相乗りで何処までも 【 〆 】

あぁ見事な王子様っぷ、り……ッ！！ば、誰がお姫様だ！！
(周囲が未だ浮き足立つ雰囲気の中次の客の邪魔にならないよう輪から少し外れた所に移動して相手を待つ。プリンセスに礼を言い本物の王子様にフォローを入れこの世界観にしっかり染まる相手は完璧に罰ゲームをこなしたと言えよう。適度に好奇の目に晒されその瞬間を収めた写真も撮れてこちらも満足だ。所長にいい土産が出来たと写真の出来を確認してからバ.ッ.ト.シ.ョ.ッ.ト.をしまう。やがて相手がこちらに帰ってきて罰ゲームは完遂だと告げようとしたが、全てを言い切る前に相手が視界から消えた。その姿を追うように目線を下に移動させている間に手を取られ、ちょうど相手の姿を捉えた所で跪いた相手が手の甲に口付けを落とす瞬間を目にすると息を飲んで固まってしまった。これはまさに今さっき相手がお姫様にしてみせたもので、しかも今回は口付けるフリではなく本物の口付けだ。本物のお姫様扱いに加え極めつけに「僕の」という言葉が着けばあっという間に胸に溢れる想いはキャパオーバーとなって顔は真っ赤に染まる。なんとか突っ込みのような言葉を叫ぶもこちらを真っ直ぐと見つめる視線を目の前にすればまともではいられず目線を忙しなく動かす。心臓の音がうるさく動けないでいたが相手の背後で女性客数名が色めきたつ声が聞こえて、周囲の注目を集めていることを悟ればますます正気ではいられない。繋がったままの手を強く握ると「いくぞ！」とその場から逃げるようにして相手を引っ張り始めて)

僕が王子様ならば必然的にお姫様は君だろう。…照れているのかい？ 翔太郎、
(先程の王子様のフリよりももっと親愛を込めて手の甲にキスを落としお姫様扱いしてみればその顔は真っ赤に染まっていく。その反応に機嫌を良くすれば抗議の声にも冷静に応える。王子様の運命の人がプリンセスならば自分にとってのプリンセスは相手に違いない。算数よりも簡単な理屈を述べながらも手を取ったまま目線を泳がせる相手を楽しそうに見つめていた。そのまま硬直していた相手だったが周囲の視線に気付いたのか手を強く握られ引っ張られるような形でその場を後にした。自然と繋がれたままの手に自然と口角があがる。調子に乗って指を絡めるように手を繋ぎ直し、素直に相手について行きながらも赤くなった顔を覗き込む。せっかく罰ゲームで有難い役をくれたのだから活用しなければ損だろう。直ぐに隠してしまわないように相手の被り物のクチバシに手を添えつつも分かりきっていることを問いかけると「僕のプリンセスは君だけだよ」と更に追撃を加えて)

そうかもしんねぇけど、もう王子様は終わ、……ッ～～
(二人が恋人で片方が王子だというならばもう片方は確かにお姫様だろう。間の悪い事に今は可愛いリボン付きのキャップを被り、首からはこれまた可愛いクマがいる蜂蜜のツボを下げていて格好でいってもこちらがお姫様だ。ハードボイルドを目指す身としてお姫様扱いなんてこの上なく恥ずかしい、だが心の片隅で相手だけにならばお姫様扱いされても構わないと思っている自分がいるのも分かって、そんな思考に余計に自分で恥ずかしくなっている。逃げるように歩いていたが二人の指が絡まるように手が繋ぎ直されると、そこでようやく二人で繋がったまま歩いていた事に気が付きさらに心臓は早鐘を打つ。自分の心臓の音で煩いのに相手の声だけは妙にハッキリと聞こえる。このままでは心臓が持たないと罰ゲームは終了だと伝えようとするもまたも言い終わらないうちに阻まれてしまい赤い顔のまま目が合う。先程のように目元を隠そうにも既にクチバシには相手の手が添えられていて叶わない。そんな状況でさらに追い討ちをかけるように王子様の台詞が飛んでくると早くなりすぎた心臓と感情を処理しきれなくなった脳内が同時に爆発しそうになった。何か言おうにも言葉が出てこずパクパクと口を動かしたあと、声にならない声をあげゆっくりと視線を斜め下に逸らし「俺の負けだ…勘弁してくれ……」と降参の言葉を口にして)

