うたいてしぼう 2022-01-21 21:39:28 |
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……今日もご視聴ありがとうございました。じゃあまたね。
(いつも通りの挨拶を済ませ、未だ流れ続けているコメント欄を横目に配信を切る。ありがたいことに「これ歌ってください!」など多くのリクエストも多かった。最早日課となっている配信アーカイブのコメントチェックをしていると、ある配信者の名前が多く上がっていた。『あろー。』最近よく名前を耳にする女性配信者だ。コメントはしていないものの、何度か配信を見に行ったことはある。短期間でここまで知名度を上げるのはなかなかだと以前から注目していた。やはり着々と彼女は知名度を上げているらしい…。配信機材の調子を確かめる片手間に彼女の過去配信を流していたが、体力の限界も近かったらしくその日はそのまま眠りに落ちた。)
☆
え?なんで……
(次の日。休み時間。同じクラスの女子生徒に何の前触れもなく名前を呼ばれ、さらには日直まで頼まれてしまった。此方から何か言う前にもう決定事項となってしまったようで、もう反論する余地もない。どうやら、自分に日直を頼んできたクラスメートの隣にいる女子生徒、確か名前は灰鈴とか言った彼女と一緒に日直をすることになったらしい。「あー…宜しく」了承の返事はしたものの、まだ自分の中では納得がいっていないのか、此方に向けられた苦笑いには呆れ顔で返して)
(/おかまいなく!これからよろしくね。)
>西園寺くん
あはは…ごめんね西園寺くん。私が怖がりなばっかりに…。
(時は進み放課後の教室。他の人は部活やそのまま帰った人もいるがいまの教室には自分と西園寺くんしかいない。何とか笑いで誤魔化そうと思いながら謝罪して。急に頼まれてしまった西園寺くんに日誌を書かせる訳にも行かないので何となく適当に日誌をスラスラと書いていく。ほとんど書き終わったので興味本位で過去のページを開くと何故か『あろー。』の文字があったのでスパァン!と日誌を反射的に閉じてしまう。なんか変な人と思われるのが嫌なので)
いやぁー最近CLEARって歌い手さんにハマっててね。CLEARさん凄いんだよ。なんかこう、すっごい心地いい配信するからすぐ寝ちゃうんだ。
(無難で変にも思われないであろう趣味の話でもしようかと自分らしくないがCLEARさんの名前を出して必死に魅力を伝えようとしていると本心がポロポロと出てきてしまう。話している姿は何故か小動物のハムスターやモルモットに似ている。)
(/こちらこそよろしく!)
あー…別にいいよ、俺暇だし。
(放課後。彼女からの謝罪には苦笑いで返し、片耳にイヤホンを突っ込んで適当な配信を開きながら目の前の彼女が日誌を書き終えるのを待っていた。……のだが、突然聞こえてきた自分の活動名、反射的にその声の主へと顔を向ける。こうしてリアルで配信者としての名前を呼ばれるなんてことは初めてに近く、動揺を隠しながらあくまでも冷静に相手を覗き込んで)
何、灰鈴ってそういうの見るんだ?
へっ?うん。歌い手さんは好きだよ!
そういうのって言われるとちょっと恥ずかしいけど…。
(片耳にイヤホンを付けて何か聞いているのだろうか。何故か絵になってしまう西園寺くんは不思議だと思っていたら不意に覗き込まれたので少し驚くも質問にはちゃんと答えて。照れ隠しで少し目線を逸らして。西園寺くんにも趣味とか無いのかなとこれを機に会話を弾ませてみようと思い日誌なんて忘れて興味津々で)
西園寺くんは?マイブームとかないの?
(マイブーム…正直配信一択と言っても過言ではないのだが、流石にここで自分の活動について明かす訳もなく。嘘はついていない、とそれっぽい返答をし、これ以上の言及を避けるべくさり気なく話題を横に逸らしてみる。「歌い手が好き」という彼女ならもしかしなくとも知っているのではないかと、つい昨日も自身の配信に出てきた配信者の名前を挙げてみて)
マイブームって程でも無いけど、俺もそういう配信は見たりするよ。最近は「あろー。」って人が流行ってるらしいけど。灰鈴も歌い手とか好きなら知ってるんじゃない?
んン"!?っ
う、うん、そうだねぇ。いるよね、『あろー。』って人。人気かどうかは分かんないけど
(あの先程までイヤホンで何か聞いていて絵になっていた西園寺くんが自分の裏の顔…なんて言ったらアレだけど『あろー。』なんて言葉を発するなんて思いもしなかったので吹き出してしまい、軽く咳き込む。それが自分というのは言う訳にもいかず、他人事の様に話すが顔が引き攣っている。よくこれで西園寺くん以外の人騙せたなというのは背後の独り言。)
なんか触れられたらマズいことでもあった?
