相乗りで何処までも 【 〆 】

…ひ、あｯ！、ン……っ……お前にならなんだってやるし、お前からくれるもんならいくらでも欲しい、全部受け止めたい……だから、我慢すんなよフィリップ
(ブレーキを壊すように耳元で囁きダメ押しをするように耳朶に噛み付けば、強く抱き締めていた相手の身体は簡単に跳ねる。甘く高い声が鼓膜を揺さぶりブレーキが壊れたのを確信すれば腹の奥底から熱が込み上げ昂るのを感じた。溢れるように相手の望みが聞こえてくる。思惑通り深みへと誘い出せた事に口元に薄く笑みが浮かぶが、直後に首に鋭い痛みが走ると相手の腕の中で強く体が跳ねる。しかしそれは待ちわびた刺激でもあって、声から漏れ出るのは甘く蕩けた喘ぎ声だけ。甘い言葉と強い刺激で脳も体も溶かされてしまいもうまともに立ってさえいられなかった。相手の首に両腕を回せば軽く引いて相手を誘う。腕を回したままこちらはベッドに崩れるように座り、立ったまま腕の中に閉じ込めた相手を真っ直ぐと見上げた。そしてこちらも心の底からの望みを口にする。相手の全てが欲しくて、相手に全て与えたい。例えそれがどんなものだろうと。相手の全てを喰らいつくして、相手に全て喰らって欲しい。何度でも相手のものだと刻み込んで欲しい。この恋人がどんな状態であろうと必ず共にあると今日証明したばかりだ。これからやる事だってその延長線上にあるものだろう。最後に相手の背中を一度、しかし確実に突き落とすような言葉を送れば、今日一番水っぽく高い音が混じった口付けを送って)

…は、ぁ……、翔太郎…ン… っ、本当に君って人は…。 …好きだよ、何よりも愛してる。 …一緒になろう、翔太郎。
(首筋に噛み付いてから外から見える所に跡を付けてしまったと後悔が一瞬過ぎるも甘く蕩けた声が聞こえてくれば興奮の方が上回って熱い息を吐いた。誘われるままベッド縁に移動して相手を見下ろす。既に色欲に揺らぐ瞳を向けられより奥底へと誘い込むような相手の願いは甘美な毒に等しくそこに踏み込まない選択肢などとっくに消え失せていた。相手の名前を紡いだ唇に相手の唇が重なって一際大きな水音が弾けた。その音で微かに残った理性も砕けたのを感じれば呆れのような観念のような、それでいて喜びと欲望を隠しきれない声で呟きを零せば自らもベッドに上がり代わりに相手を押し倒して覆い被さるような形をとる。暴力的な感情をぶつけてもなお自らを求めてくれる相手が愛おしくて堪らない。もっともっと自分を求めて欲しい。甘やかしたい。誰にも見せないような表情や反応が見たい。世界で一番大切にしたい。めちゃくちゃに乱してしまいたい。相反する様々な感情が頭を支配していつもの自分の枠から外れていく。だがそれでも相手が良いというのならばこの感情を全てぶつけてしまいたい。自分無しでは生きていけないように絡めとってしまいたい。熱に蕩けてゆらゆらと揺らぐ瞳を向けながら余裕なく縋るように愛の言葉を紡ぐ。もう限界に近くて不格好な笑みを浮かべ最後の言葉を送れば再び唇を重ねて二人の世界に落ちていき)


(/いつもお世話になっております。そろそろ暗転かなと思いましたのでお声がけさせて頂きました。満を持してのFメモリのお話でしたが本当に本当に最高でした……。本編の内容を踏まえつつも今まで因縁のあった事件とも絡みハラハラしながらも相棒を信頼して乗り越えるとても良いやり取りをすることが出来てずっと興奮しっぱなしでした。二人の関係も更に深まりましたし危うさを含んだやり取りもとても楽しんでさせて頂きました。本当にありがとうございました！
この後の展開のご相談なのですが何かご希望とかございますか？ 翌朝近くに続けても良いですし、また違う話というのもアリだと思っております。良ければご意見お聞かせください。)

