相乗りで何処までも 【 〆 】

___ここみたいだな。とりあえずチェックインの手続きするか。
(騒がしい面々との時間旅行から1週間ほど、事務所に舞い込んできていた依頼はそこそこ難航していた。足取りを掴めないでいたが風.都.を出た先にヒントがあることを突き止めてからは早く、相手と連れ立って現地に赴き無事に真相を突き止める事ができた。依頼人に報告すれば感謝されると同時に遠方まで足を運んでくれた事にも礼を言われ、ついでにこの後強い雨が降って外出は控えた方が良い事まで教えてくれた。帰れなくはない距離だったがそういう事情だから近くのホテルに泊まって欲しいと依頼料を上乗せしてもらいそのお言葉に甘えることになって今は目的のホテルロビーにいる。相手に一声かけてフロントへと向かう。予約もしていない飛び込みだが季節や曜日を考えれば部屋は空いているだろう。と、甘い考えをしてフロントに宿泊の旨を伝えるとセミダブルの部屋しか空いていないと言われて一瞬言葉に詰まる。正直普段一人用のベッドで一緒に寝ているのだから全くもって問題ないが、ここですんなり受け入れるのもおかしいだろう。ぎこちない演技で少しの間迷う仕草を見せた後にそれでも大丈夫だとフロントに告げて)

(/それではこのまま導入の方に切り替えさせていただきました！いつもとは違う部屋でゆっくりと二人の時間を過ごしましょう。泊まる場所はビジネスホテルな雰囲気にしておきましたが、いつも通りご都合主義しつつやりたいこと入れていきましょう。何もなければこちら蹴りで大丈夫です。)

それじゃあ行こうか。＿＿506…どうやらここのようだ。
（今回の依頼はそこそこ難航したが風.都.の外の限られた土地でのみ見られる事柄であることを突き止めてからは早かった。実際に現場を訪れ相手の聞き込みと自分の情報の絞り込みを行えば無事に依頼を解決することが出来た。しかし思い立ってからすぐに移動したせいか天気予報を確認し忘れていて、この後大雨が降るという情報を受け所長に相談した結果今夜は近くのホテルに泊まることになった。きっかけこそ不本意なものだったが滅多にない外泊という機会に浮かれながらも相手がフロントで手続きを済ませるのを待つ。やがて手続きが終わった相手がカギを持ってこちらに来れば楽しみを隠さない顔で声をかけてエレベーターに乗り込む。カギについている部屋番号を頼りに五階に向かい部屋を探せば一番端の角部屋のようだ。鍵を使って中に入るとベットをメインとしたこじんまりとした内装が現れる。最低限の設備だけ整った部屋は温泉旅行の際の旅館とは違って一夜を過ごすための場所という意味合いが強く感じられる。物珍しい空間に早速クローゼットや風呂場を開けて探索しながらも「これがホテルの一室…」とつぶやいて）

___こういうとこ、部屋はめちゃくちゃコンパクトだけどベッドはふかふかなんだよな
(フロントで鍵を受け取り相手のもとへと戻ればそこには楽しみで仕方がないと書いている顔があって、釣られてこちらも笑みになりつつエレベーターへと向かう。かくいうこちらも一泊するだけとはいえ普段とは違う場所での寝泊まりで多少浮かれているのは事実だ。思わぬ外泊にはしゃぎ過ぎないよう気持ちを抑えつつ鍵を渡された部屋へとたどり着く。部屋はよくある構造になっていて寛ぐよりも寝る為に特化した場所だ。早速相手は興味深げにあれこれと探り出しているがそう広くもない部屋ではすぐに観察するのも終わってしまうだろう。せめてもと買った替えの下着類の入った紙袋を部屋の脇に置く。普段の家よりもさらに狭い室内だが唯一この部屋が勝るものといえばベッドだろう。カバーのかかった布団に身を預けるようにストンと座るといつもより体が沈み込む感覚に満足気に頷いていた。腰を落ち着けたところで「とりあえず風呂入っちまうか？」と声をかけて)