(知っている歌い手のことを話す…にはあまりにも不自然な反応に違和感を覚えたのか、不可解そうに額に皺を寄せる。彼女がただのリスナーだというならここまで焦る、何かを隠しているような素振りは見せないはずなのだが…。この疑問がどうにも腑に落ちないらしく、単なる好奇心で言及してみて)
…そんな事なきにしもあらず。じゃなくて!ないよっ。
(否定しようとしたら何処かで噛んだのか普通に「はいそうですよ」みたいな言葉になってしまったので慌てて否定して。西園寺くんと話していると相手が掴めないせいかうまく言葉に表せず私のせいで会話になってないかもしれないと心の中で反省する。)
う、日誌終わったから帰っても大丈夫だよ。私の話に付き合わせてごめん。
…また歌い手さんのこと話せたらいいね!
……そう、じゃ。お疲れ様。
(やはりどこか引っかかる返答が返ってきた。しかし、流石にこれ以上言及するのは相手の反応から可哀そうだと判断したのか大人しく引き下がることにする。彼女の言葉に甘えて帰る支度を始め)
うん、お疲れ様!
(自分も早く帰ろうと西園寺くんの発言に返事をして。日誌を定位置に置いて自分の机にへこへこと小走りで歩いて鞄をとれば机の中からノートや教科書、筆箱に最後に携帯を詰めて。……日誌も嫌と言わず付き添ってくれたし私のつまらない話も聞いてくれて尚且つ歌い手活動を執拗に追求して来ない辺り)
………優しいなぁ……
(手早く荷物を纏め教室、そして学校を出た後、通学路途中の信号待ちの時間にスマートフォンを取り出す。相変わらず着けっぱなしのイヤホンで今日は何をBGMにして帰ろうかと動画サイトを開き……一番最初に目に飛び込んできたのは「あろー。」の過去配信。クラスメイトとの会話の話題にするほど最近頻繁に見ていた配信者ため、サイト側がおすすめ動画として提示してきたのだろう。何気なくそれをタップし、動画を再生する。聞き覚えのある歌声と、ある話題に対し不自然なほど反応するクラスメート。まさかとは思うが、もしかして……自分の中にひとつの仮説が生まれていた。)
(帰り道。先程入れたスマホからだろうか、着信音がなり慌てて取り出すと毎回配信を見てくれているファンからのコメント。その気持ちに応えたくて、速く配信したくて段々と駆け足になっていた。家に帰って「ただいま」というといつも返事で「おかえり」と言ってくれるお母さんの声は無くて。リビングに行ってみたら「お母さん昔の友達とお泊まり行ってくる」という突然な謎の置き手紙が食卓に一つ。いや、一人じゃ怖い。……そこでパッと浮かんだ。配信をしながら過ごせばいいのでは?…我ながら完璧だよしやるぞ、と思えば配信は始まっていて)
皆さんこんにちは、あろー。です!今日は久々に歌枠じゃなくて雑談枠だよ!楽しみにしていた方はごめんね。
お母さんが急に家出て行っちゃってご飯作りながら配信しまーす。あ、悪い意味の出て行っちゃったじゃないからね!?
(帰宅。スマホの画面を確認すると、丁度何か配信が始まったらしい。タイミングのいいことに、どうやらそれは「あろー。」の雑談配信。兄弟姉妹なし、両親は共働きのため家に帰っても殆ど一人で過ごしている自分にとって、その生配信は作業用BGMとしてピッタリだった。迷うことなく彼女の配信視聴画面へ切り替え)
今日はねー。一番簡単な和食にしようと思うんだ。
…え?「和食ってすぐ出来るの?」だってご飯炊いて炊いてる間に味噌汁作って卵焼き作ってご飯炊けてってやってたらすぐだよ!
ちょ。みんなそこまで笑わなくたって…。『シャカシャカシャカシャカ』
(今日の夕食を説明していたらコメントが飛んできたので答えてみて。そうしたら何故か「計画的過ぎないかあーろん笑」「主婦力高めのあーちゃんでた笑」と言ったコメントがわんさか出てきたので照れながら白米を洗って。次第にASMRみたいになってきたので「あーろん!?なんか言ってよ怖いわ!」と、コメントが上がった瞬間ファンが共感してコメントが大渋滞になり。)
おわ、ごめんめちゃくちゃ集中してたわ。
そういえば今日クラスメートの男の子がリアルの私じゃなくてあろー。の私の話してくれたんだよね。めっちゃ焦ったよ、でもその子そこまで聞いて来なかったんだよね。空気読みってこの事かな、そういえばゲーム配信もやってみたいんだよね!おすすめのゲームあったらよろしくー!