(見上げた先にいる相手が幸福に塗れ観念したような声を上げると小さく笑みを浮かべる。あらゆる感情が含まれたその声色からは相手がどうしようもなくこちらに夢中になっているのが伝わって、その心を掴んでいる事実に胸が幸福と独占欲とで溢れかえる。そんなこちらの心もどうしようもなく相手に溶かされぐちゃぐちゃになるほどには掴まれているのだが。相手の体がベッドへと上がってきてこちらへと覆い被さる。視界いっぱい全てが相手に満たされれば心底幸せそうな笑みを浮かべていた。熱で揺れる瞳に見つめられ最上級の愛の言葉を受ければ胸はギュッと止まったり、ドクドクと高鳴ったり、ゾクゾクと疼いたりと忙しない。首に回していた腕で相手の顔を引き寄せて熱と涙で塗れた瞳で相手を写しながら「愛してるぜ、フィリップ」とこちらからも愛の言葉を送って、そのまま深く深く二人の世界へと堕ちていった。)

___ん……、……
(いつもよりも甘く激しく背徳的に互いを求め合って力尽きるように眠りについて翌日、事件によるダメージと甘美な刺激で身体はそれなりに酷使されたはずだが、体内時計を正確に刻む身体はいつもの時間に目を覚ました。ゆっくりと目をあけ窓を見やれば朝日が差し込んでいる。カラカラと風車が回る音がどこからか聞こえてきて、いつもの朝の風景だ。そのいつもの朝を目の前で未だ眠る相手と迎えられた喜びを噛み締める。二人一緒に居られる幸福とより深くしかし薄暗くなった関係、そのどちらもが相手への愛おしさを大きくしていて、心のまま相手の体を抱きしめると後頭部に頬を擦り寄せて相手の存在を感じていて)

(/こちらこそお世話になっております！今の二人でのFメモリのお話、こちらもとてもとても楽しませていただきまして、毎回興奮しながらお返事書いておりました！
これまでのやり取りの中で積み重ねてきた因縁に決着を付ける場面で、今の二人だからこそFメモリを使う事を選択する、というのがもうめちゃくちゃ熱かったです……二人の関係も沼にハマってどうしようもなくなっていくような危うさがあって、だからこそ離れられなくなっているのが本当に良いですね……こちらこそ今回も楽しくやらせていただきまして、本当にありがとうございました！
ひとまずこの後の余韻を少し楽しみたいと思いましたのでふわっと続けさせていただきました。上の方は蹴っていただいて大丈夫です！
次の展開ですが今回でガッツリとシリアスしましたので息抜き的に日常な場面をするかギャグっぽい事件をするのはいかがでしょうか？日常な場面ならいつかご提示していただいたお互いの服を買いに行く話、ギャグっぽい事件ならどちらかがメモリの力で洗脳されて結婚式を挙げさせられそうになる話、とかを考えておりました。検索様のご意見もぜひお聞かせください！)

………ん、……居る…、
(タガを失った欲のままお互いを求め合って幸せを噛み締めながらも体力が尽き果てて気付けば眠りについていた。相手を失うかもしれない緊迫感と変身してからの過激な動き、そして全身で相手を感じる一夜は引きこもりがちな身体には相当キツイものがあったのかいつもの時間になっても健やかな寝息を立てながら眠ったままだ。それから少しして何か暖かいものが触れるような感覚にゆっくりと瞼を開けば長めの時間をかけて相手が側に居ることと抱きしめられていることを認識する。昨日の事は夢では無かった。それが分かれば僅かに口元を緩ませつつも安心したように再び目を閉じようとして)

(/結構好き勝手やっちゃってたかなと思いながらも探偵様が上手い具合に合わせてくださったのもあり、熱い展開にすることが出来ました！ 関係の深まりの進展やFメモリが使えるようになりましたのでまたそれらを活用したお話も出来たなと思っております。
こちらも余韻を楽しみたいなと思いましたので上記お返しさせて頂きました。良かったら緩くお付き合いしてもらえると嬉しいです。
日常回賛成です。こちらも検索対象に久々にガッツリどハマりしてその他を後回しにする検索の話など考えていたので丁度良かったです。探偵君の家に住むようになってしばらく経つので新しい服や装飾品を買いに行くのもやりたいのですが後者の内容が凄く気になります！ 今回の件でお互いの繋がりを認識したからこその結婚式に楽しそうな予感しかしませんが今考えてる内容や流れがありましたら教えてください。)

