検索 2022-07-09 20:46:55 |
通報 |
あぁ…ずっと欲しかった………、…
(互いに腕を回してやっと手にした時間を堪能するよう長い時間唇を重ねる。今日何度も欲しいと願ったそこはホイップクリームがついてなくとも十分に甘い。抱きしめる体は夜の少々ひんやりとした空気の中で特別に熱くてより相手の体温を感じる事ができる。そっと唇が離れて相手の顔を視界に捉えれば目の前には煌めく瞳があって釣られるようにこちらにも笑みが浮かぶ。風の街から遠く離れたった二人きりの空間にいれば格好を付けることも本心を隠すことも必要なく、約束をした後からずっと胸にしまっておいた本音を零すように口にした。長い時間衝動を抑えつけ続けた分腹の底に疼いた熱は暴発してしまいそうで、重なる唇の端から吐息を漏らし相手を強く抱き締めることでなんとか体を制御していた。唇は甘く重なるがまだこれだけでは足りない。そこでふとあの約束をする直前に相手の口の端にクリームがついていたのを思い出せば、あの時食い損ねたものを求めるように口の端から唇までをなぞるように自らの唇を動かして)
……ん、…翔太郎、
(慣れ親しんだ街から離れた園内の片隅、二人だけの空間で思うことは同じだ。至近距離で見つめる相手の口元に笑みが浮かんで告げられた言葉にまた心臓がぎゅっと掴まれるような感覚がした。目の前の相手が何よりも愛おしい。さらに強く抱きしめられ間近に熱い吐息が当たるとより相手を感じられて幸せと熱が募る。また唇が重ねて触れるだけの事を続けていたが何かを探るように動かされて肩がピクリと跳ねる。より唇の柔らかさを感じられるような動きに更に欲を煽られるとこちらからも時折啄むような動きで返す。呼吸の合間に目の前の相手の名前を呼べば後頭部に手を回し固定してしまいながらもゆっくりと舌で唇をなぞってみて)
…っ、……ん……フィリップ……、…
(重ねるだけでは物足りなくなり食むような動きが加わる。向こうからも食むように唇が擦り合わされると、相手もまたひとつタガが外れたように思えて腹の底がゾクリと疼く。名前を呼ばれるだけで胸には幸せと熱が満ちて、呼応するように愛しい名前をこちらからも呼ぶ。人気がないとはいえここにも園内に響くBGMが微かに聞こえてきていて、ここは屋外でさらに片隅とはいえ人が集まる場所で普通に考えれば恋人としての時間を過ごすにしろここまでだろうと警鐘を鳴らされている気がした。だが体の熱は落ち着くどころか上昇が止まらない、相手の甘い唇をもっと堪能してしまいたい。欲望が台頭する中で後頭部を固定されてしまえば相手もここで止まるつもりがないのが分かって体が微かに震える。止めなければと分かってはいるのに相手との口付けを前に簡単に理性は溶けて、背徳感に苛まれながらも唇が重なる中誘うように舌先で相手の唇の間をなぞって)
……ン…、は…、
(寸止めした続きさえ出来れば満足だったはずなのに一つを知れば更に知りたくなるように欲は留まることを知らない。唇同士を擦り合わせる感覚と相手の声で名前を呼ばれると更に熱が煽られる。ここが人目につかないとはいえ屋外で健全からは外れた行為であることは認識している。だがもう少しだけと脳内で言い訳を繰り返し、後頭部に手を添え逃がさないようにしながら顔は離そうとしない。そんな状態で誘うように唇の隙間をなぞられると残った理性も簡単に揺らぐ。伺うように熱い視線を相手に向けるも薄く唇を開けばこちらからも舌を伸ばして相手の舌先に触れる。もっと生々しい相手の内側に踏み込んでいる感覚にぐらりと脳が揺れるとくぐもった息が漏れた。もはや考えるよりも先に身体は動いている状態で優しく相手の頭を撫でながら更に舌を伸ばすと控えめに粘膜を擦り合わせ)
