A._cid 2022-06-02 00:15:25 |
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未練の精算場所。
心当たりのある奴もない奴も、閲覧は自己責任。
私のしたいこと、邪魔しないなら乱入してもいいけど、情緒不安定だから傷ついてもしらないよ。
あと念の為。【盗作・無断転載禁止】
__嗚呼、神様。赦されるならば、このままもう少しだけ幸せな地獄に舌鼓を!
やっと下がった。
お祝いは今年も間に合いそうにない。忙しいっていうか、あれからちょくちょくわざわざ時間作ってみたけど、筆が全然動かなくて。マどうせもういないんだから頑張んなくても別にいいでしょ。
きっと当日は死にたくて浮上なんてしないしできないだろうから先に言っておくよ。誕生日おめでとう、七夕に呪いをかけた貴方。
pkmn
「__単独での長期護衛任務、ですか」
「そ。こんなのウチの管轄じゃないんだけど、ちょっと面倒臭い筋からの依頼でさぁ~? 断ると後々厄介なの。ハイ資料」
「ありがとうございます」
当時7番隊隊長補佐を務めていた隊員0708は、全く心当たりのない呼び出し、それも団長代理などという彼にとっては正に雲の上の存在からのそれに至極恐縮していた。昇進できるような勝ち星をあげた覚えもなければ何か粗相をした覚えもない、一体何事かと、その真面目な性分故にか構えて話を聞いていれば、どうやら厄介事の打診らしい。単独で長期と聞けば成程、便利だが替えのきく己に話がきたのだなと少なくとも自分の中ではすんなりと納得できてしまった。
ぺら、ぺらと渡されたそれに軽く目を通す。対象は痩躯の男、同年代か少し年下といったところか。姿絵で受けた印象の通り戦闘能力はなく、ポケモンも扱わないとのこと。旅に出るためその護衛を、行先は明かされない。期限は、
「__対象が、死ぬまで」
思わず上げてしまった視線を慌てて元に戻す。つまりは、それだけの長い時間、己はこの団にいなくても構わないと、この見ず知らずの青年に一生を捧げさせても構わない程度の存在なのだと言われていた。否、元々死ぬはずのところを拾われた命なので、別にどう使って頂こうと構わなくはあるのだが。くしゃりと資料に少しだけ歪な折り目がつく。アー、とわざと思考を遮るかのように、目の前の銀髪の男が声を出した。
「そいつ、もう長くないらしい。多分3年くらいで終わるってさ~、本人の申告だけど」
少なくとも5年はないと、団長代理は手をヒラヒラ振りながら軽い調子で言い切った。そうですか、と息を詰まらせた隊員の様子をどう見たのか、執務用の椅子に掛け直した彼は何か嫌いなものを見るような眇めた目付きで鼻からフン、と息を吐いた。
「修行だとでも思いなよ。俺のアサインを厄介払いだと思おうがアンタの勝手だけど、辛気臭い顔しないでよねぇ、チョ~うざぁい」
「っそんなことは、……失礼致しました。拝命いたします」
安心した、のとは少し違う気がする。けどそれに近い心情であることもまた確かだった。取り乱した、と言う程でもないが、らしくない態度だったことを謝罪して頭を下げる。団長代理はそれをジッと見つめてから、手元の紙束に目をやって、二度と顔を向けることなく、理解したなら用は済んだと隊員0708を追い出したのだった。
____
レレとソル
____
0708の育った兵士の町は、周囲を高い石の壁で囲われた城塞都市で ある。大昔にこの町を興したのは所謂流れ者と呼ばれる者たちで、恨みを買った相手からの攻撃を防ぐために建てられたと言われているが、今では専ら市民を自然とポケモンの猛攻から防ぐために役立っている。否、今でも傭兵家業で生計の一部を賄っている国であるので、防壁があることに越したことはないのだろうが。
壁があることで、安心と同時に生まれるのは外への恐怖だ。町の外は、新しい物資や人や依頼がやってくる場所でもあるが、基本的には危険な場所。まだ若く戦場での任務が多く充てられず、小市民の感覚が抜けないとはいえ、一応は一介の兵士である0708ですらそのような認識である。
