相乗りで何処までも 【 〆 】

もちろん。きっとこの街の事も、この街の人の事も好きな奴が作ったもんだな。……なぁ、俺も同じ柄の茶碗と皿と箸買っていいか？
(相手はこちらが差し出した茶碗と、それにこのコーナーにあるデザインのものを気に入ったようで口元が緩むのを見ればこちらも釣られて笑みが浮かぶ。気持ちの良い風が吹くこの街、その風を受けて至る所で風車が回る光景を思わせる茶碗だ。相手はこのコーナーが気に入ったらしく次々に購入する食器が決まっていく、こちらと同じく風の街を描いた食器が気に入ったようだ。風.都.の風景を丁寧に取り出したようなこのデザインはこの街を知り、好いていなければ作れないものだ。自分もこの街の事が好きだが、きっとこの作者は同じくらいには風.都.を愛している同士のように思えてくる。そう考えているうちに、そしてこの食器を使って相手と囲む食卓を想像するうちに、こちらも並べられた食器に手を伸ばしていた。深緑に同じく風車が散りばめられた茶碗、夜に風.都.タ.ワ.ー.に纏う風が刻まれた菖蒲色の箸、そして相手と同じ平皿を手にすれば、相手とおそろいの食器を買っていいかと聞き)

僕たちと一緒だね。 もちろん、マグカップと合わせて最高の食卓が囲めそうだ、
(ただ自分がいる場所でしか無かったこの街が相手と共に過ごすようになって自分の中で彩られていく。あの人が残した想いを受け継いだ相棒にただ付き合うように守っていた街が何時しか自分が暮らしていく街になって大好きな守りたい街になった。この器を作った人もきっと同じ想いを抱いてこれを作りあげたのだろう。そう思うだけで自然と笑みが浮かぶ。相手から許可が出れば購入しようかとした所で相手が同じコーナーの食器を手に取る。同じ風都の、また違った時間の景色を映したお揃いの食器を相手が買おうとするのを見ればぱちりと目を瞬かせた後満面の笑みを浮かべて同じ答えを返す。この街が描かれたお揃いの食器の揃った食卓は素晴らしい物に違いない。善は急げとばかりに2人分の食器を持ってレジへと向かう。会計をしている最中、高齢の店員が何かを思い出したかのように店の奥に入っていれば箸の色と同じ箸置きを持ってくる。『この街が好きなお兄さん達にとっておきのプレゼント』と買ったものと一緒に箸置きを包んでくれると店員の気遣いや想いに心が暖かくなってお礼を伝えて有難く頂くことにした。割れないように梱包材に包まれた食器の入った袋を受け取ると手には今日買ったものでいっぱいで「随分と今日は大量だ。」とそれらを見ながら笑って呟き)

あぁ、毎日飯食うのが楽しみになりそうだ。___家に帰ってからやりたいことも多いし、なかなか忙しい日だな
(同じ食器を購入するのを窺えば、相手からは満面の笑みが返ってきて胸がいっぱいになる。この街に住みこの街を愛する二人が同じ思いの籠ったもので食卓を囲む、その未来と相手の笑顔で今間違いなく幸せだった。レジへと進むとおまけに箸置きまで貰ってしまって店員に礼を言いながら袋を受け取る。またひとつこの街の人から贈り物が増える、こんな事があるから風.都.が好きなのだと気持ちが暖かくなった。暖かな幸せが詰まった食器の袋、パジャマ、バス用品、珈琲豆にアイス、二人が持つ袋の数は随分な量になって二人ともが両手に袋を抱える状態だ。相手の呟きに同じく笑って頷いて見せる、買い物はこれで終わりだろうが帰宅してからも楽しみはたくさん待っていてスケジュールは濃く充実した一日となりそうだ。これ以上荷物は増やせないだろうと「そろそろ帰るか」と声をかけて家の方へと歩き始めて)

