鳴上 悠 2022-07-06 12:59:58 |
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材料があったら作って欲しい物あらかた作ってあげますから
(なんかすっかり世話の範疇を超えてるのは気のせいだろうか。
仲間にオカンみたいと冗談で言われることもあって今まではそれを否定してきたが、流石に自分でもそれに近いという自覚はある。
少し冷静になって手が止まってしまったがだからといって辞めようとも思わず子供に言い聞かせるような言葉を返せば卵を器の中で混ぜて味付けをする。)
ありがとうございま、ッ…! いった…、
(食器を準備してくれた彼に御礼を言おうと一度器を置いて彼の方を向いた瞬間、バランスを崩して倒れかかってくる身体。
咄嗟のことで支えることも受け身も取れずに乗ってきた体重のまま彼の下敷きになる形で床に倒れ。
走る痛みに顔を顰めながらも上に乗ってきた彼見上げ)
ぷっ……君さ、僕の母親気取り?
(その発言に思わず素で笑ってしまう。
もはや悠君は僕が心配というより、僕の世話をとにかくしたいだけなんじゃないかと思い始めてきた。それを認識すると少し空っぽの胸が埋まった気がした)
……っててて……。ゴメン、悠く―― !?
(悠君が呻く声が聞こえた。
手に取っていた器は茶碗だった為落としても割れずに済んだが、
僕はそのまま彼の方に倒れてしまったようだ。
こちらも痛みが走っているが、両手を床につき上半身を起こして謝る。
途端、僕は今悠君を押し倒してしまっている状態になっている事に気づき言葉に詰まった。
目線の下の彼は、僕の顔を見上げていて)
,…………っ……、…その…、積極的ですね?
(顔を見上げればすぐ側に彼の顔。
至近距離といっていい近さと上に乗られていることに気付けば一旦思考が停止した。
昨夜抱きしめた時も勿論密着していたが、その時は色々考えて何とか彼との繋がりを繋ぎ止めようと必死だった。
だが今は自らの意思が介入しない距離感にフリーズした後に状況を理解しては一気に顔に熱が登ってきた。
混乱の中、その場から動けずに赤くした顔で彼を見上げつつも、何とか空気取り持とうと口を開くがうまい言葉が浮かばず。
思わず頓珍漢なことを口にして)
(見る見るうちに、悠君は何を思ったのか顔を赤くし始める。
昨日僕を抱きしめた時はそんな顔をしていなかったのに、なぜか今の彼の顔は突然の事で驚いて恥ずかしがっているような、同時に何かを期待しているような、そんな表情をしていた)
……は!?積極的……って、いや、僕はそんなつもり……
(状況が状況なだけに悠君の言った言葉に僕は慌てふためいた。
しかし――恐らく慌てて否定をする僕の様子の方が、彼には余計に怪しさを感じさせてしまうのではと心の隅で思っていて。
僕は一刻も悠君の上から退きたかったのだが、
何故だろう。
もう少し、赤く染まったその顔を見ていたい気もしていた)
(単なる事故で意図は全くない。
そんなのは分かっているのに妙に意識してしまうのは何故だろうか。
その理由は何となく知らない方が良い気がしてとりあえずこの状況を何とかしようと声を掛けるが視線は逃げるように反らしていて)
冗談、ですよ。……そろそろ、退いてもらっていいですか?
(いつもより早くなった鼓動を聞かれないように平然を装った喋り方をすれば自分から離れるようお願いして)
ホントに?……顔、赤くなってるけど。
(視線を逸らす悠君に、そう声をかける。
――いじめてやりたい。
そんな欲望のような感情が沸き起こってきた。
普段あまり表情を変えなさそうな悠君が、今は珍しく顔を赤くしているのを隠そうとしている。
そんな彼の姿を見ていたら、思春期らしいと愛しく見えてしまい
退くつもりが消え失せるのも尚更だ。
僕にその気は無かったはずなのだが、それは段々と強くなってきている。
悠君の離れてほしいという願いを耳に入れず、口元ににやりと笑みを浮かべると僕はもう少しだけ顔を近づけ)
……ねぇ、僕に何かされると思ってた?