確かにふかふかだ。ああ、僕はまだ部屋をすべて見てないから君が先に入ってくるといい。パジャマと思われるものはクローゼットの中にあったよ
（相手からも浮かれた物を感じながら一晩使う部屋の中に入る。相手の言う通り自宅よりも狭くコンパクトな室内だがそれが逆に落ち着くような気もしてくる。机の引き出し開けたりと探索を続けていると相手からベットの話題があがると魅力的な言葉に釣られて自分も横に座ってみる。寝具にはこだわりがあるのかいつもよりも体は沈み込み肌触りも良くてつい口元が緩む。これならば今夜はぐっすり眠れることだろう。一息つけた所で声が掛かれば風呂に入ることに同意するがまだ全てを確認し終えてないため相手が先に入るように勧める。ついでに先ほど調べる中で寝るときに使えそうな部屋着を見つけていればその情報を共有して）

なら先に……せっかくだし風呂入る前に夜食でも買っとくか？
(相手が隣に座ればさらにベッドは沈み込むが二人分の体はしっかり支えられていて、夜は快適に眠ることができそうだと包み込まれるような柔らかさを確かめる。狭い室内だが相手はまだ探索が足りないらしく、風呂へ入るよう促されベッドから立ち上がった。だがその時にふとこのまま風呂に入ればもう部屋の外に出る事ができない事に気が付き一瞬動きが止まった。せっかくいつもと違う場所で寝るならいつもと違う事をしたい、そんな浮かれた気分を表に出さないよう誤魔化しながら、しかし顔はしっかり浮かれた色を出しつつ夜食の提案をしてみて)

夜食…普段とは違う所への宿泊…つまりこれがエリザベス達が言っていたお泊まり会という奴だね。 確か近くにコンビニがあったはずだ、買いに行こう！
(相手が風呂に入りに行くのを見送り再び探索を再開をしようとした所で相手の動きが一旦止まる。何かあったのかと視線を向けたところで平然を装っているように見えて浮かれた表情が隠しきれない顔でひとつの提案が成された。夜食とは確か夕食の後に軽食やお菓子などを食べることだったはずだ。そこでふとクイーンとエリザベスから聞いた単語が思い浮かぶとみるみるうちに表情を明るくして今の状況と同じだと語り出す。すっかりこの部屋の探索よりもお泊まり会の方に興味惹かれれば返す答えは一つだ。来る途中でコンビニがあったことを思い出し、早速夜食を買いに行こうと浮かれた表情を見せながら部屋の鍵を持って部屋を飛び出して)

確かにお泊まり会っていやそうだな。ちょ、待てってフィリップ！
(ふとした思いつきに相手が何かを考えるような仕草をとって何か迷いでもあるのかと思ったが、口から飛び出したのはいつか女子高生の情報屋に教えてもらった言葉で思わず笑いが漏れる。ひとつの部屋でお菓子やらを囲みながら談笑するという点で言えば十分条件を満たしているだろう。相手は相当浮かれた顔をしている、自分も全く同じような顔をしているのは気が付かぬままでいれば、相手が部屋を飛び出して後を追いかけるようにして外へと出た。ホテルを出ればまだ雨は降っていない、降り出す前にホテルに戻らなければと考える数分の内にコンビニへとたどり着いて中へと入る。いろいろと品揃えはあるがあくまでも夜食なのだから買う量は控えなければならないだろう。「何にすっかなぁ」と考えつつとりあえずお菓子コーナーへと向かって)

善は急げというだろう？ 備え付けのテーブルは少し小さかったから食べやすい物が良いね。 …これとか良さそうだ。
(名前を呼ばれるがその顔は言葉の割には乗り気で相手も相当楽しみにしているのがわかる。フロントを抜けホテルを後にすればまだ雨は降っていないようだ。来た道を思いながら数分歩けば目的のコンビニへと辿り着く。昼間ならば何度か訪れたことはあるが夜のコンビニには初めてでお泊まり会という響きも相まってワクワクしながらも相手のあとをついてお菓子コーナーへと向かう。夜食という点と部屋のテーブルを見る限り大きく場所をとるものや食器のいるものは避けた方が良いだろう。その観点をもって並べられたお菓子を見ていると細い棒状のクッキーにチョコの掛かったお菓子が目に入ると早速手に取って候補の1つとして)