忙しいけどその分充実した日になりそうだ。普段は探偵業に多くを割いているのだからたまにはこんな日も良い。 ああ。 ＿ ただいま。
(所長の思いつきから始まった買い出しではあったがいつの間にか沢山の荷物を持つことになっている。だがどれもこれからの生活を彩ってくれる物や仕事の疲労を取ってくれるものだ。忙しいことには変わりは無いがその分二人だけの休暇を満喫している気がして柔らかな笑みを返す。そろそろアイスも溶け始めそうな頃で相手の言葉に頷くと隣に並んで帰る道を歩く。重たい荷物だが二人で話していればあっという間だ。やがて家にたどり着けばすっかりと慣れた言葉を言いながら中へと入る。すぐには使わないパジャマやバス用品などは端に置いてコーヒー豆やアイスをテーブルに置く。それからハットを置きに行った相棒の方を向けば「まずはコーヒータイムとするかい？」と誘ってみて)

ただいま。……あぁ、アイスもあるしフルボディのコーヒーとやらを飲んでみようぜ。コーヒーいれるのは任せてもいいか？俺はこっちの食器を洗っとく
(両手に荷物を抱えて帰路へとつく。相手の言うように日中は基本的に探偵業についている、きっかけはあれども今日一日は二人だけの時間だ。二人のために二人の時間を割く、その結果がこの充実の買い物内容なら悪くない。それにまだまだやる事という名の楽しみは残っているのだ。相手に続いて帰宅の挨拶をし、ハットをしまっていると早速声がかかる。帰宅後の休憩にと買っていたお供のアイスと違いを知る男になるための珈琲豆の出番だ。ハードボイルドな男への一歩だとニヒルに笑うが、コーヒーをいれるのは相手に任せることにする。コーヒーに関しては相手の方が経験値がある、いつもの味との違いを知るためには出来にムラがあるこちらよりも腕のある相手がいれた方がいいだろう。その代わりにと買ってきたものを片付ける役目を買ってでて)

任せてくれ、君のハードボイルドのお眼鏡にかなうとっておきの物をいれよう。
(家へと帰ってきてゆっくり休むのも良いが新しく買ったものを試したい好奇心の方が強い。そんな想いに急かされるように相手に声をかけるとニヒルな笑みと共に賛成の返事がされる。コーヒーをいれる役を任されるとこちらも得意げな笑みを浮かべる。せっかく初めて試すコーヒーなのだから最高の状態で飲んでほしいとやる気を見せると後のことは相手に任せてお湯を沸かし始める。 棚からお揃いのマグカップを取りだしてくると手馴れた様子で準備を始めた。コーヒー豆の袋の口を開けると良い香りが漂う。いつもよりも少し多めに豆をセットし、沸いて少し落ち着いたお湯をまずは湿らす程度に入れて蒸らしてから数度に分けて抽出していく。この時点で漂う香りからいつもより華やかで滴る液体も濃いような気がする。急激に冷めてしまないようマグカップにお湯を一旦注ぎ温めてから中身を捨て、コーヒーをそれぞれ注いでいけば完成だ。我ながらなかなか良い仕上がりになれば二つのマグカップをテーブルに持っていき「出来たよ、翔太郎」と声をかけて)