(顔を近づければ、悠君のものらしき心臓の鼓動が聞こえていた)
それは…、
…あなたが寝惚けてそう見えてるだけです
(とりあえずこの状況を何とかしたい。
顔色について指摘されると図星で、だけど認めたくもなくて。
あくまで彼の見方の違いだと言い張って何とか追及から逃れようとし。
良くも悪くも彼は何かに執着を持ったり気になったりしない。
だからこうすれば直ぐに興味をなくして退いてくれると思ったがいつまでも退く気配はない。
何かあったのかと反らしていた目線を戻したのが不味かった。
先程よりも近い位置に彼の顔があってその口元は楽しげにつり上がっていて。
思わず小さく息が漏れた。
正にやぶ蛇だ。
直ぐに視線反らすも一度意識すれば心臓がうるさい。
そこに意地悪な彼は更に疑問を投げかけてくる。
自分は彼に何をされるのを想像した?
)
っ…、思ってませんから、子供を揶揄わないで下さい
(隠していた何かに気付いてしまいそうで、赤くなったのを隠すように顔を背け何とか否定の言葉を紡ぎながらも片手で彼の肩を押してこれ以上近づかれぬよう距離を取ろうとし、抗議の声を上げ)
(僕が寝惚けているせい、と此方の見えている
彼自身の表情を否定する悠君に対して、もっと追及してやりたくなった。
昨日、僕が真犯人である事を知ってもなお僕を受け入れたのは悠君だ。それを今日に限って拒むのは身勝手にしか思えない。
ならいっそ、僕の事しか考えられないようにしてしまえば――。
先程まで腹の虫が鳴っていたのはいつの間にか消えていて。
僕の声に悠君が小さな息を漏らす。それはハッキリと僕の耳に入った)
あれれ、自分で子供って言っちゃうんだ。
子供扱いを嫌ってたクセにさ……それに、ホントに僕に離れてほしいの?
……悠君?
(肩を押されながらも、顔を背ける彼に僕は追い打ちをかけようと
相手の心をかき乱してやるように言葉を繋ぐ)
(アパートの台所前の床で彼の身体の下に閉じ込められている。
手錠やらで縛られている訳でもなく、押さえつけられている訳でもないのにそこから逃げられない。
――それが逃げたくないのかは判断がつかないままで。
彼の口調は未だ楽しげでいつもは気にならない態度も今は憎らしい。
顔が熱いのも身体が動かないのもあなたのせいなのに、と認められたらどれだけ楽だろうか。
子供扱いされたくないといいながら子供で逃げようとする自分を棚に上げて言い訳して)
子供なのは事実ですから。
っ…分かってる癖に、…ほんと性格、悪い。
(心を掻き乱すような問い。
絶対この人は分かってて、意地の悪い聞き方をするんだ。
人殺しに人格を求めても仕方ないとは思うが、今は言わずには居られなくてこっそり彼を睨みつけながらも悪態ついて
そんな状態で追い打ちをかけるように名前を呼ばれるとそれだけでぴくりと肩ふるせて)
(早朝の台所前の床。
僕が悠君を押し倒している場所だけ、時間が止まったような感覚だった。
彼の顔はずっと赤いまま。
抵抗するような素振りも見えない。
それでも口では拒絶する所がやっぱり子供だ。
本心とは正反対の事を言い、此方を余計に刺激してくる。
悠君はこんなに悪戯心をくすぐる人間だったんだろうか、と思いながら)
……じゃあ……言ってごらんよ。離れないで……どうしてほしい?
