pear tree . 〆

ここであってる、よな。俺のこと選んでくれたん嬉しくてすっ飛んできたけど。（　きょろきょろ周囲見渡し　）お兄さんまだおねんねしてっかな。

お、もう来てんの。早くて宜しい。（　ひょいっと窓から姿を現し　）…こうして見るとでけェな。実はさっき起きたんだけど、ちょいと今から買い出し行こうと思ってて。これでも書いて待っててくんね（　“呼ばれたい名前” “好物” “無人島に何か一つ持って行くなら” の記入欄が用意された白いプリントを机上へ置き　）飯の時間までには戻る。

はーい、買い出し気をつけて行ってきなね。いってら。（　手ゆるく振ったあと、プリントを手にとり質問事項に目を通し　）…ガサツそうに見えて意外にまめまめしい。……あ、ふりがな振っといてやんなきゃ。（　ボールペンを手にとり、ウンウン悩みながら上から順に"匡"、"甘いもの"、"俺以外の人間"と欄を埋め、のちに名前の上に"きょう"とふりがな加え　）おし、完成。お兄さんもこれ書いてんのかな。はよ見てーな。

たでーま。寄り道してたら遅くなっちまったわ、アンタにも土産。（　ガサゴソとビニール漁り掴んだ棒付きの飴を差し出して　）どれどれ…“きょう”？ ほーん、難しい漢字使ってんのな。んで甘党ねぇ…この最後のって“無人島でも誰かと居れば楽しいだろ！”みてぇなヤツ？（　歩み寄るなり手元の回答を覗き込みつつ問い掛け　）

おかえり。飴ちゃんさんきゅ。（　飴を受けとると早速封を切って咥え　）ん、いや。無人島にひとりとか寂しいし、非常食も兼ねて。（　飴を舌で転がしつつ冗談か本気かわからない声音でぽつり呟いたあと不満気な視線を向けて　）つうかこの紙、お兄さんの分ねーの？俺にも名前とか好きなもんとか教えてよ。

物騒だな、そういうの好きだぜ。（　非常食という言葉を面白そうに口角上げ　）俺のこと知りたいって？物好きだねえ。テキトーに書いたから読みにくいかも知んねぇけど一応コレ。（　懐から四つ折りの紙を取り出し広げて、上から順に“壱弥”、“摘みやすい物”、“ライフル” と雑な文字で欄が埋められており　）

壱弥…いや、一応年上だし壱弥…サン？（　敬称をつけるべきか迷い片眉吊り上げ　）くは、ライフルって…何か狩る気？（　視線を下げた先の解答には思わず頬緩め、片手でピストルの形を真似、その指先で相手の胸元小突いて　）

ぶは、何だその顔。別に呼びやすいように呼びゃ良い、俺も匡って呼ぶし（　自身の苺飴取り出すと封を切って咥え　）狩りィ？ンな面倒な事しねえよ。折角無人島なんて非現実的な場所に居んならサバゲーごっこした方が楽しいだろ、人影見付けた瞬間脳天ブッパしてやるつもり。（　相手を真似て此方も片手でピストルの形作れば、ちょんと額小突いてみせ　）

　

んじゃ、壱弥ね。（　小さくなった飴を音立て噛み砕きながら　）クソ物騒じゃん。俺無人島に壱弥持ってったら秒で撃たれるってこと？タイマンなら勝てそうだけど、ライフル持たれちゃあな。（　食べ終えた飴の棒引き抜けば額にある指の隙間に上手く差し込んでにひ、と笑い　）あげる。　　

あ、それ俺もよくやる。お陰で今は全部尖っちまってんだよな（　指先で口端引っ張りギザ歯を露呈させ　）チーム戦って事なら生かしてやってもいーけど、腹減ったら食っちまうかも。あー…？（　指の隙間に差し込まれた棒を数秒睨んだあとゴミ箱へ投げ入れて　）要らね。

ンわ、すげぇ。噛まれたら痛そ。（　興味津々に指先で下唇を軽く押し下げてみて　）壱弥って獰猛な動物みてーだな。まじ人食ってそう。実際食ってんのは飴ちゃんっつーギャップがイイわ。（　咥えられた飴の棒をくいくい引っ張ってちょっかいかけ　）

興味あんなら噛まれてみるか？（　冗談交じりに告げれば相手の指先へ牙突き立て見詰め　）イイって何だよ変な奴ゥ、油断してっと喰われちまうぞ。（　バリッと奥歯で飴砕くと暫し咀嚼して棒を口内から放し　）ソレやる、お返し。

いいよ、食ってみて。（　薄い皮膚に食い込む牙を撫でるように指を無理に咥内の奥へ押しやろうと　）あーあー、また噛んでンの。これ以上鋭利になってどうすんだって。はーこわいこわい。（　大袈裟に反応し、受け止めた棒をぽい、と投げ捨てて　）

………（　承諾の言葉聞くなり容赦無く指の根元を噛み、それ以上の口内への侵入を阻んで　）寝る時も歯軋りするみてェだし、下手したら獰猛な動物より鋭利。（　投げ捨てられた棒から周囲へ視線移し　）つか腹減った。俺の世話してくれんじゃねーの、飯くれ飯。

なーんてな、…い゛ッ（　冗談のつもりが痛みに顔を歪め、慌てて引き抜こうと　）おー、飯なら俺が作ってやろう。さっきの買い出しでなんか食材買ってきた？（　意気込んで袖捲り、買い物袋を探し周囲見渡して　）

ふ、跡残っちまったな。仕方ねェから今日のところは勘弁してやるよ（　唇離せば歯の隙間から、んべ、と悪戯っぽく舌を出し　）食材……いつも食ってるようなモンしか買ってねえ、菓子と肉。（　棒付きの飴と個包装されたチョコがどっさり入った袋と、それとは別に鶏肉のパックが詰められた袋を指差して　）

くっそ、野生児かよ。（　指についた跡を擦りながら恨めしそうにぽつり　）くはは、飯になるもん鶏肉しかねーじゃん。照り焼きでも作ってやろうか？（　鶏肉のパック手に取るとキッチンの方へちらりと視線向けて　）調味料とか器具、勝手に使っていい？

匡が煽ったんだろ～？自業自得。（　近くの棚から絆創膏取り出し相手の視界にひらひらとチラつかせ　）鶏肉は美味いから結構気に入ってる。…！照り焼き最近ご無沙汰なんだよなァ、食いたい。美味いモン作ってくれんなら調味料とかは好きに使っていーぜ（　先にキッチンの方へ足を運ぶと端に置かれた椅子に腰掛け眺める気満々　）

まあ試した俺も悪いかもしんねーけど。…あ、絆創膏ちょーだい。（　小さく溜息吐き出したあとに手を伸ばして　）おっけー。壱弥はよく料理すンの？（　続いてキッチンへ歩み進めるとシンクで手を洗ってから慣れた手付きで幾つかの調味料を取り出して　）

…あ、“ 壱弥様 ” って呼べたら渡す。（　ふと思い付きで告げれば届かない場所へ手を移動させて　）料理って程の料理はしねぇけど、腹減った時テキトーに肉と調味料混ぜて食ったり。（　慣れた手つきを見るなり感心しつつ椅子の背凭れへ体重預け　）匡は器用そうだな、よく作ってんの？