検索 2022-07-09 20:46:55 |
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な、……俺達の偽物って事か?クソッ、誰がそんなことを
(相手と無事事務所に帰りまた三人で鳴..海.探,偵.事.務.所.で過ごすこと一週間、事務所には残念ながらあまりいい風が流れてこない。一番の懸念はあの違法バーで対峙した男だ、街を散々泣かせ相手を追い詰めたあの男が再びこの街の闇に潜んでしまっている。男が何時またこの街を泣かせるか分からない上、男は相手を手に入れる事に執着していた事を考えると恨みを晴らしにこちらへ復讐を企てる可能性だってある。常に相手と共に行動するようにはしているが平穏な日々に反して気は全く抜けない毎日だった。そんな中でも若.菜.姫のラジオは癒しの時間だ、デスクに座り離れた所から流れてくるラジオの声を聞いて少しの間休憩を取ろうとしていた。だがその時間は一瞬で崩れ去る。緊急ニュースという言葉に反応してラジオに目を向けたが流れてきたのは信じられない内容だった。直後相手と目が合う、困惑した相手に対してこちらは怒りを顔に滲ませながら椅子から立ち上がり相手とラジオの方へと近づいた。自分達二人を示す名が犯罪者として風の街に流れている。そして誰かが二人の名を語って街を泣かせている。怒りの感情を顕にするよう拳を強く握ると「早く止めねぇと」と呟きラジオを睨みつけていて)
(/了解しました。因縁もあって検索くんの弱点が探偵と知っている気の抜けない相手ですし、今回の敵役にぴったりだと思います。まさに今の二人にとって総まとめなお話になりそうで今からワクワクですね!ではいつも通り背後での打ち合わせが必要になった時にはまたお声がけさせていただきます!/こちら蹴りで大丈夫です!)
目立ちたがり屋の愉快犯か僕達の評判を落としたい何者か……、どちらにしろ放っておけば厄介な事になるのは間違いない。場所は…荻風通りだ、早く行こう。
(目のあった相手は二人を示すもうひとつの名前が勝手に使われ街に危害を加えていることに酷く怒っているようだった。緊急ニュースは現場にいるレポーターの取材へと音声が切り替わり、何かが壊される音や悲鳴をあげながら逃げているであろう街の人の声や音が聞こえてくる。その中で恐らくド.ー.パ.ン.トなのだろう、割れたような不気味な声で『仮面ライダー様のお通りだ』『止められる物なら止めてみろ』と愉しそうに煽っている音声も聞き取れる。やたらとその名前を出す辺り、街の中で街のヒーローとして噂となりつつあることに便乗した愉快犯やその状況を面白くないと思っている誰かの嫌がらせという線も追える。一つ確かなことはこのまま放置していれば今まで築き上げてきた二人の名前がこの人物に乗っ取られ汚されてしまうことだ。眉根を寄せて不愉快なのを顕にしながらもニュースに耳を傾ける。キャスターが場所を問いレポーターが答えた現場名は比較的古くからの店が立ち並ぶ風.都.の中でも風情漂う通りだ。やることは一つだ、真剣な顔で声を掛けると急ぎ足で現場に向かおうとして)
好き勝手言いやがって。絶対に許さねぇ…!これ以上あんな奴に街を泣かせてたまるか、……行くぞフィリップ!