期待して待ってるぜ。____めちゃくちゃいい香りだな。
(新しい豆が家にやって来て相手は好奇心も気合も満タンのようで、コーヒーをいれる任務を任せれば得意げな笑みが浮かぶ。これは新しい珈琲豆の魅力を存分に引き出すコーヒーを入れてくれそうだ。相手が準備を始めた横で買ってきたものを整理しながらしまい、お揃いとなった食器一式を持って洗い場に向かう。相手の目の前にはお揃いのマグカップが置かれていて、今からあそこに相手と共に味わう初めてのコーヒーが注がれると思うと自然と笑みが浮かんでいた。この街が描かれた食器を洗っているとふわりと良い匂いが漂ってきて思わず目線を向けると、ちょうど相手が珈琲豆の袋を開けたところだった。封を切っただけでこんなにも芳醇な香りとは、否応なしにフルボディのコーヒーとやらに期待値があがっていく。コーヒーが抽出される段階になり更にその香りが部屋中に広がるとまだコーヒーを飲んでもいないのに気分は穏やかになっていった。テーブルを片付けコーヒーがいれ終わるタイミングを見計らってアイスを並べて待っていれば、やがて相手は両手にコーヒーを伴ってやってくる。「ありがとな」と礼を言いつつ席につく、コーヒーの香りが周囲に漂うがいつもとは違った香りに思わずもう一度呼吸してその違いを確かめる。珈琲豆の違いがいかなるものか、期待を目に滲ませながらマグカップを手に取ると一口中身を飲んだ。途端にいつもとは違い口の中には苦味よりも酸味が広がり、よりどっしりと重くコーヒーの味わいが口の中に広がる。明確に分かる違いに「おぉ」と感嘆の声をもらした後、「なんかめちゃくちゃ落ち着く味だな」と感想を零して)

ああ、香りだけでもいつもと違うのが分かる。…ん、酸味とコクのバランスが良いね、 少しフルーツっぽいかもしれない。アイスも食べてみよう。
(テーブルにマグカップを持っていけば相手がアイスを並べて待っていた。それぞれの前にコーヒーを置いて席に着くと相手の言葉に頷いてカップを軽く傾けながら香りを楽しむ。それだけでも普段のコーヒーとの違いが感じられて口元を緩ませた。相棒が一口飲むのを隣で眺めているとその違いに感嘆の声を漏らし好意的な感想を呟いた。それに更に興味をそそられると自分も一口飲んでみる。ほとんど同じ方法で入れたつもりだったが普段の物よりも酸味とコクが強く力強いコーヒーの味がして明確にその違いが分かる。飲み込んだ後も甘い優しい甘さの余韻が残って分析するような感想を口にする。知識ではその特徴を知っていたが実物を味わうとやはり違う。もう一口飲んでその違いを十分に味わうと今度は準備してくれたアイスに手をつける。ドライアイスのおかげかまだ殆ど溶けていなくてスプーンですくうと口へと運ぶ。ひんやりした冷たさと濃厚なミルクの風味が口に広がると「美味しい！」と顔を綻ばせながら感想を相手に伝えて)

確かに、フルーツって味わいだ。しっかりコーヒーのコク？ってのが濃いし……豆が違うとこんなに違うのか。お前が言ってたみたいにゆっくり味わうのに向いてるな
(普段飲むものとは別物の味を数度味わっていたが、相手の分析を聞けばなるほどと納得する。苦味がなく飲みやすいのに喉にグッとくるような飲みごたえ、しかし最後には微かな甘さがあってフルーツという表現はピッタリだ。確かにこの味わいは朝の爽やかで慌ただしい時間に飲むよりも、こうやって二人で過ごす穏やかでゆっくりとした時間に飲む方が合っている気がする。それだけ味わい深いコーヒーだ。場面によって珈琲豆を使い分けるという理想に一歩近づいた気がして、分かった気になりなるほどと何度も頷いていた。コーヒーを味わったあとはそのお供たるアイスを食べる番だ。アフォガートを想定してバニラアイスを選んだ相手が白い塊をひとすくいして口へと運ぶ。途端に顔は綻ぶ、あの店のアイスを気に入ってくれたらしい。こちらもラズベリーのアイスを口に運べば、口の中に残っていた濃厚なコーヒーの味は途端に爽やかな甘酸っぱさへと変わって口の中がリセットされた。そこでまたコーヒーを口にすれば再び落ち着く酸味とコクとが口に広がって双方の味わいがよく分かる、「この組み合わせなかなか良いな」と感想を口にしつつそれを共有しようとラズベリーのアイスを差し出すと「こっちも食べてみろよ」と勧めて)

