの赤い目と毛むくじゃらの腕が目の前に迫ってきて人形とは思えないほどの迫力だった。一瞬魂が抜けたように体を固めるも、直後「あああああああ!」と叫び声をあげ踵を返すとダッシュで相手の元に走り出す。しかしそうなれは井戸の事はすっかり頭から抜けていて、こちらが恐怖に陥り井戸の横を通った絶妙なタイミングで白装束の女が不気味な唸り声と共に井戸から顔をだせば、さらに「ぎゃぁああ!!」と叫びながら思わず女を避けるように横へと飛び退いた。御札を握りしめ必死の形相で相手の元に逃げ帰ってくるも、その表情はすっかり恐怖に染まっていて)
なら僕はここで待っていようか。
(一旦落ち着ける場所にたどり着いたと思ったがまだ屋敷の敷地内であるには変わりない。息が整ったところでミッションでもあった御札を指させば余裕とばかりの表情を見せる。意図せず自分も参加することになったがメインは相手の罰ゲームだ。あからさまにトラップのありそうな場所に一人で行くように促せば腕を解いてその様子を見守る。井戸の横を通る際身構えたのが分かるが何も起こらない。そのまま墓地に近付き少しかがんで札を取って起き上がった瞬間、何か人形のようなものが頭上が落ちてくるのが見えた。一瞬の静寂の後、叫び声をあげながらこちらに向かってダッシュで向かってくる。その帰り道は当然先程警戒していた井戸の横を通ることになり、白装束の女が顔を出して相手の手を掴もうとすれば尚更情けない悲鳴と共に横に飛び退いた。呻き声や先程追いかけてきた女の登場に驚きはするも自分よりかなり怯えて怖がってる相手を見れば不思議と余裕が出てきて怖くなくなってきた。当初の狙い通りのリアクションを見ることが出来れば帰ってきた相手の背中をぽんぽんと擦りながら「大丈夫かい?翔太郎、」と何処か満足気に様子を伺うように声をかけて)
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