(ラジオから流れてくるなは悲痛な叫び声とその中で響く不快な声だった。音声だけでも現場が緊迫しているのが分かる、本来自分達を示すはずの仮.面.ラ.イ.ダ.ーを名乗る何者かが自分が愛する街を今まさに泣かせている。いてもたってもいられなくなり直ぐさまハットを手に取ってしっかりと被り相手の方へと向き直る。荻風通りならバイクを使った方がいい、相手の呼びかけに応じて頷くが一瞬動きを止める。今から向かう所にド.ー.パ.ン.トがいるならば相手を同行させるべきではない。だが相手も自分達ではない誰かがその名を騙るのが許せないらしい、それに今の状況を考えれば常に二人でいる方が安全だろう。二人で現場に行くことを決めると気合いを入れるように呼びかけ事務所を飛び出しハードボイルダーへと跨ると、相手を後ろに乗せて荻風通りへとバイクを飛ばした。通りへ近づけば爆発音や破壊音、それにパトカーのサイレンも混じって現場は騒然としていた。逃げ惑う人々とは逆の方向にバイクを走らせれば「あそこだ!」と警察車両を襲おうとしているド.ー.パ.ン.トを見つけて)
ああ! __ 酷い有様だ…。翔太郎、二人の手でアイツを止めて仮.面. ラ.イ.ダ.ーの名を返してもらおう。
(二人の意見が一致すれば即行動だ。理屈でも心の部分でも街を泣かせる怪物をそのままにする訳にはいかない。単に倒すだけなら現場に必要なのは相棒の身体だけで自分はこのまま事務所に残っても構わない。だが二人の事を示す名前を悪用されていると知りながら大人しくこの場に残ることなんて出来なかった。その気持ちを汲んでくれたのか声が掛かると力強く頷き、相手の後ろに跨る。焦る気持ちの中目的地に近づいてくれば逃げ惑う人々や心配そうに現場を見つめる人達が見えてきた。さらに近づけばラジオで聞いた通りの爆発音や破壊音が聞こえてきて張り詰めたような空気を肌身に感じる。思わずぽつりと呟いて相手に掴まる手に力が籠る。相手の声で前を覗けば今まさに警察車両を襲うとするド.ー.パ.ン.トの姿。すぐに現場の端にバイクを停めて降りると一瞬ド.ー.パ.ン.トがこちらを向いて目が合ったような気がした。すぐに警察車両の方に襲う様子を見れば気の所為だと流してメインメモリを構える。いつもよりも強くアイツを倒すように気合いを入れるとドライバーに装填して意識ごと相手に転位させる。二本のメモリが装填されドライバーを開けば元の身体は無防備に床に倒れていく代わりに本物の二人で一人の姿となり)
あぁ。仮.面. ラ.イ.ダ.ーって名前はこの街の人が俺たちにつけてくれた名前だ。その名前をこれ以上汚させはしねぇ!変身ッ!
(ド.ー.パ.ン.トを遠目に見据えてバイクを降りれば周囲にはあらゆるものが焦げた匂いが充満し何かが崩れた瓦礫が散乱している。幸い人はほとんどいないが、警察車両の中には取り残された人が見えて化け物を見つめパニックになっていた。相手の語気からは気合いが伝わる。こちらもそれに呼応するように気合いの乗った返事と共にメインメモリを起動させた。風と共に装甲を纏うと一直線に偽者へと向かっていく。ひとまずは警察車両から遠ざけるよう牽制するように攻撃を放ってやれば『おっと本物のおでましか』と嘲笑と共に敵は後退していく。瞬きの間に相手の腕は銃型へと変わって弾丸が飛んで来れば今度はこちらが後退させられる番だった。未だ怒りは収まらず、その勢いのまま切り札のメモリをメタルへと切り替え一気に間合いを詰めた。しかし今度は反対の腕が素早く剣へと代わりシャフトは高い音と共に止められてしまう。しばらく鍔迫り合いが続いたが決定打がないまま再び距離を取る。だがここでひいても意味が無い、再び偽者へと攻撃へかかるが、それを嘲笑いながら偽者はひらりひらりとただ攻撃を躱すだけで)
…何故まともに攻撃してこない? それとも他の目的が……、翔太郎普段とは違う敵だ、注意を払ってくれ。
(ひとつになった身体は相手と意識を共有して目の前の偽物への怒りが左側から伝わってくる。警察車両から遠ざけ視界端で残っていた警察官が逃げるのを確認すれば怪物と対峙する。だが自分達がここに駆けつけるのも想定内だったようで嘲笑と共に攻撃がかわされる。片方のメモリを切り替えシャフトで再び攻撃を試みるが素早く変化した剣で受け止められてしまう。どうにか隙を作ろうとシャフトを振るうが全部受け止められ、一打すら当たらない。更に攻撃力を増す為こちらのメモリをヒートに変え、熱く重い一撃を振るうがそれすら後退して簡単に避けられてしまう。互角の戦いと言いたいところだが先程から煽ったり距離を作るための攻撃はあれどこちらを倒そうという意志の見える攻撃がされない事に気付く。てっきり本物を倒して成り代わるのが目的かと思ったが、ひたすら攻撃を避けたり受け止めるだけで遊んでいるようにも見える。素直な疑問を口にしながらその目的について考える。嫌な予感がする。普段とは勝手の違うように見える敵に相棒に注意を呼びかけながらも向けられた弾丸をシャフトで払う。後退する敵に食らいつくように距離を詰めながらなかなか決定打のない鍔迫り合いを続けていた。すると突然目の前の怪物は不気味に笑い始め「なぁ、俺ばっかに構ってくれてるみたいだけど、お前の身体どうなってるんだろうな?」と言い出し思わず仮面の下で目を見開いて)
なにッ?!まさかこいつの狙いは……!