(『分かってる癖に』という言葉を聞いて、僕はゆっくり、吐息と共に問う)
(嫌だと聞けば大抵な人は離れていくのに彼はそのまま。
余程自分のこの姿が面白いのだろうか。
本当に悪い大人だ。
それでも彼を嫌いになれないのだからどうしようもない。
このまま黙秘を続けようと口を噤むが、何処か優しく感じるような口調と至近距離で感じた吐息にぐらりと理性溶かされそうになるとそっと口を開いて)
……っ、…きす、されるかと…おもって
(浮ついた瞳向けると彼に促されるまま消え失せそうな声で白状して)
(悠君の眼が僕に向けられ、発せられた言葉。
消え失せそうなか細い声だが確かに聞こえた彼の望み。
その顔は、今にもして欲しいと強請っているようにも見えてくる。
僕の身体が熱くなってくるのを感じた。
もはや、朝食なんてどうでも良くなっていて。
僕は口角を上げる。
そして、何も言わず悠君の唇に僕自身の唇を重ねた)
(言ってしまった、と背筋が冷たくなって視線を伏せた。
ドン引きされた?それとも気持ち悪いと思われただろうか。
沈黙が痛くてこのまま死んでしまいたかった。
でも何とか誤魔化そうと「なんて冗談ですよ。」と口が紡ごうとして恐る恐る見上げると彼と目が合って。
その楽しげな笑みに目を奪われた。)
…なんて、ッ!?、
(それからはスローモーションで近づいていく彼の顔。
何故なのかと疑問が頭を支配してはその場を動けずにいるとそのまま彼が近づいて唇に柔らかな感覚がした。
その意味に気付いた瞬間、目を見開いて身を硬直させ)
(なにかを言おうとしていたようだが、それは僕の口によって防がれる。
そのままずっと唇を離さず、片方の手を悠君の後ろ髪に回した。
より密着させるように。
僕から、逃げられないように)
……。
(同じ男なのに柔らかい感触。
僕は不思議な心地よさに身を投げていた。
目を見開いて身体を強張らせる悠君は
憎たらしくもあり、愛しさもある。
そんな彼を見て溢れ出すこの欲を、どう止められようか――)
(質の悪い冗談だと初めは思った。
だから一瞬触れるだけで直ぐに離れると思ったのに予想は裏切られ、逆に後ろ手が回って更に密着した。
ますますパニックになる。何故が頭の中を支配する。
この人の考えてることが心底分からない。
――だけど決してキス自体は嫌ではなくて。
真意を探るように彼に目線を向ける)
…!……、っ、…
(一度落ち着こうと唇を離そうとすればまた強引に重ねられて。
それを何度も繰り返す。
柔らかい感触と伝わる熱はゆっくりと心の何かを溶かしていくようで
長くなっていく口付けの中、見開いていた目はうっとりと溺れるように細められていき)
(後頭部へ手を回し、唇が離されれば
息を吐きながらもう一度。
もう一度。
悠君の頭をそのままに、長い口付けを。
――しばらくして、顔を離す。
彼の眼は溶けたように細くなっていた。
肩で息をついてから、僕は尋ねる)
君、昨日僕の『友達1号』って言ったよね?その言葉に責任、持てる?
(悠君の目から視線を外さず、薄く笑いながら)
(離れたらもう一度。
言葉を交わす訳でも同時に何かする訳でもない。
意味は分からずとも不思議と心地好いのは確かで、ただ唇を重ねるだけの行為に身を委ねていた。
そっと向こうから顔が離される。
ようやくまともに息が出来て何時もよりも深く呼吸しなからも何処と無くふわふわした気分からまだ抜け出せないでいた
そんな中彼に問われる。
確かに昨日言ったことだが、キスをした後に聞く事だろうか。
これが友人の範疇なのかは微妙ではあるが今でもそう思ってることには違いなく)
…?…まあ、はい、友達だと思ってます…
(問いの意図読めないのか不思議そうにしながらも肯定の言葉告げて)
(離した顔の下、彼は息を深くして整えようとしている。
僕はにっと笑って言葉を続けた)
それなら、君は僕の『共犯者』ってことになるけど?
他のお友達はほっといて、僕の味方をするって事になるよ。
(相手の回答を待つ。
悠君はこの1年間、事件を終わらせる為に仲間と一緒に動いてきた。
それを無駄にする事なんて簡単にする訳がないか、と
頭の中で拒否の意を示された場合も考えていて。
しかし。
僕は何があっても、悠君を逃がすつもりは無かった。
その為だったらどんな事だってしてやる。
そう思いながらじっと彼の顔を見つめ)
…共犯者、…
(浮ついた頭の中でも共犯者という言葉は重く響いた。
殺人犯の正体を知っていて、それを放置するのは確かに共犯と言えるだろう。
突如出された選択。
何も無ければ昨日のように直ぐに彼のことを受け入れただろう。
だがそれを選ぶというのは彼の言う通りほかの仲間、自称特別捜査隊もおじさんを欺いて、信頼を無下にするのと同義。
これまで必死に追ってきた事件の真実も築いてきた絆も放り出せるかという残酷な問いに息を詰まらせてしまって。
すぐに答えを出すには重すぎる判断。
その重圧に赤かった顔はすっかり青ざめ、助けを求めるように彼に向けた目線は迷いに揺れていて)
(選択を迷い、助けを乞う眼。
僕はただ彼の青ざめた顔をじっと見ていた。
その眼は揺れており、どうすれば良いのか分からない葛藤を映している。
僕はその迷いを切ってやろうと、僕は目元を歪ませ口を開いた)
早く決めな?
