鳴上 悠 2022-07-06 12:59:58 |
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アリバイ工作に利用されてたわけですか
(問題なさそうなら何よりではあるが、サボりの口実に使われていたと聞けば意地悪な言い方をして)
うん、賢そうというか仕事出来そうな感じに見えます。…そうだ、…これでお揃いでしょう?
(メガネととりあえず目に付いたネクタイを軽く整えてやればパッと見の印象は変わり知能派に見えて素直に感想口にして。ふと自分もクマから貰ったメガネがあること思い出しては自分もかけてみて)
それは分かってますけど…。…ちょっとは
(彼の年齢も理解してはいるのだがつい世話を妬いてしまうのは癖なのかほっとけないのか分からず。追及するような視線受けると気まずそうに目を反らしてぽつり)
ほんとキャベツ好きですね、ジュネスで見かける時もいつも籠に入ってた気がしましたし。
料理本とか見てみたら案外出来るようになりますよ。
なら、朝もそんなに早くなくて良いですね。急な用事が入らないことを良いんですけど
(大分疲れているようだから可能な限りは寝かせてあげたいと思う。支度を始める時間を時計を見ながら考えつつもそう告げる。刑事という仕事上仕方ないがゆっくり休む為にも_それに少しでも彼と長く過ごせるようにも急用が入らないようにと密かに祈り。
そんなことをしていると彼は着替えもせず寝床に入ってしまって)
おやすみなさい、足立さん。
(シワがつくとか色々言いたいことはあったが素直におやすみの挨拶を返して。自由にしていいとはいえ、家主が寝ている間に勝手なことをするのは気が引けて冷蔵庫の中の食材のチェックと簡単な片付けをしてから自分も寝ることにする。
ふと目を向けたテレビの表面が波打ったのはきっと見間違いだ。
家主の邪魔になるとこに寝る訳にもいかず、テレビには映らない部屋の片隅の床の上で横になれば丸まって瞼を閉じて)
(寝静まった深夜。
僕はふと目が覚める。何の物音もしなくなった事から、悠君は眠ったのだろう。シーツを体から退け、起き上がって床の片隅に視線をやると、丸まって寝息を立てている悠君の姿があった。
不意にテレビから不思議な感覚がした。
同時にマガツイザナギが共鳴する。僕の中で、彼と話していた時に消えていたはずの黒い感情が蘇り、強く溢れそうになる。
チャンスは、今しかないのだ。
僕は音を一切立てないよう寝床から離れると、収納棚を静かに開け
スペアの拳銃を取り出した。
そして、ゆっくりと悠君へ近づくと、銃口を向けて引き金に指をかける。
このまま力を入れれば、彼は何も知らずに息絶える。
僕は冷たくなった彼をテレビに放り込めばいい。
そう考えていたが――
右手に、力が入らない。指先と銃口が震える。
僕は顔を歪めていた。冷や汗がこめかみから伝ってくる。
畜生、畜生。何で撃てないんだ。
俺はコイツをウザく思っていたはずなのに。俺ができなかった青春を謳歌して、その上探偵ごっこで事件を他の奴らと嗅ぎまわって。
目障りなのに。
……鬱陶しいガキなのに。
震えていた手の力が抜け、僕は拳銃を落としてしまった)
……ッ!
(物音のしない静かな一室だ。拳銃が落ちた時の金属音が明らかに耳に入るだろう。拾おうとするも、悠君が気づくのではとその場から動けないでいた)
(夢を見た。
濃い霧に包まれていた空間。
良く考えれば現実世界でもテレビの中でもおかしくない光景で正確には本当に夢だったかは確かではない。
自分は細い橋の上にいた。
今にも崩れそうなそれは前方と後方に繋がっていて、前方には光が刺していて後方は闇が広がり先は見えない。
それまで光の方向に歩いていた自分をなにか弱い力が引き止めた。
真っ黒なそれは自分が振り返ったのに気づいたなり闇の方向に消えてしまった。
一度通れば戻れなくなるような橋。
少し立ち止まってその闇を見つめていると急に足元は崩れた。
落ちゆく身体で最後に見たのは闇の先で静かに手を振っている彼とイザナギに似た影だった。)
……、あだ、ちさん?
