刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
通報 |
( 此方に判断を委ねる言葉なれど泊まりの許可が降りれば何処か満足そうな表情で仕事の続きをするべく自席へと戻り。__今日纏めておきたい事件の資料が出来上がり、ガチガチに固まった身体を解すべく両腕を上げぐぐ、と伸びをしてから深く息を吐き出したその時。視界にフロアを出る相手の姿が映れば何となしに頭を向け、僅かに怪しむように目を細めた。それは一瞬であったが苦しげに眉が顰められた表情に見えたからに加えて、何かに耐えるような至極ゆっくりとした足取りに思えたから。一拍程の間を置いて静かに席を立つとフロアを出て廊下へ。辺りを見回しても既に相手の姿は無く、エレベーターの表示も止まっている為乗った訳では無さそうだと思えば、この短い擦れ違いで姿が見えなくなるとなれば直ぐそこにあるトイレに行ったのかと、踵を返す前。何の勘が働いたのか躊躇いがちに一度だけ「…エバンズさん、」と名前を呼び )
( 視界がぐにゃりと歪むような酷い目眩の原因に心当たりはなかった。体調を崩すことこそ多いものの、この症状は過去に起因する精神的なものではない筈なのだ。外から聞こえた相手の声、様子が可笑しい事に気付き後を追ってきたのだろう。せめてこの症状を引き起こしたのが家であればと思うものの、此処は職場で自分が居るのは男性用トイレ。相手を呼ぶ事も出来る筈がなく、暫しの沈黙の後に少しばかり目眩の波が引いているタイミングで立ち上がると外へと出て。気を抜けば再びしゃがみ込んでしまいかねない状態で、「______帰りたい、」と、外に居た相手に唐突にもひと言だけ訴える。しかし執務室に戻り、纏めかけの資料を保存してパソコンを閉じた上で荷物を手にし車に向かう、それだけの作業も今は出来そうになく「…車まで荷物を持って来てくれないか、」と言葉を紡いで。 )
( 呼び掛けに返事は無かったものの、程なくして顔面蒼白の相手が廊下に出て来ると、その余りの顔色の悪さに思わず言葉が詰まる。双眸を見開き反射的に伸ばした片手が相手の腕を取るよりも先にたった一言帰宅を訴えられれば「っ、帰ろう、今直ぐ。」と何度も頷き。それから相手に頼まれた通り一度執務室に戻り纏めかけの資料を保存しパソコンの電源を切り、相手の鞄と上着、それから自身の荷物を持って共に車へと乗り込めば、ほんの少しでも気分の悪さが落ち着く布石になれば良いと窓を開け車内に風を入れて。__10分程で相手の家に着くと、先に鍵を借りて荷物を中へ。続いて車に戻り相手を支えた状態で部屋へと入ると、なるべく大きな振動にならぬよう注意を払いつつソファへと座らせ、首元を緩める為にネクタイとワイシャツのボタンを二つ外す。その際首元に手を当て脈を確認したが、脈拍は早く、あの時の車内でおきた状態と酷似してると言えよう。「少し横になる?その方が楽じゃない?」相手の背中を優しく上下に擦りながら、此処は家なのだ、身体を横たえる事だって出来ると促して )
( 相手が泊まりに来るという約束は、結果的に功を奏したと言えよう。支えて貰いながら部屋へと入りソファに座ると、午前中に飲んだものと同じ目眩止めの薬を流し込んで。首元が緩み汗の浮かんだ肌が空気に触れると少しばかり楽になるようで、相手の促す言葉に頷いて身体を横たえる。呼吸が乱れている訳ではないものの脈拍は早く、首筋はじっとりと湿っている。視界に映るもの全てが二重に見えるような感覚と強い目眩に目を閉じると、やがて浅い眠りに落ちたようだった_____実際には朦朧とし意識を手放したに近い状態だったのかもしれないが。時間にして30分ほど、ふと目を開けると視界の歪みは幾らか軽減されていた。少量の同じ毒を摂取し続けている事で身体に僅かながらの耐性が出来ていて、中毒症状の起きる時間が短くなっているのだろうが当然その感覚は無い。未だ脈は早く体調は優れないものの、目を開けているだけで辛い状態は落ち着きつつあるようで。 )
