賢者の魔法使い

そう言ってもらえて俺も嬉しい！それじゃあ早速、真心を込めてつけさせてもらうね。〈スイスピシーポ・ヴォイティンゴーク〉(証書授与される時のように腰を低くして受け取ると、呪文を唱えてカバーを浮かせつつ受け取ったスケッチブックの表紙を開き。相手の話を聞きながら、浮かせたカバーの差し込み口に表紙の角が必要以上に擦れないよう注意を払い入れ、裏表紙もほぼ同様の手順で仕上げ)練習着を訓練以外で着る機会って中々ないから、そういう意味でも面白そう。それだったら道中は普段着で、向こうに着いたら着替えることにしようっと。(低速で宙に浮かぶスケッチブックを回しては納得のいく仕上がりに笑み深め、相手に差し出し)これで完成！はい、どうぞ。

( 己が話している間に、相手の魔法によってスケッチブックは素敵な衣装を身に纏い、新品の衣装の喜びでゆっくり回りながら着飾った自分を存分に楽しんでいるように見え。ぽかぽかと胸が温かくなるのを感じながら差し出されたスケッチブックを受け取り、思い出深い絵本にするようにカバーを優しく撫ぜ、 ) ありがとう、クロエ。私のスケッチブックがこんなに素敵になるなんて、夢にも思わなくて……本当に、素敵なプレゼントをありがとう！ ふふ、あとでミチルやリケにもお披露目しなくっちゃ。( 己が着飾ったような高揚感のまま肩紐に腕を通し、準備万端と意気込めば ) それじゃあ、ティコ湖へ行こう！ 南の国まではエレベーターを使うけれど、そこからは箒での移動になります。クロエはラスティカさんと旅をしていたって聞くし、箒での長距離移動も慣れてると思うから大丈夫だとは思うけれど、疲れたらすぐ言ってね。

(羽と刺繍に彩られたカバーへ柔らかく触れる白い指先と向けられる慈しむような視線に、自然な嘆息と共に、綺麗、と言葉が口をつき出でては眩しそうに目を細め、)似合ってる。…なんて、作った俺が言うのはおかしいかもしれないけれど。ルチルのために作ったものがルチルの手元で輝いている。夢じゃなくて本当に。そんな光景を見せてくれて、俺の方こそ感謝したいくらい。ミチル達も喜んでくれるといいな。(その光景を思い描くよりも前に相手の言葉でこれからの目的に思考を現実へ引き戻し、腰に手を当て自信有げに笑い)気遣ってくれてありがとう。でも、たぶん大丈夫！長時間の移動はよくあったからね。ルチルのスピードに合わせるよ。


ルチルの綴る言葉が魅力的で、ついつい前部分を返してしまったけれど、返さなくてもいいからね。返すと長くなるだろうし、君と過ごすティコ湖の時間を早く楽しみたくて。実は話題に出てからずーっと楽しみにしているんだ。でも俺の返事が遅くて伝わっていないかも…そう思ったら居てもたっても居られなくて此処で付け足し！

( 嬉しい言葉に目を緩く細め感謝の念で笑顔浮かべて。続く相手の自信たっぷりな笑顔が頼もしく、エレベーターのある塔へと足を向けながら小さな呪文を呟き箒を召喚しては、己も自信有りげに微笑み浮かべ ) 私の箒はとびっきり早いって評判だけど、追いつけるかな？


まあ……！ ふふ、ありがとうクロエ。長くなっても困っちゃうから、言葉に甘えて前部分は蹴らせてもらうね。クロエとティコ湖に行くのがとっても楽しみで、少し急いちゃったかな？ って不安に思っていたんだけれど、そう言ってもらえてすごく嬉しい。私も返信が遅くなっちゃうから、お互い様で気負わずにできたら嬉しいな。

あっ…。確かにルチルの箒は早いけれど、一緒に早く飛べたら楽しいだろうな…。俺、頑張ってみるね……！(己の失言にぽかんと口開けて発言を訂正しようとするも逡巡の後に辞めて、意を決したように目に力いれ、拳固めて胸前に掲げて自身を鼓舞するように強く言うと、固めた拳とは反対の手に箒を召喚し)


そう言ってくれて、ありがとう。気づいたら姿を変えて1ヶ月経っていたから、内心すごく焦っていたんだ。今までの流れで行くと姿を変えている時期だし、もう飽きちゃってるんじゃないかな、とか。逆に俺が飽きてるって思われてないかな、とか考えちゃって。君が言ってくれたように、今後は気負わないようにするね。(ぐ)
君の気持ちが聞けてよかった！もし何も無ければ、こっちは返さなくても大丈夫だよ。引き続きよろしくね。