勝負をしていたつもりはないけど、これで一勝一敗だね。
(お姫様なんてハードボイルドからかけ離れたような言葉だが思ったよりも強い否定の言葉やツッコミの言葉は向けられない。その事に調子づいて被り物の中を覗き込むとそこには誰が見ても分かるぐらい真っ赤に色付いた相手の顔があって先程まで楽しげに罰ゲームを命令していた面影は見られない。目元を隠すのも事前に阻止していればじっくりとその姿を観察できる状況になり、追い討ちをかけるように王子様のセリフを告げるとこれまた分かりやすく反応を見せる。もはや声にならない声をあげながらも視線を逸らした後、降参が呟かれると瞬き一つするも上機嫌に口元に笑みを作る。なんと可愛らしい反応だろうか。罰ゲームを掛けた勝負では負けてしまったが恋人をここまで照れさせることが出来たのだから勝ちとしても良いだろう。満面な笑みでその事を告げると降参を告げる相手の為にも手と顔を離す。予想外の良い姿が見れた事に満足はしていたが白熱した勝負をしプリンセスを探すために歩いていれば少々疲れてしまった。次の目的地を相談をするという意味でも一度休憩を挟んだ方が良いだろう。脇道を進んだ所にパラソルとベンチが設置されているのを見つければ「少し休憩しようか」と声を掛けて)

お前の罰ゲームなのになんで俺が……
(つい先程まで相手に可愛いものを持たせる事に成功しさらには勝負に勝って罰ゲームを見守る側として楽しんでいたはずなのに、今や体は熱く心臓は煩くて頭も恥ずかしさと嬉しさが入り交じって混乱状態だ。こちらの顔を覗き込む相手の顔には心底楽しそうに笑みが浮かんでいてとても罰ゲームを実行した側の人間には見えない。ようやく相手の手がキャップから離れれば素早く引っ張り目元を隠し、落ち着くために数度深呼吸をした後この状況を嘆くようにぶつくさと呟いていた。相手から休憩が持ちかけられると頷き応える。この数分で動揺しすぎた体では暫くまともに動けそうにもない、相手の視線の先にベンチとパラソルを見つければそこへと移動し二人並んで座った。ひとまず落ち着くためにとバケットの蓋をあけてポップコーンを数個口に運ぶ。そもそもこのバケットだって相手の首にかかっているはずのものなのにどさくさに紛れ自分が持つことになっている。上がりすぎた体温を逃がしつつ「次は静かに楽しめる奴がいいな……」と零していて)

罰ゲーム自体はちゃんとこなしただろう。 静かに楽しめる物か…機関車や船に乗るものや景色を眺めるタイプのアトラクションがあるみたいだけど気になるものはあるかい？
(キャップから手を離してしまえば素早く目元を隠してしまったが十分に観察出来たから問題無い。罰ゲーム自体もしっかりこなしたのだから文句を言われる筋合いもないだろう。上機嫌のままぶつぶつと何かを言っている相手を連れ添ってベンチへと座った。アトラクションや店のある場所から離れているせいか人通りも少なく先程とは違った角度で城を見ることの出来るここは休憩する場所としてもピッタリだろう。相手がポップコーンを食べている間預けていた被り物を貰って再び頭に被る。王子様が終わったのならまたお揃いの方が良い。ぽつりと呟かれた相手の要望を聞き取ればガイドブックを開いて何があるかを確認する。バラエティ豊かな施設やアトラクションがある園内はゆっくりとした時間を過ごすための場所も多く、機関車や船で園内を見て回るものから劇場タイプのもの、乗って作り込まれた景色を見るものまで様々だ。それらを相手に見せつつも興味惹かれるものは無いかと相手に尋ねて)