……あぁ、今日も一緒だ………ってコラッ！二度寝すんな！もう起きる時間だろ！
(何よりも大切なものを抱きしめてその存在と温かさを確かめていると腕の中が僅かに動く気配がして目を向ける。緩く微笑む相手から漏れるのはこちらの存在を確かめる言葉、大方こちらと同じ事を思ったのだろうかと想像すればふわりと胸は暖かくなって穏やかな声で返事をする。そうやって相手を見つめていたが、開かれるはずの目は段々と閉じられていって朝にも関わらず思わず突っ込んでしまった。昨日これまでで一番体力を使ったのは分かっているのだが、二度寝して遅刻すれば二人の頭にスリッパが飛んでくることだろう。暫し考えた後、先日やられた事と昨日やった事を思い出しほくそ笑む。静かに唇同士を寄せれば相手の下唇に軽く噛みつき少々刺激の強い目覚めのキスを送って)

(/いえいえこちらもかなり好き勝手やらせていただきましたがお互いの展開が上手いことハマっていいお話の流れになったと思います！Fメモリあるとまた違った展開ができますので今後のお話に取り入れていきましょう…！
久々に検索暴走特急になる検索くんに振り回される一日も楽しそうですね！お買い物もまた次の機会にやるとして、結婚式な話でいきましょう。ざっくりとした流れしか考えていないのですが、そのままの検索くんか探偵、あるいは女装した二人のどちらかに惚れてしまった犯人が強制的に結婚式を挙げられちゃうメモリを使ってどちらかを洗脳、洗脳された方が結婚することを宣言して事務所を出ていってそのままチャペルで結婚式をあげようとする所を潜入して阻止、みたいな感じです。特に結末のあたりがふわっとしているのですが、こんな感じでいかがでしょうか？)

…まだ眠い……、…っ、ン！？ …随分と手荒な目覚めのキスだね……
(相手から穏やかな声が聞こえて腕の中の心地良さを自覚すればまだ疲れの抜けきれない身体は再び睡眠を求めて瞼が閉じていく。鋭いツッコミが入ると一瞬目を開けるも駄々をこねるように言い訳をして二度寝をしようとする。相手が近づいてくる気配を感じながらも放っておくと僅かに唇が触れた。直後下唇に軽く噛みつかれると突然の刺激に目を見開いて困惑の声をあげる。目の前には相手の顔、少しして噛み付かれたのだと気付けば昨夜の行為とリンクしてじわりと熱が募る。おかげでバッチリと目が覚めてしまった。微かに痛みの残った唇を指先でなぞりつつ、開いた瞳を相手に向ければ抗議混じりの感想を口にして)

(/なるほど、ちょっと待った！が出来そうで楽しそうです。結末については自分でも違和感に気付いても片方が目覚めさせてもアリだと思いますので流れに任せちゃいましょう。 それではどっちにメモリの効果を浴びせましょうか？ 探偵君ならば精神耐性ないのでキメキメな格好で結婚式に参加して正当に検索がヤキモチ妬くでしょうし、検索ならばまた変なこと言い出したかと話半分に傍観していたら洗脳されていて別の人と結婚式をあげるつもりだったみたいなドタバタが出来そうです。)

バッチリ目が覚めただろ？事務所で寝てもいいから今は起きねぇと
(昨日の夜を思い出させるように軽く噛み付いてやれば、微睡んでいた相手の目はパチリと開かれる。効果覿面の目覚めのキスとなったようだ。抗議の声をあげる様に楽しげに笑いながら見つめるも、痛みが残るであろう唇に指先が添えられるのをみれば腹の底で燻った熱が擽られるようだった。それを誤魔化すようにしっかりと開かれた目の下を軽く親指の腹でなぞっていると、ピリと首筋が痛んで思わず動きを止める。昨日特段強く噛み付かれた所にはまだ明確に痛みが残っていて、きっと相手の歯列が刻まれていることだろう。ふわふわと上がって来そうになる熱に目を泳がせつつ「また首にガーゼ貼らなきゃな」と呟き)

(/まさに山場はそこですね！今回は探偵が捕まって検索くんが助けに来てくれた事ですし、洗脳されるのは検索くんでいかがでしょうか？本来耐性があるはずですがそこはご都合主義ということで……いつもの検索が暴走したのかと思ったけど放っておけずで後を追う感じになりそうです。前に検索くんに惚れちゃった依頼人を出したので、せっかくですので今回のメモリ使用者は彼がいいかなと。探偵に女装した検索くんをとられたと思った犯人が結婚式を強行してしまう、みたいな感じでどうでしょうか？)

