刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
通報 |
ロイド・デイビス
__あ、そう…なんですか、?
( 記憶にある中では刑事課に【ミラー】と言う署員は居なかった様に思うがこれだけ広いのだ、別の課には居て相手はその人を呼んだ可能性があると考えたのだが、どうやらそもそもその名前の人は居ないらしい。では誰を__可能性としては極めて低いが、人で無いのなら愛犬か何かの名前でも呼んだのかと取り敢えず頷きはするものの、心底納得した訳では無い事はきょとんとした表情と曖昧な語調で直ぐに伝わっただろう。結果的に此方がそれ以上何か言う前に仕事に戻る様にと言われれば再び頷く他なく。立ち上がり一礼してから扉を開ける前。『…警部補、』と相手の名前を呼ぶと『俺で良ければ何時でも呼んで下さい。鞄くらい何度でも持って来ますから。』僅かにはにかむ様な笑みを浮かべつつ、勿論鞄の事だけでは無くどんな理由でも、との言葉を含ませてから今度こそ会議室を出る為の一礼をして )
( レイクウッドを離れてもう数ヶ月で1年が経とうというのに、未だ無意識にミラーの名前を呼んでいたとは。思っていた以上に彼女に寄り掛かり、支えられていた事を今更ながら改めて実感して小さく息を吐く。本部に戻ったのはあくまで自分の意志だ。しっかりしなければと自分に言い聞かせ、会議室を出ていく相手に視線を向けていたものの。不意に名前を呼ばれ、手助けの申し出を受けると「…あぁ、助かる、」と素直に言葉を紡いで。その親切心は有り難く受け取っておこうと。今回の一件で相手には要らぬ手間を掛けさせた訳だが、何かあった時に少しでも手を差し伸べてくれる存在というのは心強い。相手が会議室を出て行くのを見送ると、その後少し会議室に留まり大丈夫そうだと判断すると刑事課のフロアへと戻って行き。 )
ロイド・デイビス
( __刑事課フロアへと戻り再び仕事を始めてから凡そ30分程が経ち、遅れて会議室を出た相手が警部補執務室に入って行くのを見た。ある程度調子を回復させたのだろうと胸に安堵を落とし残りの仕事を片付ける。__それから特別捜査に呼び出される事も無くデスクワークを続け、気が付くと時刻は夜の6時を回った頃になっていた。普段の忙しさは何処へやら、比較的落ち着いている今日、早上がりの出来そうな署員達は仕事を終わらせ帰宅していてフロアに残るのは後数人。己もまた同じで提出しなければならない書類を提出した後帰ろうと席を立ちジョーンズの元へ向かうと、パソコンの画面を見詰めている彼女の横から『お疲れ様です、頼まれていたものが出来上がりました。』と、声を掛けつつ、手にしていた数枚の書類を手渡して。不備が無いかを確認して貰う間、視線を流したのは警部補執務室。何時の間にか窓から漏れていた光は消えていて知らない間にエバンズは帰ったのだろうか。彼女からOKが出れば再び視線を相手へと向け。後は自席に戻り帰るだけなのだが__『……“ミラーさん”ってご存知ですか?』口をついた唐突にも取れる問い掛けは意識の混濁が見られたエバンズが口にした名前。物凄く気になるかと言われればそうでは無いのだが、スッキリはしないのだ。些か詮索し過ぎかとは思うものの、相手に聞けば何かわかるかと思っての事で )
クレア・ジョーンズ
( 相手から書類を受け取ると目を通しておくと笑顔で返答したのだが、一拍の間を置いて思いがけない名前が不意に相手の口から出た事に驚いて相手に視線を向ける。「えぇ、知ってるけど…」と答えたものの、新人として配属された時からずっと本部にいるデイビスとレイクウッドのミラーとの共通点は何かと暫し考える。年齢は同じくらいか彼の方が少し上だろうか。すぐに浮かんだのは当然“ベル・ミラー”だった訳だが、少し考えてからこの署にも“ミラー”という名前の署員がいた事を思い出して「…あ、もしかして総務のミラーさんの事?私たち刑事課が直接関わる事はあまりないけど…情報セキュリティ関係の事に詳しい人よね。」と、覚えている限りの情報を告げる。「ミラーさんがどうかした?」と尋ねて。 )
