光梨 2022-03-09 19:01:29 |
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(ゆっくり、そして深く呼吸をした後に語られる彼の心の内。それはずっと懸念し続けていた"迷惑だったのではなかろうか"という類の心配をキレイさっぱり吹き飛ばす内容で、これを話している彼は先程とは打って変わって誤魔化しても嘘をついているようにも見えなかった。語られる言葉一つ一つがどれほど御剣に友人として誠実に接しようとしてくれているのか…そして興味を寄せてくれているのかが重く沁みて今度は御剣の思考が乱れる番だった。聞けば聞くほど鼓動が早くなって頬が緩みそうになっていく。なぜ、彼の言葉がこんなにも嬉しいと思うのだろうか…他の者にこのように言われても私はこの感情を覚えるのだろうか。疑問や形容し難い感情が次々と浮かんでは消えて言葉を詰まらせ自分自身でもこの感情に困惑してしまう。はたまた困ったように彼の言葉の合間に「…そうか」などと曖昧な相槌を打ちながら、ぼんやりと懸命に話す彼を見つめていた。聞き終えた後も感情の整理や彼の言葉を呑み込むのに幾分か時間がかかった。いや、正直なところ呑み込みきれていない…嬉しい半面、何かモヤがかかっているような、引っかかっている感じがしてすんなりと彼の言葉を受け取れていなかった、その理由すらわからなくてモヤモヤしているというのに、対する彼は踏ん切りがついたようで眩しい笑顔を向けている。…眩しい…そう感じる心なしかキラキラしている笑顔に胸がキュウっと締められるような感覚に襲われながら出発を促されてハッとして、自分も運転席に乗り込みながら)
「…っ…!あ、ああ…行こうか。乗ってくれたまえ」
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