……、……ふ、ン……もっと……
(そこが開くようにと舌先で唇を撫でて薄らと目を開ければ相手の熱をもった視線とかち合ってクラクラと脳内が揺れる。やがて相手の舌先がこちらのものに触れ、さらに中へと侵入すれば待ち望んだ感覚にまたゾクリと体が震える。頭を固定され身を捩る事も呼吸する事も自分の意思では儘ならないが、それさえも相手を深く受け入れる行為だと感じるほどに頭は熱にやられている。これ以上はダメだと年上の自分が止めなければならないのに、頭を撫でられれば途端にその思考も溶かされて本能が剥き出しになっていく。短い呼吸の間に口から出たのは静止はなく強請る言葉で、同じくらいに熱で溶けた目を向けながら相手の劣情をさらに誘うように背中に回していた手を背筋にそってゆっくり上げると、勿体ぶった手つきで項を上から下へと撫で上げて)
……っ……ん、…しょうた、ろう…
(密着した身体では相手の反応を直に感じ取ることが出来て身体が震えるのも熱持つのもすぐに分かる。相手を何処までも求める欲とそれを留める理性がせめぎ合い様子を伺うように相手の口内で舌先だけ触れ合わせていたが呼吸の合間に甘く強請られると熱い息が溢れた。加えて背中に添えていた手がゆっくりとのぼり項の辺りを撫でるとぞくりと背筋が震えて僅かな理性すら蕩けていく。後頭部を撫でる手はそのままに触れるだけだった舌の動きを絡みつくような物へと変える。もう片方の手は腰に添え軽く引き寄せると軽く相手の舌先を吸い上げ、この場に似つかわしくない水音を響かせる。己の欲のまま舌を絡めていたがそろそろ頃合かと理性がチラつけばそっと唇を離し、荒い息の中名前を紡いで)
ふ、…ぁ………は、……フィリップ…
(相手の熱を誘うように項に指先を這わせてやれば密着した相手の体は分かりやすく跳ねて、素直に反応する愛おしさに回している腕に力が入る。舌先が触れ合うだけだった所から更に互いの深い所へ舌が侵入すれば、薄まる酸素と滾る熱で頭がクラクラと揺れた。腰を引き寄せられさらに二人の境界は曖昧になる。舌先が吸われて淫らな音が周囲に響けば、甘い幸福と背徳感で上擦った声が漏れた。こちらも顔の角度を変えながら時折口の端から水が弾ける音を響かせ互いの舌を絡ませ擦り合う。だがこのままではいよいよ立っている事もできなくなりそうで、パークに戻れなくなりそうだ。そう思ったタイミングで唇が離れると、理性ではここまでだと分かっていても切なげな吐息が漏れる。昂ってしまった熱を発散するようにピタリと互いの頬を擦り寄せ熱を吐き出すと共に相手の名前を呼べば「これ以上はお預けだな…」と言葉を漏らし)
……、……ああ。 暗くても分かるくらい、顔が真っ赤だ。
(上擦った声と水音が狭い道に響き奥底の熱が煽られる。本能のままに喰らいたくなる所を既のところで留め唇を離すと切なげな吐息が感じられてまた暴れだしそうになる欲を強く相手を抱き締めることで堪える。乱れた呼吸を整えながらもくっついてお預けという相手の言葉に相槌を返す。また我慢することになってしまうがこのまま欲に溺れてしまえば動けなくなってしまうだろう。次にいつ来るか分からない夜の園内はまだ楽しみきれておらず、せっかくの特別なデートに後悔は残したくない。回していた手はそのままに少しだけ顔をあげると未だに熱を持つ自分のことは棚に上げて赤く染まった相手の顔を揶揄うようにしてみて)
な、……、…お前だって顔真っ赤じゃねぇか!ったく……続きはまた二人の家でだな