あー……確かに良さそうだな、それ美味いし。なら俺は塩っけのあるのにしとくか
(相手の言うように部屋はほぼベッドに占拠されていてテーブルは家にあるものよりも狭い。袋を開けて直接食べられる方がスペース的にもお泊まり会の雰囲気的にもいいだろう。そんな条件から相手が手に取ったお菓子をみれば一瞬体を固めてしまう。相手が手にしていたのはエリザベス達とお泊まり会の話題になった時に挙がった定番ゲームに使うお菓子だ。女の子同士でもすると言うそれをあの時は笑って聞いていたが今その状況に自分の身が置かれようとすればいろいろと頭を過ぎるものがある。それらを詳しく想像してしまう前に肯定の返事をして場を取り繕えば、こちらは味のバランスが取れるようにと円錐型のトウモロコシ味スナックを選ぶことにしておいた。夜食なのだから量はこれくらいでいいだろうと「飲み物も選ぼうぜ」と声をかけて)

甘いのとしょっぱいので丁度良いね。 ああ、…依頼も無事に解決したしたまにはお酒でも飲んだらどうだい。 流石に一缶程度じゃこの前みたいに泥酔はしないだろう？
(手元が汚れそうにないお菓子は今回の条件にピッタリと言えるだろう。それを見た相手の妙な沈黙が気になるものの特に異論は無さそうだ。対して相手は塩味の強いスナックを手に取る。まだ気になるお菓子はあるが甘いものとしょっぱい物が一つ一つあれば十分だろう。食べるものを決めれば次に飲料コーナーに移る。自動販売機はホテルにもあったが種類は少なかった。大きな冷蔵庫の中からどれにするか悩んでいると1番端の冷蔵庫に注意書きの書かれたお酒の棚があるのに気付く。近頃でもウイスキーと飲み会に参加した時、バレンタインも入れたら三回相手が酔った姿を見ているが変に絡まれる所を差し置いてもいつもよりも素直な気がして案外悪くないと思っている一面だ。また酔い潰れられても困るがほろ酔い程度ならばこのちょっとした非日常な空間に合っているしまたあんな姿が見られるのかもしれない。そんな願望と期待が頭を過ぎれば缶に入った炭酸飲料を選びながらもそれとなくお酒の方に誘導してみる。少し煽るような言葉と笑みを相手の方に向けながらも近くにあったカゴにお菓子と炭酸飲料を入れて選ぶのを待ち)

え……、当たり前だろ。この前は潰れちまったのは量飲んじまったからだ。一缶程度じゃどうにもならねぇよ。それに仕事終わりに軽くアルコールを嗜むなんてハードボイルドな探偵らしいしな
(お菓子が決まったところで後は飲み物だけだ。当然のように炭酸飲料の棚に目を向けていたが、相手から酒を勧められると思わず言葉を詰まらせてしまう。酒に弱い事はここ最近で十分すぎるほど分かっているのだが、煽られると対抗してしまいたくなってしまうのがこちらの性格だ。散々夜更かししてしまった日にしばらく飲まないと誓ったことを脇において、言い訳を添えながら当然問題ないと宣言しながら酒類が置かれている棚の方に移動する。いつものハードボイルド論を口にするも手に取ったのはウィスキーの類ではなく缶チューハイだ。流石にそこは弁えている。事実として先日飲んだ時だって最初はきちんと記憶がまともに顔なじみと話せていたのだ。缶一本飲んだ所で記憶を飛ばす事態にはならないだろう。選んだお酒をカゴに入れると「他に買いたいもんあるか？」と確認を取り)

なら問題無さそうだ。 これくらいでいいかな、お泊まり会というのは話をするのがメインらしいからね。
(こちらが酒を勧めれば言葉を詰まらせれば少し煽って見せれば直ぐに乗ってくる。こういう所が周りから遊ばれてあの夜の事態になったのだろうと想像はつくが今は自分がそれを利用しているのだから何も言えない。いつものハードボイルド論を語りながらも手に取ったのはアルコール度数の少ない缶チューハイだ。これなら恐らく以前のような泥酔も避けられるだろう。狙いが上手くいったのも合わせてご機嫌な笑みを浮かべてカゴに入れられる缶を見つめつつも相手に他を問われるとこれで十分と返す。家ならともかく出先ならちゃんと食べられるくらいの量に留めておくべきだ。今夜のお供が揃えばカゴをレジに持っていって会計を済ませる。レジ袋に商品を詰めてもらったものを受け取ればそのままコンビニを後にして)