そうだな………ならこいつのアトラクションでも乗りにいくか？ちょうどここから近いみてぇだし
(相手が再びアヒルのキャップを被れば再びお揃いの姿となって二人ベンチに並んで座る。激しい心臓の高鳴りもようやく落ち着いてきた所だがもう少し平常心を取り戻す時間が欲しい。それに朝からここまで休みなく騒いだ事もあり一息入れられるような時間が欲しいところだ。こちらの要望に合わせたアトラクションを相手がいくつかピックアップしてくれるのをガイドブック上で目で追う。ゆっくりと楽しめそうなものはいくつかあるが、顔を下に向けてガイドブックを見ていると視界にバケットの端から蜂蜜を眺めるクマの姿が目に入った。ついでガイドブック上でも同じクマが登場するアトラクションを見つける。クマと蜂蜜探しをしに行くという可愛らしいストーリーで乗り物に乗っているだけのものらしく、休息が必要な今の二人にはピッタリのアトラクションだろう。バケットにくっついているクマの頭をトントンと指で撫でつつ相手の反応をうかがって)

ほんとだ、このキャラクターのアトラクションもあるんだね。じゃあココに行こうか。 蜂蜜を探しに行くだけならゆったりした時間を過ごせるだろう。
(いくつかゆっくり出来るアトラクションという観点でピックアップしてみたが、その中で相手が提案したのはバケットにも乗っているクマのキャラクターが主役のアトラクションだ。ガイドブックのアトラクションの概要を見てもほのぼのした世界観が伝わってきて一息つくという意味でもピッタリのチョイスだろう。直ぐにそれに賛成を示すとガイドブックでここからの道のりを確認してから立ち上がる。太陽も真上を通り過ぎて人の入りもピークに近い頃合、せっかくならば時間を無駄にしないようにさっさと並んでしまった方が良さそうだ。相手の手を軽く引いて歩き始め、ファンタジー感溢れるエリアに入れば大きな本の形をしたオブジェの前に出来た行列に並び順番を待ち)

だろ？せっかくこのバケット買ったんなら、こいつの事も知りたいしな___乗り物までハチミツか
(相手にこれを持たせたいと思って選んだバケットだったが、そんな偶然の出会いをもっと深めておきたい。そういう事ができるのもテーマパークの強みだろう。相手に手を引かれて歩き出す、あれだけ照れて心を乱されてもこの手を離そうとは思わない。お揃いのキャップで二人並んで御伽噺の中のようなファンタジーな世界を進めば見えてきたのは巨大な本だ。見上げる程の大きさの本の前にある列へと並びそのまま進めば本の中へと入っていくように絵本のページのアーチを潜る。中にも列が伸びていてその脇にはどうやらこのクマが主役の物語が書いているページがオブジェとして飾られているのだが、その文字は全て英語でしばらく眺めた後にすぐに解読を諦め目を逸らしていた。やがて列は進んでいよいよ自分達の番がやって来る。乗ってくださいと案内されたのはまたしてもハチミツのツボだ。このクマがハチミツが好きだというのはなんとなく分かっていたがここまで熱心だと愛らしくもなって思わず笑みを零す。係員の指示に従い乗り込めばゆっくりとハチミツのツボは動き出して)

よっぽどハチミツが好きなのだろうね。…まるで絵本の中にいるみたいだ。 …、レールが無いのにぶつからず正確に動いているのはセンサー等で自動制御でもされているのだろうか、
(どうやらこのアトラクションは本の中もモチーフにしているらしく、内装にもクマが主役の話が書かれたページがオブジェとして飾られている。待ち時間の間、立ち止まって熱心にそれを読んでいたが列が進んだのに気付かずにいると相手に身体を押されたりと邪魔が入り全て読み切ることは出来なかったが大体は理解した。そんな状態で自分たちの番が来ればハチミツのツボの形をした乗り物に案内される。絵本からも分かってはいたが相当このクマはハチミツが好きなようで徹底した推しっぷりに同意するように頷く。乗り物に乗り込めばゆっくりと動きだして絵本のページのアーチをくぐって彼らの物語に入り込むような演出がされる。中に広がるのは明るい森でクマのキャラクターとその仲間達が楽しんでいる姿を見ることが出来る。これまた作り込まれた世界観に感心するように呟くがそれよりも気になったのは乗り物の動きだ。床にはレールなどは設置されていないためどこに向かうか分からずキャラクターの前で急に止まったり方向転換したりと予想外の動きをしている。共に行動している他のツボも同じくバラバラな動きをしていて世界観よりもそれを成している技術力の方に興味が向く。自分の中で考察を重ねるようにブツブツと呟きながらも観察するように乗り物や周りの風景に目を向けていて)