(攻撃を何度繰り出しても手応えがない状態が続く。こちらが果敢に攻めても敵はヘラヘラ笑いながらそれをいなすだけだ。仮.面. ラ.イ.ダ.ーの名前を偽る敵に怒りの感情のまま動いていたが相手から注意を促されれば多少は頭も冷静になった。その直後に化け物は不気味な笑いと共に相手の体に言及してきた。相手と同じくこちらも目を見開き一気に冷や汗が吹き出る。この怪物は変身中相手の体に意識がなく無防備になることを知っている。そしてこの口ぶりでは怪物の狙いは明白だ。鍔迫り合いしていた所から飛び退いて思わず後ろを振り返る。すると遠目には数人の大柄な男が迫ってきていて、キョロキョロと辺りを見回しながらこちらへ近づいてきていた。その中には一週間前に相手の胸ぐらを掴んだあの男もいる。敵は一人ではなかった、そしてこいつらの狙いは相手そのものだ。今度は一気に肝が冷えていく感覚を覚えていれば「ほら余所見すんなよ」と視界から外していた怪物が剣にした腕を振り下ろしてきてまともにそれを食らってしまう。鈍い痛みを感じていれば今度は向こうが攻撃に転じる番だった。相手の体の方に駆け寄ろうにも次々降ってくる攻撃に応戦するしかなくその場から動けない。このままでは相手の体は持っていかれてしまう、そうなれば結末は明白だ。相手の体が見つかるのも時間の問題でしかしここから動けない、となれば取るべき選択はひとつしかない。怪物の攻撃に応戦しながら思考の中で相手に断りなくメモリを外し変身を解除する機会を伺い始めて)
ッ、早く倒してしまいたいがこの調子では…。 …翔太郎? 変身を解くのは絶対に駄目だ、生身になるのは危険過ぎる
(意識のない身体は基本的には何をされても外部からの刺激を感じることが出来ずに無防備だ。後ろを確認すれば数人の大柄な男が何かを探すような素振りで見回っている。敵の言葉からも何が目的なのかは明白だった。そちらに気を取られていると剣に変化した腕が振り下ろされまともに攻撃を食らってしまう。それからは立場が逆転して怪物からの攻撃を捌くことに精一杯でその場からは動けなくなってしまった。メモリチェンジしようにもそれを妨害するように銃型に変化した腕で手元を狙うように弾丸が飛んで来て上手くいかない。早く目の前の敵を倒さなければと焦る気持ちは募るばかりなのに上手くいかない。攻撃をかわしながら必死に策を巡らせていると左から不穏な考えが流れてくる。その内容に思わず声を低くなりながら声を掛ける。確かに二人で一人で無くなれば意識は戻り逃げようがあるが、それは生身の相手をド.ー.パ.ン.トの前に残すことと同義だ。今の状態でも押されつつあるのにそんな危険なこと認める訳にはいかない。思わず語気が強くなってしまいながらもその考えを否定していると「早く決めないと後悔することになるぜ、探偵さん」と嘲笑うような声が聞こえてくる。男達が自分の身体があった場所に徐々に近づいてくるのを視界端に捉えつつも振り下ろされた剣をシャフトで受け止めて)
…………『フィリップ、バイク停めた場所は覚えてんな。こいつは何とかするから全力で逃げろ!』
(大柄の男達は少しづつ前進して相手の体へと近づいてくる。一方で怪物との戦況は拮抗していてメモリチェンジも儘ならない。意識を共有している状態ではこちらの考えることも相手には筒抜けで、こちらの策を止めるような言葉が飛んでくる。だがこのままでは確実に相手が攫われてしまうだろう。そうなったら最後、相手は再びあの組織に囚われ無理やりにでもメモリを作らされ続けることになる。そこまで考えが至ったところで覚悟は決まった。生身でド.ー.パ.ン.ト.の前に立つ危険性より相手を救う事を決める。怪物の目論見通りになるのは癪だがもう迷っている時間もない。変身を解除したあとどう切り抜けるかなんて策もないが、そんなものは動いてから考えればいい話だ。声を出す事はせず意識下で相手へと語りかける。そして相手の返事をきかずシャフトを大きく振って僅かに怪物と距離を取れば有無を言わさず変身を解除した。風と共に装甲が解けていく。同時に相手の意識は体の外へと流れ出していき)
翔太郎、待ってく____ っ、フ.ァング!? は…、翔太郎!