じゃないと……今度は僕が、菜々子ちゃんをテレビに入れちゃうよ。
生田目の時のようには行かない。僕の世界に取り込んでやるさ。
(もちろん、これは彼に決断を焦らせる為の冗談だ。
だがきっと僕の顔を見ていれば、本気だと受け取るかもしれないなんて思い)
それは駄目だっ!
お願いだから、菜々子には手を出さないでくれ…
(どちらを選んでいいのか分からなかった。
だけど従姉妹の話が出れば大声と共に彼の肩に掴みかかる。
彼女がテレビの中に連れ込まれたとわかった時、生死をさ迷っていたとき生きた心地がしなかった。
それにあんな幼くて可愛い従姉妹を巻き込んで再びあの恐怖を感じさせるなど出来るわけ無く焦りに焦った表情でやめてほしいと懇願して。
これで選ばないという選択肢は実質なくなってしまった。
何が正しいのか自分がしたいのか困惑しながら再び彼に目線向け)
…足立さんは、俺の事、裏切りませんか?
(共犯者になれば彼は全てを見せてくれるだろうか。
本性を知ったからこそ、彼を選んだとしてもあっさり捨てられる未来も容易に想像つく。
例えそうだとしても嘘をつかれる可能性だってあるが今は縋れるものが欲しくて、恐る恐る彼に問いかける自分の天秤は若干彼に傾きつつあって)
ッ!……冗談だよ、そんな心配しなくても、
僕は堂島さんや菜々子ちゃんの事は気に入ってるんだから。
そんな事するワケないだろ?
(突然肩に掴みかかられるが、へらへらと笑ってみせる。
僕の肩を掴む悠君の顔は、僕がそうする事を
心からやめてほしいと願っているようだ。
……だが、彼が裏切った時は別だ。
何せ、僕は菜々子ちゃんが生死を彷徨っていたあの時
音を立てずに病室へ入り、生命維持装置を外そうとしたのだから。
その瞬間に悠君や堂島さん、菜々子ちゃんと過ごした日々が
脳裏をよぎって果たせなかった。
でも、きっと僕はそれで良かったのかもしれない。
そのお陰で、今こうして悠君を実質僕の仲間に引き込む事ができるのなら)
……あぁ、僕は裏切らないよ。
(彼の問いに、僕は素直に返答する。
僕を庇い、友達として接する事を選んだ彼に対して僕自身が裏切る理由は何処にもないからだ)
っ、冗談でも言わないでください…。
(例え冗談でも聞きたくない提案に一度キツく睨みつけてから、手を解放する。
深呼吸すれば頭に上った血が徐々に落ち着いてくる。
もしここで彼を選ばなかったら直接仲間達に危害が加えられるかもしれない。だからしょうがない。
……なんて勝手に世間体向けの言い訳が浮かんだ
その部屋を訪れて、殺そうとした彼を受けいれた時から心はすっかり彼の方に傾きかかっていたのだ。
それの後押しするように裏切らないと語った彼を信じてみたいと天秤にまた一つ理由が乗っかって 。
深く息を吐き出した。それから再び彼の方を向けば)
……、いいですよ。あなたの…足立さんの共犯者になります
(静かにそう覚悟を決めて伝えた。
それが何を意味するのか今度こそ分かっていながらも目の前のひとりぼっちの彼の手を取ると告げて)
ごめんごめん。
(僕の肩を掴んでいた手が離れる。
睨みつけられるが、僕は気にしなかった。
悠君は何かを考えているような顔をし、
その後ひとつ深く息を吐いたと思うと僕を見て口を開く)
……!
(『共犯者になる』。
その言葉を静かに、そして覚悟を決めたように言った悠君が僕の手を取った)
そうか……。それじゃあ……ちょっと待ってな。
(僕はそう言って立ち上がり、部屋の角にある棚をあさって一枚の紙を取り出す。
そして表は見せないように持ったまま悠君の所へ戻れば、ひらりと表を見せた。
その紙は、堂島家に届いた脅迫状――。)
コレ、うっかり鑑識に回し忘れてたんだよねー。
……犯人の僕としてはこいつがあると困るんだけど、
共犯者なら証拠隠滅に協力してくれそうだなぁ……、……ねえ?