同じグァテマラコーヒーでも作った地域によって柑橘系に似た酸味だったりカカオのような風味を持ったりするらしいからなかなかに奥が深い飲み物だ。 ああ、どうやら君のチョイスは当たりだったようだね。 …ん、ほんとだ。さっぱりしたラズベリーの甘酸っぱさが引き立てられていて意外にもコーヒーと合う。
(飲み物としては同じモノであるのに使っている豆によってここまで味が変わるとは興味深い対象だ。今回はがらりと産地や焙煎度を変えたからこそ味の変化は分かりやすいが得た知識には同じ産地のコーヒー豆でもその年の天候や地域などによって風味が変わるともあった。そう思えば今日買ったコーヒー豆も一期一会で感慨深く呟く。この豆を選ぶ決め手になったのは相棒の言葉の響きだったがこうしてゆっくりした時間を過ごすのにピッタリのコーヒー豆を選んだのだから意外と侮れないと笑みを零す。相手がラズベリーのアイスを口にする。コーヒーと合わせて好意的な反応を示すと自然な流れでカップを差し出された。店内で密かに考えていた目論見が当たり上機嫌に口角を上げながらもお言葉に甘えてスプーンを伸ばしてひとすくいしたアイスを口にする。ジェラートはラズベリー本来の甘酸っぱさを引き立てるような味に仕上がっていて歩き疲れた身体に染み渡る。相手の真似をしてコーヒーを口にすると決して味が喧嘩して打消し合う訳ではなくお互いを引き立て合うような組み合わせの発見に瞳を輝かせる。こちらもバニラアイスの味も共有しようとカップを差し出そうとするがどうせならアフォガート風も味わって欲しいと考えが浮かぶ。少々行儀は悪いもののスプーンにすくったバニラアイスをコーヒーに浸して味を纏わせてから「こっちの組み合わせもピッタリなはずだ」と口元に差し出して)

ってことは同じ名前でも味が違うってことか？ほんと奥深いな。……いい感じに引き立て合ってるだろ？ん、…こっちは混ざりあって違う味わいで美味いな
(また一口新たな味を堪能しながら相手の話に耳を傾ける。豆の名前によって味が異なるのは想像がついたが、地域によってもさらに味が異なると聞けば軽く目を開く。つまりその土地の環境によって味が変わるという事だ、となれば厳密に言えば珈琲豆の種類は無数にあるのだろう。関心しながらまたコーヒーを一口飲み、語感で選んだ珈琲豆を当たりだと言われれば「だろ？」とキメ顔を浮かべて軽く左手を振る。穏やかな気持ちになるこれはこんな他愛ない話をする時にぴったりのコーヒーだと改めて感じていた。そのお供たるアイスだが、相手はラズベリーのジェラートを食べると目を輝かせていて思わずその瞳を魅入るように見つめる。コーヒーで落ち着いた体にスっと馴染むような爽やかさを持つラズベリーを相手も気に入ってくれたようだ。相手のスプーンはまたバニラアイスへと戻ったが、アイスをすくったスプーンは口ではなくマグカップへと向かう。暫し様子を眺めていればそのスプーンはコーヒーの中へと入れられた。冷たいアイスにコーヒーが纏われ、表面が溶けてコーヒーとアイスが混じりあっている。あれがアフォガート風か、などと思っていればそのスプーンがこちらへやって来てまた目を開いた。新たな組み合わせを最初にこちらへ差し出してくれたのが嬉しくて、だからこそ照れくさくて、それらを滲ませ小さく笑った後に有難くそれを口に含む。口の中で温かいコーヒーと冷たいアイスが調和するよう混じり合いまろやかな口当たりとなって広がっていく、ラズベリーとはまた違った方向で良い組み合わせだ。口元を緩ませながら感想を口にすれば今度はこちらのスプーンでバニラアイスをすくい、コーヒーに軽く浸してから「ラズベリーはさっきの合わなさそうだからな」なんて言い訳しながら相手の口元へと運んで)