(絶対ダメだと言っているのにまたも言うことを聞かずに意識下で語りかけてくる。パニック状態では意識下で返したのか声に出してるのかと分からずに静止を呼びかけるがその前にシャフトで怪物との距離を取るとドライバーを閉じてしまう。強制的に二人で一人だった意識が解けて目が開いた時には元の体に戻っていた。勢い良く上体を起こした背中に冷や汗が伝う。だが急に動いた存在が目に付いたのか男達が自分に気付きニヤニヤと笑いながら近づいてくる。ここで捕まれば相手の行動の意味はまるっきり無くなってしまう。何とか立ち上がり逃げ出す自分を男達が追いかけてきて捕らえようと腕を伸びてくると校舎裏の時と同じ特徴的な鳴き声がした後、男の手が恐竜の影が弾く。またもや現れたファン.グに驚きの声をあげるが今はこの状況が何とか出来るのならどんな手でも借りたい。突然のことに動揺する男達の間を抜け相棒に教えられたままバイクを停めた所まで全力で走る。バイクに跨りエンジンをかけて逃げ足を用意出来れば怪物と対峙しているであろう相手の元にバイクで駆けつけようとして)
っ、やっぱお前か…!____がッ…ふぃ、り………
(変身を解除して生身で怪物の前に立てば、そいつは自分の思い通りに事が運んで不愉快に高笑いを響かせる。相手が十分に逃げる時間を稼ぐためにこの体でも目の前の怪物をなるべく引き付けなければならない。ゆらりと人間ではない瞳がこちらに向いて、剣の腕が振り下ろされるがこちらをいたぶる為か避けられるような速度のものだ。『お前らにはきっちり借りを返さなきゃいけねぇからなぁ』とねっとりとした殺意の籠った言葉が向けられる。借りがありあの大柄の男達を率いているとなれは怪物の正体は察しがついて、脳裏にあのニヤついた男の笑みが浮かべば眉間に深く皺を刻んで嫌悪感を顕にする。弄ばれるように攻撃を避けていたが背後でバイクを起動させる音が聞こえてニヤリと笑った。どうやら相手は無事にバイクの元へたどり着けたようだ。だがエンジンの音はこの場を去るのではなくこちらへと近づいてくる。逃げろと言ったのにこちらを助ける気のようだ。だが足を確保したのであれば二人で逃げ切れるかもしれないと希望が浮かぶ、相手とどう息を合わせるか考え始めるが怪物の方が一歩早かった。『これじゃつまんねぇだろ。もっと楽しいことしようぜ?』と言う言葉の後に怪物はこちらの腹に重い一撃を叩き込んできた。人間の力とは圧倒的に違う一撃に肺から空気が押し出される音を口から発し一気に意識は遠のいていく。意識が薄れ体勢を崩す最中で、怪物の向こうに人影が見える。しかしそれが誰か認識することはなく、相手の名前を呼びながら意識を手放した。怪物の後ろから姿を表したのは一人の女性、凛とした立ち姿の女性はこちらにバイクで向かってくる相手に向かい『探したわよ来人』と平然と呼びかけて)
ッ、翔太郎!! ッ…。 誰だ、あなたは…、どうしてその名前を。
(バイクを確保して相手の元に向かうが数歩遅かった。目の前で硬いであろう怪物の腕が相棒の腹部を捉えて一瞬その身体が宙に浮いたように見えた。明らかに人間の力ではない攻撃。それを腹部にまともに食らえばどうなるかは明白だ。だらりと力が抜けたように体勢が崩れていき床に倒れ込む姿に血の気が引いて悲鳴にも近い声で名前を呼ぶ。ドライバーで繋がっていた意識もぷつりと途切れ、それがますます真っ黒な不安と恐怖を掻き立てる。近付いてバイクを一旦停めるが全てを投げ出して相手のモノに駆け寄りたい気持ちしかないがそれで怪物の前に出てはそれこそ相手の想いを無駄にしてしまう。グリップを強く握ってその衝動を堪えていると怪物の後ろから一人の女性が出てくる。怪物の様子から今回の件の協力者或いは首謀者かと検討をつけるが何処か親しげに名前を呼ばれて目を見開く。学校に潜入するために使った名前を何故。あと数歩ということころまで女性が近づいてくれば『だってあなたの名前じゃない。来人、一緒に帰りましょう』と告げてくる。知らない人だ、知らない名前のはずなのにどこかで見た聞いたような気もして頭の中が掻き乱される。凛と芯のある声はこのまま聞いていれば大人しく言うことを聞いてしまいそうでもあった。思わず固まってその女性を見つめていたが視界端に床に倒れたままの相棒の姿が映る。こんな目に合うまで時間を稼いでくれたのだ、この女性が誰だろうと捕まる訳にはいかない。止まっていた頭が客観的なその考えを元にゆっくりと動き出す。相手も連れて帰りたいがこの状況を単独で切り抜けることも意識のない人間を後ろに載せて帰るのも不可能だ。相棒と自分の関係の深さは恐らく知られている、ならばどんな手を使ってでも自分を手に入れたい彼らにとっては相棒は格好の餌だ。逆に言えば自分を手に入れるまでは安易に人質である相手に手をかけてしまうことはないだろう。考えに気持ちは着いてこないが今は逃げるしかない。助けに行くのは準備を整えてからだ。悔しさに唇を噛み締めながらもアクセルを回しバイクを発進させ、転回して彼女達とは反対側へと走り出す。目の前に飛び出て力づくへバイクを止めようとする生身の男たちの横をフェイントをかませて走り抜ければひとまず事務所で状況を整理しようとバイクを飛ばして)
