古の腐男子 2022-06-07 10:18:23 |
通報 |
「はぁ…」
聞こえてきた発言にそこは、うざいとでも言ってくれと思いながらため息をつき
「空気読めないやつですね、まぁ経費で家賃なども落とせますし毎日豪華な夕食にして会社の金使ってやりますよ」
と上司に聞こえないくらいの声で呟き
「個室完備なのが楽でいいです。顔合わせないで済むんで。でもこれでコンビ仲改善って…無理っすよ、絶対。」
環の苦言に上司は苦笑いを浮かべるものの、困ったように上司の上司からの命令書をちらつかせる。
「同意見が気に食いませんが、会話もろくにできない関係ですしコンビ仲改善が無理なのは賛成です」
命令書をちらつかせる上司に近寄ってそう言い
「上司の上に言っておいてください、仲悪いもの同士が一緒に住んで損害になっても知らないとか」
と言って
「ああ、一応伝えておこう…」
上司はまた困った様子で笑い、報告のためかその場を立ち去っていく。
「……」
環はまた黙り込んで仕事に戻ってしまった。
「そうだ、今日は帰るの遅いので防犯はちゃんとしておいてください」
とだけ言ってそれ以上話すこともないので仕事に戻る。
何を考えているか分からない相手なため、ますますやり辛さを感じながら後輩の指導もしつつ仕事をし
「思ったより遅くなった上に疲れた…あの人が寝てるといいんですけど」
時刻は夜、部下のミスを修正したりしていると遅くなってしまい終電ギリギリで帰る。
鍵はかかっていた為そのまま開けて入り、相手が寝てる可能性もあるので静かに入り
「……」
オンラインゲーム中の環は帰ってきた城崎に一瞥をくれただけで再びゲームに戻る。
「……お前の分の飯は作ってる。」
環が指差した先にはラップを掛けられた夕飯が用意されていた。
「え……あ、ありがとうございます…?」
指を指された場所には確かに料理があり、もう作る余力もなくそのまま眠ってしまおうかと思っていた為ありがたくいただこうと思い。
どうしてか聞こうかと思ったものの過干渉しなければ干渉してこないから楽、と言う言葉を思い出して何も言わずに少し恐る恐る食べる
「美味しい、です…えっと、ありがとうございます」
と相手に基本感謝を述べたことはないがお礼を言って食べ進める
「…ん」
環は特に反応もせずゲーム画面に向き直り、画面に表示されているチームメンバーらしき人物たちとボイスチャットをしている。
「ごちそうさまでした」
数分後食べ終えれば邪魔にならないよう食器を持っていき、洗う
「すみません、お風呂入っても大丈夫ですか?」
相手が何やら話しているようなので小声で尋ねて
「普通に驚いたけど…明日の朝食で貸しなしにしておこう」
風呂に入りながら、何か借りをと思うと警戒したため明日の朝食は用意しようと思いながら上がる。
まだゲームをしていそうな相手に一々おやすみと言うのもあれかと思い、黙って部屋へ
「……は~い、じゃまた。」
環はチャットを終わらせ、自分は駄菓子を齧って夕飯ともいえない夕飯を済ませると自室に戻り、気怠そうに目を閉じた。
「……これは食べてもらわないと夜まで帰ってきませんし、腐ってしまいますし一か八かですけど....」
朝早く、自分の分を食べてから同時進行で作った昨夜のお礼を見つめて。
作ったは良いが相手が食べる保証はない上、夜まで放置したら勿体なくなってしまうため賭けになってしまうと呟きながらメモを置き
【昨夜のお礼です。腐るので絶対食ってください。勿体ない】
とだけ書いてから昨日も普通に来ていたので先に出て行き
「…あ?…面倒くさ…作んなきゃよかったな。」
寝起きらしい環は不機嫌な声を上げつつも料理を口にし、形式だけは皿を片付けてそのまま家を出ていく。
「おはようございます…えぇ、終わらせましょうか」
上司に文句は言わずに、昨日に引き続き部下のミスを訂正するために声をかけて。
「…ども~」
いつも以上にゆるい挨拶を雑にしつつ、また駄菓子を齧る。
「桜井、お前は本当に駄菓子しか食べないが…大丈夫か?」
「…別になんもないですけど。」
「はぁ……やっと終わった…」
お昼過ぎになり、お弁当も持っていないため外の自販機でコーヒーだけ買うと席に戻り。
仕事はまだあり、席に戻ると駄菓子を食べている相手を見てそれでよく倒れないな、と自分も人のことを言えないが見て
「…あ、駄菓子切れた」
環がようやく発した言葉はその一言で、のそりと立ち上がってカバンから駄菓子の袋を取り出し、また駄菓子を齧り始めた。
トピック検索 |