おぉ、レールがねぇから先の動きが読めねぇな……あのクマお前に負けず劣らず目的に向かってまっしぐらだな
(ツボに乗ってハチミツを取りに行くという物語のページの中へと飛び込んでいけば物語の続きの世界が目の前に広がって思わず周囲を見回す。隣から聞こえてきた相手の呟きを聞いてレールの類がないのに気がつけば思わず感嘆の声をあげた。普通は全ての乗り物が一定のルートをレールに従い進むものだが、ここにはそれがなくて縦横無尽に物語の中を冒険している気分になる。しかも他のツボはまた別々の動きをしていて機械っぽい動きをしていないのがさらにこの世界に入り込んでいるようで、相手がその仕組みを気にする中こちらは単純にその没入感に感心していた。そんな中でクマはハチミツを手に入れるため風が強いにも関わらずふわふわと風船で空を飛んでいく。しかしハチミツは取れないうえ友達の家を壊していてなかなか散々な結果だが、当の本人であるクマはかなりマイペースで気にする様子もない。ハチミツさえ手に入りさえすれば良いのだろう。その様子と相手が知識を得るためになりふり構わない姿が重なれば思わず笑ってしまって、あらぬ所へ飛んでいくクマを指さしつつからかうように言って)

これもこのアトラクションの特徴だろうね。…それは褒めているのかい？ わ、 全然静かに楽しむタイプのアトラクションでは無かったね。
(実際の動きをみるに一つ一つの個体ごとに制御しているのだろう。それがクマのキャラクターが縦横無尽に冒険する様子とマッチして没入感を高めている。技術力と演出の細かさに感心していると蜂蜜を手に入れる為に無謀とも呼べる挑戦をしているクマと似ていると言われると僅かに眉を顰める。気になったことがあれば直ぐに飛びつく行動力の事か周りの事を気にしないマイペースな所か、恐らく両方のことだろう。真意を探ろうと相手の方を見て尋ねているとツボはクマの友人であるトラのキャラクターの元へと移動する。彼が愉快にジャンプすると乗っているツボごと大きく跳ねて思わず驚きの声が漏れた。予想外の動きに翻弄され、真っ暗な空間に移動する頃には凝った演出に魅力されていて興味深く外の景色を観察する。クマが友人の言葉を思い出しながら眠りについたような描写の後、移動した先は賑やかな森とは違うサイケデリックな色調の場所だ。忙しなく切り替わる場所と予想外の動きを繰り返すツボの動きは当初の目的の静かに楽しめるからは大分かけ離れている。それでもすっかりクマと共に体験する冒険の世界に引き込まれていれば楽しそうにその事を告げてみて)

お前もあのクマみたいに愛らしくて憎めねぇって事だ。ぬぁっ？！ま、ちょっと賑やかな位がちょうど良いだろ
(この物語の主人公たるクマに似ていると言ってやれば相手は不服そうに眉を顰めている。だが何かを求めてそればかりに夢中になるのは相手の代名詞とも言える癖だ。口ではフォローするような事を言うもののその表情はやはり相手を揶揄うもので、だがそうやって突き進んでいく相手に振り回されるのが楽しいと思ってしまっている身としては今しがた口にしたのだって本音には違いない。楽しげに笑っていれば今度はトラが周囲をジャンプし始めて乗っていたツボが揺れ始めた。予想外の跳ねるという動きに思わず声を上げるも、陽気な歌も相まってこちらもすっかりこの絵本の世界に夢中だ。そうしているうちに雰囲気は段々と変わって今度はクマの夢の中へと入っていく。だがその夢は先程のまったりとした世界とは違ってなかなかに奇妙な夢だ。静かに楽しめるどころかちょっと賑やかからも外れてしまっている状況だが、ハチミツを狙う象とイタチの奇妙な夢は思わず周囲を見回したくなるほどキテレツで面白い。グルグルとツボが回されたあとに二人を乗せたツボは大砲の前へと連れ出された。そしてあろうことか砲口がこちらへ向くと反射的に「えっ」と声が出る。そのまま砲口の中が赤く光ったと思えばボンという音と共に空気砲が顔に向かって飛んできた。思わぬ攻撃に目を瞬かせた後予想もできないキテレツな展開に思わず相手の方をみて笑ってしまい)