_____っ、…………
(バイクを転回させ逃げていく相手に、怪物の隣に立つ女性は追いかけることは無くうんざりと言った様子でため息をつく。そして先程相手に向けて発した親しみを込めた口調よりもっと冷たい空気で『そいつを餌にとっとと来人を連れてきなさい』と言い放ってその場を後にした。軽い調子で返事をする怪物は探偵の体を担ぎ上げてその場を後にした。
ゆっくりと意識が浮上する。だがそれと同時に腹に残っていた鈍い痛みが浮かび上がってきて、軽く呻き声をあげながら目を開けた。どうやら両手両足を縛られて椅子に座らされているらしい。段々と視界がハッキリしてくるが、場は薄暗く酒とタバコと、あと嫌に甘ったるい匂いがした。半個室状に並んだ椅子とテーブルを見ればここが何処かようやく理解する。かつて訪れた違法バーだ。警察に検挙され店としての機能は失っているらしいが、代わりにあの時相手を攫おうとした連中のアジトになっているらしい。目を覚ましたのに気がついたのか人影がこちらへ近づいてくる。嫌でも忘れられない顔、相手に酒と薬を飲ませようとし脱獄を果たしたという男だ。相変わらず鼻につくヘラヘラとした笑みを浮かべてこちらに近づけば『ようやくお目覚めか』と楽しげな声と共に頬を軽く叩かれ鬱陶しそうにそれを振り払った。男は相変わらず上機嫌で『あのお兄さん、一人で寂しがってそうだから連絡してやろうよ』とこちらのス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.を取り出す。ハッとして腰を見るが当然ベルトはない。後ろ手に回された腕にもス.パ.イ.ダ.ー.シ.ョ.ッ.ク.はなく、どうやらベルトとガジェットは全て取られてしまったようだ。「野郎…」と悔しげに呟くがそれさえも男にとっては愉悦の材料にしかならない。男は相変わらずヘラヘラと笑いながらス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ン.を操作すると相手へと電話をかけ始めて)
___ …っ…誰だい、
(相手がいつも頼りにしてくれている理屈で考える頭と相手が託してくれた想いだけでバイクを走らせ事務所に辿り着く。中に入れば所長が居て隣に並んでいるはずのもう1人について問われる。事情を説明すれば所長の顔が青ざめていくのが分かる、彼女にもこんな顔させたかった訳では無いのに。 相棒がどんな目にあってるか想像すればずっと胸の内は落ち着かないがガレージに降りて情報を整理する。偽物の仮.面.ラ.イ. ダ.ーの件から始まり一連の事は自分を組織に連れ戻すための物だろう。そしてそれを実行しているのはこれまで関わってきた違法薬物の事件の奴らだ。となればあのド.ー.パ.ン.トの正体もおおよそ想像がつく。どんな手でも使う卑劣な男、きっと今から相棒を人質に奴らの有利な場所に誘い込まれることだろう。無策で行けば勝てる見込みはゼロに等しい。それにあの冷たい瞳の女性、自分が不思議と口にしていた名前と同じ名前を呼ぶ彼女は何者なのか。考える事ばかりで上手くまとまらない。半身しか無い身体はやけに頼りなかった。そんな状態で突如ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンが鳴る。そこに移る相棒の名前に一瞬身体が固まる。その緊張を悟らせないように長く息を吐いてから電話に出ると苦い思い出に結びついた軽い調子の声が聞こえてくる。『さっきぶりだね、来人クン』と調子の良い声に苛立ちに眉を寄せつつ用件を伺えば予想通り呼び出しの旨が伝えられる。俺達が出会った思い出の場所と称するのは恐らく違法バーのことだろう。短く承諾の返事をすると『あ、君の大事な人に代わろうか。今から来てくれるってさ、応援の言葉でも聞かせてやれよ』と相棒に話しかける楽しそうな声が聞こえてきて、ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを動かすような音がした後に「……翔太郎?」と問いかけてみて)
な、……馬鹿野郎ッ!お前何考えてんだ!こっちはどうにかするから絶対に来るんじゃねぇ!!……もしここに来たらお前との間にある関係は全部終わりだ。だから絶対に、__ガはッ!!
(ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンのコール音が数回鳴って途切れる、電話をかけた先は明白だった。男を睨みつけるようにして内容を聞いていれば案の定こちらを餌に相手を誘き出している。驚いたのは相手があっさりとそれを承諾したことだ。思わず目を見開き声が漏れる。こんな明らかな罠に乗るなんてありえない。自分がターゲットだと相手も分かっているはずなのに、ここに来れば組織に連れ去られ何をされるか分からない。素直に応じる相手に上機嫌な男はス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンをこちらに近づけ耳へと押し当ててくる。そこから聞こえて来たのは探るようにこちらの名前を呼ぶ相手の声、無事に逃げおおせたのだと確信するが、そうとなればますますわざわざこの危険な場所に来させるわけにはいかない。開口一番叫びながら相手を止めようとする。だがこの程度の言葉では止まらないのは十分承知していて、息を吐きながら思考を巡らせた。相手が来る気をなくすような言葉、頭の中で今まさに薄らと浮かぶ「別れ」の可能性、それを肥大化させてやればきっと相手は止まる。そうして口にしたのは二人の終わりを示唆する言葉だった。相手との間に築いた決して少なくない時間、相棒という関係、そして恋人という関係、それらを全て終わらせる宣言。自分が決して望まない事を、相手を守るために口にしていた。最後に念押しでまた来るなと言おうとするが、その前にまた男の拳が腹にめり込んで残っていた鈍い痛みと重なり叫び声に近い声をあげてしまう。ゲラゲラ笑いながら男は再びス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンを耳にあてると『じゃあ待ってるね来人くん』という言葉を残して通話を切ってしまい)
ッ…、翔太郎! …ああ。____ ……、相棒を返しに貰いに来た
(代わったのだろう相手から大声で来るなと言われる。どう考えても罠である場所に来させない為の言葉だろうとは理解しているが続いた二人の関係を終わらせる趣旨の発言に息を詰まらせる。何よりも大切な相手との相棒として恋人との繋がりが無くなってしまう。思わぬ言葉に目の前が真っ暗になるような冷たい感覚がするも直後に暴力を振るわれたのか苦痛の滲む叫び声が聞こえて必死に名前を呼びかける。伝達は済んだのだろう、代わりにやけに楽しげな男の声が返ってくれば短く相槌を打って電話が切れる。いつの間にかス.タ.ッ. グ.フ.ォ.ンを握っていた手は震えていた。閉じられた奴らの陣地の中で自分と相棒、どちらも無事に帰ってくる良い案や作戦は全く浮かばない。だが決断はついた。この街の探偵としてやるべきことを、フ.ィリ.ップ自身としてやりたいことをやるだけだ。今頭に浮かぶだけの身支度を整えて事務所へと上がる。所長に状況と数時間帰ってこなければ警察に通報するように告げておく。大人数で押しかけるというのも一つの手だが彼らの気に障ることは控えた方が利口だろう。損な役割を任せてしまった所長に帰ってきたら風.都で有名なケーキを3人で食べようと願掛けにも近い約束を結べば事務所を後にした。そうして足を踏み入れたのは1週間ぶりでもある暗い路地だ。そして見覚えのあるバーの前に辿り着く。あの後警察の捜査が及んだのか看板は外されボロボロなのが一目でわかる見た目だ。命からがら逃げることのできたあの異様な空間の恐怖が頭を支配しそうになるがいつの日か神社で交換したお守りをそっと握って自らを奮い立たせる。そっと中に入れば表側のバースペースには誰もいない。恐らく男と相棒はその奥のVIPルームだったところにいるのだろう。持ってきた道具で死角となる所に小細工をしかけてから意を決してその場所へと向かう。長く息を吐いてからドアノブに手をかけると勢い良く扉を開き、中にいる男に宣告をして)