ロイド・デイビス
( エバンズは“此処には居ない”と言った“ミラー”を相手は知っていると言う。総務課の人達の顔を思い浮かべるも、当然ながら全員を思い出す事など出来る筈も無く正直な所ピンとは来ない。__何故彼はあの時一度は探していたその人を、急に居ない等と言ったのか、彼自身が言っていた通り記憶の混濁を考え、そこでこれ以上の詮索を辞める。少なくとも“ミラー”は存在して居て想像していた犬では無い可能性の方が格段に高くなったから。口角を持ち上げる様に笑みを浮かべ問い掛けに関して軽く首を振ると『いえ、警部補が探してたみたいだから少し気になって。』上司と部下の他愛無い会話の中の特別じゃない事、と言うニュアンスで答えた後。『でも、総務課に居るなら俺が態々探すまでも無いですね。』緩い笑みのまま軽く肩を竦めて見せて )
クレア・ジョーンズ
( “警部補が探していた”という言葉に思わず目を瞬く。彼が探していたのなら、やはり一番に思い浮かんだ彼女である可能性が格段に高い。しかし、彼女の事を探している、だなんて、あのエバンズが言うだろうか。『アルバートが?…それなら、多分本部には居ない人だわ。以前勤務していたレイクウッドにいた刑事じゃないかしら。よく一緒に捜査をしていたから、少なくとも総務課のミラーさんよりは近いはずよ。』詳細については言及しなかったもののあくまで事実だけを伝えて、以前の署に居た人物の可能性が高いと伝えて。しかし、確かに相手はエバンズにとって以前から知る部下で、珍しく相性も比較的良いように見えるのだが、自分のプライベートな話をするとは考えにくい。『……貴方に、“ミラー”を探してるって言ったの?』首を傾げつつ、尋ねて。 )
ロイド・デイビス
( 相手のその言葉で漸く“此処には居ない”の本当の意味を理解し、同時に納得した。以前勤務していた署に居た署員の名前だったのならどう頑張った所であの時自分が呼んで来れる筈が無い。何故か無性に気になってしまった“謎”が無事解決した事でスッキリと家に帰れると、いっそ清々しい気持ちさえ覚えた所なのだが__どうやら一度は解決したと思っていた“謎”が相手に移ってしまったらしい。不思議そうに首を傾けどうにも腑に落ちていない様子に勿論放って『お先に失礼します。』なんて帰れる筈も無く。しかし返事にはとてつもなく困った。正確に言えば“ミラーの名前を呼んだ”だけで直接探していると言われた訳でも、連れて来てくれと言われた訳でも無い。加えてあの時彼は明らかに倒れても可笑しくない程に調子が悪そうだったものだから、それを相手に伝えても良いのかわからなかったのだ。『……あ、いや__直接探してるとは言われなかったんですけど、』何と答えるべきか、僅かに視線を逸らす様に相手の横の壁を見ながら言い淀む事数秒。上手い誤魔化しを見付ける事は出来ず、『…多分、俺とミラーさんを勘違いしたんだと思います。』“意識が混濁していた”と言った彼の言葉を思い出しそれに乗っかる形の返答をしつつも、普通ならば此処に居ない相手と勘違いする筈も無く、更なる疑問をまた生み出すだけだと気が付くと暫しの沈黙の後『……少し調子が悪そうに見えて、』明らかに“少し”では無かったのだが、これが出来る限りの返答で )
クレア・ジョーンズ
( 彼女が此処に居ない事を、当然エバンズは誰よりも理解している。例え暗闇の中だったとしても、性別も背格好も何もかもが違う相手をミラーと混同する事など“通常では”あり得る筈がない。その違和感は直ぐに、相手の言葉によって解消される事になる。相手は“少し”調子が悪そうだったと言葉を選んだが、側に居る人物をミラーと混同する程体調を崩した所に、相手が居合わせたと言う事だろう。『そうだったのね。…此の所急に寒くなったから、』相手をあまり心配させないようにと、重くなり過ぎないように紡いだ言葉は奇しくも相手と同じもの。