白紙とインク (　〆　)

>121

……そう。
( 自身がぼんやりと生と死のどちらに転ぶかを待つ間、どのような心境の変化があったのだろう。ふいに口を開いた彼女は、やって来た時とは真逆のことを口にした。それを肯定することも否定することもせず、ただ、一言事務的な『了解』の意を返す。まだ彼女の生死は確定していないが、行き先は決まった。再び櫂を握ると、ゆっくりと来た方へと引き返して )
じゃあ、此岸に戻るよ。……まだ岸には降ろせないけど、此岸に近づけば少しくらいは『生』に転びやすくなるだろうから。