_____っ、フィリップ…お前……来んなって言っただろッ!!
(電話を切った男は意気揚々とバーカウンターへ近づくと何かを手にこちらへと戻ってくる。鼻歌を歌いながら目の前のテーブルに広げられたのはスゴロクとダイスと、そして拳銃だった。『もっと楽しいことしようって言ったろ?』とサインペンを手に取るとスゴロクに何かを書き込み始める。得意げにこちらに向けられたスゴロクにはゴールマスに『おめでとう!探偵を拳銃で撃ち殺す!』と文言が付け加えられていた。こちらは静かにそれを見つめるだけだったが、構わず男は『ここは元々カジノだからゲームしなきゃ』と心底楽しげに言えばスタートのマスに駒が置かれてダイスが振られる。そうして死へのカウントダウンが始まった。出目に大袈裟に一喜一憂する男をただ睨み続け、時折『来人くんに伝えておくことある?』などと聞かれても『お前に話す事なんかねぇ』と取り合うことはしなかった。そもそもどうしてこの男が相手が学校潜入の時に使った偽名を知っているのか。どこまで及んでいるか分からない男の一味とそして組織の手、自分達が相手取っているのは想像するよりもずっと大きい組織なのかもしれない。少しずつ駒は進んでいくが、もうこちらの目的は達成していて焦りも恐怖もなかった。大切な相棒がここに来ずに組織の手を逃れればそれでいい。男を無視して睨みながら時は過ぎ、遂に駒はあと一回ダイスを振ればゴールに届く範囲へたどり着く。男はまた不快な笑みをうかべ『そろそろかぁ?』とダイスを振る。だが出た目はゴールまであと1たりない数だった。『はぁっ?!』と苛立ちの声と共に男が強くテーブルを叩くと、その弾みでダイスは転がり出目はひとつ増えた。その様子に男は満足気にニヤリと笑うと駒をひとマスずつ動かしゴールへと置く。そして駒の代わりに拳銃を手にとってこちらへと銃口を向けた。相変わらずこちらは相手を睨むだけだったが、そのタイミングでこの閉鎖空間を破る音が聞こえ聞きなれた声に愕然とする。目線を向けた先、扉の前にいたのは紛うことなき相棒だ。決してくるなと言ったはずの相手がそこにいる。一瞬来てくれた嬉しさや安心感が過ぎるが相手がここに来たということは相手の終わりを意味する。思わず叫ぶがそれをゲラゲラと男は笑い飛ばすと『ちょうどいい!大事な人の最後をちゃんと目に焼きつけてやれよ!』と高らかに宣言し、こちらへ向けた拳銃の引き金を引こうとして)
ああ。 だから僕は、僕のワガママを叶えに来た。 っ、させない!! …っ、用件は済んだだろう、翔太郎を返してくれ。
(中に踏み込めば男に相棒に拳銃を向けていてまさに一触即発の空気だ。ちらりと相手の方を見れば驚愕の表情を浮かべている。ちゃんと生きている。それだけで幾らか安堵するが今の状況に変わりない。相手が相棒や恋人で無くなったとしてもこの身を危険に晒したとしても相手を取り戻したいという一心だけでここに来た。ゲラゲラと笑って高らかに宣言する男に声をあげるとバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トをライブモードに変形させる。それと共に表のバーカウンターに仕掛けた小細工、ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンにバ.ッ.ト.シ.ョ.ットから指令を下すと店のブレーカーが落ちて室内が真っ暗となる。『は?』と情けない男の声が聞こえる。自らの目では何も見えないが暗闇の中バ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.トは超音波とセンサーによって人物や物を認識し、的確に男の拳銃を奪い取って手元に戻ってくる。ス.タ.ッ.グ.フ.ォ.ンによって再びブレーカーを復旧させると部屋に灯りが戻る。今度はこちらが男に銃口と冷え切った瞳を向けると要望を伝えて)
(/探偵君が拘束されていて動けない状態ですので検索の方をある程度動かしたり攻撃食らわせたりと好きに描写回して貰って大丈夫です! よろしくお願いします。 /返信不要です。)
フィリップ……!…、……