( 横になり、程なくして気を失う様に意識を手放した相手を見詰め張り詰めていた緊張が解けたのか息を吐き出す。意識のある中具合の悪さに耐えるのは辛いだろう、僅かでも眠れる事に安堵するが根本的な事が解決した訳では無く、此処暫く続く相手の不調について考え。安定剤を飲まないと言う事は、相手の中で過去に起因する精神的なものが引き金となっている訳では無いのだろう、けれどただの風邪で片付けるには余りにも問題点が多すぎる様に思えるのだ。やはり一度病院に__と、そこまで考えて、相手が目を覚ましているのに気が付いた。上から覗き込む様に合わせた視線、焦点は合っていて平衡感覚がわからなくなる程の酷い目眩は落ち着いていると判断すると「起き上がるのが辛かったら、このままで良いからね。…何か欲しい物ある?」床に肘立ちの状態でそう問い掛けつつ、汗で貼り付く焦げ茶の前髪を軽く払って )
( 汗ばんだ身体が気持ち悪い。前髪が払われた事でじっとりとした暑さが少しばかり軽減し、相手の問いには「…水が欲しい、」と答えて。これ程汗をかいたのだからある意味当然ではあるのだが、酷く喉が渇いていた。身体をゆっくりと起こし受け取ったグラスに口をつけて少し水を飲むと、小さく息を吐き出す。サイドテーブルに、まだ水の残ったグラスを置いて再びソファへと横になると、少しの沈黙の後に「______過去が作用してる訳じゃない、」とひと言呟く。「フラッシュバックも起きていない、…記憶に飲み込まれそうな苦しさとも、過呼吸とも違う感覚なんだ、」と言葉を続けて。自分でもこの突発的な体調不良の原因が分からないことに不安感を抱いていた。 )
( 僅かでも水分を補給出来た事は大きい。体調が少しずつ戻って来ている事にも繋がるし、もし万が一吐き気を催しても胃の中にあるそれを吐く事が出来ればただ嘔吐き続けるより楽な筈だ。再びソファに横になった相手に視線を向け唐突に落とされた言葉に耳を傾ける。確かに相手の言う通りこれまでの過去が作用している発作的な調子の悪さとは何処か違うと傍目から見ても思うのだから、相手自身が一番そう感じているのだろう。けれどだとしても原因が不明なのだ。「エバンズさんがそう言うならきっと他の原因がある筈。__頭痛と目眩…熱中症な訳でも無いだろうし。…他に何か症状はある?」先ずは相手の言葉に頷き、続いて考え込む様に視線を床に落とした後、顔を上げ問い掛ける。理由のわからぬ不調はただ不安だけを産み、素人が幾ら考えてもわからぬ時、専門の人に判断を委ねるのが適切だとも思っていれば、「…嫌かもしれないけど、一度病院に行くべきじゃないかな。」と付け足して )
( 主な症状は頭痛と目眩、それに加えて心拍数の上昇や発汗がある事を思えば暑さに影響を受けている可能性も排除はしきれないだろうか。「_____脈が早くなって、異常な程に汗をかく。…明日はもう少し水分を摂るようにしてみる、」と答えて。病院に行くべきだという相手の主張はもっともだ。原因不明の、それも日常生活に支障をきたす程の不調が起きているのだから早々に病院に行くべきだろう。しかし今は、それ以上に優先したい事があるのだ。「……捜査の進みが遅い。時間が経つほどに証拠が消えて行く上に、そろそろ何かしらの糸口を掴まなければ人員を削られてもっと追い込まれる事になる。今が踏ん張り時だ、」暗に病院に行くのは捜査に進展が見られて時間が取れた時で、今はそんな事をしている余裕はないと言葉にして。“本当に不味いと思ったら時間を取る”と付け足した言葉は、自分を後回しにする時に誤魔化すようにいつも言っている事。実際これまで自身の判断で病院に行った事は無いに等しいのだが。 )
( 異常な脈拍と発汗は矢張り暑さのせいなのだろうか。けれども真夏でも無いし全く水分を補給してない訳では無いと思うのだ__ならば何故。意識的に水を飲む様にする、との言葉には取り敢えず頷くも、続けられた“らしい”返事には一瞬眉を寄せジットリとした瞳を向け「……」言葉の無い時間が数秒。ふ、と息を吐き出すと「…それ、エバンズさんが言う言葉の中で私が信じられないと思う三つの内の一つだからね。」と、態とらしく肩を竦め。残り二つは、明らかに体調が悪いだろう時の“大丈夫”と、病院に行けと行った時の“後で行く”なのだがそれを態々告げる事は避け。__捜査の進みが悪い事も被疑者の絞込みが上手くいってない事も身をもって理解している事。加えて被害者の女性はまだ見付かってすら居ないのだ。彼女がまだ生きている可能性が残されてる以上捜索に全力を尽くすのが最優先事項な訳で、それ以上今直ぐに、と言葉を続ける事をしなければ「__…リリーを見付けたらその後ちゃんと時間を取って。エバンズさんが病院に行ってる間に証拠を見付けて、犯人逮捕に全力を尽くすから。」これが此方の折れる条件だとばかりに真っ直ぐな瞳を向けて )