それもそうかもしれないね。 へ、…ふふ、僕達も彼に振り回されっぱなしだ。
(不服そうにしていれば相手からフォローが入る。だが表情はそれと伴ってなく良い様に言ったらという意味合いを感じる。とはいえ気になることがあれば一直線という自分の性格は変えられるものではなく、首からさげたバゲットのようにそこも含めて相手に好ましいと思って貰えているのならそれで良いのかもしれない。穏やかな冒険という予想に反して賑やかで波乱万丈なクマの冒険ではあるがすっかり先程までの疲れは忘れて物語に引き込まれている。相手の言葉に同意するに頷き、好き勝手に動いて止まって回ってを繰り返すツボの動きと周りの様子を楽しんでいると目の前に大砲の様なものがある場所に連れてこられる。イタチを模したであろうキャラが火を灯せば空気砲が顔に直撃して思わず声を上げて目を瞑る。またもや予想外の出来事に相手の方を見ればほぼ同タイミングで相手もこちらを向きお互いに笑い合う。マイペースのクマに振り回されているのはこのアトラクションの乗客も同じようだ。やがて奇妙な夢から覚めたクマは求めていたハチミツに埋もれて幸せそうな姿を見せる。演出の一部かふわりとこちらまで蜂蜜の甘い匂いが香ってきて自然と口元に笑みが浮かぶ。そうして絵本の物語がハッピーエンドで終わるナレーションが入れば「なかなかに愉快な冒険だったね」と満足げに話しかけ)

くく、ちょっとは俺の気持ち理解できたか？____ああ。それになんか甘いもん食いたくなるアトラクションだったな
(奇妙な夢の中で予想だにしない空気砲、二人の髪がぶわりと揺れた後お互い目が合って不意打ちに笑顔が溢れる。大事なハチミツを盗られるのはクマにとってよっぽどの悪夢らしく、その後もハチミツのツボは好き勝手に動いていく。相手とクマが似ている事にかけてまた揶揄いの言葉を投げるが、やはりそれは弾んだもので楽しさを隠しきれていない。夢から覚めればクマはハチの巣の中で眠っていたらしい。大好きなハチミツに囲まれてクマは心底幸せそうで、ふわりと甘い香りが漂ってきてハッピーエンドを迎えれば脱力して癒されてしまった。忙しなくはあったがすっかり疲れは取れて満足気な相手にこちらも頷き返す。ツボを降りて出口に向かえばクマのグッズが大量に売られている店へと出てくる。今日口にしたものといえば食事系のものが多く、まだ甘いものは口食べていない。先程の甘い香りに誘惑されてしまったのか口はスイーツを所望するようになっていて)

振り回されるのが楽しいと思っているのは理解したよ。 ＿ ああ、彼に釣られてすっかり甘いものの口だ。時間も良い頃合だしおやつでも買いに行こうか。
(先程から何かとクマと自分が似ていると主張するがその表情は面倒くさそうな物ではなく楽しそうだ。つまりそういうことなのだろう。悪くない意図を感じ取れば自然とこちらも笑みが浮かんで前向きな解釈で言葉を返した。そうして無事に冒険を終えてツボから降りると近くで何かが売っているのか甘い匂いが漂っている。先程のアトラクションを踏まえて相手と同じく甘い物を食べたい気分もなってきた。時刻もいい頃合いでおやつとして食べてるにはピッタリの状況だ。早速ガイドブックを開いてスイーツ特集のページを開けばこれまたこのパークならではの甘いものが目白押しだ。「チュロスにアイス、ワッフルとティポトルタ…どれも美味しそうだ…」と目移りしていれば魅力的な数々に決めきれないでいて)

