匿名さん 2022-04-28 06:26:03 |
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んは、手振ってくれてる。
( 振り返された手を捉え人間違いで無かった事に一先ず安堵し嬉しさ余って徐々に振りが大きくなっていた矢先、其方の動きぴたりと止んだかと思いきや隣に見える人影。双眸細めて其の人物探るより先に招集の合図掛かってしまえば、名残惜しくも視線を落とし、友人引き連れて賑わう集団の中へ駆けて行き )
はいはい、分かったっての。今行く。
( 比較的口を利く仲であるが故にか興味津々に様々な事柄尋ねられ適当に返していれば、視線滑らせた時には既にグラウンドに其の姿は無く、剰え視力に然程自信の無い双眸では集団と化した生徒達から捜し出すのは苦難であり。残念に思い乍ら呼び掛けに応じる儘ベランダを後にして )
──あー…やべ、もう日焼けしたかも。何か赤いし、ほら。
( 体力測定の練習と称した陸上の講義終え、制服へと着替え教室に向かう最中、蛍光灯に照らされた薄ら赤い肌を凝視して他愛も無い話を繰り広げ。見慣れた室内、自身の席へと着くなりランチバッグ取り出し昼食の準備進めつつ、至極当然ながら同時刻に弁当開くであろう兄の反応が気に掛かり、手は止める事無く暫し悶々として堪らず友人に語り掛け )
…なあ、俺の作る弁当って美味そう?彩りとか…味とか、…。や、問題無えなら良いんだけど…ちょっと気になっただけ。
俺こんなん作れねぇって。弟だよ、…だーめ。お前らには一口もやんない。
( 漸く昼休憩に差し掛かれば鞄から白いランチバッグを慎重に取り出し、普段杜撰な食生活を知る友人から物珍しさから茶化されつつも密かに楽しみにしていた弁当の蓋を開け。彩りの良さに留まらず惣菜や好物である甘い味付けの卵焼き、可愛らしい蛸を模したウインナーと豪華な中身に周囲の友人達も歓声を上げて。摘み食いしようと伸びた手を払い除け上記述べれば、鮭味のふりかけ開封する合間でさえ喜色を漂わせ )
ブラコン?いや、違えわ。言い方が悪い、仲良し兄弟って言え。
( 昨晩から今朝の出来事迄、取り留めの無い事を新鮮で楽しい思い出として語っていれば友人から投げ掛けられた衝撃的な言葉に即座に首を横に振って、冗談交じりに言葉を訂正。午後の講義に備えた腹拵え終えると厚い辞書枕にして机に突っ伏し )
運動して、食って…最高に眠い。次の時間寝てたら起こしてくれよ。俺も起こすから。お互い様ね。
後は…───帰り道変な奴に着いて行かねぇように。
( 珍しく早々に終礼の号が掛かりクラスメイトが各々談笑し乍ら教室から出ていく放課後、窓際の席に照りつける陽は依然として眩く、然れど体感温度は少々涼しく感じ。弟とのトークルーム開き、バイトがある為に一人で帰る旨を伝えるメッセージに戯れに余計な一言追記し送れば席から腰を浮かせ、鞄を引っ提げて教室を後にして )
…ん、兄ちゃんからだ。…一緒に帰れねえんだって。今日は独り寂しく帰るか。
( 終礼終え日直である友人が日誌書き終える様子眺めている最中、通知のバイブレーションが肩に掛けていた鞄を伝って肩を揺らし、直ぐ様携帯取り出し確認すると兄からのやや過保護なメッセージ。其の内容に小さく笑い溢しつつ、了承の旨伝える短文と共に応援の意図込められたスタンプを一つ送信し、友人からも前もって共に下校できない事耳にしていた為ぽつりと独りごちた後椅子から立ち上がると日誌提出する友人見送ってから帰路につき )
…ただいまぁ。
( 普段より早上がり出来た午後九時、家迄の帰路につく途中疎らに雨が降り始め、朧気に其れ眺めつつ今朝の天気予報を見ていなかった事を悔やみ。幸い現在地から家は遠からず足早に帰宅するなり、すっかり濡れて肌に張り付くカッターシャツを鬱陶しげに摘み上げ少々気怠げな声音で挨拶し、其の儘家上がろうとスニーカー脱ぎ右足浮かせ )
──おかえり…って、うわ。やっぱびしょびしょじゃん。待って、床濡れると危ねえからマットで足拭きなー。
( 帰宅した後軽装へと着替え、暫し課題に集中していたのだが微かに聞こえる雨音で我に返っては悪い天候の中帰宅する事になりかねない兄を憂い、終えた問題集を閉じて脱衣所へ。タオルを二枚抱えてリビングへと爪先向けた途端に、絶妙の間で玄関先から兄の声聞こえれば早足で其方に駆け寄り、床濡れぬ様玄関マットを引き寄せてから、大きく広げた布地で彼方此方から水滴の垂れる体を包み込み、もう一枚の布を相手へ差し出して )
ん、…俺が体拭いたげるから庵は髪拭いて。風邪ひくと良くねぇし、水滴拭き終わったら早よ着替えよ。
おう、あんがと。…んは、マジで良く出来た弟。って茶化してる場合じゃねぇな。ホントに風邪になっちまったらお前に迷惑掛けるし。
