眠子(ネコ) 2022-04-11 02:44:27 ID:3f5fcabb1 |
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ブラック本丸とは、手入れの拒否、重傷での出陣、夜伽その他諸々など刀剣男士に対して審神者が越権行為を行うことで本丸としての機能が著しく低下した場所のことである。
政府の奥まった場所、冷たい仕切りに隔たれたそこで一人の審神者候補とこんのすけが会話をしていた。
「……では、僕の仕事を復唱しよう」
審神者候補の男の手には手錠。彼は罪人だった。それも、死刑囚である。
「大きな目的は、ブラック本丸の建て直し。
ひとつ、刀剣男士の状態を改善し、引き継ぎが可能とすること。
ひとつ、現審神者を呪殺し審神者の任を引き継ぐこと。
これでいいね?」
「その通りです」
こんのすけが頷く。その様子は少し気の毒げだが、男は反応しない。この男は、盲目である。
彼の罪は禁術を使用し、死んだ妹を生き返らせようとしたこと。その際の代償として視力を失った。手に入れたのは呪力のみで妹は生き返らなかった。
「そして、僕ではなく君たちの目的は僕が本丸で死ぬことだ」
こんのすけは何も言わない。それが肯定であることを物語っていた。別にいいけどね、と言葉を継いだ彼はため息を吐く。
彼が向かう本丸の担当は彼が審神者になると同時に入れ替わることになっている。
そして、監視として『審神者たち』の目を借りることもこの死刑囚は了承していた。
審神者たちの目。つまり、こんのすけが文字で実況を行い、それを様々な端末から審神者たちが閲覧する。もし異常行動が見られれば直ちに政府の部隊が突入することになっている。
特段準備もなく、手錠を外されたのみでゲートの前へと立たされた男の足元をうろついていたこんのすけが抱えあげられる。
「その短い足で歩くのはどうかと思うけれど。こっちの方が早い」
「しかし、片手が塞がるのは……」
「どうせ斬りかかられたところで反応出来ずに死ぬさ。写真と対象の真名があれば十分だ、下準備は終わらせてある。向こうに着いたらすぐに呪殺を終わらせる」
こんのすけは大人しく小脇に抱えられる。その体を、細い指先が撫でた。こんのすけは困ったように横を見る。男ではない、男の反対側。
真っ黒な靄から黒い指先が伸びていた。……実の所、彼の蘇生術は完全なる失敗ではなかった。失敗していたのならこんな形で『妹』が残ることは無かっただろう。
その発生が祟り神としてでなければ、ここまで大袈裟に彼が拘束されることも無かったのだが……不運なことに祟り神として生まれ落ちた妹は、兄の視力を奪って生まれてしまった。
故に兄は妹を視認できない。
妹自身普段から隠れてはいるが、彼女がいる限り兄の呪術の腕は衰えることを知らないだろう。兄が呪えば祟り神の妹が呪うのだ、並の人間では逆らえないだろう。
祟り神を本丸に連れ込むことへの非難も出たが、妹が『話が通じる』『周りに祟を振り撒かない』『生前の人柄は快活且つ冷静な女性であり、少なくとも現在理性的ではある』『自分を復活させた兄を見守ってはいるが批判的思考である』ということを政府が確認した結果、許可された。
これらの事は、全て審神者たちの目に晒される。これは、とある死刑囚とブラック本丸の刀剣たちの話。
そしてこの日、あるものは書類仕事の合間に長谷部に叱られながら、あるものは布団の中で、あるものは休憩に覗く掲示板に一つの投稿がされた。
【政府公認】死刑囚を用いたブラック本丸改善事案実況板
1.こんのすけ
政府公認の実況となります。
概要は以下記述と致します。
この実況には残酷な描写が含まれる可能性がございます。
刀剣たちの状況について、悲惨な描写が含まれる可能性がございます。
また、死刑囚の最初の目的は『現審神者の呪殺』である為、苦手な方、そして穢れなどの影響を受けやすい方は御遠慮ください。
これは、政府公認です。
こちらで実況を見ていらっしゃる皆様に置かれましては、『監視者』という形になります。とはいえ、皆様にはなんの責任もございません。なにかマズいと思ったら、通報をして頂くだけで結構ですが通報内容は常に政府によって監視されております。ご注意ください。(以下続く)
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ブラック本丸とは、手入れの拒否、重傷での出陣、夜伽その他諸々など刀剣男士に対して審神者が越権行為を行うことで本丸としての機能が著しく低下した場所のことである。
ある日そこに、一人の男がこんのすけを伴って訪れた。
その手の手錠が外され、男が顔を上げる。
「汚いな。…………いや、見えないけどね」
盲目なのか、そんなふうに呟いた男がこんのすけに話しかける。汚い、というのは穢れのことを言っているのだろう。刀剣たちの苦痛や嘆きが、こうして澱んだ空間を作り出しているのだとすぐに理解した。
「では、主さま」
「まだ違うけどね」
男が懐から取り出した呪具を粉砕すると同時、空間が揺らぐ。男がゆっくりと口角を上げた。
「死んだ。この空間を作り出したクソ野郎はもう何処にもいない。一生空虚を彷徨うといい」
「ありがとうございます。引き続き、活動をお願いします。…………今度は、呪殺者ではなく審神者として」
前任の審神者を今しがた殺した男は「多分この目じゃすぐ死んでしまうよ」と笑いながら中へと入っていく。こんのすけにはそうは思えなかったが。
審神者の後ろを漂う黒い靄。会話をしたり、姿を見ることができるのは御神刀たち位だろうか。
彼が蘇らせようとし、そして失敗した成れの果て。
かつて彼の妹だったものが、未だ彼を守るように、そして彼に怒りをぶつけるようにそこに張り付いていた。
(わぁ~!!!!誰も来てくれなさそう……なんて思っていたので、とっても嬉しいです……!!!!ぜひお願い致します!!!!)
(本当にここ初心者なのでよく分かっていないのですが、同じ名前で〆をつけてもう一度建てればよろしいのでしょうか……!)
(同じものを投稿しましたので、そちらのほうに移動お願い致します!お手数おかけしますm(*_ _)m
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