(互いに全身を強く抱きしめながらこの場に相応しくない乱れた呼吸が暗い道に響く。なんとか熱を抑えようと必死になっていれば相手の顔が上がって揶揄いの言葉が飛んできた。こちらも顔をあげ誰のせいで、と叫ぼうとするが視界に入ってきたのは相手の上気した顔。熱を押さえ込もうとしている体にはそれさえも毒で再びせり上がりそうな熱を口内に溢れた唾を飲み込んで何とか飲み下すと、ツッコミの言葉を返しながらその真っ赤な頬をつついてやった。これ以上を超えてはいけない理性はあるがまたも熱を飲み込む事態にポツリと呟きを漏らしていて)
君とキスをしたのだから仕方ないだろう。 …その言葉忘れないでくれよ、翔太郎。 今度こそ少し夜風に当たってからパレードを見に行こうか。
(揶揄うような余裕も出てきたがいつ欲望の波に襲われてもおかしくない状況には変わりない。薄暗い中でも分かるくらい赤く色付いた顔すら理性を揺らがせるには十分でお互いにギリギリの所で堪えているのが分かる。頬をつつく指に軽く笑みを向けながらもこちらは当たり前とばかりに返事をしておいた。そんな中で呟かれた言葉は今後の予定を約束するもので変に鼓動が跳ねる。またジワジワと底で燻るような感覚を覚えながらも期待を宿した瞳でじっと見つめ返すと今度は逆の立場で同じような言葉を送る。遠くから聞こえるアナウンスはもう少しでパレードが始まることを告げている。今からでも向かえば最前列ではないにしろ雰囲気は楽しむことは出来るだろう。名残惜しさは覚えながらもゆっくりと腕を解いて離れると満足して家に帰る為にもこれからの行動方針を立てる。「このままの顔では人前に出ることは出来ないだろうからね」と言葉を加えると今度は共に歩くために手を差し出して)
…んなの俺も同じ理由だっての……ッ、おぅ……だな。二人して赤い顔で歩けねぇし
(溢れそうになる熱を誤魔化すように相手の頬をつついてやると、つついた頬には笑みが浮かんでこちらの心も平穏の方へと傾く。それだと言うのにあっけらかんと口付けした事を相手が口にすれば思わず言葉に詰まった。至極当たり前の事を言っているが改めて屋外かつ人が集まる場所の片隅で密かに深い口付けを交わした事実に恥ずかしさが迫ってくると、ぶっきらぼうに最初に相手に揶揄われた分の返事をしておいた。これ以上が今出来ないのならば二人の場所でこれ以上をすればいい、欲望を素直に出していたせいか心のまま呟いた言葉に相手はこちらを射抜くような目を向けてくる。先程自分がそうしたように呟きが約束になってしまえば腹底に鎮めた熱は僅かに疼いて吐き出す息を熱くしていた。だがこれからの時間はこのパークを最後まで楽しみ尽くす方に当てなければ。互いに回した腕を解く代わりに差し出された手を取り繋ぐと指を絡ませる。もうすっかり日も落ちて辺りは暗いが園内はしっかりと照明がたかれている。来た細い道を戻りつつ夜風にあたって元のお揃いの格好をしたカップルへと戻っていく。赤くなった顔を冷やしながら歩いていれば真っ暗な道に多くの人が集まっているのが見えた。同時に電子音のようなアナウンスが流れてパレードが始まる事が告げられる。ちょうど開始時間に間に合ったようだ。繋がっていた手を軽く引くとパレードを待つ一団に入るベく「行こうぜフィリップ」と声をかけ)
ああ。 …想像以上の人だね。 翔太郎、こっちだ。
(抱きしめていた腕を解き手を繋ぐと触れる面積こそ減ったが伝わってくる暖かさは変わらない。夜の空気を浴びて火照った身体を冷やしていきながらも来た道を戻る。人が居なかった場所から大きな道へと出てくれば沢山の人が集まっているのが見えた。あそこがパレードがやってくる場所だろう。相手の言葉に応えその集団の中に入ろうとするが流石一大イベントとだけあって人が何列も連なっていてなかなか前が見れない。遅くなってしまった為仕方なくはあるがどうにか方法はないかと周りを見渡してみれば近くに小高い場所があってここよりも人は少ない。少し離れてしまう事になるが全体を見渡した方がパレードを楽しむことができるだろう。表情が明るくしながら相手の手を引いて早々とその場所に向かい十分に観測出来る環境を確保する。前の通路を見ているとキャストとイルミネーションに彩られた大きなキャラクターの乗り物がやってきて暗い空間にきらきらと輝く存在に「翔太郎、凄いよ!」と相手の腕をとんとん叩きフロートを指さしながらはしゃいで)