おかげさまでね…。 ああ、今日は全体的に厚着した方が良いのかもしれない。
(自らを起こすという点では抜群の効果ではあったがほんのりと残った痛みが昨日の事を思い出させて微睡みとは違う熱が身体を満たす。大人しく目の下をなぞられるとふと相手の動きが止まる。目を泳がしながらも呟く相手の言葉につられて首筋に目をやればくっきりと歯型が残ってしまっていてこちらも視線が泳ぐ。体を横になれば予想通りの筋肉痛と昨日の情事によってついた傷が疼いて一瞬顔を顰める。文字通り二人で堕ちていった一夜は衝動のままお互いを求め、服の下はその証拠が沢山散らばっていてとてもじゃないが人に見せられる状況ではない。苦笑いと共に今日の服装について言及すれば痛みの残る身体で相手をぎゅっと抱きしめる。「おはよう、翔太郎」とまたいつもの朝を迎えられた幸せと体に残った痕跡を感じながらもこれから始まる一日に思いを馳せて)

(/承知いたしました！ 精神耐性に関しては本来はメロメロにさせて使用者のことしか考えなくさせるほど効果のものが一番大切な人は探偵君のままで男と結婚式をあげたがるようなちぐはぐの状態になれば良いかなと思っております。あの依頼の後写真の出処を問い詰めるために事務所に呼んだ時or他の依頼で二人で外に出ていた時に元の姿の検索と遭遇→女装の写真を執念深く見ていたため同一人物だと気づく→はぐれたタイミングを狙ってメモリ使用…みたいな流れでしょうか？
上記は区切りの良いところで切ってもらって構わないのでよろしくお願いします！)

___それで、結局これはどこで手に入れたんだ？
(体中に幸せな痛みを感じながら相手を抱き締め返し「おはようフィリップ」と幸福に満ちた朝の挨拶をして数日後、人探しの依頼の最中ウ.ォ.ッ.チ.ャ.マ.ン.を訪ねた時人探しを頼みたいとボヤいていたので話をきけば会いたい人物は『ロリータ界に彗星の如く現れた二人組』だと言われ一瞬固まってしまった。さらに話を聞けばどうやらネット掲示板でそのうちの一人と会ったと触れ回っている人物がいるらしく、掲示板ではかなりの盛り上がりを見せているらしい。それを聞いて額に青筋が走る。触れ回っている男はどう考えても前に事務所へ駆け込んできた男だ。あの時もう『彼女』を追うなとキツく言ったつもりだったがどうやら懲りていないらしい。あの姿の相手のことを触れ回られても困るうえ、あの時写真の出処をきっちりと聞く事ができなかった。ちょうどいい機会だろうと当の依頼人に連絡をつけると、『彼女』が会いたがっていると嘘の理由で事務所へと呼び出した。ルンルンで事務所にやってきた男をソファに座らせ、開口一番に「彼女を追うなって言ったろ」と自分の気持ちも乗ったせいか脅かすような口調で言ってしまい、男はすっかり怖がってしまっていた。だが先日相手は危機に晒されたばかり、可能性は全て摘んでおくべきだろうと男を睨みつけながら今日こそ写真の出処を探ろうとして)

(/矛盾した感情を持ってしまう検索くんとても良いですね……！探偵も困惑しつつドタバタしたやり取りになりそうでとても楽しみです。
そして導入考えていただきありがとうございます！男を事務所に呼び出す流れとしましたので、どこかで探偵に隙を作らせますね。それでは今回もよろしくお願いします！/こちら蹴りで大丈夫です！)