(シャツのポケットからライターを置くと、僕は果たして相手がどんな行動を取るのか
挑発するような口調で言い、敢えて悠君の方を見ず後ろを向き)
(彼が立ち上がってどこかに行く。
漸く解放されてこちらも立ち上がって彼の動向を観察する。
彼が持ってきたのは1枚の紙。
表に返されたそれは見覚えがあって。)
…、文字通り共犯者になれってことですか。
(立証が難しいであろうこの事件で、真犯人に繋ぐことが出来る唯一の証拠。
それが今自分の手にあった。
これをおじさんにでも渡すか、それとも彼の置いたライターで無かったことにしてしまうか、選ぶのは自分だ。
燃やしてしまえばもう今までの日常に戻る事は出来ない、彼のやった事に加担して文字通り共犯者だ。
そうなれば彼から逃げられないだろう。そしてきっと彼はそれも込みで持ち掛けたのだから本当に姑息で性格が悪い。
良心は辞めろと告げている。――だけど心の奥底、影は別の事を囁いていて。)
足立さん、…俺らが求めていた真実って呆気ないですね
(ライターを手に取る。その手が震えているのには見ないフリをして火を灯す。
だけど自分の決断を彼には見届けて欲しくて名前を呼んだ。
火をかざした紙は簡単に燃えていく。
罪悪感か、今まで探し求めていた真実がこんなにもあっさりと闇に葬られることへの感傷か。
泣きそうなそれでいて諦めにも似た笑み浮かべればぽつりと燃え尽きていく紙片見ながら呟き)
(僕の名前を呼ぶ声と、ライターの火がつけられる音が聞こえる。
まさか――と思い振り向けば、悠君が今にも泣きそうな、それでいてすべて諦めたかのような顔をして、僕が渡した脅迫状を燃やしていた。
じわじわと燃え尽きていく紙片、そしてそれを燃やした彼の顔を見て
僕は歪んだ笑みを浮かべれば堪えきれずに)
……くくっ、はは、あっははははは!ホントにやっちゃったよ!
これで君は僕の仲間入りってワケだ……ぷっ、はは、あははははは……。
(こうもあっさりと行くとは思わなかった。
この行動をした事で彼は、僕以外の全部を裏切った。
一緒に事件を調べていたお友達も、菜々子ちゃんも、堂島さんの事も。
これで、僕から逃げられはしないだろう)
(全部なかった事にしてしまった。
真実はこのアパートの一室で闇に葬られてしまった。…自分の手で。
やってやったという達成感とやってしまったという罪悪感が押し寄せ、心底気持ち悪い。
堪えきれないとばかりに笑う彼の方を向き)
…はは、これで足立さんの仲間、共犯者だって信じてくれましたか?
(自分も無理に笑おうとして出たのは乾いた笑い。
押し潰されそうな罪の意識の中、一人だけでも、全てを委ねた彼だけにはこの行動を肯定して欲しくて、褒めて欲しくて縋るように問いかける。
影を落とした目には彼しか映らないでいて)
(彼の眼には光がなく影がかかっている。
まるで、僕みたいだ。
こんなクソみたいな田舎に鬱屈して憂さ晴らしで人を殺していた
僕の気持ちなんか彼には分かりもしないだろう。
しかし犯人に加担する――殺人犯の仲間になった事で
少しは理解があったものもあったのではないだろうか。
ようやく笑いがおさまってきた所でふうと息をつき)
やば、腹痛い……、ああ、信じるよ。よくやってくれたねぇ。
そんな君に、ごほうび。
(そう言って悠君の背中に手を回すと此方へ抱き寄せ、彼の首筋に口をつけて)
(彼は未だ笑い続けている。
自分が唆したくせにそんなにこの行動が面白かったのだろうか。
……もしかしてこれも遊びだった?
ふと浮かんだ疑念も『信じる』という言葉で消えてしまった。
彼の唯一の仲間、共犯者。
その言葉だけで胸が甘ったるい何かで満たされていく。
彼の言葉に暗い笑みを交えて言葉を返すくらいには)
あ、りがとうございます。
…、ッ! な、にして…
(ご褒美、と聞きなれない言葉共に抱き寄せられる身体。
抱きしめられるのかと言う予想はまた外れ、今度は首筋に落とされる口付け
普段人に触れられることのない場所への行為にまた体温上昇させ、後退りしそうになりながらも困惑の声あげて)
……やめていいの?