ええ、きっと楽しくてティコ湖へ辿り着く前からはしゃいじゃいそう！ ( 相手の言葉と共に召喚された箒に決意の高さが窺い知れ、共に飛ぶ期待感に胸を膨らませながらエレベーターの前までやってくると、マナ石を装置へ。扉が開くのを待ちながら、 ) あ！ でも、南の国は中央の国のような賑やかさや、西の国のような華やかさはないのだけれど、その分自然はたくさんあるから、今日はのんびり飛ぶのはどうかな？

自然の中をのんびり……めちゃくちゃ癒されそう……。それもいいなぁ……。(漠然と大自然の中を相手と箒で飛ぶ己の姿を思い浮かべては、力込めた拳解いて悩ましそうに眉寄せ、)どちらも捨て難いから、交互にやるのはどう？最初はルチルのスピードに合わせて、俺がついていけなくなったらゆっくりにするとか。でも俺に好都合すぎるか。…うーん。(己の唸りを見かねたようにエレベーターがチーンと悩む時間に終わりを告げ、ガラガラ音を立てて開いていき。ともすれば習慣から自然と足はエレベーターの中へと己を運んで、相手が入るのを待つため内部の開くボタンを親指で押して)

……交互に？ ふふ、とっても楽しそう！ ( 相手の言葉に目を瞬かせるも、互いの望みを叶え得る提案にパッと顔綻ばせ、共に行く旅路への期待感を箒と一緒にギュッと抱きしめれば、浮足立つ歩調で相手から一歩遅れてエレベーター内へ乗り込み ) それじゃあクロエが提案してくれた、最初は駆け抜けて、次はのんびり景色を楽しんで交代しながら行こうか。どっちも楽しめるなんて、嬉しいな。

いいの？よかった～。空を駆るルチルの姿はいつにも増してかっこいいから、間近で見られるのが楽しみ！（心軽くボタンから手を離し扉を閉めては、動き始めるエレベーターの揺れが舞台のせりが上がる様を彷彿とさせ。高まる気分と近づく本番に、箒と共に汗も握るも、瞳は輝かせて相手を映し）この扉が開いたら、何があってもルチルについていく。だから自分のペースで飛んでね。

それじゃあ、お言葉に甘えて思いっきり飛んじゃおうかな。( 緊張と期待が混じった瞳にまっすぐ見つめられ、こんなに楽しみにしてくれている相手の期待に沿えるにはまずは己が楽しもう、と意気込むと同時にエレベーターは静かになり南の国への到着を告げる合図が鳴って。プレゼントのカバーを振り落とさぬようしっかりと抱え込み、扉が開くと共に懐かしい故郷の風を感じれば深く深呼吸をし、 ) ──── よし、しゅっぱーつ！ ( 言うが早いかトンッと軽く地面を蹴って箒に飛び乗り、瞬く間にエレベーターから空へと移動して )

！…お、おーっ！(開いた扉から覗く景色に目を奪われていれば掛け声とともに視界の横を滑り出すように飛び立つ相手が通り過ぎ、すぐさま自身も箒に跨り箱から南の空へと飛び上がって)……っ、(相手を追うべく風の抵抗を避けようと前傾姿勢になり速度を上げると、風が前髪を靡かせ額を掻き煩わしく、ポケットから髪留めのピンを取り出し片手で留めようとするも上手くいかず、仕方なしに大雑把に横へ流し留め。顕になった額を風が撫でる、というよりも押されている、そう感じる程の速度で相手を追うも、2人の距離は縮まらず、むしろ徐々に開いているようで)

( 背中の方で相槌が聞こえた気もしたのだが風を切る音で掻き消され、相手の反応を知るよりも早く雲を割き、空を飛ぶ鳥を追い越し、息もできない程の速度で風そのものになりながら自由飛行を思いっきり楽しんで。塔から随分と離れ生活色が薄くなった風景を見下ろしながら徐々に速度を緩め、風で冷め切った頬が自由飛行の興奮で赤みを取り戻していくのを感じながら、後続に居る予定の相手を振り返り、 ) はあ～っ、楽しかった！ ふふ、久し振りに我も忘れて思いっきり飛んじゃった。付き合ってくれてありがとう。

(風の抵抗に目を細めつつ狭まる視界に遥か前方へと翔び駆ける相手の背中に焦点定め必死に追い。不意に相手が振り向き何事かを話すように口元が動いているのが見て取れるも耳に入るのは割いた空気の歪みと波打つ鼓動、微かに相手の言葉が聞こえる気がするも、この距離ならそのようなことは無いと思い直しては、疲労が滲む声を張り上げ、)待ってて、今行く！！(人差し指だけ辛うじて先まで力が入るも、重力に従い垂れる左手を振り振り駆け寄って)