…翔太郎、少し落ち着きたまえ。そんな様子だと彼も話しづらいだろう。
(爽やかな朝を迎えて数日後、やっと本調子に戻りいつも通り人探しの依頼などをこなしていると不機嫌を滲ませて相手が帰ってきた。どうやら例の女装姿の写真は未だ界隈に話題になってるのに加えて接触してデートしたと話し出す者が現れたことでより一層盛り上がっているらしい。内容から見てもその人物は理想の彼女と話がしたいと依頼をしてきたあの男性だろう。彼を事務所に呼び出すと聞けばそこまでしなくてもと思ったが組織にある程度自分の情報が流れていると分かった今、確かに出処は知っておいた方が良いだろう。ガレージに篭ってろと言われたが直情的な所がある相手はこの前の様子を見る限り暴走する可能性も高い。相棒としてそれを止める権利があると主張すれば仕方なく奥のベッドに居ることを許可された。ぱらぱらと依頼の資料を捲りながらもやがて男性がやってきて2人のやり取りが始まる。案の定、相手は脅すようにも聞こえる声で依頼人に問いつめはじめる。それに対するネットで買ったと答える男の声は弱々しい。この街を守る探偵としては不適切な対応をみかねてこっそりとベッドから抜け出して簡易キッチンに向かう。依頼人は女装姿しか見てないのだから普段の姿で接しても同一人物とバレる可能性は低いはずだ。所長の代わりに作り置きしているアイスコーヒーを2人分グラスに入れ緊迫した空気の漂うテーブルに向かう。依頼人と相手の前にそれぞれグラスを置きながら威圧的な態度を窘めるような言葉を相手に向ける。「僕の相棒がすまないね」と男の方に謝罪を入れると一瞬驚いた顔をした後『いえ…』と目をそらされた。予想通り気づかれてはいないようだ。一旦ビートダウンするよう相手に目配せしてからデスクの方へと戻る。男は数秒その背中を目で追ってから相手に視線を向け『探偵さんこそ彼女とはどういう関係なんですか？』と真剣な眼差しで問いかけ)

、……はっ？！いや別に……ただの知り合いだ。…それよりもッ！ネットで買ったならそいつの連絡先分かるよな？それをこっちに教えてくれ
(ネット掲示板で前回の依頼のことを触れ回ったことに怒っていたが本人を目の前にするとより怒りの勢いは増していた。それをセーブする目的なのか相手がアイスコーヒーを持ってきて目配せをされる。怒りが収まったわけではないが、確かに怖がっている男にこれ以上追い打ちをかけても情報は出てこないだろう。一息ついて話を進めようとするが、その前に男からは予想外の質問が飛んできて思わず声をあげた。彼女、というより相手との関係で言えば恋人なのだろうが、あれは相手の仮の姿だ。そもそも『彼女』はこの世にいないことになっているのだから関係性を答えるのはおかしいだろう。過去の依頼人だなんだと言えばいいのにそこまでは頭が回らず、ただの知り合いと言うに留めておくことにする。それを聞いた男は『そうですか』と一言呟くが、そこに何処か喜びや安心の感情が混じっていた気がして怪訝そうな顔を浮かべていた。だが今はそんな話よりもあの写真の出処だ。目の前に置かれたアイスコーヒーを手に取りゴクリとひと飲みしていくらか冷静さを取り戻すと写真を売った人間の情報を得ようと話を進める。相手が写真を買った連絡先を書いてもらおうとするが、周囲を見回してもペンとメモ用紙が見つからない。そこで昨日アキコが情報の整理だなんだと言って地下ガレージへと持って行った事を思い出す。「ちょっと待っててくれ」と男へ呼びかけると足早にガレージへと降りていった。探偵がどこかへ行ったのを見た男はゆらりと立ち上がる。そして姿勢を僅かに低くし相手の顔を覗き込むようにしながらデスクへと近づいていく。じっとその顔を見つめれば『君だよね？』とまるで運命的な出会いに興奮するような口調で相手へと話しかけて)

…、なんの事だい？ っ、それは！ ＿＿
(写真の件やその体験を触れ回っているのは確かに迷惑であるが彼もこの街の住人の一人だ。それに写真の出処を追うには彼の証言は重要な手がかりとなる。その為にも落ち着くべきだと相棒としての助言を伝えれば後のことは任せてデスクの方へと戻る。この後は恐らくその情報を元に検索することになるだろう。その時に向け情報を整理しているといつの間にか男が傍に近付いていて驚いた。加えて観察するような視線を向けられ同一人物だと確信したように問われると思わず目を見開いてしまう。心臓が飛び跳ねるのを感じながらも何とか惚けて誤魔化そうとするが『誤魔化しても僕には分かるよ。 やっぱり君は運命の人だ』と高揚した表情と共に語っていてポケットから何かを探るような動きをしている。そうして取り出されたのはガ.イ.ア.メ.モリ、それも学校の件と同じ改造品で声を上げながらも思わず後ずさってしまう。逃げなくては。男はニヤリと笑ってスイッチを押せば『Seizure』とガ.イ.アウィ. ス.パ ーがその場に響く。その音を聞けば何故か動けなくなってしまい、男の手によって目元を覆われ視界が真っ暗になるとパチンと何かが弾けた音がして世界が反転した。_＿＿ 瞼を開けば彼が立っていて顔を覗き込んでいる。何だか頭がふわふわするような変な気分だ。男に二人の関係を聞かれ頭に浮かんだまま「運命の人だ」と言葉を返せば彼は心底嬉しそうな笑みを見せた。手を引かれアイスコーヒーの二つ並んだテーブルの方に移動すると『やっと手に入れた』と彼が呟く。彼が嬉しそうにしているのは自分も嬉しい気がする。その後自分の入れたアイスコーヒーの腕について褒められると嬉しそうに作り方のコツを語り、階段を登って来る音がしても親しげに会話を続けていて)