(ガシャンとした金属音と目を覚ます。お世辞にも寝心地の良いとは言えない床の上では眠りも浅かったようだ。
何が起きたのかと上体を起こそうとしてまず目に入ったのは床に落ちた凶器、拳銃_人を殺す為の道具。
そして視線をあげると固まったままの彼の姿。
そのふたつと今までの疑惑が重なれば何をしようか明白で、分かってしまった。
やっぱりと何処か思う気持ちと信じたくない気持ちがぐちゃぐちゃになる。
息が詰まって苦しい中、冗談だと嘘でも言って欲しくて、助けを求めるように彼の名前を呼んで)
……。
(悠君が僕の名を呼ぶ。
その顔と震えた声は、僕が今からしようとしていた事が
嘘であってほしいと思うそのものだった。
やっぱり、悠君は僕が『真犯人』だと気づいていたのだ。
今の僕には数多く話してきた彼との記憶よりも、
僕を今日引き止めた理由がこの為だったのではないか、と考えていた。
僕の本性を暴く為。
僕のやった事が、悠君自身の想像通りだと確かめる為。
そう理解した途端に、身体が動くようになる。
銃を拾おうとした伸ばしていた腕を下ろし、僕は悠君を無言で恨みがましく見下ろしていた。きっとその顔は、彼が普段見る僕とは全く違う顔に映っているだろう)
(無音が部屋を支配する。
いつもなら言い訳だとかヘラヘラした笑みが直ぐに出るはずなのに今はただ自分を恨みがましく見下ろすだけ。
ああ、本当に彼が真犯人なのだ。
そして証拠隠滅の為に自分を殺そうとした。
先程の問いの答えは恐らくそういう事なんだろう。
だが、何故か自らの命の事よりも罪を知られた彼がこれからどうするかの方が気になった。
殺されそうになった。だけど殺されなかった。
その差にこれまでの交流とか信頼が影響があったのでは無いかと自惚れを抱いてしまう程彼のことを知ってしまったから。
心臓はバクバク鳴ってるのに頭の中は妙に落ち着いてしまって、彼のことを考える。
きっと何を言っても通じないだろうから、少なくとも今は敵意がないことを知って欲しかった)
……、撃ちたかったら撃って良いですよ
(床に落ちていた自分を殺そうとした凶器を彼に差し出す。恐らく撃とうとした時そのままで。そして彼を見上げれば自らの自惚れに全てを賭けて平然と伝えてみて)
(心臓の鼓動が激しい。殺意が滲み出てくる。
同時に撃ちたくない、殺したくない。そんな感情も出てきてしまう。
どうしてだ。
今までの悠君との会話、交流の中で、本当に友達という認識になってしまったのだろうか。それを頭から振り払おうとしても、抜けなかった。
脳裏に浮かぶ、きっと話していて笑っていたであろう僕と、彼の姿。
あの時の僕は、本当に笑っていたのだろうか。
……いや、今はそんな事はどうでもいい。
本当はビビっているクセに落ち着いた様子で撃っていいと言い放つ相手の態度に
僕はイラついて舌打ちをすると――差し出された拳銃を払いのけ、その首に手をかけた)
……生意気、なんだよ……粋がりやがって……
(自分の唇を噛みながら、声を絞り出す)
(彼が真犯人ならば陽介の好きだった人を、あのアナウンサーをテレビに突き落として殺したのだ。
そして仲間たちをテレビに入れるように生田目に何かしら吹き込んで、それでいて知らぬ顔で捜査に加わっていた。
本来ならば糾弾して恨んで今すぐにでも叔父にでも電話して逮捕して貰うべきなのだろう。
だけど、どうしても彼を残酷で姑息な凶悪犯だと割り切る事が出来ない。
見上げた彼は自分の行動にイラついて舌打ちをした。
こんな状況なのに彼の素が見れたことを嬉しく思う自分がいて。)
…っ、殺さないでくださいね。明日のご飯作れなくなっちゃうので
(彼が首に手をかける。その手の湿り気にびくりと肩が跳ねた。
確実に殺すなら拳銃の方が良いのにわざわざ首を締めるなんて。
怖い。だけどこのまま彼が行方を掴めなくなる方が嫌で、先程冗談半分に話した会話の言葉を繰り返す。
犯人だと知った今でもまだ彼と交流を続けるつもりだと明日の話をしながらも大人しく身を預けたままで)
……! 黙れ、この……ッ!!