(目線を困惑の声をあげる彼に移し、口角を上げながら問いかけた。
体温を熱くさせた悠君を逃がさまいと、
後ろへ下がろうとするその身体をもう片方の腕で抱きしめる。
暗い笑みを浮かべていた彼の顔は、
先程のように再び赤くなり始めていて)
かわいくないね。素直に受け入れなよ。
(薄く笑いながら、耳元で小さく囁いてみせる)
(まるでさっきの巻き戻しのようだった。
もう片方も抱きしめるように回された腕からは逃げられずに楽しげな彼に目線を送る)
だって、まだそういうのじゃないですか、ら
(こういう事をするのは恋人同士で今の自分達には当てはまらない。
律儀に順序や規則を守ろうとする所を見せつつもろくな抵抗はなく。
まだ、に密かな期待が詰まっているのも無自覚で近い距離の彼に動揺見せて)
(『まだ』という言葉を聞けば、彼は今以上の関係に
なりたいと期待しているように思えた。
僕は首筋から顔を離し悠君の目の前まで近づけて)
じゃあ――今からなろうか。
こんな事に順序もルールも、なんもないんだよ。
(と言った途端に、台所の方からしゅうう、と
鍋が吹きこぼれたような音が聞こえ)
(彼がまた近付く。
彼の言葉は全て悪魔の囁きのような危うさと魅力を秘めていて。
また誘われるまま頷きそうになって)
…、っ、もう、そんな冗談ばかり言ってたら朝食無しにしますよ
(鍋が吹きこぼれそうな音が意識を現実に返す。
彼の身体を押し除けて拘束から逃げれば彼の言葉を冗談と称して文句を言い。
気持ちを落ち着けるために彼に背を向けると吹きこぼれた鍋の始末を始め)
痛っ。 ……
(鍋の音に反応した悠君に身体を押しのけられる。
後ろがすぐ壁だったのを忘れていてごん、と音が鳴った。
ぶつけた腰の辺りをさすりながら
僕は鍋の始末と朝食の支度を再開する彼の後ろ姿を見ていた。)
……冗談のつもりじゃ、ないんだけど。
(ぼそっと小さく一言吐けば、テーブルの傍に
もう一度座ってぼうっと虚空を見上げる)
(ごん、と鈍い音が聞こえた気がするが気遣う程の余裕はない。
一瞬チラ見してから調理を再開するが今の心境では彼の呟きは耳に入ることが無かった。
雑念を考えぬよう卵焼きを焼き、パックご飯を温め、キャベツを煮込むなどをテキパキとこなせば簡単ではあるが朝食は出来た。
彼の持ってきて器にそれぞれ盛り付けるとテーブルに運んでいき)
…出来ましたけど、食べますか?
(何処か虚空を見る彼に話しかけつつもテーブルには2人分の朝食が並んでいき)
(悠君が朝食を持って来るとテーブルに並べていく。
確かに簡単なものではあるが美味しそうだ。
声をかけてきた彼に僕は我に返って)
……ん、食べるよ。君がせっかく作ってくれたんだし。
いただきまーす。
(早速箸を手に取って次々と口に入れる。
どうやら消えていた空腹感が戻ってきたようで、
箸は自分でも驚くほど進んでいった。
キャベツは後のお楽しみにしようと敢えて残し、
先に主食に手をつけていく)
あともう少し経てば、君ここから都会に戻っちゃうんだっけ。
っはは、良かったねぇ?……事件が終わって、さ。
(闇に葬られたが、事件は終わったのだ。未解決という結末で。
そして、それを選んだのは目の前の彼。
普段通りに笑いながら最後の一言だけ、僕はトーンを落としてそう言った)
いただきます。
(彼が食べると言えば何処と無く嬉しそうにして自分もテーブルにつく。
表情と食べるスピードを見る限りそれなりに好評のようだ。
自分も礼儀正しく手を合わせれば箸を手に取り食事を始めた。
日常、って感じがした。)
あと二ヶ月くらいです。
…、…そうですね。警察の方もそろそろ落ち着いてくる頃じゃないんですか?
