相乗りで何処までも 【 〆 】

なるほどな、なら俺がここに居て落ち着く理由もお前がここに住んでるからってことか……なんだその言い方。まぁでも、お前と相性が良いってのは納得だ
(互いに抱き合って互いの匂いを嗅いで安心感を覚えるなんて傍から見れば奇妙な光景だが、手放し難い心地なのは確かなのだからどうしようもない。相手がこの家の匂いについて更に分析を行えばこちらも納得するように軽く頷く。こうやって抱きしめた時の匂いが感知できなくともこの家に溢れている。それは相手と自分が確かにここに暮らしている証拠のようにも思えて何処か擽ったい気持ちだ。相手がいつしかフェロモンと称したその人独特の匂いを嗅ぎながら背中を軽く叩かれればさらに心は穏やかになって離れがたくなってしまう。そんな最中で『遺伝子』なんて言葉を持ち出して相性が良いと言われれば更に擽ったく照れくさくなって思わず笑ってしまった。それではまるで生まれた時から相性が良いのが決まっていたようなもので、運命なんてファンタジーな言葉さえチラつく。そんな単語は恥ずかしすぎて口にも出来ないが、もし仮に遺伝子レベルで相手と相性がいいのなら当然だと返事をする事ができる。そんな浮かれた思考にまた照れ隠しするように鼻先で首筋を擽りつつ返事をして)


(/お世話になっております！そろそろ区切りかと思いましてお声がけさせていただきました。もしまだやりたい展開など残っていましたらこのまま続けましょう！
次の展開ですが、検索くんに振り回されつつも風の街を巡るゆったりとした時間を過ごすことが出来ましたのでこちらはピリッとしたシリアス展開ができればと思っております。このままご相談の流れであれば検索様のご意見もお聞かせください！)

恐らくね。 ちゃんとした学術的な話だよ、人は遺伝子的にも相性の良い相手を探すための能力を生まれながらに持っているんだ。相性が良くないと相棒にもなってないだろう。
(自分はやってきた立場だが相手が以前と生活が同条件にも関わらず落ち着くように感じているのならばこの仮説は合っているのだろう。ゆるゆると背中に触れながら腕の中の存在を確かめていると遺伝子の話を含めたこちらの話に相手が笑い出す。照れ隠しの要素は感じながらも茶化されているようにも感じて、適当に言っていると解釈されないためにも研究に基づいた確かな情報であると補足しておく。一方で首筋にすり寄りながら相性がいい点については断言する様に自然と口元が緩んだ。相性がよくなくては恋人どころか相棒としての関係も成り立っていないはずだ。こちらも当然のことのように肯定しては惹かれる匂いを確かめるように鼻先を寄せる。肩口から首筋へとより濃い相手の匂いを探るように移動させれば耳の裏辺りに到達して「ここが一番強いかな」なんて独り言のように囁きながらも誘惑されるように短くキスを落として)

(/こちらこそいつもお世話になっております。こちらもそろそろ転換かなとも思ってましたので上記の方ゆるゆると収束させながらも次のお話させてもらえたらと思います。
久しぶりに検索が思うがまま暴走して探偵君とともに街をまわることが出来てとても楽しかったです！変わった事や変わらない事、そしてこの先のイベントにつづくようなやりとりが出来て大切な日常の一幕になったと思います。
次回はシリアス展開にとはこちらも考えていましたので丁度良かったです。案としては銀行強盗や立てこもりの人質になる話や以前あげて頂いたメモリの影響で大事な信念や記憶を無くす話、相手の悪い所がきっかけで喧嘩した直後にメモリか何かでその欠点が消えて理想なはずなのにすっきりしない話…などがなんとなく浮かんだのですが探偵様の考えている案などがありましたらお聞かせください！)