(更に指に力を入れようとする――
が。
胸の奥から沸き起こってくるもう一つの感情。
それが吉か凶か、邪魔をしていた。
『悲しい』。
それが僕の胸を押さえつけていた。
今までで罪悪感なんて、微塵も感じた事が無かったのに。
こんな僕を見ても、僕にこんな事をされても、
憎悪の目で見るどころか、痛みを堪えながら普段通りの調子で一言言った悠君に対して、僕は)
いつも……生意気で……、……ウザイん、だよ……。
(僕は、嗚咽を殺しながら呟いた。頬をなにかが伝っている感覚がした。
悠君の首にかけていた両手の力が抜けていく)
…っ。
(捉えようによっては煽りにも聞こえたであろう言葉。
逆上した彼にそのまま首を締められるかもしれないと反射的に身を硬直させる。
だがいつまで経っても気道は閉まらずただ掌が首を置いてあるだけ。
様子を伺うように彼の方に視線向ければ今にも泣きそうな、
否、既に頬に一粒、二粒と涙が流れている。
自分よりも幾分も歳は上なのに、その表情も仕草も迷子の子どものように見えてほっとけなかった。
首にかけていた手の力が緩んだことをいいことに、それに自らの手を重ねると引き寄せると腕の中に収めてしまう)
…すみません。でも、辛そうな顔してたから
(自分に何処か似た彼。
迷惑だと言われようが身勝手だと言われようが手を差し伸べたかった。
このまま誰とも絆を結ばず全てを拒絶して生きていくのは寂し過ぎるはずだ。
大丈夫だと伝える為、あやす様に背中を撫でて)
何が信頼、友情だよ……。全部くだらな……
――ッ!?
(突然引き寄せられたかと思えば、
僕は殺そうとしていた相手、悠君に抱きしめられていた。
どうして、真犯人が僕だと分かったのにこんな事を。
冷たい床の上、身体は衣服越しに密着している。
心臓の音が聞こえていた。
それは僕のものなのか、悠君の心臓の音なのか理解がつかない。
頬を伝っていたもの――涙はまだ流れている。
僕は、相手の胸元に両手を置くと拳を強く握りしめた)
……クソッ……。クソッ、クソが……っ!
(背中を撫でられ、僕はとても悔しかった。そして情けなかった。
堪えきれずに涙声を漏らしながら、僕は握りしめた拳を悠君の胸に何度も叩きつける。しかし、力を入れることが出来なくて)
俺は、あなたが言った話をしても嫌な気分にならないとか、信頼があったって言ってくれた事、全部無かったことにしたくありません
(肩口が濡れいくのも今は何も気にならない。
胸を叩く両手すら本気で離れようとする程の力を込めてないことをいいことに腕から解放するつもりもなかった。
ただひたすら彼を受け止める。
この体温も心臓の音も生きているから感じられる物だ。
今この手が届く所に彼がちゃんといる。
彼の言葉の何処から何処までが嘘はか分からないけどあの時向けられた笑みは本当だと信じたい。
そのことを静かに、だけど芯を持った声で伝えて)
……悠……君……。
(静かに言った彼に、僕は目線だけ合わせた。
(悠君はずっと僕の身体を抱きしめている。
僕を離すつもりが無いのは、背中に回された腕から伝わっていて。
彼と交流していて楽しかった事。
僕が彼を少なからずとも信頼していた事。
――全て僕の中では取り繕った嘘のつもりだった。
それなのに、『無かった事にしたくない』という言葉に)
僕が犯人だって、分かったクセに……本気で言ってんの……。
(彼と視線か合う。
この選択がその他全てを裏切る結果になる現実から今は目を反らして、今は細い糸で繋がった彼だけを見つめた。
すっかり抵抗の一つも見せなくなった彼をただ受け止めていた。)
俺は誰かさんと違って、嘘は言いませんから。
(若干揶揄するような言い方をしながらそう呟く。
犯人だろうが、足立さんが足立さんであることには変わりない。
自分でも相当入れ込んでしまっていると自覚しながらも離れる気も起きずにいて)
(悠君の眼は、鬱陶しいぐらいに真剣なもので。
僕はその場から動く気も起きなかった。
僕が起こした行動を発端に起きた一連の事件を調査していたクセに、
僕を信頼し続けて、挙句には今までの繋がりを失いたくないと言った彼。
本当に、生意気で都合がよくて、
僕の心を痛ませてくる――。)
……バーカ。
(僕の事を言ったのだろう。そんな相手に僕は一言だけ恨み言を吐くと、
気づけば言葉とは反対に悠君の背中に腕を回していた)
……!