スイーツだけでもなかなかの数だな……せっかくならこれがいいんじゃねぇか？ハチミツじゃねぇけど、メイプルシロップがかかってるみたいだしな。同じようなもんだろ
(クマとの冒険ですっかり甘いものの口になった二人でガイドブックを覗き込む。食べ歩きできるものだけでも相当な数だったがスイーツもかなりの種類が用意されていてガイドブックの見開きいっぱいに様々な写真が乗っている。定番と言えるものから聞いた事のないスイーツまで種類は様々だ。こちらも暫く悩んでいたが、やはりこのパークならではのものが食べたい。となれば必然的にキャラクターに関わるものを選ぶことになって、このパークの主役であるネズミの顔の形をしたワッフルを指さした。食べ歩き可能で今しがた冒険で探していたハチミツと近しいメイプルシロップがついてくる一品で、ハチミツの香りにやられてしまった今の二人にはピッタリだろうと相手の方に目を向けて)

ワッフルか、美味しそうだね。場所は…朝に通った場所か、じゃあ早速行こう！
(二人で暫し悩んでいたが相手が指さしたのはネズミの顔の形をしたワッフルだ。このパークの看板とも呼べるキャラクターを型どり綺麗についた焼き色にハチミツと似ているメイプルシロップの文字、加えて【外はカリッと中はふわふわ】という説明書きを読むとますます興味と食欲がそそられる。笑みを見せながらその店の場所を確認すれば今日ゲートを通ってすぐの場所だと気付く。朝の段階ではオープンしたてだったが客が入って賑やかになったあの場所も見ておきたい。目的地が決まれば再び相手と手を繋いで歩き出す。ファンタジーっぽいエリアからキャラクター達が住んでいる街などをのんびりと見て回りながらもビクトリア王朝風の建物が並ぶ場所に戻ってきた。その店の中の一つ、アンティークな装飾のされたカフェを見つければ中からは食欲をそそる甘い匂いが香る。ガラス張りの窓からはワッフルを作っている所が見ることが出来て焼きあがったワッフルを皿に積み重ねていく姿に「アレは間違いなく美味しいヤツだよ、翔太郎」とキラキラした目を向けて)

だろ？あぁ、行くか。____すげぇ、あれ全部ワッフルか。確かにあれはぜってぇ美味いヤツだ
(おやつにワッフルを提案すれば相手からは好感触な返事が返ってきてこちらも笑みを返す。このパークならではのスイーツでいて手頃に食べられるのも理想的だ。自然とまた二人で手を繋いで目的地へと歩き出す。入口近くに戻ってくれば目的の店は軽く人だかりが出来ていてすぐに分かった。列に並ぶ間相手と並んでガラス窓の向こうを覗き込めば次々にキャラクターの顔のワッフルが焼きあがっていて、ほのかに香る甘い匂いの中美味しそうなキツネ色に焼き上げられたワッフルがひとつのお皿に高々と積まれると相手が目をキラキラさせるのと同じだけこちらは相手の言葉を繰り返すように呟きながら数度頷く。焼き上がりを見るだけで期待値はうなぎ登りだ。期待感を高められたあとにレジの順番が回ってきて二人分を注文すれば、焼きたてのワッフルが皿に盛られて手渡された。耳に生クリームが飾られしっかり目当てのメイプルシロップも付いている。ちょうど近場のテーブル席が空いていて「あそこ座って食べようぜ」と声をかけ)

ああ。 …では早速いただきます。 ん、想像以上の美味しさだ。焼きたてならではのカリッとした食感が良いね。
(調理風景を見ていれば待ち時間も飽きない物で実際に食べた時の期待が募るばかりだ。やがて順番がやってきて2人分注文すれは焼きたてのワッフルか皿に盛られて手元にやってくる。皿越しに伝わる熱が焼きたてなことを証明していて自然と口角があかる。相手か見つけてくれたテーブル席に目をやれば頷き、移動して席に着いた。甘い香りと見るからに美味しそうな見た目に我慢が出来なくなればちらりと相手の方を見てから手を合わせて付属のナイフとフォークを手に取る。生クリームとメイプルシロップもついているがまずは生地自体の味を楽しむべきだろう。一口大に丁寧に切り分け口に運べば焼きあがってカリッとした食感と素朴な甘さが広がって僅かに目を見開いた後幸せそうに表情を綻ばせる。更にもう一口分切り分け今度は生クリームをつけて口にすれば違った種類の甘さが加わって上機嫌に味わい)