ったくアキコのやつ、使ったんならちゃんと戻せよ……、…ここに連絡先書いてくれ
(相手がコーヒーをいれるコツを語るのを男は機嫌良さそうに聞き入っている。向かい合って座る相手をうっとりと見つめながら『それなら毎朝僕にコーヒーを入れて欲しいな。僕のパートナーとして』と情熱的な言葉を向けた。相手を手に入れ未だ興奮状態が収まらない男はゆらゆらと手を震えさせながら相手の手を取ろうとする。だがその前に地下ガレージへと続く扉が開いて探偵が事務所スペースへと帰ってくるのをみれば慌てて手を引っ込めていた。扉を開けてまず目に入ったのはテーブルを挟んで向かい合う相手と男、コーヒーをお供に語り合う様はさながら恋人同士のデートのようで思わず眉をひそめた。仲良くお喋りするのは百歩譲ってもいいとして、なにやら二人だけの空間を作っているのは気に食わない。そこに割って入るようにしてテーブルにペンとメモ帳を音をたてて置くと男の方を軽く睨む。だが先程こちらの圧に怯えた男は先程とは違って鬱陶しそうにこちらを一瞥し、仕方なしにペンを走らせる。この短い間で態度が変わった様子にまた怪訝そうな顔をするがひとまずは情報が手に入ったのでこれで良しとする。ペンとメモ帳を回収し二人の元を離れてデスクの方へそれらを置きに行く。その間に男は相手の方へ顔を寄せると『潮風通りの会場で待ってるよ』と囁いて相手へと下手くそなウィンクを投げた。探偵が二人の元へ戻れば『もう帰ってもいいですよね？』とえらく高圧的に言われ、これ以上この男から得られる情報もないだろうと帰宅を許可する。男は再度相手の方をちらりと見たあと事務所を出ていった。二人きりの空間に戻ると相手の方へ近づき「次はあの連絡先を元に検索だな」と捜査の方針を告げて)

…ああ、必ず行くよ。 今日はわざわざ来てくれてありがとう、じゃあまた後で。 、勿論検索はするつもりだけど急ぎでも無いし後にさせてくれ。 そんな事より、潮風通りって何か有名な建物や場所でもあるのかい？
(真っ直ぐに向けられる言葉は何だか擽ったい。そうやって楽しく時間を過ごしていれば相手が戻ってきた物音にも一切気付かずに話を続けて居てペンとメモ帳が雑に置かれる音で「あ、翔太郎」とやっと意識がそちらに行く。男によって連絡先がメモ帳に書かれていきデスクに相棒がそれを置きに行くタイミングで集合場所を囁かれるとパチリと瞬きした後承諾の意志を伝えた。男が帰ることになれば立ち上がって出口まで見送りに行く。依頼人の相手は所長か相棒がすることが殆どで話を聞くのに同席した経験はあれどこうして雑談や送り迎えするのも初めてだ。来てくれた御礼とこっそり再開の言葉を添えれば軽く手を振って彼を送り出す。相手の元に戻ってくれば早速得た情報で検索の打診がされるが今はそれ所ではなくて少し気まずそうに消極的な返事をする。検索よりも優先すべきこと、男と交わした約束にあった潮風通りはこれまで通ったことも聞いた事も無い未知の場所だ。無事に辿り着く為にも男の言う会場が何なのか知っておきたい。この街についてはピカイチの知識を持つ相棒なら知っているだろうと興奮にも似たきらきらとした瞳を向けながら通りについて問いかけて)