だから、先方の指定した落ち合い場所である城郭の外へひとりで踏み出さなくてはいけないことに、少しだけ不安に思ってしまうのも、仕方のないことであった。これからこの外の世界を旅しながら、かつ無力な人間を一人守らなくてはいけないというのだから、こんなことで足踏みしている場合ではないことも、分かってはいるのだけど。寧ろ、そのことが余計に0708の心を暗くさせた。ちゃんと任務を果たせるだろうか。
団に入って一番初めに支給されたモンスターボールの表面を衣服の上からそっと撫でて、外に繋がる門を開けてもらうために詰所の扉を叩く。中では当番の兵士がすやすや眠っており、顔見知りとはいえ上官であるため遠慮がちに揺り起こすと、寝起き後の面倒臭そうな、あああんたねみたいな顔でのそのそと操作を始めた。話は通っているらしい。
「不安?長期任務」
「え、あ。……はい、まあ」
「ふーん。あんたみたいな優秀な奴でも不安になるんだ」
「え、っと?恐れながら、自分は大した武勲もなく……」
「俺も詳しくは知らないけど、代理が依頼先にキレてたのは知ってるんだよねぇ。ただでさえ人が少ないのに、有能な奴しかあてられない変な仕事回してくんな、って」
「団長代理が……」
「ま、その分大変なんだろうけど。あれでそこそこ心配してたから、無事に帰ってきてまた顔見せてやんなよ」
ついでに俺にもね、お土産ヨロシク~。起きているのだかまだ半分眠っているのだか分からない目をして微笑みながら、彼は門の内側から手を振って見送ってくれた。その後その手を口元に持っていき大きな欠伸をしていたので、もう一眠りするだろうことは容易に想像がついた。
門番の激励とも呼べない世間話を胸に、先程よりは確かな足取りで目的地を目指す。町を出て暫くは整備されて周囲の開けた街道を進めばよく、任務でもしばしば通る見知った光景であるのでそこまでの警戒は必要ない。
念の為、今回の任務に先立ち支給された地図を広げ、太陽の位置と照らし合わせながら、予定通りのポイントで道を逸れて更に進む。少しすると見えてきた、任務でもシンボルマークとして使われる大きなカツラの木が、依頼人との合流地点だ。
その巨木は小高い丘の上に堂々と生えており、周囲は開けていて見晴らしの良い場所だが、更にその周辺は森林とはいかないまでも木々や花々に覆われている。そこには当然ながら野生のポケモンが棲み着いているため、少しばかり気が抜けない。
ポケモンは恐ろしい。呼吸をするような気軽さで人間が一瞬で死んでしまうようなことをするし、そこにあるだけで人間にとって毒であることすらある。その上、野生のポケモンたちは殆どが人間に対して敵対的なのだ。商隊の護衛任務などでは何度も怪我人が出たし、自分も傷ついた。ポケモンによって亡くなった人は、自分はまだ見たことがないけど。
ポケットに入るモンスター、縮めて通称ポケモンだが、この名前ですら浸透しているものではない。0708のような、武力を生業にする傭兵や軍の関係者たちが、新しい兵器として使うためにつけた呼称だ。一般の市民、少なくとも兵士の町の人たちは、単にモンスター、化け物や怪物と呼ぶ。人間によって調教され、兵器として御しきれるものだけをポケモンと呼び、野生のものは脅威としてポケモンとは呼ばないように区別すべきだ、と提言する専門家だっていると聞く。
0708がそんな化け物の巣窟に踏み入るのにも比較的平静でいられるのは、一重に対抗できる武器を持っているからだ。無論、腰に佩いた剣や懐のピストル、仕込んだナイフなどではない。
頂上、即ち丘に近づくにつれ、足元の雑草を踏み分けた跡がどんどんと増えていく。明らかに人間のものではない。何かの群れが通ったということで片付けるには、複数の種類の足跡がある説明がつかなかった。
0708は最悪の可能性、即ち依頼主が、待ち合わせ場所あるいはその道中でポケモンに襲われているケースを視野に入れ、己の相棒が入ったボールを手に道を急いだ。草花に足を滑らせないように留意しながらなだらかな傾斜を登り続けると、急に視界が開けてくる。大木のある場所だ。
「__え」
それは、未知との邂逅だった。
「……おや。こんにちは」
大木の根元に長髪の人間が一人、立派な幹に背を預けて座っていた。その傍らに、見たことのない大きなポケモンが、寛いだ様子でのんびりと侍っている。大木の枝からミノムッチとエイパムがその身体を吊り下げ、その人間の顔の辺りの高さでぷらぷらと揺れていて、その黒髪の頭の上を綿の身体を持ったポケモンが我がもの顔で陣取っていた。