同時に朦朧とした中で名前を呼ぶほど、やはり彼にとってミラーは大切な存在なのではないかと、やるせない気持ちになる。エバンズが本部移動を決めた理由は知っている。不器用な彼だからこそ、ミラーを大切に思うからこその決断だと分かっているが、彼自身の心を蔑ろにした決断だ。実際本部に移動してきてから1年ほど。エバンズとミラーが接点を持っている様子は見られないし、顔色が良くないと感じる事も増えて来た。再び目の前の相手へと視線を向けると『アルバートが探していた人の事は心配しないで。貴方から聞いた事も本人には言わないから。…また声を掛けてあげて。あの人、あんな顔だけど貴方の事は好きだと思うわ。』と告げる。今回の件については此方でなんとかするし、相手から聞いたと話したりはしないと約束して。そうして、少し悪戯っぽく笑うと懲りずに彼に”構ってあげて欲しい”と伝えておき。 )
ロイド・デイビス
( 上手い返しが出来た訳でも、確りと誤魔化せた訳でも無かったが相手は根掘り葉掘り聞いて来る事はせずただ納得した様子を見せただけだった。けれど相手が一言紡いだ言葉は己がエバンズに掛けたそれと同じもの。嗚呼、きっと“全て”を理解した上での納得なのだろうと直感的に感じると、『__本当に。初雪も近いかもしれませんね。』同意する様に頷くと同時、その動作と共に持ち上げた瞼の奥の瞳に何処か柔らかな色を宿して。__あの会議室で調子の悪いエバンズを見付けたのが自分では無く相手だったら。もしかしたら彼はもう少し弱音を吐く事が出来て、何かが違ったのかもしれない。ふ、とそんな“たられば”が浮かんだ正にその時。落とされたのは此方の気持ちを汲んだ約束と、悪戯な“お願い”。その言葉と笑みに一度瞬き、直ぐに破顔すると『好意を持たれてる顔では無かったと思いますけど、もしそれが本当なら…警部補は常に“誤解”と戦うはめになりそうです。』皮肉などでは無く、言うなればまるで上司と少しの言葉の遣り取りをする様に。それから悪戯な色宿る瞳を見詰め、所謂安堵の溜め息を小さく吐くと『…ジョーンズさんって良い人ですね。』今感じた気持ちのそのままを言葉に、軽く頭を下げて )
クレア・ジョーンズ
( 彼の周りが少しでも暖かければ良いと思うのは、ずっと側で彼を見て来たからこその勝手な思い入れだろうか。相手が言うように、彼は誤解されやすい。けれど本当は優しい人なのだ。続いた相手の言葉には『______そうよ、今気付いたの?』と悪戯に笑みを浮かべて返事をする。『引き止めてごめんなさい。気を付けて帰ってね。』遅くまで話し込んでしまったと思えばそう言って彼を解放し、書類をデスク上に置かれたトレーに入れて。---エバンズが去ったレイクウッドには未だ一度も行けていない。デイビスから聞いたことを横流しするつもりはないが、少し彼女と話がしたいと思い時計を見上げると、スマートフォンを開いて“ベル・ミラー”の電話番号を押していて。 )
( __犯人の自白を引き出す事が出来、一件の事件捜査を無事に終わらせた今日。身体の疲れは然程感じていないものの、ご飯を作って食べる事が無性に面倒に感じてしまい近くのお店で中華をテイクアウトし食べ終えたのがついさっきの事。特別興味のそそられる番組も無く、適当に流しているだけのニュースの情報を聞きながらソファに深く座り、膝掛けのじんわりとした温もりを感じながら何か温かい飲み物でも、と思った矢先。テーブルに置いてあるスマートフォンが震え着信を知らせた。前のめりでそれを手にすれば、画面には此処暫く顔も見ていない、声も聞いていない【クレア・ジョーンズ】の名前があり。近々誰か応援に来ると言う話も聞いていない為、それ関係の話では無いだろうが何かあったのだろうかと通話ボタンを押し「…お疲れ様です、ミラーです。」携帯を耳に、再度背凭れに背を預ける形で電話に出て )
クレア・ジョーンズ