( 家上がる目前に早々とした迎えの姿視認し雨粒で湿り気帯びた前髪から覗く目を瞠り、どこ迄も気の回る相手を心中賛して仄かに眦垂らすと同時に安堵感覚え。身体を包み込むタオル生地の温もりに改めて自身が思いの外冷えていた事を実感させられては、雑に拭い上げ更に無造作になった髪を耳に掛け緩慢な仕草で首を左右に振り、不慣れに言葉紡ぎ乍ら若干含み持たせた物言いで問い投げて )
いや、此の儘シャワー入って来る。制服ごと濡れて気持ち悪ぃし。…なあ、今夜は未だ起きてる?風呂上がったら話してぇ事あんだけどさ。
うん、確かにそっちのが賢明かも。温まっといで。
( 衣服傷付けてしまわない様、布を優しく押し付け制服の端から垂れる水滴を粗方拭った後に視線上げれば入浴後の犬の如く雫飛ばす姿捉え、開いた唇から笑い洩らし。水分含み僅かに重み増したタオルを畳んでいる最中、兄から発せられた婉曲的な物言いが非常に気掛かりで首を捻りたい気持ちを抑えて首肯し )
おー…、起きてる。そんじゃ俺リビングに居よっか。風呂上がる迄待ってる。
ん、じゃあ後でリビングな。それ貰う、一緒に洗濯機入れとくから。
( 言うが早く濡れ萎れたタオルそっと貰い受け、敢えて畳んだ状態の其れに相手らしさ見出し微笑ましさに小さく口角を上げ。大凡の水気拭い漸く家に上がると同時に空いた指先で後頭部下方で纏めた金髪解き、一旦自室に着替え取りに戻り可能な限り待たせるまいと足早に浴室へと向かい )
…ん、あ…あんがと。
( 濡れた所為か灯りの下で常時より光り輝いて見える髪に目を奪われ、一つの仕草を取っても様になる兄に羨望の眼差し向けながら少し遅れて返答し。相手の背を見送った後、リビングへ移動しソファに腰を下ろして肘掛けに頭を預ける形で寝転がるなり、テレビのリモコンへと手を伸ばし適当な番組を選択して流し見 )
宗、お待たせ。…んあ、寝みぃ感じ?
( 弟の手腕で水気やや薄まったカッターシャツ諸々を脱ぎ洗濯機へ放れば、予備のスラックスは何処にやったかと考え巡らせ乍ら入浴を終え。部屋着に着替えれば未だ湿り気帯びる髪を首に掛けたタオルで乱雑に片手拭きしつつ向かうは自室。白いランチバッグとスマホを片手にリビングに爪先向け、ソファに近付いては背凭れ側から見下ろす様に声を掛け )
ん…お疲れ。眠くねえよ、寝っ転がってるだけ。
( 普段は自身で選り好みした動画ばかり視聴している為、特に興味の無い番組を聞き流す事に対する意外な心地良さに浸っていれば、頭上から聞き慣れた声が降り。寝返りを打って其の声の主へと視線向けた後、緩慢に上体を起こして自身の隣にスペース作り、其処を優しく叩いて着席する様促すが未だ髪から滴る雫見て )
此処、座って。…あ、でも未だ髪乾かしてねぇのか。話より先に乾かしとく?
そ?ま、眠たくなったらいつでも言ってな。お前見るからに軽そうだし、多分姫抱きくらいはいける。
( 確りとした応えに軽口混じり反応示すも心中は安堵が占めて、促される儘隣席へ腰を落ち着けては此方気遣う様な発言には気に留めずとも大丈夫だと意を込めた言葉を送り。膝上に乗せた白いランチバックに視線落とし何処か凪いだ様に落ち着いた声音で口火を切り )
放っとけば大方乾くし平気。湿ってたら寝る前にゃ乾かすし。…つーか、今はこっちな。残さず食ったよ、お前の手作り弁当。
…や、姫抱きは勘弁。男としての尊厳無くしそう。
( 些細だが聞き逃してならない発言に敏感に反応し、兄からすれば華奢に見えるのだろうかと半袖から伸びた自身の腕を半信半疑で見詰め。話の内容が本題へと移るに伴い視線と意識を相手へと向け、其処で初めて話題が弁当である事認識するなり妙な緊張が走り、心を大きく構えた事示す様に背筋を正し )
あ、弁当。残さず食ってくれたんだ、嬉しい。…味とか、見た目とか…問題無かった?
なんも問題無いどころか、すげぇ美味かったし嬉しかった。あんな手の込んだ弁当初めてかもしんねぇし、気ぃ向いたら又作って欲しいレベル。…───あ。そうだ、ほら見てみ。
( 自身の発言に素直な言動見せる相手に可愛げ感じ得て次いだ言葉に小さく喉鳴らし笑い。緊張感じる面持ちの弟へ悪戯心疼くも何とか呑み下し、正直な感想を顔上げ面と向かい告げて、不意に思い至りスマホ起動させ写真投稿主なアプリを開き友人の一人である男子学生のアカウントを手早く探し出して、珍しく自然な笑みで弁当と共に写る自身が表示された最新の投稿を見せるべく画面其方に向けて )
#ブラコンだってよ。宗が俺の為に作ってくれたから一口もやんねぇ、つったらコレ。
ま、まじぃ?あんなんで良いなら何時でも作るって。
( 姿勢正し覚悟を決めて言葉に意識を集中させていると唇から流れる様に紡がれた数々の褒め言葉に思い掛けず目を丸くし、へなへなと脱力して背凭れに体重を預け。賛美の言葉が余程嬉しいのか照れている事隠しもせず眦を垂らしては此方に差し出された画面を食い入る様に見詰めてから肩を揺らして笑い出して )
く、っはは…!待って、俺も今日ブラコンって弄られてさ…っひい、俺ら…同じ事言われてんの、可笑しくて…やばい。
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