(あれだけ強い言葉を使って相手を遠ざけようとしたのに相手はそれ以上に強い言葉と共にここにいる。いつもならばそれも相手らしいと笑ってやれる所だが今はそうもいかない。銃口を向けられ相手がこの場に来てしまったという焦りだけが募る中、相手が声を挙げたと同時に周囲が暗くなる。何かが動く音が数度あった後再び灯りがつけばいつの間にか相手の手の中に拳銃が移動していてまた目を見開く。間近に迫った死が避けられ思わず息を吐き出すが、逆転してみせたはずなのに男は相も変わらずヘラヘラと笑っていて『正義の味方なのに人に拳銃むけちゃダメでしょ。あー困ったなー誰か助けてくれぇー』と間の抜けた下手な芝居を挟んだ。するとその言葉を合図に複数人の足音が聞こえてあっという間に二人を取り囲む。服装はあの大柄の男達だが、その顔は不気味に変形してマ.ス.カ.レ.ー.ド.・.ド.ー.パ.ン.ト.と化していた。その内の一人がこちらのこめかみに銃口を押し当ててきて再び形勢は逆転してしまった。男は人質を取られ動けなくなった相手へとゆらりと近づく、思わず駆け寄ろうとするが手足は縛られ動くことは出来ず銃口で小突かれてしまう。男は馴れ馴れしく相手と肩を組んで拳銃を奪い取れば『あぁ俺が誰かを救う仮.面.ラ.,.イ.ダ.ーだったわ』とすっとぼけた声を出して、相手の視界にAが刻まれたメモリをチラつかせた後、自身の首へと差し込んだ。男は再び怪物へと変化し相手の首を掴んで軽く締めつける。何がどうなるわけでもないのにただ「フィリップッ!!」と相手の名を叫ぶ事しかできなかった。怪物は未だ上機嫌のまま『やっとあの人に良い報告が出来そうだぜ』と光悦な声色で相手を見据えていて)
っ、君にその名前を騙る資格は無い。 …っ、ぐ……、
(命を奪うことが出来るものを向けているのに男はひるむ様子は無い。下手な演技をしたかと思えば複数の足音が部屋に乗り込んできた。服装はあの時追いかけてきた男達だがマ.ス.カ.レ.ー.ド.・.ド.ー.パ.ン.トと化していて新たに相棒のこめかみに拳銃を押し当てる。この状況に御満悦なようで男は拳銃を向けられてるのにも構わずこちらに近付いて親しげに肩を組まれる。至近距離で感じるあの変に甘ったるい匂いに身震いをしつつも未だ二人のモノだった名前を自称してメモリをチラつかせられると腹の底から怒りが湧いて鋭く睨みつけ言葉を返す。そのメモリは男の首に飲み込まれていき、再びあの怪物の身体に変化したかと思えば首を掴まれ軽く締め付けられる。気道と動脈が圧迫されすぐに息が苦しくなってくる。『間違って殺さないようにしねぇと』という言葉とは裏腹にゆっくりと身体を持ち上げられ足元が床から離れるとそれは顕著となり足をばたつかせたり怪物の腕を叩いたりするが拘束は緩まる気配は無い。少しずつ意識があやふやになりそうになる中、咆哮が聞こえたかと思えば恐竜の影が甲冑の薄い首元に飛びつきそれを振り払う動きで半個室の空間のひとつに身体が強く投げ出される。強い衝撃と首元が解放されたことに床に倒れ込んだままゴホゴホと強く咳き込む。何とか身体を起こそうとすればテーブルの上に取り上げられていたのだろうドライバーを見つめた。それも切札のメモリが刺さったままだ。思わぬ偶然に僅かな希望が湧いてくる。良い所を邪魔した小さな恐竜に『さっきからちょこまかとウゼェんだよ!』と腕を銃型に変化させて銃弾を打ち込む怪物と手下達の意識はこちらからが逸れているようで、無理矢理身体を起こせばファングを盾に相手の元に走り出して通りざまに腰にドライバーを触れさせ装着させた。その行動に男も気付いたようだが相棒は拘束されたまま。このまま通常のダ.ブ.ルに変身しても拘束を解くには時間がかかり、なにより再び奴らに身体を明け渡すことになってしまう。そのことも男は分かっているのか『おいおい、縛られた状態に変身するつもりかよ。大人しく身体を明け渡してくれんのは好都合だけどな』とゲラゲラと笑い出す。進むも地獄退くも地獄ならばマシな方を選ぶしかない。この手は出来れば一生使いたくはなかったが、覚悟は出来た。無駄な足掻きをする様が面白いのか『どうするんだ、お兄さんと来人くん』と煽る男を見据えながらも「…翔太郎、君が僕に振り回されるのが好きならば、地獄の底まで相乗りしてくれるのかい?」と問いかけながら手のひらにファングを招いて)
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