( 数コールの後に相手の声が聞こえると『もしもし、ベルちゃん?こんな時間に急にごめんなさい。ちょっと声が聴きたくなっちゃって…用事がある訳じゃないんだけど、』と告げて。用もなく電話をするには少し遅い時間だと分かっているだけに、声には少し申し訳なさが滲む。都合が悪ければまた掛け直すと付け足しつつ、『最近レイクウッドに行けてないから、どうしてるかなと思っていたの。』と続ける。エバンズは早々に署を後にしているため、この電話を聞かれる事もない。電気の消えている執務室に視線を向けつつ、相手の近況を尋ねて。 )
( 電話の向こうから聞こえる声は少しの申し訳なさを滲ませていて、“こんな時間”に釣られる様に壁掛け時計を半無意識に一瞥するも、用事の有無に関わらず例えどんな時間であれ相手と話をする事が出来るのならば何の問題も無いのだ。「私も声が聞きたかったです。だから、…嬉しい。」片手で膝掛けを少し引き上げつつ懐かしいその声を噛み締める様にはにかみ。続いた近況への問い掛けには緩めた口角をそのままに「何も変わらずですよ。」と、先ずは相手に余計な心配を掛けない様にと問題無い事を伝える。数ヶ月前に起きた事件の事も、エバンズの事も、何も口にはせぬまま「…強いて言えば、以前クレアさんと一緒に食べたベーグルのお店。あそこに新商品が出たくらいです。」彼女が初めてレイクウッドに応援に来た日に食べたお店の話題を持ち出し、少しだけ悪戯に笑って見せて )
クレア・ジョーンズ
( 相手の声色は落ち着いたもので、元気にやっているようだと安心する。『あ、あのお店?美味しかったわよね、またレイクウッドに行った時連れて行ってね。ワシントンにもテイクアウト専門のベーグルショップが出来てね、今期間限定でりんごとサツマイモのジャムが出ていて…もう2回食べちゃった。』相手と一緒に食べたベーグルショップの話題が出ると、また食べに行きたいと言いつつワシントンにできた店の話をして笑う。『ベルちゃんが本部に来た時には連れて行ってあげるわね。近くの公園のベンチで食べるのがお気に入りなの、』他愛のない話をしてから『仕事はどう?困ってる事はない?』と尋ねて。 )
( “勿論です”と目前に相手は居ないながら大きく頷くのだが、まさかワシントンにも似た様なお店が出来ていたなんて。「絶対美味しいやつじゃないですか、それ。今年はもう間に合わないかもしれないけど来年もし行く事があれば是非お願いします。」出来たての全粒粉の香り立つモッチリとした弾力あるベーグルに仄かな酸味やコクのあるジャムが合わさり絶妙な旨味を産む__想像しただけで美味しい事間違い無しのそれに少しだけ羨ましそうな声色で返事をしては、何時になるか、そもそも果たしてこの先本部に行く事があるのかもわからない中で敢えて“来年”と口にして。テレビは何時しかニュース番組から良くわからないバラエティ番組に替わっていた。伸ばした手でリモコンを掴み違うチャンネル番号を押し再度別のニュース番組に切り替える。「事件そのものの数は特別増えていない筈なんですけど、新しい警部補が来てから倍忙しくなった気がします。…勿論悪い人じゃないんですよ。でも__皆エバンズさんの仕事ぶりを知ってるから、」心底困り果てている愚痴では無いものの、日々業務に追われる事は確か。此処で漸くエバンズの名前を出すと少しだけ困った様に笑いつつ「…エバンズさんは元気ですか?」と、彼の調子を問うて )
クレア・ジョーンズ
( 本部への応援は様々な地方の署から派遣されるため機会としてはあまり多くないだろう。前回の応援も別の女性刑事が来ていたし、ある意味競争率が高い枠のかもしれないが。『また最新のベーグル情報を仕入れたら連絡するわね、』と悪戯に笑って。---“忙しい”という言葉を、やり取りのあったレイクウッドの刑事たちから今年に入りよく聞くようになった。『そうなの…アルバートの働き方はやり過ぎだったとしても、警部補が1人変わっただけでそこまで負担が増えるっていうのも困った話よね。あの人だって他の刑事の仕事を奪ってまで働いていた訳じゃないし…新しい人、サボりぐせがあるのかしらね。』彼ほど仕事に熱心なタイプではなかったとしても、元々1人で賄う役職。其処が入れ替わっただけで、そこまで負担が増えるというのは明らかに可笑しいと、困ったような口調で答えて。『…いつも通り、毎日パソコンと睨めっこしてるわ。』肩を竦めつつ、そう述べるに留める。先ほど聞いたばかりの話では、体調を崩している事がある様子だったが欠勤するような重篤なものではないし、相手を心配させてしまうだろう。『_____アルバートとは連絡は取ってる?』それとなく相手に尋ねて。 )