さすがに開始ギリギリじゃちゃんと見れねぇか……ん?お、ここなら見やすいな
(相手の手を引き人だかりへと近づいてみたものの、さすがは夜の一大イベントだけあって視界はほとんど人の頭で埋まっている。隙間からなんとか見るしかないかと思ってフラフラと頭を左右へ振っていると相手に手を引かれてそちらを振り返る。暗闇の中でも輝いているように見える相手の明るい顔に引っ張られるままに場所を移動すれば、距離は離れたものの全体を見渡す事が出来るような位置取りになってよくやったと言わんばかりに軽く相手の肩を叩いた。そうしていればやがて陽気な電子音楽と共に見上げるほど大きいフロートがやってきて興奮気味の相手と同じく「おぉ、すげぇな!」と感嘆の声をあげながら無意識に繋いだ手を強く握った。鮮やかに煌めくフロートは幻想的な妖精、パークのメインキャラクター達が乗る機関車とそれぞれテーマが決まっているようで、フロート毎に音楽が切り替わってまさにお祭りの様相だ。フロートを見上げていれば機関車に乗ったこのパークのメインキャラであるネズミが二人してネズミのカチューシャをしているのに気がついたのか、お揃いだと言いたげに二人を交互に指さすと照れるように笑う仕草を見せる。まさかの反応に思わず目を瞬かせると相手の方をみて「今俺たちを指してたよな?」と興奮気味に確認をとって)
だろう?楽しむにはぴったりだ。_ああ、彼らとばっちり目があった。このカチューシャを褒められたようだね。
(全体を見渡すことが出来る位置につけば相手から肩を叩きながら褒められる。得意げな顔をすればパレードを全力で遊び尽くそうと視線を通路へと向ける。相手も大きなフロートは見慣れないのか興奮気味に声をあげていてこの一日で初めて知ったキャラクターや馴染み深くなったキャラクターが楽しそうに前を通っていくのを無邪気な顔で眺めていた。無意識に繋いだ手を握りしめながらも賑やかなお祭りを眺めているとこのパークの主役的存在である二人組のフロートがやってきて一段と観客の歓声が湧く。今日一日でモチーフを見かけたり形を模した食べ物を味わったりと親しみ深くなった彼らの登場に思わず身を乗り出す。そうして眺めていると彼らの顔がこちらを向き指さして何やら反応を示している。こそこそとカップルで内緒話をする仕草をする二人に気のせいかと思ったが相手に興奮気味に話しかけられ気の所為でないことがわかった。大勢の客の中でピンポイントに反応を貰えたことに嬉しそうに頷き、自分の頭につけているカチューシャを指さす。彼らと同じ二人組で仲睦まじくおそろいの物を身につけているのが目に留まったのだろう。「おそろいにして正解だ」と無邪気に笑って相手のカチューシャの耳の部分をつんと触って)
だよな!?結構嬉しいもんだな……あぁ、二人で付けてて良かった
(ネズミのキャラはこちらを指さしたあと何やら彼女の方とも話している様子で、仲の良さそうな二人が内緒話をしながらこちらを見ているのが分かる。どうやら今の反応は自分の勘違いではなさそうで、相手から肯定の返事が返ってくると興奮気味に頷き返した。二人でお揃いの格好をしたいからと買ったものだったが当の彼らから反応が貰えるとは予想だにしなくて、思わぬサプライズに一気に心は踊ってしまった。無邪気な顔をした相手にこちらの大きな耳をつつかれると、二人して大きな耳をつけ手を繋いでパレードを見る姿は彼らから見てもカップルに見えたのだろうかと考えて何となく照れてしまう。だがそもそもカップルに見られたいからお揃いにしたのだから思惑は成功しているということだ。照れくさそうにはにかみながらもまた頷けば、相手に半歩近づいてさらに距離を縮めてパレードの続きを見ることにした。夢の国を体現したようなフロートは続々とやってきて、暗闇の中で次々に柄を変える不思議な猫にまた感嘆の声を漏らしていて)