ああ、まさかこんなに相性が良いとは思わなかったよ。 本来のアフォガートは濃いめのエスプレッソを掛けてその名前の通りアイスを溺れさせたデザートだけど、濃厚なコーヒーだから雰囲気だけでも味わえるはずだ。 …ん、こっちも美味しい。
(相手にもコーヒーの奥深さが伝わったようで感心したような声があがる。これまで何気なく飲んでいたコーヒーだったが産地や風味の違いを知ることによってより味わい深く感じる。ハードボイルドにこだわる相棒と生活を続けていれば色んな種類のコーヒーを楽しむことが出来るはずでその中でお気に入りの物が見つけられると幸いだ。そんなコーヒーとのお供であるアイスをコーヒーにくぐらせてから口元に差し出すと嬉しさと照れが混じったような笑みが浮かんでアイスを口にする。その口元が更に緩んだのを見れば楽しげに目を細めて補足をするようにアフォガートの説明を挟む。いつもよりもコクが強く濃いコーヒーだからミルク分の多いバニラとは相性ピッタリだろう。二人で選んだコーヒー豆とこの街のアイス専門店があったからこその味を確かめているのを満足そうに眺めていると相手が同じようにバニラアイスをすくいコーヒーに浸した物を差し出される。その意図が分かれば思わず笑みが浮かんで口に含む。熱いコーヒーとアイスの冷たさのコントラストやコーヒーの苦味や酸味とアイスの甘みの組み合わせが絶妙で味を確認するように頷いては感想を口にする。この街で買い物を済ませお揃いのマグカップで一息つけるようなコーヒーとアイスを嗜み、大切な相手と感想を言い合いながらも同じ時間を過ごす。なんて事ない日常だが近頃危ない目にあったり相手を失う恐怖を感じることの多かった身にはより一層幸せに思えた。再びコーヒーを口にしながら「幸せで贅沢な時間だね。」と微笑んで)

まぁそれでいや一応溺れてるからいいんじゃねぇか？美味いし。……あぁ。お前と一緒に生きてるなって感じがする
(珈琲豆を買う時に聞いたアフォガートについてさらに説明が入る。アイスが溺れると聞いてようやくそのビジュアルと名前とが一致すると納得するよう頷いた。そのアフォガート風の一口を相手に差し出せばその顔に笑みが浮かんで口の中にアイスとコーヒーが消えていく。同じ味を共有して同じ感想が得られればこちらにも笑みが浮かんだ。スプーンを再びラズベリーのジェラートへと向けて、それとコーヒーをまた交互に口にする。一口ごとにそれらが体に染み渡るのを感じながら堪能していれば相手が幸せそうに呟き微笑んだのが見えて、こちらも至福のため息と共に同意を示した。愛すべき街で一緒に歩いて、買い物をして、ひとつのテーブルを囲んで同じものを食べる。1人で何気なくしていたことを何よりも大切な相手と一緒にしている。内容はありふれていても幸福で暖かな時間、間違いなく贅沢な時間だ。こんななんともない一日を共に、しかも幸せに過ごして間違いなく自分の中に相手が組み込まれているのだと実感すれば、その思いは言葉となって口から出ていた。直後に少々臭いことを言ってしまったと自覚すれば、今しがたの言葉を誤魔化すように「これ食ったら入浴剤使って風呂入ろうぜ」と次の予定を提案し)

…、これから先もずっとだよ。 ああ、時間的には少し早いけどそうしようか。 あ、せっかくなら一緒にお風呂入るかい？
(厳密な定義はどうであれ美味しければ良いというのも正解だろう。そんなアフォガート風のデザートを楽しみながら思ったことをそのまま口にすると相手からも幸せの滲んだ同意が返ってきた。罪を償う為に、そしてこの街を守るために尽力する二人の束の間の休息。ありのままの状態で過ごす時間を一緒に生きていると表現するものだから一瞬目を瞬かせた後、その意味を理解して破顔した。直後誤魔化そうとする様子を見つめつつも今だけの事ではなくこれからも続く事なのだと言葉を添えておいた。一気に買い物を済ませ返ってきたからかまだ外は明るい。だが相手が次の予定、即ち悩んで買った入浴剤を使う提案を提示すればすかさず食いついて賛成を示す。今日は休暇の日なのだからゆっくりお風呂に入っても良いだろう。溶けかけたバニラアイスを食べてしまいながらもふと良い案が浮かぶと思わず声をあげる。浴室に浸かってリラックスするのにも一人では暇だ。ならは相手と共に入れば同じ時間を共有出来ると得意げな笑みと共に誘いをかけて)