__ずっと電気も点いてるし執務室に居るって思い込んでたけど、実際は抜け出して散歩でもしてるのかも。…なんて。忙しいのは本当ですけど、音を上げる程では無いんです。だから、あまり心配しないで下さいね。
( 何方の警部補も執務室に閉じ篭り用事のある時にしか出て来ない印象だが、相手と決定的に違うのは“捜査に出ない”と言う所。本当に丸一日籠城を決め込んで居るのだからその間に書類の数枚の確認くらい出来る筈だと他の署員から文句の飛ぶ気持ちもわかるのだ。けれど現段階では何もかもが機能しなくなっている訳では無い。余計な心配を掛けぬ様敢えて冗談を口にしながらも、まだまだやれるのだと言う意思表示は確りと伝え。約1年が経った今も尚、どうやら彼の働き方は変わっていない様だ。眉間に皺を寄せた難しい顔でパソコンを見詰め、此方が話し掛けても顔すら上げない時がある。数え切れないくらい見て来たその表情をたった1年会わないだけで忘れる筈も無く鮮明に思い出せるものだから、胸の奥が小さく痛み、それに気が付かない振りをして微笑むと「良いんだか悪いんだか、ですね。」と肩を竦め。次いだ問い掛けには言葉が詰まった。この1年、たったの一度だって相手に連絡をした事は無かった。その理由は自分でもわからない。声を聞いたらまた会いたい気持ちが溢れ出し泣き言を言ってしまうから、確り1人でもやれているから何も心配いらないと暗に伝えたかったから、変に強がってしまったから__もしかしたら思い浮かぶ理由のそのどれもが正解なのかもしれない。ただ、“1年”と言う年月が思いのほか長くて、何かが変わってしまった様にすら思えたのだ。「……いえ、」と、一言答えてまた口を噤む。途端に重たい空気が自身の周りを漂い、それを払拭する為に立ち上がると、膝掛けをソファの端に畳み携帯は耳に付けたままキッチンへ。愛用のマグカップにスティックコーヒーの粉を入れケトルにお湯を沸かしながら「…エバンズさんの事、気にならない訳じゃないんです。ただ、何を話せば良いのか急にわからなくなっちゃって。」その場に立ったまま、表情は笑顔こそなれど困った様に声量は落ちて )
クレア・ジョーンズ
( 彼の居なくなったレイクウッドで、泣き言を言わず一刑事としてしっかりやらなければと気を張っている、というのはあるのだろう。忙しくはしているもののあまり心配しないで欲しいという言葉には少し困ったように1人微笑んだものの、破綻するほどの状況ではないのだから今は相手の言葉を尊重してそれに従い見守ろうと。---やはり相手とエバンズは連絡を取り合う事はしていないらしい。“何を話せば良いか分からない”というのは、お互いがお互いを思うからこそ、2人ともが抱えているぎこちなさのように思えた。「……きっと、アルバートも同じ事を思っているわ。本当はベルちゃんに話したい事がたくさんある筈だもの。』心細く辛い状況に陥った時、無意識ながら相手の名前を呼んでいたのだと伝えられたら、2人の向き合い方は変わるだろうか。本当は相手を守る為に本部に戻ったのだと伝えられたら______きっと彼はそれを良しとしない為自分の口から伝える事はないが、本当は相手の事がずっと心の内にあるのだという事だけでも伝えたかった。『レイクウッドでの2人を見て、すごく嬉しかったの。アルバートもすごくベルちゃんに心を開いているのが分かって……こっちではベルちゃんみたいな人が居ないから、少し寂しそう、…なんて。そんな事言ったらきっと怒られちゃうわね。…だいたい不器用過ぎるのよ。あの人なりの優しさなんて、忘れちゃうくらい時間が経ってから気付くの。言葉にもしないし、顔にも出さないんだから。』彼なりの正義を貫く時、彼はそれを一切顔にも出さず、ただ静かに水面下で事を進める。相手を大切に想うからこをワシントンへとやってきたエバンズの事を思い、つい途中からは言葉に力が入ってしまい、思わず自分を落ち着かせようと深く息を吐く。すれ違っている2人を見るのは酷くもどかしくて、言葉に力が入ってしまうのだ。 )