何よりも驚くべきは、ただの草原が広がるばかりであったはずの大木の周囲が、一面、色とりどりの花畑と化していることだ。そしてその中を、沢山の、本当に沢山のポケモンたちが駆け回って遊んでいた。
天国か、絵画の中の世界か。あまりにも現実味のない光景に立ち尽くすことしかできなかった。ラルトスが0708の登場に驚いて、慌てて彼(恐らくは)の近くまで寄って群がり、それに「大丈夫だよ」とその人が微笑みかけるのを、何かの映像でも見ているかのように呆然と眺めていた。ら、手の内の相棒__イワンコが、痺れを切らしたのかボールのボタンを押してもいないのに勝手に出てきて、おら行くぞとズボンの裾を噛んでぐいぐいと引っ張ってきた。されるがまま足を進めると、花畑の中でほっぽり出されて野生の彼らと追いかけっこを始めたので、任務の催促ではなく遊びのお誘いだったらしいが。
それでも彼のおかげで幾らか思考を取り戻すことができ、花々をできるだけ避けて大木の根元まで向かう。ポケモンたちはカイオーガの海割りの如く0708の行く先から逃げ出したので、踏みつける心配はなかった。
「……こんにちは。すみません、あまりにも凄い光景に驚いてしまって」
「嗚呼、人間とポケモンが傍にいるのは、手持ちである場合がほとんどだものね。気にしてないよ。それより、きみは護衛を依頼した傭兵さんで合っているかい?」
「はい。担当させていただきます、0708といいます」
彼は頭の上にいたポケモンを腕に抱えて立ち上がっていた。その子を除いてほとんどのポケモンは0708が来たことにより彼の周りからも逃げ出していたが、見知らぬ大きなポケモンだけは寝そべったまま動かず、顔を上げてじっとこちらを見つめたあとまた腕の中に潜って眠るようにしていた。値踏みする視線だった。
名乗って頭を下げると、言葉は返って来ずに彼が動く気配がした。もす、と頭に何か乗せられる。何事かと重心を傾けないように頭の位置を戻すと、恐らくは件の綿のポケモンだったのだろう、お気に召さなかったらしく頭髪をぐちゃぐちゃに乱した挙句に飛び立って、目の前の相手の頭に戻って行った。やれやれ、といった妙に腹の立つ顔をしていた。
「一緒に旅するんだし、堅苦しいのは抜きにしてよ。多分俺の方が年下だし」
「いえ、お客様ですし、……高貴なご身分の方と伺っています」
「でも年単位だよ、息が詰まっちゃう」
「ですが、」
「じゃあ、俺と友達になって」
その綿のポケモン1匹分ほど下にある赤い目が、それなら良いでしょ、と此方を見上げてくる。それが本当に小さな子どもみたいで、頭に乗ったふわふわが大層間抜けだったのもあって、断りきれずに口を噤んでしまった。それを肯定と捉えた彼はそれはそれは嬉しそうに、小さくやったぁと呟いて破顔したのだった。
当日にしなかったこと、後悔したんだ。
誰も、もしかしたら私以外にいたかもしれない貴方を知っている人も、誰も貴方を顧みない日になってしまったから。結果論だけど。
結構頑張って書いたつもりだったけど、結局これだけしか書けなかったよ。
これだけのことも、あの日までに間に合わせられたとは、とても思えないけど。
完結いつになるんだろう。他にもまだ沢山書かなきゃいけないのに。
でも7月のうちに間に合ってよかった。別に貴方のために書いてるんじゃないけど、死んじゃってるなら供養に、もし生きてるなら貴方の糧になればいいとは思うんだ。
……少し、つかれた。気が抜けて気持ち悪い。
おやすみ。生まれてきてくれて、ありがとう。
落ち着け、大丈夫、大丈夫、
あの子じゃないきっとあの子じゃないから
吐き気が酷くてもどれだけ泣きたくても、眠って眠って冷静になってそれからどうするか考えよう
ああ徹夜の予定なんて組むんじゃなかった
でも、それでも、万一にも、もうあの子のこと傷つけちゃだめでしょ、私
生きていることが分かっただけ望外の儲けものなのだけれど、どちらにせよもうここには何も書けなくなっちゃったな。
またいつか、長く音沙汰がなくて気が向いたら再利用するかもしれないけど。いやしないかもな、どうだろう。それではおやすみなさい。
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