そうなのか？人間も動物ってことか……まぁ相性が良くなきゃこうやって抱き締めたいって思うこともねぇし……っ、さっきの仕返しか？
(遺伝子レベルだなんて照れもあって笑ってしまったが相手の熱弁ぶりを見るにどうやらちゃんとした話らしい。つまりは動物的な本能で相性の良い相手を選んでいるという事だろうか、それはそれでやはり照れるものはあって呟くように返事をしていた。始まりはそれ以外の選択がなかったものだったがその選択が最高の相手を選んでいたという事になる。匂いから始まった話で相手と真に相性が良かった話にまでなるとは思わなくて相変わらず擽ったい気持ちでいたが、相手の鼻先がこちらを探るように移動してくれば物理的にも擽ったくて軽く身を捩る。最終的には一番自分の匂いが強い所を暴かれてしまって流石に羞恥の方が勝った。さらにそこへ口付けが落とされると分かりやすく体を跳ねさせ反応してしまう、これではまるで花壇とは逆の光景だ。慌てて顔を挙げると動揺を誤魔化すようになんとか口元に笑みを作りつつ問いかけ)

(/それでは上はゆるっと続けてタイミングのいい所で締めましょう！
こちらこそお買い物の時とはまた違った何気ない日常を過ごしつつひとつ約束が増えてとても楽しかったです。検索くんのお強請りを叶えていく過程とても楽しませていただきました。
そして次の展開たくさん提案していただきありがとうございます！こちらは挙げていただいた他に探偵が大怪我する話やア.ナ.ザ.ー.ラ.イ.ダ.ーがありならイ.マ.ジ.,ン.ズ.と絡ませる話もありかなと考えておりました。個人的にはここはより緊張感を持ったお話がしたいなと思っておりまして、ご提案いただいてるどちらかが強盗か立てこもりで人質になる話はいかがかなと思っております。二人で出かけて一旦離れた好きにどちらかが人質に取られて……みたいな流れでしょうか？)

それもそうだね。 …それも少しはあるけど、単純に君の匂いが好きなだけだ。…安心する。
(出会いこそ事故のようなものだったがこうして側にいて自らの身を明け渡せるほど深く関係を築いたのは相性の良さだとかやり取りの積み重ねによるものだろう。遺伝子によって選んだ訳では無いが2人を繋ぐ根拠が一つでも増えるのは嬉しい事かもしれない。それを噛み締めるように相手を腕に抱きながら強い場所を探すように鼻先を近付ける。見つけた場所に軽くきすを落とせば分かりやすく身体が跳ねてその反応にくすくすと笑みを零す。先程自分がされた事と似たような事を結果的にしたが今あるのは相手への愛おしさと好ましい環境を求める本能だ。動揺して相手の体温が上がったのが感じる匂いがより強くなった。その場所から離れずに再び深く呼吸をすれば肺いっぱいにその匂いを取り込んで安堵感に力が抜けて今度は自分が体重を預けていく。今日一日フルで頭を動かしてあらゆる所で検証を行った身体は自然と瞼が落ちていき、相手を抱き締めながらもまろい口調でぽつりと呟いて)

(/承知致しました。
追加であげてもらった物も楽しそうですのでゆくゆくやりたいなと思いました！ 特に後者は憑依されたりだとかで不思議なやり取りが出来そうです。二人共が人質になって以心伝心で切り抜けるみたいな話も考えていたのですがより緊張感があるのは分離させられる方だと思いますのでそう致しましょう。 役割はどうしましょうか、どちらでも違った展開や解決方法が見込めそうなのですがご希望ありましたら教えてくださいませ！)

まぁそれなら、いいけどよ……、……おいフィリップ。このまま寝ちまう気か？せめて風呂入ってからにしろ
(擽ったくて恥ずかしくて相手の追求から逃れようとしたが、悪戯よりもただ純粋に好んでいるからだと正面切って言われてしまえば何も言い返すことは出来なくなってしまって大人しく相手を受け入れる。愛しい人に好きだと言われて嫌な気になるわけがない、むしろ今や自分の香りをめいっぱい体に取り込んでいるのが嬉しくも思えてしまった。今度は相手の体がこちらに預けられていく。それを抱きとめながら再び鼻先を相手の方によせれば同じく耳裏の匂いを嗅いでみた。確かにそこは相手特有の匂いが強くて顔をずっと埋めてしまいそうだ。まるで相手に浸っているような感覚だと内心思っていたが、そこで段々とこちらにかかる相手の体重が増えているのに気がついて思わず名前を呼ぶ。ちらりとその横顔を窺えば瞼が閉じられていて眠りに落ちそうになっているのを察すれば背中を軽くポンポンと叩いて瞼を開けるように言い)

