筆者 2022-05-22 20:58:31 |
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〈伊川 駿〉
それならよかった。
…じゃあ週末。行っとくけど翔の様子見に行くのもそうだけど、澄佳に会いに行くんだから、飯くらい付き合えよ。あ、そっち泊まってもいいなら飲んでもいいけど?
( 世話をされている、という言葉には予想通りしっかりやっているようで安心する反面、強がって無理にでも頑張ってしまうところがあるのも知っているため少し心配というところもある。しかし信頼している相手の元でなら大丈夫だろう。週末に、という言葉に若干の間が空いたことや、少し他人行儀な返事の仕方に、その理由を薄々感じているが、笑って上記のように返し。「まぁ、考えといて。じゃあな。」と、相手の返事を聞くこともないまま、仕事に戻らなければいけないのか手短に挨拶を済ませて通話を切る。)
〈伊川 翔〉
( 大体の部分は草が無くなったため、こんなものかと再び額の汗を拭う。後ろ手で通話をする相手の様子が気になるのか、ちらっとその様子を伺う。やはり自分と話すときとは違うその表情から察するに、通話相手は父親なのだろう。しかし、朝方の話で、少し腑に落ちないところがある。自分の父親をよく言うつもりはないのだが、あれ程までに相手の分かりやすい言動に自分の父が好意に気付かないはずがない。明るくひょうきんな性格ではあるが、相当頭は良いはずだ。そんなことをぼーっと考えている自分に、なぜこんなに相手のことが気にかかるのだろうか。とまたモヤモヤとする胸のつっかえが邪魔をする。)
(/ いえいえ!ある程度話進めたら週末までとばすのもありですね。また何か提案ありましたら、言ってください!)
…え、先輩…ッ、……。
( 此方の返事も待たずに通話を切られれば、脱力して耳に当てていた携帯をしまう。唐突で強引な先輩らしいく、いつものそんな彼に振り回されていたなとこれまた懐かしく感じる。
それにしても、自分にも会いに来るだとか泊まるとか言っていたが、そんな事を言ってしまう事にもどこか罪深さを感じ頭をかく。特に深い意味は無いことぐらい分かっているが、そこがまた、会える嬉しさと無性な寂しさを感じられて自分を悩ませるのだ。
まぁ、兎にも角にも、自分に出来ることは先輩が来るまでに多少は家の掃除をしておくことぐらいだろうか。)
……キミのお父さん、週末にくる気らしい。
( ふと、縁側から庭へと降りてくると、作業をしている相手の元へと近づいていき、隣に立てば小さく上記を告げて。事情を話してしまっただけに少し気まずくもあるが、そんな事を言っている場合ではない。事情がどうであれ、家主と同居人、そしてその親との関係はそれ以上でもそれ以下でもない。 )
( / そうですね。頃合いを見て時間操作も行いながらやって行きましょう!
ありがとうございます!そちらもまた何かあれば仰ってくださいね )
え…?父さんが?
( 相手が隣に立ったかと思えば、相手から告げられた言葉に少し目を見開く。なぜこのタイミングなのだろうか。とも思うが、親としては世話になる家主に直接挨拶をしに来るのは当たり前だ。確かに、向こうを出る時にそんなことを言っていたような気がする。先程の話を聞いてしまっては、相手のことが気にかかり。「…澄佳さん大丈夫ですか。もし、嫌だったら俺追い返しますけど。」と、隣に立つ自分より少し目線の低い相手を見つめて、真剣にそう言い。)
…あぁ、心配することはない。
友人が、久しぶりに訪ねてくるだけだろう。
( 真剣に、此方を心配そうに見つめてくる相手を見やれば、フッと口元を緩ませてあたかも何も気にしていないような口振りで返答した。実際に会うのは確かに久しぶりだし、多少緊張するが、単純な気持ちでいえば会えるだけでも嬉しいのだ。
それに、息子を心配して来てくれるなんていい親だ。自分は大事な息子を任された友人に過ぎないのだから、相手がどういうつもりでも、その役に徹するのみ。
十分に分かっているつもりでも、どこか、自分自身に言い聞かせているような気もする。)
そうと決まれば、私も少しは掃除しておかないとな。
今のままでは先輩にからかわれてしまう。
( 続けて上記を付け足せば、先程よりもさらに綺麗になった庭を見渡して礼をいい、相手の肩をポンポンと叩く。
先輩が来るとなると、仕事部屋や書斎も多少は整理しておかねば、せめて、恥ずかしいところはみせたくない。
そんな事を言えば小さく笑って、風に吹かれる髪の毛を耳へかける仕草を行い、もう一度大きな伸びをした。 )
…わかりました。
( 相手が何ともないと言う風に言うものだから、それ以上自分がとやかく言うことでもないと思えば、少し不服そうに頷き。しかし肩に触れられた手の感触に温かさを感じ、不満だったことなどどうでも良くなってしまった。全く自分でも単純な男だと思う。
長い髪を耳にかける仕草、その横顔、一連の動作に目を奪われていれば、我に返り「他に何かすることありますか?」とタオルで汗を拭いながら尋ねて。)
( 他にすることはあるかと訪ねてくる相手に、その顔をじっと見つめれば、タオルで拭ったにも関わらず、頬を伝う汗に気付いて手を伸ばす。「 休憩? 」と呟きながら汗を拭ってやれば、早々に踵を返して再度縁側から家の中へ。
庭を手伝おうかと思っていたが、通話をしている間にも随分と片付けて貰ったし、外での作業はこれで良いだろうと考えたようだ。風があるといっても、熱中症にでもなられたら溜まったものでは無いし、残りは家の中の掃除でもしてもらえばいい。