忘れられない思い出を貰ってしまったね。 _ 皆それぞれ個性的な乗り物とパフォーマンスだ。 …僕達の物を作るとするなら、リ.ボ.ル.ギ,ャ.リーに装飾をしたらあんな風に出来るだろうか。
(お互いに目を合わせて思わぬプレゼントに喜びを表す。周囲の人の反応や今日一日園内で遊んで彼らの人気は十分に把握した上で自分達だけに反応をくれるというケースもなかなかにレアな事だろう。それもお揃いにしたカチューシャのおかげだ。このパークを満喫にするにあたって当人から最高のプレゼントを貰ったことに口元はつい緩んで笑みを浮かべる。相手が半歩近付くと腕同士がくっつくような更に仲の良い恋人の距離感になってその幸せを噛み締めながらも流れてくるフロートを眺める。それぞれ作品やキャラクターによって形や電飾、色使いや大きさまで様々な違いがあってそれを見るだけでも楽しい。楽しげな音楽の中、個性豊かなフロートを見つめその度に感想を口にしていたがふと二人で一人を表した乗り物を作るならと思考が及ぶ。大きな乗り物となればガレージにある装甲車が直ぐに浮かび、同じように飾りつけをすればパレードができるのでは無いかと至極真面目な顔つきでぽつりと呟いて)
ブフッ!!くく…確かにリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ー.をピカピカにしたらそれっぽくなるかも知んねぇな。俺たちが上に乗って手を振って、先頭にはふ.う.と.く.ん.に歩いてもらえば完璧だ。でも、ハードボイルドな探偵ってのは人知れず街を守るもんだ。パレードは似合わねぇぜ
(次々やってくる世界観の違うフロートに互いに感想を言い合って眺めていたが、相手が真面目な顔つきで突拍子もない事を言うものだから盛大に吹き出してしまった。声を上げるのを必死に我慢し笑いを噛み殺してからこちらも二人のパレードを想像する。大きさだけでいえばリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ー.はあの列にいても申し分ない。派手な見た目もしているし電飾さえ敷き詰めてしまえばかなりそれっぽくなるだろう。あのキャラクター達よろしく上に立って手を振れば完璧だ。周囲を彩る役目は風の街のマスコットに頼めば申し分ないだろう。だがハードボイルドな探偵というものは名声のために仕事をするわけではない。あくまでもクールに街の人の涙を拭うのが最高にかっこいいのだ。繋いでいない方の手で軽く前髪を払いながらキザっぽく必要ないと言ってみせる。だがふと相手の提案に乗りそうな人物が脳内にフェードインしてくると今度はこちらが至極真面目な顔をして「今のアキコに言うなよ」と釘を刺すように言って)
そうしたら風.都流のパレードの完成だ。…なるほど、ならば君はあんな風に歓声や手を振って貰うことに興味が無いという訳か。流石ハードボイルドな探偵さんだ。確かにアキちゃんに言ったら事務所の宣伝とかに使いそうだね。