(/イ.マ.ジ.ン.ズ.はいるだけで賑やかになりますからね。憑依した状態のもぜひやりましょう！
なるほど二人して人質になる感じですね。どちらか一方が、と思っていたのですがそれだと捕まっている側がやることなくなってしまいますので、二人して人質になる方向でいきましょう。自分達含めた複数人が犯罪グループに人質にとられて、人の目があるから変身もできずドライバーで意識共有しながら突破を目指す、なんていかがでしょうか？)

…嫌だ、 今日はこのままが良い…。
(一番落ち着ける濃い匂いを感じていれば身体から力が抜けていく。それを遮るように名前を呼ばれ背中を叩かれると何とか瞼を開いて相手と目を合わせる。風呂に入ったりほかのことをしたりするなら一定以上相手から離れないとならなくなる。一日甘やかされて好き勝手に動くことが許されたことと眠気によって己の欲に率直になれば相手の言葉を拒否してますます腕に力を込める。最後の力を振り絞って向かったのは風呂ではなくベッドで相手を腕に閉じ込めたままなだれ込む。やっと見つけた自分の一番好きな匂いを逃がさないように擦り寄ると拙い手つきで相手の頭を撫でながらも再び瞼を閉じて)

(/まさにそんな感じですね。計画犯の犯行時に偶然居合わせるみたいな状況からはじまり、交渉役が犯人の目を引いている内に片方が状況を確認したり逆に犯人の機嫌を損ねて銃を突きつけられたり怪我を負わされたりとスリルある状況が楽しめそうです。
上記もいい感じに締まりそうな流れかなとも思うので他に確認したいことや打ち合わせが無ければ次かその次にでも移行出来たらと思います。)

よしこんなとこだな。行くぞフィリップ
(相手の暴走に一日付き合い最終的には押し倒される形でベッドに転がり込んで互いの匂いに包まれながら眠りにつき散々甘やかした日から一週間ほど、二人連れ立ってやって来たのは銀行だった。先日解決した依頼の依頼料を小切手で貰い、その手続きで銀行窓口へとやってきたのだ。相手はまだ知識欲の高まりが抜け切っていなかったのか、まだ見た事のない銀行というものに興味を示して絶対に騒がない事を条件に連れてきている。喋りはしないが忙しなく目線を動かす相手を隣に見つつ順番が回ってきて事務的な手続きが終わればやることは終わりだ。窓口の係員に礼を言ってから立ち上がり出入口の方へ振り返る。そこで妙に目につく男を見つけた。上から下まで真っ黒な服装に中身がスカスカなのかひしゃげているのにやたら大きなバッグをもっている。さらに同様の服装の男が数人後を追うように入ってきて妙な胸騒ぎを覚えていて)

(/了解しました。犯人グループに対して二人で切り抜けていく感じですね。一緒に人質になってる人を庇ったり犯人と駆け引きしたりできそうです。それではひとまず導入投稿しておきました。例のごとく好きな展開どんどん入れてスリルたっぷりな感じで楽しんでいきましょう！/こちら蹴り可です！)

ああ、…っ！ ……、
（香りについて好きなだけ知識を求めたあの日から一週間ほど。出かけようとする相手に行き先を尋ねると銀行という返答があり、まだ見ぬ場所への興味に同行を強請れば条件付きでそれが許された。役所のような整った硬い空気とATMや受付の周りや奥にも見慣れない機械があって好奇心に目線を忙しなく動かす。街の中でも大きめな銀行なだけあって自分たちと同じように小切手の現金化や口座の引き出し・振込などで訪れている客が見られる。相手曰くまだこれでも人は少ない方らしいから人々の生活になじみ深い施設なのは間違いないだろう。そうして観察している内に相手の事務手続きが終わったようで声をかけられ相手とともに振り返る。ちょうどそのタイミングで全身黒づくめの男が入ってきて受付の方へずかずかと向かう。この場ではかなり浮いた格好に気を取られていると同じような服装の男が複数人中へ入ってきてそのうちの2人が入り口を塞ぐように自動ドアの前に立つ。不審に思ったその瞬間「全員伏せろ！」と男が大声をあげる。咄嗟にその方向を向けば男が客であろう女性に腕を回し人質にとるような形で銃を突き付けていた。思わぬ光景に目を見開き、各地からも悲鳴があがり騒然と銀行内がなるが男が天井に銃を向け威嚇するように発砲すれば今度は恐怖で静まり返る。男達は慣れた様子で出入り口や窓を封鎖することを指示して職員たちが怯えながらシャッターを閉めていけばすぐに閉鎖空間が出来上がってしまう。見ている限りあの銃は本物で犯行も手馴れている。ただならぬ空気を感じながらもこの街の探偵として穏便かつ確実にこの場を納めなくては。そのためにまずすべきことは頼れる相棒との意思伝達経路の確保だ。物音ひとつ立てるのも厳しい状況だが自分たちには最適なツールがある。犯人達の目が他に移ったタイミングで相手に近づけば腕をとんとんと叩いた後に相手の腰辺りに目線を向けやることを伝えようとして）