……あぁ、よろしくな。……そう、だな。せっかくならコーヒーみたいに二人での方がいいし、一緒に入るか
(コーヒーですっかりリラックス出来たおかげかするりと出てしまった本音で慌てて取り繕ってしまったが、それを聞いて相手の表情が笑みへと変われば胸はふわりと華やいでいく。これまでも幾度か、そしてあの結婚式でも誓ったように、共に生きるのはこれから先も続く事なのだと言葉が添えられれば、幸せを噛み締めるように呟き返事をしていた。ラズベリーのジェラートを食べつつ焦りそうになった体をクールダウンさせていたが、相手からの提案に軽く目を開く。二人で風呂に入るのは久しぶりで改めてあの狭い場所で二人くっつくのは少々恥ずかしい気もする。だが今コーヒーの感想を共有したように、二人の休日のために買ってきたものをゆっくりと堪能しながら感想を言い合って思い出を共有したい気持ちの方が断然上だ。迷ったのは一瞬だけで賛成の意を示すよう頷く。ラズベリーのジェラートを食べ終え、どうせ二人で入るならより楽しい方が良いだろうと「なら泡風呂にするか？」とまた提案して)

こういう時でないとゆっくり入ることも少ないからね。君と入るのも久しぶりだ。 良いね、沢山の泡に埋もれることにしよう。
(一緒に風呂に入ることを提案すれば相手の目が軽く開く。だが直ぐに賛成の意が表明されると思わず口角があがる。せっかくゆっくりお風呂に入る機会だ、そんな時間も今日は大切な相手と共有していたい。それに相手とお風呂に入るのも久しぶりでそれ自体も楽しみではある。すっかり上機嫌にコーヒーを飲み終えると今日買った入浴剤の中から泡風呂が提案されて賛成を示すように頷いた。確か今日買った泡風呂の入浴剤は自分で泡立てるタイプだったはずだ。せっかくなら泡を盛り沢山に作って楽しもうとやる気を見せると早速マグカップやアイスのカップを片付けて袋から泡風呂の入浴剤を持ってくる。裏の説明書を見て作り方を把握すると無邪気な笑みと共に「僕が泡を作り始めておくから入浴の準備は任せた」とだけ告げて風呂場に向かう。浴槽を洗ってから数センチお湯を貯め、入浴剤を溶かす。こちらも良い香りを感じながらも蛇口を全開にして水流強くお湯を注いでいくと徐々に泡立ち始めて感嘆の声を漏らしながらもその様子を観察していて)

なら、今日は泡に埋もれながらゆっくりバスタイムといこうじゃねぇか
(こちらもコーヒーを飲みおえれば早速泡風呂の準備に取り掛かる。少し早い時間から入る分こちらもゆっくりと時間を取って風呂を堪能することが出来そうだ。相手に泡風呂作りを任せるとその間に片付けた食器を洗ってコーヒー抽出セットとお揃いのマグカップを水切りに置いておく。入浴の準備といってもやることはこれくらいだろうか。ネクタイを外しベストを脱いでとした所で風呂の様子を見に行ってみれば、浴槽にはモコモコと泡がたち始めていてこちらも「おぉ」と感嘆の声を漏らした。専門店で買っただけに心安らぐフローラルの香りが華やかに浴室内に広がっていて、思わず深呼吸してその香りを吸い込んでいた。腕まくりをして試しに泡に触れてみれば柔らかな泡が指先について触り心地もいい。いい風呂の時間になりそうな予感に口元を緩めつつ「そろそろお前も入る準備してもいいんじゃねぇか？」と声をかけて、こちらも風呂のために服を脱いでいき)