(向ける好意も信頼も今は独りよがりでも良いと思ったのに。
背中に手が回されると今度はこちらが驚く番だった。
だけどそれが彼なりの回答だと言うならば、ますますのめり込ませるには十分なもので硬直した身体は直ぐに溶け代わりに口元が緩んだ。
その頃には先程のような世間話が出来るくらい心臓の鼓動も落ち着いていて)
知ってました?バカって言い出した方がバカなんですよ。
(床に転がった拳銃も窓の外に広がる霧も見ないふりをしては子供が言いそうな言葉で返して耳元で楽しげに笑い)
(悠君の声と共に薄くだが耳元に吐息がかかった気がして、身体がびくりとした。
その口調は、先程までくだらない話や明日の話をしていた時と同じもので。
気づけばもう涙は流れていなかった)
そういうトコ。嫌いなんだよ。知ったかぶりしてさ……
……。
(僕は悠君の背に回した腕をそっと離そうとする。
ずっとこのままでいると、何だかおかしな気持ちになりそうだったからだ)
…なんとでも言ってください。これが俺ですから
(回されていた腕が離れていく感覚がして、自らも漸く彼を離す。
改めて見た彼の顔は涙は止まってはいるものの泣いたせいで若干目が腫れてるようにも見えた。
そんな状態で言われた『嫌い』も今は差程気にならない。
好きの反対は無関心だ。
彼には悪いが変わる気は無いと告げて)
…眠れそうですか?
(衝撃的なことがあったとはいえ今は深夜。
明日も今日と同じく生活していくためには睡眠は必要で、殺されかけたことなど無かったかのように問いかけて)
(憎まれ口を叩いたものの、彼は全く気にせず寧ろこれが自分だと意思を曲げるつもりが無いという風に言った彼に、僕はふと呟く)
それが君、か……。
……ホントの僕って、どこなんだろうな。
君みたいに望まれた何かさえ持っていれば、僕は……。
(自分の身体から悠君の腕が離れる。
久しぶりに泣いたかもしれない。両目がとても重たかった)
……眠れるワケないだろ。
(殺されそうになったはずなのに、それを無かった事のように眠れるかを尋ねてくる。僕は目を擦りながらも本音を零した。
当たり前だ。あんな事の後にすぐ寝れるなんて方がおかしい。
しかし寝なければ署での仕事も休日もままならないと心の中で迷っていて)
…こういうのは案外、ふとした時に気付くんだと思いますよ。
何が好きとか嫌いとか、譲れない物だとか
(自分なんて1番近くにあって1番分からない物だ。
影と対峙した仲間達だって最初は否定したり無自覚なことが多かった。
あくまで何となくでしか分からない本当の自分について、自分の考えと共に例をあげて述べてみて)
だろうと思いました。このまま夜更かしするのは俺は良いですけど足立さんは何かあったら不味いですし…。
…とりあえず、横になります?
(この状況で眠れるのは相当精神が図太くないと難しいだろう。高校生の自分であればこのまま起きておくというのも有りだが、大人の彼を付き合わせるのは流石に忍びなく。
悩んだ末に妥協案出して)
ふとした時……ね。
……、……僕は、君とは違ってたみたいだ。
はは、だからウソばかり重ねてたのかな。
(悠君自身の考えであろう返答に、僕は何時間ぶりの感覚で弱弱しい笑みを浮かべた。
自分でも、本当の自分なんて分かりはしない。
自分を認識できるのは、周囲の人間が自分を見ている時だけだ。
例えれば、今の現状――僕を見る、彼のように。
そう、彼だけが僕を見たのだ。
恐らく本当の姿であろう僕を。
その事実に気づくと、僕の胸を極端に虚しさが襲った。
理由は明白だ。
『僕の本当の姿を知ったのは悠君しかいない』から――)
……あぁ、そうするよ。
(問いにそう返せば、寝床に向かおうとする。
しかしかなり疲労したのか身体に力が入らず、僕は仕方なく倒れこむように床へ身を投じて)
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