なッ？！……『人質取るなんて許せねぇ。絶対に俺たちでこの状況なんとかするぞ、フィリップ』
(気がついた時には時すでに遅しだった。揃いの黒い服のうち二人が入り口を塞ぐように立った所で男達の目的を察するが、動き出す前に女性が人質に取られてしまい下手に動ける状態ではなくなってしまう。天井に向かって銃弾が鈍い爆発音と共に放たれ一瞬銀行内が静寂に包まれる。その後建物のシャッターが閉まれば銀行内いた職員と客は全員が人質となってしまった。だがその人質の中にこの街の探偵がいるのを奴らは気づいていない。相手に腕を叩かれ犯人達に気づかれぬように横目でチラリと見れば、腰辺りに目線が向いている。どうやら考えていることは同じようだ。犯人達の様子を見れば今は職員に金を出せと脅している最中でこちらへの注意は疎かになっている。なるべく動きを小さくして服の下にドライバーを装着した。同じタイミングで相手の方にもドライバーが現れ意識が共有される。口は動かさぬまま相手にこの場を切り抜ける事を宣言すると軽く息を吐き出した。犯人達は見える範囲では一人が職員に金を出させ、一人が女性に銃を突き付け、もう一人は客を見張っている。役割分担し手早く事を進めているあたり相当こういうことに手慣れているらしい、恐らく各地で強盗を繰り返している集団だろう。変身は正体がバレるためできない、どちらにせよ何か動くにはあの女性を解放しなければ、『まずは彼女を助けねぇと』と意識下で方針を共有する。その間に客を見張っていた犯人が客に中央に集まれと指示を出している。人質を一箇所にまとめて見張りやすくする為だろう。犯人はまだ客全員を把握していないはず、それにここは犯人から遠い位置でこの場所に二人の人間がいるのも分かっていないだろう。ここで二人とも犯人の監視下に入れば動けなくなってしまう『どっちかが隠れてアイツらの裏かいてやるか』と別行動を提案して)

『勿論だ、僕たちの前で被害は出させない。 』『ならば僕が出て行こう、隠密行動は君の方が得意そうだからね。』
(言葉が発せない以上アイコンタクトで行動を伝えるしかない。だが相棒にはそれだけでも十分伝わったようで彼らの意識が逸れている隙に静かにドライバーを装着すればこちらの腰にも同じものが現れた。意識が共有され相手の意気込みが伝わってくれば表情を変えないまま同意を示す。ひとまず相手と意思疎通をはかる方法を確保は出来たが問題はこれからだ。相手の言う通りこれから犯人を取り押さえるにしろ人質を逃がすにしろ犯人の手にかかっている女性を解放するのが第一だ。意識下で方針を打ち合わせしていると犯人達は客や金を出す役割以外の職員を中央に集め出した。一か所に集めて監視しやすくするためだろう。今なら両方隠れるという選択も取れるが犯人の動向を身近で確認しながら気を引いたり交渉をしたりするには一人は素直に人質として紛れておくべきだ。それにいざという時に客と職員の身を守るには傍にいる必要がある。別行動の案に賛同すればこちらが人質に出る側に名乗り出る。隠密行動の技術と腕っぷしは相手の方が上だ。状況を変える一手は相手に任せた方が上手くいくだろう。宣言とアイコンタクトだけすれば集められている中央に向かって歩き出す。その間にも犯人達が念入りに監視の目を光らせているのを見る限り相手の存在を隠す為には隙を作る必要があるだろう。少し考えた後、相手から十分離れた所で躓くようなふりをして音を立ててこけて見せる。発した音に銃とともに犯人達の警戒した視線が自分に注がれると『今のうちだ』と念を飛ばしながらも起き上がって情けない仕草で不本意な事故をアピールしながらも集められた人質の輪に加わって)