(雑談配信と謳っている彼女だが、どうやら今は調理中らしい。シャカシャカと軽快に米を研ぐ音が配信上に流れているというこの光景は珍しいもので、宿題片手にどこか新鮮な気持ちでその配信を聴いていた。今日の夕飯は和食でもいいかもしれない…なんて呑気に考えていたところ「……っ?」何気なく発せられたであろう彼女のエピソードトークに思わず動きが止まる。もし、もしもこの話に出てきた「クラスメートの男の子」が自分だった場合、今日の帰りに考えた仮説は……。あまりにも突然の展開にまだ脳の処理が追いついていないのを感じたが、最終的に出てきた答えは「真偽は明日本人に問い詰めてみればいい」という簡単なもの。これ以上深く考えることはやめ、未だ料理途中である彼女に合わせるように自分も夕飯づくりに取り掛かった。)
炊飯器くん頑張ってくれよー。
味噌汁作りまーす。雑談じゃなくて料理配信になってるけど気にしないでね。
調理の音だけだと寂しいし怖いからなんか歌お。
じゃあ料理にちなんであれかな?
(米を洗い終わり炊飯器に入れてボタンを押して応援すると返事をするかのように「ぴっ」と音が鳴り。次の工程に移ろうと思っていたら雑談配信ではなく料理配信になりつつあるのでまぁそこまで気にすることはないだろうと視聴者にも言っておいて。現実では調理の音と自分のトークしかキッチンに響いてないので少し恐怖を感じて面白さで吹っ飛ばそうと思い、かの有名であろう某三分で調理する、マヨネーズの赤ちゃんみたいなキャラクターがいる番組の曲を歌って。少し癖が強いかもしれないが怖いよりかはマシだろうと思い。)
(それから料理は順調に進み、完成して。配信していたからか少し遅めになってしまい、慌てて挨拶をして配信を切って。切った後でも止まないコメントにくすりと笑ってご飯を食べ始める。我ながらの出来栄えで久々の一人ご飯だったのでなんだか新鮮味があり。食べ終わって片付けもしてお風呂も入って粗方今日のやる事は終わったのでベットにイン。)
炊飯器くん頑張ってくれよー。
味噌汁作りまーす。雑談じゃなくて料理配信になってるけど気にしないでね。
調理の音だけだと寂しいし怖いからなんか歌お。
じゃあ料理にちなんであれかな?
(米を洗い終わり炊飯器に入れてボタンを押して応援すると返事をするかのように「ぴっ」と音が鳴り。次の工程に移ろうと思っていたら雑談配信ではなく料理配信になりつつあるのでまぁそこまで気にすることはないだろうと視聴者にも言っておいて。現実では調理の音と自分のトークしかキッチンに響いてないので少し恐怖を感じて面白さで吹っ飛ばそうと思い、かの有名であろう某三分で調理する、マヨネーズの赤ちゃんみたいなキャラクターがいる番組の曲を歌って。少し癖が強いかもしれないが怖いよりかはマシだろうと思い。)
(それから料理は順調に進み、完成して。配信していたからか少し遅めになってしまい、慌てて挨拶をして配信を切って。切った後でも止まないコメントにくすりと笑ってご飯を食べ始める。我ながらの出来栄えで久々の一人ご飯だったのでなんだか新鮮味があり。食べ終わって片付けもしてお風呂も入って粗方今日のやる事は終わったのでベットにイン。)
(次の日。昨日は色々と疲れていたのか彼女の配信が終わり最低限の用事を済ませると、あれから倒れ込むように眠ってしまった。目が覚めた時はもう既に朝。いつも通り通学準備をし、メリハリのない同じ道を辿って学校へ向かう。もうクラスメートの彼女は登校しているだろうか。下駄箱で靴を履き替え、そんなことを考えながら教室へ続く廊下を歩いて)
今日は部活あるし頑張ろー。
あ、おはよー。
「おはよ、昨日はありがとう花ー!マジで助かったわ。」
あはは、それは良かった
(朝、昨日はぐっすり眠れたお陰か遅刻せず、逆に早めに来てしまった。取り敢えず暇だったので部室に道着やなんらやを置いてきて教室に帰ってきたら丁度いい時間になっていたので伸びをしながら教室に入り椅子に座ると昨日日誌を頼んできた友達が来ていたので挨拶を軽くして。西園寺くんまだ来てないなー……なんて教室をキョロキョロして。)
おはよう灰鈴、あのさ……
(時間も時間だ、教室に到着した時には既に何人かクラスメートが居り、その中に彼女の姿も見える。軽く朝の挨拶を済ませ、早速本題を切り出したいところだが…自分も配信をしている身として、こんな周りに人の居るところでその話題を持ち出すのはタブーなことくらいよくわかる。少しの沈黙の後、変な噂の立たないよう静かに口を開き)
今日の昼休み、空いてる?聞きたいことがあるんだけど。
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