( 振り返った其処に相手の姿は見当たらず、さらに後方からの声に目を向ければ、青空に赤髪を揺らしながら手を振り駆け寄る相手の姿見つけ。留めてあるものの乱れた様子の髪と、やや疲労が見られる声色に、その場に留まり相手との合流を待ちながら呪文を唱え、シュガーをいくつか作っては声を上げ ) ごめんね、クロエ！ ちょっとはしゃいじゃった。

(相手の元へと若干ふらつきながらも衝突しないようスピード緩めつつ俯き気味で相手の横へ止まると共に大きく振っていた手を小さく振り直し、相手を制するため掌前へと突き出し止めては、速い息が鎮まるよう呼吸繰り返し。徐々に呼気が小さく落ち着いてくると、パッと顔上げ。額に汗を浮かべつつ紅潮した頬と活力のある瞳は、疲労よりもむしろ興奮冷めやらぬ様を呈していて早口で)…ルチル！めちゃくちゃすごかった！追いつこうと思ってスピードを上げても、ちっとも追いつけないんだもん。すごいなぁ、俺がもっと早かったら、もっとルチルの飛ぶ姿が見れたんだよね。飛行術も練習しないと！

ふふ、ありがとう！ いつもはこんなに早く飛べないのだけれど、クロエにかっこいいところを見せたくて、ちょっと張り切っちゃった。( 矢継ぎ早に放たれた言葉に驚きつつも、キラキラした瞳で語られる嬉しい言葉の数々に誇らしくなり、ニコニコした調子で。ふと、興奮した様相の相手から疲労が少し見て取れ、掌のシュガーを差し出せば、 ) はい。ティコ湖までまだまだ距離があるから、シュガーをどうぞ。

ありがとう。(差し出されたシュガーを少し震える指先で摘み舌の上に乗せると、熱に溶かされたシュガーが雪解けのようにじんわりと口内に広がり、緊張した頬も体も弛緩させていくようで、腿に力込め箒をしかと挟めば、両手を柄から離し手をグーパーして震えが止まり力が入る指先を確かめ笑顔見せ、)ルチルの優しさもシュガーもめっちゃ染み入る…。さっきまでへとへとだった身体が嘘みたい。これなら、さっきまでのスピードは難しいけれど、のんびり飛ばなくても大丈夫そうだよ。引き続き、ルチル先生についていくね。

( どういたしまして、と述べると同時に笑顔を向けてくれた相手を観察し、活力取り戻した様子に安心しながら箒の柄を握り直して、 ) それじゃあ、のんびりよりちょっぴり速く、さっきよりは全然ゆったり行こう。私は飛ぶのが好きだからついついスピードを出してしまうのだけれど、速すぎたら教えてね。クロエが疲れないペースで行けたら、私も嬉しいな。( 故郷で生徒を引率したことはあれど空の上での経験はなく、少しの緊張を抱えながら走る速度よりやや速めの速度で目的地方面へ移動し始め )

それならさ、(飛ぶ体制に戻っては少し先を行く相手の横に並び速度を合わせ、相手の緊張を解すように笑いかけ、)こうして並んで飛ぶのはどう？話もしやすいし、俺が遅れて待たせることも無くなるんじゃないかな。…代わりに速度を落とさせることがあるかもしれないし、単純に俺がルチルと隣合って飛んでみたいっていうのもあるんだけどね。


すっごくどうでもいい話だから返さなくていいんだけど、並んで走るのは併走で、並んで飛ぶことは二人でも編隊なんだね。…どことなく編隊と言う表現に抵抗があって、上の返事では同じような言葉を繰り返しちゃった。読みづらくてごめん。
…併走していい？って言葉は偶に聞くけれど、編隊していい？って聞くのかな…(うーん)

まあ、とっても素敵……！ ( 隣に並んだことで相手の表情がはっきり目に映り、微笑みにつられて笑顔溢せば自然と緊張も和らいでいて。穏やかな気分と共に己から距離を詰めれば、真っ直ぐ相手の瞳を見つめ、 ) ありがとうクロエ。箒で飛ぶのは好きだけれど、移動時間はちょっとだけ退屈だから、併走してお話しできるなんて嬉しい。( 嬉しさを声色に乗せ告げれば、視線を相手の背中の奥へと移動し、 ) 向こうに見えるお花畑みたいな南の国の素敵なところを、いっぱい紹介させてね。


ちょっと気になっちゃったから返させてもらうね。長くなっちゃったし、なにもなければ蹴ってほしいな。
ふふ、いっぱい考えてくれてありがとう。あなたと同じように私も編隊って言葉に少しだけ抵抗があるかな。なんていうか、軍隊みたいな気がしてそわそわしちゃう。魔法使いたちは走るのと同じくらい箒で飛ぶのが当たり前の移動手段だと思うから、空を共に駈ける、走るってことで併走でもいいかもしれないなって思うよ。
ってことで、私は併走を使っちゃいました！ ( じゃーん！ ) 気になるようだったら次からは控えるから、教えてくれたら嬉しいな。