『あぁ任せた。でもあんまり無茶すんなよ』
(互いの安全を思えば別行動は避けるべきだが、それでは二人共押さえられて身動きが取れなくなってしまう可能性が高い。危険を犯す事にはなるがこの街の人々を守るためにも二人で危ない橋を渡るべきだろう。相手が人質の輪に加わるのを意識下で聞けば了解の返事をする。こちらが得意なのは体を動かす事だ、これまでの依頼と猫刺しで培った隠密スキルが役に立つ時だろう。そして相手の得意分野は頭を使うこと、あらゆる情報を収集するのにも長けているのを考えれば犯人達を監視している方がいい。相手が犯人の指示に従いこの場を離れる、暫く物陰に身を潜めていたが相手が物音をだす瞬間に静かにその場から動き出した。意識を共有していればそのタイミングも完璧で相手に銃口が向けられるのにヒヤリとしながらも奥まった通路へと逃げ込む。これで犯人の監視の目からは外れたはずだ。静かに息を吐いて呼吸を整えると犯人達の裏をかく方法を探し始める。暫く通路を進めば壁の上に鉄格子があるのを見つけた。どうやら通気口のようであの中になら入り込めそうだ。あれを使えば犯人に気付かれずに接近できるかもしれないと思えば『フィリップ、そっちのエリアに通気口あるか？』と意識を飛ばして)

『…通気口？ 確かに僕達のいる所から奥の方にまで設置してあるみたいだ。何か策があるのかい？』
(転んだのも鈍臭い程度で片付けられたようで中央で他の客と同じく手を挙げて指示通りにしゃがみこめば犯人たちはこれで全員であることを確認するように辺りを店内を歩いて回る。随分と警戒心が強いようで相手を逃がしたのもギリギリのタイミングだったかもしれない。やがて男達がこちらに戻ってくれば「妙な真似をすればコイツもお前らも殺す」と集まった客達に脅しにかかる。未だ銃を突きつけられている女性は顔面が真っ青で見ていても辛いが打開策が見つかるまで耐えてしまうしかないだろう。受付の方では指名された職員が慌てて金を引き出そうとしているがセキュリティで一度に出せる金額には上限があるようで随分と時間がかかっているようだ。また裏のメインの金庫を開けられる責任者は丁度出掛けているようで直ぐに戻ってくるよう連絡を強要する様子も見られた。密かに情報収集を続けていると意識で問いかけが成される。不審に思われない程度に顔を上げ天井を観察すれば幾つも隙間のある通気口らしき物が等間隔に設置されていて、それが自分達のいる場所や受付の奥の方まで伸びている。その事を意識下で伝えながらも策を伺って)

『よし、俺は通気口通って上から奴らに近づく。何かありゃ奇襲もかけられるだろ？』
(意識下で相手が認識した景色が共有される。銃を突きつけられた女性は顔面蒼白だ、早くこの状況を打破しなければと静かな闘気が燃える。だが金を引き出すのには中々に時間が掛かるらしく、あの犯人グループを押さえる時間はまだありそうだ。それならば好都合、天井裏に隠された通気口という名の通路を通れば多少窮屈でも犯人に接近する事はできる。近くにあった観賞植物を足場にして通気口の鉄格子を開けば勢いを付けて飛び上がって中へと侵入する。メンテナンス出来るように人一人がギリギリ通れるサイズのそこを音を立てないようにして進んだ。これでは探偵というよりはスパイのようだが、隠密行動という意味では一緒だろう。暫く通気口を進めば再び鉄格子が見えてそっと下を覗き見る。相手がいる部屋の天井に設置されているそこから見れば部屋全体を俯瞰で見ることが出来て状況がよく分かる。見える範囲にいる犯人達は全員拳銃を所持しているようで犯人を制圧するにしても全員を同時に押さえる必要がありそうだ。息を潜め下の様子を窺っていれば受付で現金をせしめている犯人がメインの金庫がなかなか開かないのに業を煮やして、一箇所にまとめられた人質のうち一人に銃口を向け「あと三分で開かなかったらあいつを殺す」と脅しにかかった。受付係は必死で自分達では開けられないのを説明し、責任者に連絡を取ると言うが外部と連絡を取っても殺すと理不尽な脅しがかけられ八方塞がりになっている。慌てふためく受付係に犯人は苛立ちを隠さず手に持っていた拳銃のセーフティをカチャリという音と共に外して)