(春が来て新学期になれば自分はこの街を去る。
その時には共犯者となった彼ともお別れなのだろうかとモヤモヤした気持ちを抱えて。
そんな中でトーンの下がった彼の言葉に思わず箸が止まる。
事件は終わったのだ。真実を見ないことにしてこの手で終わらせた。
思わず目線が伏せる。吐き出しそうになる罪悪感を何とか咀嚼した卵焼きごと飲み込んで、静かに彼に合わせて嘘をついた。
その現実をあまり直視したくなくて、淡々とを努めた声色で彼の仕事に話を振って)
二ヶ月ねえ、短いような長いようなビミョーな感じ。
ま、そうだね。僕もそこそこ羽を伸ばせるっていうか。
とりあえず堂島さんに連絡を入れとかなきゃな……
……って、君を泊めてた事言うの忘れてたよ。やば。
ちょっとゴメン!
(僕と同じように卵焼きを咀嚼する悠君の顔色と
声の雰囲気から、必死に罪悪感を消し去ろうとしているのが伺えた。
けどこういう時にからかうのは止めようと思い
僕は彼の話に合わせる。
その途中、堂島さんの名前を出した事ですっかり
連絡する事を忘れていた事に気づき
僕は携帯を出すと慌てて堂島さんへ番号をかけた)
あー、もしもし堂島さ……って、いきなり怒鳴らないで下さいって!耳痛くなりますから!!
スミマセン、悠君は昨日夜中に出歩いてたんで……心配になってウチに泊めました。
え?……いやいや、僕だってちゃんと子供の面倒くらい見れるんですからね!?
いつまでもダメ刑事扱いしないで下さいよ。
今までの事件で何回ご一緒したと思ってるんですか、もー。
……あ、菜々子ちゃんが心配してました?ああ、じゃあ
丁度そばにいるんで、代わりますよ。
(そう言ってから、携帯を悠君の方へ差し出し)
菜々子ちゃんが話したいってさ。出てあげな?
…あ。
(そういえば彼の部屋に招かれたという珍しさからすっかり連絡をすることを忘れていた。
小さく声を漏らし携帯を確認すれば幾つもの不在着信。
このご時世、朝起きたら居なかったなど心配でしかない。
彼が電話をかけるのを心配するように見つめていると案の定こちらまで聞こえる怒鳴り声。
申し訳なさはあるが、彼の話す内容だけでもどんな会話なのか容易に想像がついて思わず笑ってしまった。
いつもの足立さんだ。
そう思いながらすっかり傍観者としてその様子を見つめていたが不意に携帯差し出されると一瞬キョトンとするも素直に受け取り耳に当て)
菜々子?うん、俺だ。
心配させてごめんな、今足立さんの家にお泊まりしてて。
…うん。じゃあ今日はお詫びに昼ご飯、菜々子が好きな物を作ろう。何が食べたい?
分かった。もうちょっとしたらオムライスの材料買って帰るから一緒に食べよう。じゃあ1回おじさんにも代わってくれるか?
…すみません、連絡するの忘れてました。…ええ、足立さんの家にお邪魔になってて。
(従姉妹の拗ねたようなそれでいて心配した声に、申し訳なく言葉を返す。だがお昼ご飯の約束をすれば途端嬉しそうな声に変わる可愛らしい様子に安心したような一際柔らかな笑みに自然となって通話を続けた。
そのまま堂島さんに代わって貰えば連絡しなかったことを真摯に謝罪した。彼との会話である程度怒りは冷めたのか小言程度で済んだが彼との仲について聞かれると一瞬目線を彼の方に向け)
仲良くして貰ってますよ、話も合いますし。
今一緒に朝食食べてるのでこれが終わったら買い物して帰ります。
…はい。じゃあ代わりますね
(そう告げれば彼に携帯差し出して)
(差し出された携帯を受け取り)
はい、代わりました足立です。……いや、本当スミマセン。
バタバタしてたもんで、連絡を取るタイミングがなかなか。
はい。はい……ああ、はいはい。調書の整理、明日からですか?
分かりました、それじゃあ明日、署で。……はい、大丈夫ですって。
任してください。はいー、お疲れ様です。そんじゃ切りますね。
(色々とグチグチ言われたが、『悠を頼む』と言われ
堂島さんには携帯だから見えないと思いつつも笑みを浮かべて返し、
通話を切った)
……ふう。ダメ刑事のフリは疲れるねぇ。
(頬杖をつき、片手でキャベツをつまみながらぼやく)
あ、ご飯終わったら帰っちゃうの?