、……は？何言ってんだ、お前の身を守るためにも早くあの写真の出処を……潮風通りっていや海沿いにあるとこで一番有名なのは風.都.一の結婚式場じゃねぇか？
(御役御免となった男をとっとと追い払おうとしたが、相手はわざわざ出口まで男を見送り手まで振っている。こちらが地下に行っている短い間にそんなに仲良くなったのだろうか。二人の間に流れる二人だけの空間をみれば、二人が特別な関係に見えてしまって胸が掻き乱される思いだった。だがあの男と相手が特別な関係になるなんてありえないと首をふる。きっと何か相手の興味を引く事を男が話していたのだろう。気持ちを切り替え写真の出処を探ろうとしたが、相手に後にしてくれと頼まれると思わずおかしな声をだす。嘘をついてまであの男を呼び寄せたのだ、相手に近寄る脅威を排除することが今は何よりも優先のはずなのに。食いさがろうとするこちらに相手はまったく別の話を持ちかけてきた。キラキラとした期待の目を向けられてしまえば、これはもうこちらの話を聞く気はないのだろうとため息がでる。あの男によっぽど興味惹かれることを教えられ検索意欲が爆発しているのだろうか。だがそれほど興味惹かれるものが潮風通りにあるのかと言われれば難しい。繁華街から外れ海沿いの通りであるそこは大きな工場が並びショッピングモール等があるのだが、何よりも有名なものと言えば結婚式場だろう。一番の売りであるチャペルは一面純白で、背後の大きなガラス窓からは風.都.タ.ワ.ーが綺麗に見えると話題でこの街の人がこぞって式を挙げたがる場所だという。今はひとまず相手の知識欲を満たして話を前に進めようとこちらの情報を伝えれば反応を窺って)

結婚式場！ なるほど、じゃあきっとそこに違いない。ありがとう、翔太郎。 少し準備してくるよ。
(相手が何やらブツブツ言ってはいたがこちらが気になることを問えばちゃんと返してくれるのが相棒の良い所だ。その中でも結婚式場の単語が出てくればぱっと表情を明るくしながら食いつく。彼の言う会場とはきっとそこだ。結婚式場は検索しなくても何となくはどんな所が知っている。そしてその意味を考えると頭の奥が甘く痺れるようでますます早く行かなくてはという強い衝動に駆られる。教えてくれた相手に笑みと感謝を伝えるとバタバタと忙しなくガレージへと降りていき準備を始める。どんなテイストをリクエストされても応えられるようにベースメイクだけ施し横髪を留めていたクリップは外して机の上に置いておく。その他も身なりを整えて満足気に事務所スペースに戻ってくると「あと必要な物は何だろうか…」と唇に手を当てながら考えを巡らせていて)

あ？いや何が……___おいフィリップ。お前さっきから何してんだ？どこ行く気だ？式場か？
(言われるがまま情報を渡したが特別明るい表情を浮かべると相手は何かを一人納得してガレージへと降りていってしまう。どういう意図で今の質問をしたのか聞く間もなく、伸ばした手は宙を漂って相手に届かず終いだ。ガレージに降りたということは検索でもする気だろうか。単に結婚式場を次の検索キーワードに定めただけなのかもしれないがそれにしては言動が合わない。モヤモヤとした気持ちを抱えたままアイスコーヒーのコップを片付け、男に聞き出した電話番号をどうしようかと考えていたところで相手が事務所スペースに戻ってきて思わず目を見開いた。相手の姿はいつかの女装姿になっている、検索しているとばかり思っていたが化粧をする時間だったようだ。だがそうなるとますます相手の行動の意味が分からない。女装をして結婚式場に飛び出していこうとする理由が分からなかった。見かねて相手へ近づくとなにやら考え事をしている相手の正面に回って両肩に手を置き相手の顔を覗き込む。パッと見はいつもと変わりはない、そうとなれば余計に相手の行動の意味が分からず矢継ぎ早に質問をぶつけて)