『なるほどね。なら彼らをなるべく１箇所に集めたい所だけど…』っ、 人質なら僕で十分だろう。 それとそのダイヤル錠の鍵は246582だ。
(意識の片方では相手が通気口の中へと侵入する様子が共有される。何時ぞやに見た怪盗やスパイの様な行動ではあるが上部を抑えるのは悪くない手だ。犯人達も辺りには気を配っているがまさか天井に人が潜んでいるとは思わないだろう。予想はしていたが犯人達は全員銃を持っている。中途半端に攻撃を仕掛ければ残りの男が自分達が人質に発砲する危険がある以上迂闊に手を出すのは躊躇われる。１箇所に集めて奇襲しやすい状況を作るなど一網打尽にするチャンスを伺っていると受付で金を集める担当の男がなかなか金庫が開かないのに苛立ち声を荒げたかと思えば人質の1人に銃口を向け更なる脅しをかける。責任者を呼ぶという声にも耳を貸さずに正に発砲しようとセーフティを外す音が聞こえれば策を考える前に身体が動いていた。人質に向けていた銃口の目の前に立てば命知らずの行動をする自分に注目が集まる。目の前の男を見ながら堂々と宣言をすれば訝しげな目線を向けられた後「ヒーロー気取りのつもりか？」と嘲笑された。だが案内係が試していた様子と金庫の品番、そしてここに訪れる際の移動時間に検索した内容を総合して再度検索をして得られた暗証番号を告げてみせればがらりと空気は変わる。信じていない様子の男が案内係にその数字を入れるように脅し操作してみればカチッと音が響いて一つ目の鍵が解錠された。思ってもみないことに犯人達は驚いていたが金庫の開く糸口を掴めたと次の鍵も開けるようにこちらに銃口を向けながら急かす。自らの有益性をアピールしたところで「…分かった。だけどその前に彼女を解放してくれ。顔色が悪そうだ」と交渉を持ちかけつつも『何とかこちらで時間を稼ぐから君は良い案を考えるかタイミングを図って指示をしてくれ』と相手に託して)

ッ、『おいフィリップ！くそ……それ以上下手に刺激すんじゃねぇぞ』
(理不尽な脅しをかける犯人に奥歯をかみしめ、セーフティが外された時には急いで動き出そうとしたがその前に相手が動いていて思わず声が出そうになる。慌てて声は飲み込んだものの犯人達の視線は一気に相手へと向いてしまった。だが相手が金庫を開けることが出来るのを知れば犯人の中で相手の価値は一気にあがり、相手の要求はあっさりと通って人質の女性は解放される。しかしその代わりに相手の頭に銃口は向けられ『早く次のロックを解除しろ』と金庫を開けるように促す。彼女は難を逃れたが相手の危険度は一気に上がって悪態をつきながら警戒するよう伝えた。だがおかげで女性と犯人は離され確保のチャンスは一気にあがる。犯人のうち一人は相手に気を取られ金庫を開ける事にやっきになり、残りは人質を見張っていて金庫の前の一人からは離れた状態だ。上手くやれば人数を減らせそうだとひとつの作戦を思いつけばほくそ笑む。静かに通気口を移動すれば見張りをする犯人達のちょうど間の位置に移動してくる。通気口の鉄格子を音を出さないよう慎重に開け、取り出したのはギ.ジ.メ.モ.リ.だ。ス.パ.イ.ダ.ー.シ.ョ.ッ.ク.をライブモードにすればワイヤーを一本自分に引っ掛けてから音を立てずに下へと行くよう指示する。そして犯人二人の間にある大きめのラックの後ろに隠れさせ、そこを叩いてコンコンと小さく音を出させた。金庫側の犯人には聞こえないが見張りの二人は気づいたようで顔を見合わせた後何かがいるのではとラックへと近づいていく。二人が隣合った瞬間にス.パ.イ.ダ.ー.シ.ョ.ッ.ク.が飛び出しワイヤーを発射して二人の口を塞いだ。同時に通気口から飛び出せば天井から犯人二人の背後へ降りるも、ワイヤーとウィンチのおかげで派手な音を立てずに着地に成功し、そのまま無防備な二人に一発ずつお見舞いして意識を奪った。ス.パ.イ.ダ.ー.シ.ョ.ッ.ク.と自身とで一人ずつ静かに床に転がせばミッション完了といったところか。まるでドラマの仕事人のようなステルスに成功して嫌でも気分は高揚する。だが浮かれてはいられない、あとは相手に銃口を突きつける犯人を抑えなければ。人質達に人差し指をあてて声を出さないよう指示してから静かに息を潜め二人の元に近づいていき)