食いすぎて寝れなくなっちまうのも問題だからな。雨が降り出す前に戻ろうぜ
(相手に買い忘れがないか問えば問題なしの返事が返ってきた。あくまでも夜食でお泊まり会なのだ、夜のひと時のお供ならこの程度の量で十分だろう。会計を済ませてコンビニをあとにすればまた数分でホテルへとたどり着く。そのまま部屋へと戻れば飲み物を簡易冷蔵庫へと入れ、お菓子をテーブルの上に置いた。お泊まり会は開始してそのまま眠れる状況で始めるのが理想だろう。「始める前に風呂入っちまおうぜ」と今度こそお風呂へ行くことを告れば、クローゼットの中にあるパジャマを手に取り浴室へ入る。浴槽に入れなくはないがこういうところではシャワーで簡単に風呂を済ませてしまう方がいいだろう。いつもと違う香りのシャンプーとボディソープで体を綺麗にしたあとバスタオルで体を拭いてパジャマを手に取りそれを着る。が、室内着で用意されていたのはワッフル生地のバスローブで、着慣れないものに少々恥ずかしさを覚えつつ浴室をあとにした。バスタオルで髪を拭きながら「あがったぞ」と相手へ声をかけて)

じゃあ僕も入ってこよう。＿＿ あがったよ、それにしてもこの服は面白いね。浴衣っぽい形だけどもっと簡素なつくりだ。
（部屋に戻ってくれば飲み物を冷蔵庫に入れてから相手は風呂へ向かう。その間に中断していた部屋の探索を済ませくつろいでいると相手があがってきた。珍しい形の衣類を着ていたがそれよりも早く風呂を済ませてしまおうと入れ替わりで浴室へと入る。自宅や事務所にはないシャワーカーテンの存在やいつもと違うシャンプーやボディソープに興味惹かれる気持ちはあれど一日活動した髪と体を洗ってバスタオルで全身を拭く。用意されていたパジャマは相手と同じ膝下ほどまでの長さで一枚で出来た室内着だ。早速袖を通して前を留めてから浴室を後にする。相手にあがったことを伝えるが初めて来たバスローブという服に旅館の時の浴衣と似ている要素をあげつつも興奮気味に感想を口にする。これが今日のお泊り会の服という訳だ。その興奮もほどほどに準備が整うと椅子代わりにベットに腰掛けて「早速はじめようか」と期待に目を輝かせながら告げ）

風呂からあがって簡単に着れんのはいいけど、浴衣と同じでちょっとスースーするよな。____よし、それじゃあ…お泊まり会に乾杯
(相手が風呂に入る間はベッドに座りながら部屋に備え付けられた案内をぼんやりと眺めたりテレビを付けたりして時間を過ごし、相手が風呂から上がってくればそちらの方を見やる。自分と同じバスローブを着る相手は新たな衣服に興味津々のようでその目はキラキラと輝いている。着心地もよくさらりと着る事が出来て便利ではあるが股下まで簡単に空気が入ってくるこの構造はやはり慣れないものだ。足を軽く揺らしながらその事を話していると、相手が隣へとやってくる。これでお泊まり会の準備は万端だ。期待と興奮たっぷりの相手に笑みを浮かべる、こちらも大概似たような顔をしながら早速準備に取り掛かった。買ってきたお菓子を箱から出し、包装紙を大きく開けてそのまま皿代わりにして机に並べる。次いで冷蔵庫で冷やしておいた缶を取り出し相手に炭酸飲料の方を渡せば、こういうのは出だしが大事だろうと乾杯の音頭と共に相手へ缶を差し出して)

ちょっとしたパーティみたいだ。 乾杯、…ん、大雨が降ると聞いたときはどうしようかと思ったけどある意味ラッキーだったかもしれないね。
(簡素な作りのバスローブは衣類の役割は果たしているものの一枚の布を羽織っているだけにも近い。何となく落ち着かないのには同意だがこの場には相手しかいないのだから多少は乱れても問題無いだろう。隣に腰掛けると相手も楽しみを滲ませたような顔で準備を始める。お菓子の包装を開けて机に並べてそれぞれの飲料を受け取る。家や事務所でお菓子を食べるにしても一種類とコーヒーであることが多いからこうやって2種類でも広げられているのを見ると特別感がある。無邪気な感想を口にしながらも相手が缶を差し出したのを見れば小さく笑って音を立てて乾杯をしてからタブで缶を開けて一口飲む。炭酸ならではのしゅわしゅわ感を味わいながらもこうなった経緯を振り返る。外からは予測されていた雨が降り始めたようで雨音が聞こえる。依頼人から雨の話を聞いたときは土砂降りの中帰る最悪の覚悟もしたものだが結果的には普段とは違うことが出来る機会になったことを嬉しそうに話しながらもスナック菓子に手を伸ばして口にして)