パッケージ通りの泡風呂だ…！ ああ、すぐにでも入るよ。＿ 見た目通りもこもこしていて気持ち良いね。
(泡が出来ていくのを興味深そうに見ていると相手が様子を見に来る。ネクタイやベストが無くなっているのに気付けば今から一緒に風呂に入るのだと改めて認識するようであった。華やかなフローラルの香りを感じながらも途中から蛇口を止めてシャワーに切り替えて強い水流でお湯を貯めていけば今度は細かなもこもこの泡が立って水面を覆い尽くす。二人が入ることを考えいつもより少なめな湯量の所でシャワーを止めれば泡風呂の完成だ。パッケージ通りの仕上がりになったことに満足気な声をあげるも相手から声がかかれば返事をして一旦浴室を後にした。買ったばかりのパジャマ一式のタグを外してから脱衣所に置き、詰め替えのシャンプーも置いておく。クリップなどの装飾品をリビングで外してきて脱衣所で服を脱いでいけば準備完了だ。シャワーで軽く身体を流してからゆっくりと足先から浴槽へと入る。泡の中に入るというのもなかなか不思議な感覚で胸元まで浸かれば柔らかな泡が包み込み良い香りを近くで感じられる。軽く深呼吸しながらもその感想を述べると浴槽にもう一人分のスペースを空けてから「翔太郎も早くおいでよ」と無邪気に誘って)

こんなに泡だらけになるもんなんだな。____おぉ…なんかちょっと擽ったいな
(お湯の出処が蛇口からシャワーに切り替えられると浴槽の中の泡はより細かく多くなっていって、相手がシャワーを止めた頃にはイメージ図通りの泡風呂が出来上がっていて感心するように呟いていた。相手が風呂の準備をする横でこちらも洗濯するものを分けておいて浴室に入る。先に相手は泡の中へ入っていって、モコモコの白い泡の中に埋まる相手はなんとも可愛らしく思わず暫く眺めてしまった。やがてこちらを誘う言葉が掛けられると、シャワーで軽く体を洗ってから相手の正面になる位置へと風呂の中に入る。いつもと違い柔らかいものを纏いながら浴槽に入る感覚は未経験の感覚で思わず声が出る。浴槽に入ってからも沢山のフローラルな香りと泡に包まれ微かにパチパチと泡が弾ける音が聞こえれば、いつもと違う入り心地に思わず笑みがもれた。試しにと泡を手ですくってみると泡は潰れることなく手の中でフルフルと震えている。おもむろに泡が乗った手を相手の方に移動させると、こんもりとした泡を意味もなく相手の頭の上に乗せていつもと違うパーツがついた相手にクスリと笑い)

泡のトッピングかい？ 泡が長持ちするように少しぬるめの温度設定にしたから長く楽しめると思う。 …泡に埋まった探偵の完成だ。 今日に因んで言うなら翔太郎のアフォガートかな、
(一足先に泡風呂を楽しみつつも相手を誘えば浴槽に二人入ることになり水位はあがる。泡風呂の様子が珍しくも気に入ってくれたようでお互いの口元は笑みが浮かんでいた。専門店で買ったからか良い香りかつ泡持ちも良いようで相手の手の上で形を保ったまま揺られたかと思えば頭に乗せられる。流れ落ちてくる様子がない辺り髪に泡がしっかりと乗ったままなのだと思えばその様子を想像してこちらも笑みが浮かんだ。入浴剤の泡は温度が低過ぎても高すぎても消えてしまうようで今日のお風呂の温度は普段よりと少し低めだ。すぐにのぼせてしまっては勿体無いしゆっくり入って泡風呂を楽しむにはちょうど良い温度だろう。自らも泡を手ですくって落としたりとその感触を楽しんでいたが、良い事を思いついてすくいあげた泡を水面から出ている相手の肩に乗せていく。 やがて相手の首から下が全部白い泡に覆われるとその絵面にくすくすと笑う。その様子を先程食べたスイーツに例えてみるとより楽しそうに笑って)