(思いつきから自分達のフロートについて考えを巡らせていると隣から吹き出したような反応がして顔を向ける。相手もパレードを想像しているようで電飾を施したリ.ボ.ル.ギ.ャ.リ.ーに乗りながら街の道路を進み街のマスコットが周囲を取り囲む姿は目の前のパレードに劣らず賑やかな様子になるだろう。完璧な想像図に楽しげな笑みを伴って言葉を告げる。相手はいつものハードボイルド節を炸裂させ必要ないとギザっぽい仕草をとるが、実際行うとすればはしゃぐのは相棒の方だろうと容易に想像がつく。このパレードのように街の人が見守って歓声をあげたり喜んでくれるなら尚更だ。相手の言葉を素直に飲み込むようなフリをしながらも揶揄うような声色は隠しきれず、くすくすと笑いながら今回はハードボイルドだと認めておいた。そんな中で所長の名前があがると想像だったパレード案も現実味が出てくる。その大きさと派手さで注目が集まれば事務所の宣伝になると計画を立て始めても可笑しくない。それを危惧してからいつにも増して真面目な表情の相手に「ならばこの案は二人の間で保留にしておこうか」と告げて)
それは、だな……興味ねぇ、って言ったら嘘だけど……探偵ってのはな、依頼人の笑顔が見れりゃそれで十分なんだよ!……俺達の役目は誰かを泣かせねぇ事だ。幸せをめいっぱい与えるのはアイツらに任せとこうぜ
(相手が言質でも取るように揶揄ってくれば言葉を詰まらせながらブツブツと言葉を返す。呟きにつられ目の前のパレードのように人々の視線や歓声、そして笑顔を一身に受ける様を想像すれば思わず顔がニヤケそうになってしまった。急いで頭を振って邪心を振り払うと、未だこちらを揶揄い笑う相手に突っ込むように再びハードボイルド探偵論を説いておいた。確かにこの耳の持ち主のような人気者になれば毎日いい気分ではあるだろう。だが自分が目指す姿はそれではない。煌めくパレードの方に目を向ける、煌びやかな光は必要だがその間にある闇に落ちそうになる人を助けるのが自分達探偵の仕事だ。パレードも終盤に差し掛かってもうひとつのお揃いグッズの元であるアヒルのカップルが乗るフロートがやってくる。輝く光に包まれ時折ハグをして時折何かを喋ったりしながら様々な方向に手を振る彼らを見守りつつ改めて決意表明をするような言葉を口にするが、大真面目に語った事が時間差で恥ずかしくなって誤魔化すようにニヒルな笑みを相手に向けていて)
…そういう根っこが変わらないところが君の強さであり、魅力だったね。僕も多くの人の前で目立つよりも目の前のことを解決していく方が性にあっている。僕達は僕たちのやりかたで明日からまた街の人を笑顔にしないとね
(こちらが揶揄えば予想通り言葉を詰まらせるがその後続いたのはずっと相手の芯にある考え方だ。強がりでもなく本当に依頼人が笑顔になってくれるなら何でも出来て賞賛や歓声を求めないことは自分が一番知っている。休日で探偵業から離れていようと変わらないその意思を改めて聞けば今度は愉しげな物ではなく柔らかな笑みが口元に浮かぶ。相手の視線を追ってパレードに目を向けると丁度おそろいの被り物でもあったアヒルのキャラクターのフロートがやってきていた。あの立場に自分たちがいれば楽しい状況であると思うがそんな体験も一回で十分だ。それよりも相手や所長などと共に舞い込んでくる依頼に取り組んだり興味あることに集中したりする今の生活の方が向いているし好みだ。それにパレードの彼らも自分たちがやることも方法やアプローチが違うだけでで人を幸せにしたいと思う気持ちは変わらないだろう。真面目に持論を語って恥ずかしくなったのかニヒルな笑みを浮かべる相手にこちらも得意げな笑みを見せながら繋いだ手に力を込めて明日からの仕事に意気込みを語っておいた。パレードはいよいよ最後のフロートがやってきて目の前をゆっくりと過ぎ去っていく。しっかりとそれを見届けると「いいものを見ることが出来た」と満足気に相手の方に向き直り)
トピック検索 |