ん、……あぁ、こんなにいつもと違う夜になるとは思わなかったな。せっかくなら楽しまねぇと
(互いの持つ缶が軽い音を立ててぶつかればお泊まり会の開始だ。こちらもプルタブを掴んで蓋を開ければ一口中身を飲み込む。程よい甘さと炭酸飲料と同じ爽快感、その中に僅かにアルコールが混じって喉から食道を熱くするのを感じる。飲み込んだ後に軽く息を吐く、飲み始めはいつもこれが心地よいと感じられるのだからあとは無茶さえしなければ問題にはならないだろう。相手と同じくスナック菓子を手に取る。塩味の効いたトウモロコシ味のあと清涼感のあるチューハイを飲めば相性は抜群だ。いい夜になりそうだという予感に頷いて返事をしながら、スナックを食べ進める。今がお泊まり会で円錐形のスナックがあるとなればこれをやっておかなければと片手の五本指にスナックを次々はめていけば「怪物の爪の完成だ」とスナックをはめた手を軽く閉じたり開いたりしてみせて)

このスナック菓子も昼間より美味しく感じるよ。 …ほんとだ、指を入れるのにピッタリな形だね。 …これで僕も怪物の仲間だ
(乾杯の後チューハイを口にする相手を覗き見る。流石に一口でベロンベロンになるくらい弱くはないらしく、ペースさえ煽らなければ楽しい時間を過ごせそうだ。外は大分暗くあとは寝るだけといった状態で食べるスナック菓子と炭酸飲料は夜という背徳感からか昼間より美味しく感じて手が止まらない。ふと隣の相手がそれを食べずに何かしているのに気づけば動きを止め目線を向ける。スナック菓子を5本指全てにはめた後に開いたり閉じたりするのを見ればとんがった形を鋭い爪に見立てているのだと気付いて無邪気に嬉しそうな顔をする。早速自分も片方の指全てにスナック菓子をはめると大きさ比べをするように手を近づけて爪同士をつんつんとつついて)

だろ？別に意味はねぇけど、これ買ったらやっとかないとな
(いつでも眠れる状態で食べる菓子と飲み物は何時だって昼間に増して美味い。背徳感と特別感と、両方が揃ってしまえば心も浮かれてしまうものだ。スナックと缶の中身を交互に口にしていれば、程よく血流が良くなったのか体が軽く火照って気分もいい。三角錐のスナックを指にはめるなんて定番のおふざけをやってみせれば、そんなことでも相手は無邪気に笑っていてこちらの頬も緩んでしまう。相手の方も五本指にスナックが刺さればお揃いの手の完成だ。特段何かなる行為ではないのだがパーティーならば少しでも楽しいことをした方がいいだろう。コツコツとぶつかる塩味の爪を眺めていれば、浮かれた気持ちとそれに拍車をかけるアルコールのせいでいつもより相手にちょっかいをかけたい気持ちは大きくなって、不意にぶつかる二人の爪に顔を近づけると相手の指にはまっていたスナックを口に含む。そしてその位置でスナックを砕けばその勢いで唇が軽く相手の指に触れる。砕けた小さな欠片ごと唇を滑らせ口内に取り込むと「いっこ爪が減ったな」と楽しげに笑い)

この形を爪に見立てるとは良いアイデアだ…っ、僕の指先はお菓子じゃないんだが…、…もう一個食べるかい？
(相手の口ぶりからして定番のおふざけなのだろうがそういう経験のない自分には何もかも新鮮だ。その形と都合よく空いた穴を見て爪に見立てようとしたアイデアに感心しながらスナック菓子同士をぶつけていると不意にその場所に相手の顔が近づく。軽快な音と共に相手の口に含まれたスナック菓子は砕け、そのままの勢いで指先が唇に触れると僅かに身体を強ばらせてしまう。楽しげに笑っている辺り酔いが回って気分が良くなってきたのかもしれない。平然を装って冷静にツッコミを入れるもこういう戯れが嫌という訳では決して無い。ふと相手に食べられてしまう前に指を引き抜くゲームが浮かぶと今度はこちらから相手の口元にスナック菓子のついた指を差し出して問いかけ)