感謝するよ、次のロックもすぐに解除しよう。『分かっているよ。…刺激しないようにしながら時間を稼ぐ。』手馴れた手口のようだったけど何度もこういう事をしているのかい？
（自らの有益性を示してから交渉を持ち掛けるとよっぽど金庫の中身が欲しいのか女性は解放されて中央の他の客がいるところに連れていかれる。ぐったりはしているようだがひとまず直近の危機を避ける事はできた。相手から警戒するように伝えられるが犯人達にとって金庫を開けられる人材である以上状況とは裏腹にすぐに発砲される可能性は低いように思う。返答しながら一つ目のロックを開けると次のセキュリティは生体認証で表情は変えないものの密かに焦る。古典的なダイヤル錠やシリンダー式ならやりようがあるが短時間で生体認証を突破するのは不可能に近い。その事実が犯人に露見すれば自分の価値は一気になくなり人質諸共立場が危うくなるだろう。そんなことを考えていると相手の方で作戦が浮かぶ。かなり危険極まりないものだがそうでもしないと状況は打破できない。その案に乗っかることに決めれば自分がやることは難解なロックに挑むふりをしながら目の前の男の気を引き続けることだ。金庫に向かい合いながらも背後に意識が向かないように男に話しかける。男は不機嫌さを表に出してロックを解除するように急かすが作業の手はそのままに会話をしようとする。そうしている間にも相手の作戦は進み、慎重かつ大胆な動きで人質側の犯人を2人を沈めた。これで残る脅威は目の前の男だけだ。男は仲間の状態に気づいていないようで銃口を突き付けられてもなお平然と喋りかけてくる自分にいよいよ腹を立てて「あいつらがどうなってもいいのか」と人質担当の仲間に何やらジェスチャーで合図を送る。丁度相手が近くまで忍び寄っているのを確認すれば何も返答がないことを不審に思った男が振り返ろうとしたタイミングで拳銃を掴み引っ張れば自分の頭から人のいない方向に向けさせて）

今だッ！…残念だったな。これで一件落ちゃ……
(音を立てないように体を屈めながら静かに残る犯人の背後へと近づいていく。相手は男を引き付けるためか会話を続けるがいつ癇癪を起こすか分からない状況に焦りが募る。だがここで物音を立てれば終わりだ、静かな呼吸を繰り返して気を落ち着けながら犯人の間近に迫る。そのタイミングで男は仲間からの返事がないのを不審に思って振り返った。相手の思考がこちらへと流れてくる。意識を共有し相手が何をしようとしたか分かるからこそ完璧なタイミングで相手と動きを合わせられる。相手が拳銃を引っ張り銃口が安全な方向に向いてしまえばもう手加減する理由はない。慌てた男は無我夢中で引き金を引き、周囲に鈍い音が鳴り響くがその凶弾に倒れる者はいない。男の元に走って近寄った勢いのまま渾身の一発を男に打ち込んでやれば男は意識を手放して床へと倒れる。これで制圧完了だ。床に伸びた男にニヒルな笑いを浮かべつつ勝利宣言をする、はずだった。背後から、しかも頭の真後ろからカチャリと冷たい金属の音がする。それは先程聞いたばかりの音、拳銃のセーフティが外される音だ。振り返らないままゆっくり両手を挙げると『全員倒したとでも思ったのか？』とせせら笑う声が聞こえてくる。背後に居るのは黒ずくめの男ではない、普通の格好をした男だ。万が一の時のために一般客に紛れていた犯人グループの一人なのだろう。銃口をこちらの頭に突きつけたまま、男は相手に向かって「続けろ」と短く命令して)

