ひなき 2022-03-15 14:25:02 |
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ゴホッ、ゴホ……。潮風が、胸に毒だ。
僕は芥川龍之介。
そこな黒服と同じく、卑しきポートマフィアの狗__
( 口許を押さえ、幾度か咳きつつ其方へ歩み寄り。片手間仕事と蔑して来たが、思って居たより此奴は逃げ足が速い。小癪な、と眉を顰めるが、然し少しは張り合いが有るものだと考え直す。コツ/\と靴音を鳴らして直ぐ其処迄来ると、咳を止めて双眸を向け。
刹那。膨大な殺気が放出されると同時に、外套が変形した黒刃が相手の頚を掴む。その儘倉庫の壁に叩き付ける。更に顱を潰そうと飛び掛る黒獣は相手の鼻先で止まり
「貴様で間違い無いな?
此処数日、我がポートマフィアの縄張りを荒らす、北米より流れて来た無法者共の長と云うのは」
静かだが鋭い殺気の混じった声が空気を震わす。辺りに転がる、先程黒服が殺したと思われる十は超えた死体を一瞥し、それから相手の反応から肯定と受け取り
「一人は生かして、尾崎さんの拷問班に引き渡せと云われているが、その必要は無かろう。
貴様は今、僕が此処で殺す」
此処に残った通信記録で充分情報は引き出せると考え、黒獣を再び動かす。血と脳漿を撒き散らして喰い千切られる男の様子を、何度見ても食欲が無くなる光景だと思いつつ目を伏せて )
貴方のその言葉を聞いたとき、
何故か安心した。
そうだ、貴方は、貴方の理想は――
誰にも打ち破れないのだ。
・.―――――――――――――――――――――――――――――.・
こんな心算じゃ無かった。
僕は貴方を殺したかったのでは無かった。
貴方の理想が壊れるその時を見たかった。
貴方も僕と同じ人間に過ぎないと、
其れだけ証明して欲しかった。
・.―――――――――――――――――――――――――――――.・
仮令、貴方を殺しても、
僕は何も嬉しくなかった。
・.―――――――――――――――――――――――――――――.・
そうだ、やっと気付いた。
僕が二年間、貴方を追い続けた訳は__、
・.―――――――――――――――――――――――――――――.・
//桂国
似合いますかね、
(本を捲る手を止め、貴方の方へ視線をふと向けた。手にしていた本をカウンターに置けば、ことり、と柔らかに音が鳴る。流れているジャズ音楽が一瞬止まった様に感じた。
お前には本と珈琲が似合う、と言われ、不思議そうに上記を尋ねて首を傾げる。耳に掛けた前髪が少し落ちた。それを払おうと手を伸ばす貴方を、抵抗もせず見詰め返す。普段はこんなことしてくれないのになぁ、とぼんやり考えつつ
「 どちらも好きですよ、似合うか如何かは別にして 」
撫でる様に髪を直してくれる貴方に、如何して良いか判らず目を細めて何と無く、と云った風に答える。貴方の前では御愛想等は振り撒く気にならず、本を置いて持て余した手でコーヒーカップの持ち手を指先でなぞり
「 貴方だって似合ってるんじゃないですか? 」
兎に角話の落ちが見えずに貴方に返す。手を離されそうになって、コップの縁を滑って居た自らの手を離して相手の手に触れ、微かに頭を擦り寄せる。
然し不審に思われないように直ぐに手を離して素っ気ない振りを
「 __ほら、珈琲冷めますよ 」
似合うと言い返されて笑う貴方を見ていると、急に恥ずかしくなって話題を無理矢理に逸らし、内心慌てて手に取ったコーヒーカップに口を付けて。ちらと横目で貴方を見た)
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