(先程、菜々子ちゃんや堂島さんと通話していた時の悠君の
言葉を思い出した僕はそう言いながら彼に目線を向ける)
…、足立さんの場合半分くらい素じゃないですか?
(携帯を受け取った彼は相変わらず叔父にこき使われているようだ。
ある意味仕事上の彼を見たような気がして物珍しそうにその様子を眺めていて。
通話を切った彼は行儀悪く頬杖をつくが、それを直接指摘せずに失礼なことを告げ)
そうですね、約束したので。……嫌でした?
(彼の問いに肯定示しながらも『帰っちゃう』という言い方が何処か居てほしそうな印象を受ければ真意探ろうと問いかけ)
うるさいな。この皿のキャベツ、全部突っ込ませるよ?
……なんてね。
(一瞬ムカついて、その失礼な口を閉じさせてやろうかと思った。
しかし図星ではあるのですぐに軽く笑う。
彼はこのまま店に寄ってから帰るつもりのようだ。
僕としては、本当だったらまだ家に居てもらいたいのだが
悠君は可愛いいとこと昼を過ごしたい気持ちもあるだろう)
菜々子ちゃん寂しがらせちゃうでしょ。
それに堂島さんも心配するし。今日は帰ったら?
(此方の真意を聞いてくる彼に、僕は何の意図もなく気遣う様子を見せ)
好物くれるなんて優しいですね
(どうやら図星だったようで悪態が飛んでくるが不思議と怖くはない。
先程からからかわれてばかりだったのもあり、反撃とばかりに彼の好きな食べ物を絡めながらもわざと好意的に解釈して笑い。
彼の意見を尋ねたのに一般論で返ってくればあまり面白くもなく)
…足立さんの意見聞いたつもりだったんですけど。
まあ帰りますよ。…次、いつ来ても良いですか?
(食事しながらもこれが終われば帰ることを告げ。
本来ならばこのまま帰って終わる話。だけどまたこの部屋に来て食事を囲みたくてはこの次についてを話題にだして)
そこさぁ、好意的に取っちゃうトコ?
もう少し困った顔してよ。
(つまんねえの、と一言付けたしては
両手をやれやれと言わんばかりに振った。
悠君の顔を見るとどうやら引き止めてほしいようでもあるような、
複雑そうな表情をしている。
なんだ――僕と一緒じゃないか)
僕は休みならいつでもいいけどさ……その前に。
さっきの言い方、もしかして僕に帰らないでほしいって言ってほしかった?
(意見を聞いたつもり、だったという言葉に
僕は少しだけ口角を吊り上げさせて問いかけ)
困った顔の方が好きなんて、ホント性格悪いですよね
(自分の思い通りにならなければつまらないと投げ出す態度。
性格が悪いのは間違いないが、これがダメ刑事の面の下を自分は見れているのだと思えば機嫌は悪くない。
寧ろその誰かに影響されてかちょっとずつではあるが言い返すようにもなっていた。
次について問えば休みならいつでもという応え。
その休みがいつなのか分からない訳だが、『いつでも』に含まれた許容は何だか心地好かった。)
…足立さんがそう思ってくれてるなら。
(彼を見れば少しだけ愉快につり上がった口角。
それに図星だったと素直に返すのも何だか癪で、まどろっこしい言い方をして)
言うようになったねー、君。
まぁ、性格の悪い僕につかまっちゃったのが
いけないんだから諦めな。
(にや、と笑っては昨日同じ部屋で似たような事を言っていた
悠君の言葉を真似て一言。
僕の問いに素直に答えなかった彼の発言に、
今度は僕が試されているのかと思った。
――やはり生意気だ。)
……、ちょっとはね?
(悠君の顔を見ず、目線を逸らしてぼそりと答える。
僕だって素直にものを言うのはハッキリ言って嫌いだった)
(/突然の背後出し失礼します。私事で予定が詰まりはじめ
掲示板を見る余裕がなくなりましたので、申し訳ありませんが失踪します。
無言失踪は非常に悪いと思ったため、予め連絡しました。
今までありがとうございました。主様に良い縁が再び訪れることを願っております〆)
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