だが、ふと何か思い出したように歩みを止めれば、振り返って。)
………そうだ、休憩をしたら、一度私の部屋に来てくれないか。
そうですね。汗もかいたのでシャワーでもしてきます。
( 休憩、と言われると、確かに結構汗もかいたので一度シャワーでもしてくるか、と思う。ふと汗を拭おうと伸びてきた相手の手に肩を揺らし、思わず頬を赤くしてしまう。「わ、すいません!」と若干焦った声を漏らし。少し火照った顔を冷ますようにタオルで頬を押えながら、相手に続いて中へ入ると相手からの申し出に不思議そうな顔をして。)
…え?わかりました。
( そう言うと着替えを持ち浴室に向かう。シャワーを軽く浴びて着替えると、洗濯もついでにしてしまおうと、洗濯機を稼働させる。タオルで髪を拭きながら、相手の部屋へ向かう。ドアを数回ノックして。「入ってもいいですか?」と尋ねる。)
( 一足先に自室へと戻っていると、少しばかり執筆を進めて、だが、またすぐに行き詰まって頭をかく。
椅子の背に後頭部を預けながら天井を仰いでいると、外からノックの音が聞こえてきて、返事を一つ。
重い腰を上げれば扉を開けて、風呂上がりらしい相手を中へと促した。
比較的他の書斎や倉庫よりは片付いているものの、やはりデスクの周辺は自分の疲弊さが現れているようにも見える。しかし、何も自室の掃除を任せるために呼んだ訳では無い。)
……すまない。キミがあまり本を読まないのは承知の上なのだが、今回の主人公はキミに似ているからな、どうしても、意見を聞いてみたくて。
( 普段書いているものとは少し思考を変え、ターゲットを学生に絞ったものを書いているのだが、幾分、今の若者の感性や表現はわかったものでは無いし、登場人物が自分に似ているのであれば己の感性のままで良いはずだが、今回はそうはいかない。
明るく活発で、好きな人を一途に守ろうとする、そんな主人公にしたものだから、これは彼から助言を貰うのが1番だろうと考えたようだ。
早速パソコンの画面を相手に向ければ、ここだ、と指を指す。好きな人が目の前で悲しんでいるという、主人公にとっては辛い一場面。)
……もし、キミなら、悲しんでいる想い人を前に何を想う?
( 我ながら唐突で、難しいことを言っているのは分かるのだが、何かヒントを得れば筆が進む気がして、相手の顔をじっと見つめれば返答を待って )
俺に…?
はは、俺でよければ。でも参考にならなかったらごめんなさい。
( 部屋に入ると資料などが周囲にいくつもあり、パソコンの前で疲弊している相手を見れば、首を傾げて。ここに呼ばれた内容を聞けば、自分に似ている主人公、それならば少しは何か言えるかもしれないと、相手の横に行き画面を見つめて。小説の原稿を見る、もしかしなくてもこれは貴重な機会だな、なんて頭の端に浮かぶもその一部分の内容を読むのに必死で。)
俺なら、とりあえず傍にいてあげたいかな。
できるなら、その悲しみも共有したいし知りたい。
…それでまた笑ってもらえるように、楽しい話をたくさんしてあげたいです。
在り来りですよね…。
( 好きな人が悲しんでいる。そんな状況に自分が置かれたこともないが、例えば友人が、はたまた目の前の相手が悲しんでいたら。好きな人には笑って欲しいと思う。だから自分にできることは、傍にいて話をきくこと、そして笑わせてあげることかなと考えた。しかしそのどれもが、在り来りな回答だなと思う。こんなんで大丈夫なのだろうかと、近くにいる相手を見て。)
…いや、この上なく貴重な意見だ。ありがとう。
( 静かに相手の話を聞けば、表情は変えずとも何処か納得したように一つ頷いて「 そうか 」と相槌を打った。そして、話を聞き終わると遠慮がちに在り来りだと言う相手に首を振って上記を述べる。
人によっては確かに在り来りだと言うかもしれないが、自分はそうは思わなかった。勿論、好きな人には笑って欲しい。しかし、自分は楽しい話も出来なければ、相手が自分以外の人とでも楽しければそれでいいと思ってしまう。どこまでも考え方が悲観的で弄れているのだ。)
やはり、キミは真っ直ぐな人だ。
大学生活がはじまれば、また詳しく話を聞くとしよう。
( ありがとう、と礼を言えば、先程よりも少し晴れやかな表情になり、思った通り良い刺激となったようで機嫌良さそうに言葉を続けた。大学での生活がはじまれば、今度は学生のより詳細な描写が書けるだろうかと、また気になる事があれば教えてもらおうと算段しているようだ。 )
それならよかった。
…といっても、俺そういう経験全くないんで。想像でしかないんですけど。
( 思っていたより参考になったようで良かったと安堵の溜息を一つ。しかし、今言ったことも経験ではなく、想像なので、実際にそういう場面になったら今言ったような行動が取れるかは分からない。高校生になってから周りの友達に恋人ができるのを見て、なんとなく自分もそのうち、だなんて思っていたら大学生になってしまった。モテなかったわけでもないし、そこそこ友達も多かったのにどうしてだろうと考えると、周囲にとって自分はいい人で止まってしまうことが多いのだ。 )
…俺でよければいつでも!
( このような形で相手の役に立てると思うと嬉しく思い、笑顔でそう言う。自分に似たその彼の小説。できたら読んでみたいと思う。)
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