__私に話したい事、…もっと客観的に周りを見て冷静に捜査しろ。とかですかね、
( 彼が自分に話したい事なんて。好き好んで世間話に花を咲かせるタイプでも無いし、相手と違って何処のお店の何が美味しいなんて話は余程暇であっても絶対にして来ないだろう。彼がもしこの距離で話したい事があるとすればそれは“仕事の事”だろうと少しおどけた様に答えるも、数秒後には真顔に戻る。持ち上げた筈の口角は思いの外重くまるで自分の表情筋では無い様な感覚だった。お湯が沸いた事でケトルの電源が切れ、マグカップに注ぐ事で出来上がったコーヒーを片手に再びソファに座り直す。その行動も半無意識の中。だからこそコーヒーは真っ黒のままで、苦いまま。マグカップに口を付ける事をせず目前のテーブルに置き電話口の相手の言葉を静かに聞くのだが、途中から明らかに声色も声量も変わり、感情の昂りが感じられたものだからその珍しさに一度瞬き。同時に酷く優しい思い遣りが流れ込んで来た気がした。彼を思い、己を思ってくれるその優しさは何時だって素直なまでに真っ直ぐに届く。「………エバンズさんに誇れる刑事になりたいんです。」沢山の時間を掛けて漸く話始めた声は僅かに震える。「1人でも確りやれてるんだなって思って欲しい。…でも、このまま連絡をしないで、何時かもっと長い年月が経って、…エバンズさんに会いたいっていう気持ちも、大好きって気持ちも…っ、もし、全部無くなったら……、」それは、とてつもなく恐ろしい事。問題無いのだと思っていて欲しい、けれど本当は会いたくて連絡がしたい、でも今更何を話せば良いのか。複雑に絡み付く様々な思いは何時しか身動きが取れない程にきつく結ばれる物になっていた。言葉尻が萎みそれ以上を飲み込む形で息を吐く。そうして深呼吸の後に薄く唇を開くと「…以前の私だったらさっさと飛行機に飛び乗って、今頃もうワシントンでエバンズさんにベーグルの差し入れしてる筈なのに。」空気を変える為の少しの冗談を交えた言葉を。嗚呼、何時からこんなにウダウダとネガティブに考え何もかもに足踏みする様になってしまったのか )
クレア・ジョーンズ
( 相手の中にも様々な思いや葛藤がある事を知る。心配を掛けないように、刑事として1人でもやっていけるということを暗に伝えるために、連絡をしないまま1年が経とうとしているのだ。『…自分の気持ちを押し殺す必要はないと思うわ。ちょっとした近況を報告するだけでも、アルバートも安心出来るんじゃないかしら。地域の署の報告書が上がって来ると、時々レイクウッドの資料に目を通しているのを見るもの。』彼も、レイクウッドに心を寄せていることは間違いないと伝える。お互いに気を遣いすぎてぎこちなく距離が離れて行ってしまうのは寂しい事だ。『_____今すぐに、とは言わないけれど、自分の心に従って動くべきよ。ベルちゃんはそれが得意でしょう?“頭より先に身体が動く”って、前にアルバートも言っていたもの。…ちょっと失礼ね、』心を固く縛り付けて自制する必要はない。相手は心の向くままに行動する事が出来るのだから、その伸びやかな自分らしさを失って欲しくはないと。いつか彼が可笑しそうに相手の話をした事を思い出して、その言葉を伝える。彼は心で感じたままに動ける、生き生きとした相手の事を少し羨ましく思っていたのかもしれないと思いつつ、彼らしい言い回しに少し首を傾げて笑って。『でも、ベルちゃんの話をしている時、楽しそうだった。』と付け加えて。 )
トピック検索 |