…っ、随分と用意周到な計画のようだね。…開けたら解放してくれるんだろう？
（不意打ちで銃口の向きを反らしてやれば男は慌てて振り払おうとしそれが叶わないと分かれば引き金を引く。それに合わせて相手が近づき重たい一発を打ち込めば先ほどの男と同様床へと倒れる。息の合ったコンビネーションで状況を打破出来たと安堵の息をつこうとしたところで相手の後ろの方で冷たい金属の音がした。銃口をつきつけるのは先ほどまで対峙していた真っ黒な恰好の男ではなくごくごく一般的な服装の人物だ。恰好だけで犯行グループの人数を数えていたことに唇を?みしめるも再び窮地に陥った事実には変わりない。恐らくこの男がリーダー的立ち位置だろうか。悪態をついて見せるが男が引き金を引けばほぼ確実に相手の命が奪われる状況では下手な行動は取れない。確認するように発した問いに頷くのを見れば改めて金庫に向き直る。生体認証はその人でなくては開錠できないがこの型は登録した人が居なくなったときに備えて非常用の裏コードが存在する。地.球.の本.棚の知識を犯罪に利用するのは忍びないが命には代えられない。『好機が生まれるまで従うしかなさそうだ』と相手に無茶な行動をしないように方針を共有しながらも急かされるまま開錠に取り組む。緊迫の空気の中、数分間金庫のシステムを触っていればガチャンと音を立てて二つ目のロックが解除され）

くそ、……『こいつの意識が金に行った時がチャンスだ。二人で一気に抑えるぞ』
(何かアクションを起こそうにも後ろにいる男が近すぎるせいで下手には動けない。相手から無茶はしないよう言われてしまえば強行突破は諦めた方が良さそうだ。相手は男に促され再び金庫の解錠を始める。地.球.の.本.棚.で金庫破りをするのは気が引けるが、今は犯人の一番気を引けるものを用意するしかない。二つ目のロックが解錠されれば金属製の重い扉が僅かに動く、どうやら金庫が完全に開いたらしい。後ろにいる男が息を飲んで歓喜しているのが伝わってくる。まんまと大金を手に入れられたと喜んでいるのだろう。だがこのまま逃亡するのは絶対に許さない。男が『そこにあるカバンにありったけ金詰めて持ってこい』と相手に命令を飛ばす。相手がこちらに接近すれば二人で背後にいる男を捉えにかかることが出来る、つまり金を渡す瞬間こそが最大のチャンスになるはずだ。フリとはいえ男に金を渡すのは気が引けるがここは男の言うことに従うよう目配せで合図して)

『了解だ。カバンを渡すタイミングで行くよ。』 …これで良いかい？
(二つ目のロックを解除し扉を開いてみせれば男が息を飲んで歓喜するのが伝わってくる。銀行のメイン金庫なだけあって相当な量の紙幣がありこれが目的だったのだろう。男は相手に銃を突きつけたまま次の命令を出す。だがこれは2人揃って男に近付ける機会であり抑え込むチャンスでもある。相手の言葉に意識下で返事をすると言われた通りにカバンに紙幣を詰めていく。ペッタンコだったカバンが紙幣で膨らんでいき持てる限界まで入れて二人の方を向く。今度はこちらから相手に目配せをすればそのカバンを差し出す。男の視線が溢れんばかりの金に向かい、一歩踏み込んでそのカバンを受け取ろうと意識が向いた瞬間、全身で思いっきりタックルを食らわせる。自分の体重分の衝撃が相手に伝わるとその身体はぐらついて腕ごと銃口の先が相手からズレて)