何をしてるって式場に行く準備だよ。今から結婚式をあげるのだから身支度を整えるのは当然だろう？ …熱は無さそうだけど。心配しなくてもちゃんと一人で辿り着けるから君はゆっくり休んでいると良い
(あとは何を準備すべきか悩んでいると相手がこちらにやってきて両肩に手を置き顔を覗き込まれる。連絡先の検索を後回しにした事に小言を言われるのかと思ったが予想に反して不思議な事を問われた。何をしてるかと問われても見ての通りだ。彼が誘ってくれた場所に釣り合う装いをしなければならないだろう。しっかりと相手と目を合わせながらごく当然の常識を語るような口調でこれからする事とその理由を告げる。少しばかり過保護な所のある相棒ではあるがわざわざそんな当たり前の事を聞くなんて連日の仕事で疲れているのかもしれない。体調を心配するように眉を下げて相手の額に手を当てるがいつもの体温だ。それでも安心は出来ずに頬に手を添えながら気遣いの言葉を掛ける。相手の手助けが無くとも一人で出来るから問題ないと話す表情は真剣そのものだがその瞳には一瞬、メモリの色でもある朱殷が揺らめいて)

………………ハァッ？！お前何言ってんだ！！ってかお前結婚の意味わかってんのかよ？！だいたい誰と、……あいつか！！！
(相手の言った言葉は耳から入ってくるのだかその意味をすぐには理解できず、しばらくの間体をフリーズさせ二度三度目を瞬かせる。長い時間をかけ漸く相手が何を口走ったか理解すれば口を開くなり大声が出てしまった。今から結婚式を挙げにいくという凡そ聞いた事のない外出理由に頭は完全にパニックだ。結婚だなんて単語唐突過ぎる、今までの人生で一度も身近に感じたことの無い言葉だ。それを今相手は口にして、しかも自分が主役だなんてとんでもない事を口走っている。何をどう検索してそんなものにたどり着いたのか分からないが、結婚なんてそう軽々しく口にするものではないはずだ。それさえ相手は分かっていないかもしれない。しかもどうやら相手はこちらを置いていこうとしていて、つまり結婚相手は自分ではない。その事実に否応なくショックを受けると余計に頭は混乱してしまった。だがいつもの如く額や頬に手を添えられれば一度言葉は途切れて、だからこそこうも愛おしく思う相手が自分以外と結婚するなんて口にするのに心にダメージを受けていた。だが次の瞬間に相手の瞳が奇妙な色に揺らめいたのを見逃さなかった。人のものではないあの色、異様な言動、この奇妙な状況を生み出しているのは恐らくメモリの影響だ。問題はその影響をいつ受けたか、とそこまで考えた所で全てが繋がる。相手の女装姿に執着し、変化した前後で相手と共にいた人物、該当するのはあの高橋という男しかいない。思わずまた叫ぶと再び相手の両肩に手を添え力を込め「絶対に行くなフィリップ！俺があいつと話つけてくるから！」と怒りと嫌でも滲む嫉妬を隠さずに叫んで)

何をそんなに驚いているんだい。結婚とは生涯共にあることを誓う儀式だろう、それくらいは知ってるさ。 …え…、ッ…でも彼と約束したし結婚するために行かなくては。…翔太郎、
(暫く相手が固まったと思えば大きな声で叫び出す。そして次々とパニックになったように捲し立てる姿は彼と結婚する物とされている頭では不可解な物に思えて思わず呆れた呟きを漏らす。加えて結婚の意味を理解していないといった解釈をされると子供扱いされているように思えて拗ねた顔をした後、胸を張ってその意味を説明して見せればどうだいと得意げな顔をしてみせた。メモリのせいで如何に自分が頓珍漢なことを言っているか自覚が出来ない。愛でるように頬に触れるとマシンガンのようだった相手の言葉は途切れてこれで安心しただろうと思ったのも束の間、肩を強く掴まれ反対されると今度はこちらが困惑した声をあげる番だった。何故相棒が結婚に反対するのか分からない。だが相棒である相手がここまで言うのなら何か理由があるのかもしれない、と考えた所でズキンと激しい頭痛が走って思わず顔を顰めて目を瞑る。すると頭の奥がまた甘く痺れて次に目を開けた時には何を考えていたか忘れてしまった。それよりも早く彼の待つ場所に行かなくてはという義務感にも近い衝動に駆られると相手の腕に手を添えてその事を告げる。相手を見つめお願いするように名前を呼べば不意にしゃがんでその拘束から逃れる。その足で事務所を飛び出すと丁度目の前の道路に迎車の表示のあるタクシーが止まる。何故かそれが自分を迎えに来た物だと分かれば１階まで降りてそのタクシーに乗り込む。既に向かう先も伝えられているのか高橋様かと尋ねられた後、車は式場のある海辺の方へ走り出して)