( 相手にとって自分は随分信用ならないようだと思い僅かに眉を顰めたものの、その“3つ”を問いただす事はしなかった。続いた相手の提案に数度頷くと「分かってる、」とひと言。先ずは失踪した女性の行方を早急に掴むこと、そして捜査線上に上がっている被疑者たちのアリバイを調べ疑わしい人物を絞ることが最優先だ。「_____泊まるなら寝室のベッドを使え。俺は此処で良い、」今夜は泊まるのだと言っていた相手にベッドを使うよう告げると、今は起き出してベッドまで移動する方が億劫だと。 )
( 署から此処まで相手自身もわからぬ原因不明の不調に耐えたのだから、少しの時間眠る事が出来たとは言え体調が完璧に元に戻った筈は無く、今はただ遅れてやって来た倦怠感の様な怠さに襲われているのだろうと思えば、無理にベッドに連れて行く事はせず素直に頷き。__言われた通り直ぐに寝室に移動する事はしなかった。唐突に伸ばした右手を相手の頬にあてるや否や、「…さっきの言葉、怒った?…エバンズさんの事はちゃんと信用してるんだよ。でも心配が勝っちゃうの。」確信は無いものの、何となく何処か機嫌が悪い様に感じると、体調の悪さも勿論そうだろうが、先程の己の言葉も少なからず影響しているのではと思い僅かに首を擡げ。白く、少し冷たくも感じられる頬を掌をあてたまま親指の腹で何度か撫で「心配されるの嫌いだってわかってるんだけどね。」と、言葉を続けた後、「…酷い言い方したね、ごめんなさい。」顔を覗き込む様にして謝罪を送り )
( 相手の手が頬に添えられ顔を覗き込まれると、少しばかりバツの悪そうな、不機嫌そうな表情を浮かべ「_____別に怒ってない、」とひとこと。自分にとって優先順位が低い事に関してはその場凌ぎの適当な言葉で流している自覚があるし、相手が“口煩く”言うのも自分を案じての事だと理解はしていた。しかし相手が謝罪を紡いだ事で逆に意固地になっていると言うべきか「上司として信用ならないんだろう、お前の言い分は分かってる。」とぶっきらぼうな言葉を。この所は体調を崩す事も多く、隠していても共に捜査を請け負っている相手には見抜かれる。捜査が思うように進まない要因が、本来捜査とは関係のない自身の体調面にある事が殆どでその事に苛立ちを抱えていた。謂わば自身に対するやるせなさを相手にぶつけている八つ当たりに近いのだが、今回もまたこうして足を引っ張り、相手に余計な業務を増やしている自分自身の“頼りなさ”に、無性に腹が立つのだ。 )
( “怒ってない”と相手は言うがその表情は誰がどう見ても不機嫌そのもので、思わず浮かんだ笑みを誤魔化す様に左手で己の口元を軽く触りつつ「そっか。」と一言だけ答えるに留め。そのまま頬を撫で続けていたが相手は何を思ったのかこの会話を尚も続ける為のぶっきらぼうな“自嘲”を口にした。その言葉に動かしていた指先はピタリと止まり、その緑眼に真剣な色が宿る。「そんな事言ってません。」と、先ずは言葉を真っ直ぐに否定。「__本当に上司として信用出来ないと思ってるなら、捜査の指揮官を違う人に変えて貰います。でも私は今回の事件、2人揃ってないと解決出来ないと思ってる。だから事件解決まで何方も欠けちゃ駄目。」相手の頬にあてているだけの手を静かに引き自身の膝の上へ移動しつつ、相手が必要だと言いながらも変な重圧を掛けぬ様に“2人”と強調して。相手が何故こんな言い方をしたのか、それが何処にぶつける事も出来ない自分自身に対する苛立ちや不甲斐無さから来てるのだと言う事は感じていた。「…エバンズさんじゃなきゃ嫌だ。」今度は伸ばした手で相手の手を取り、そのまま自身に軽く引き寄せ相手の手に頬をくっつけると、何時ぞやも口にした事のある子供の様な言い回しで相手以外は望まないと、悪戯にはにかんで見せて )
( 相手が時折口にする、何処か子どもっぽいその言葉は何故か拒絶する事なく受け入れる事が出来た。自分が必要とされているという優越感に浸りたい訳ではないのだが、飾らないその言葉は相手の偽りのない思いのように思えて。少しばかり呆れたような曖昧な表情を浮かべはしたものの、それ以上苛立ちに任せて言葉を紡ぐ事はせず。---その夜は症状が悪化する事はなく、朝を迎えた。しかし少しずつ、確実に体内に溜まっている毒は、摂取した直後の強い症状だけに留まらず身体に不調をきたし始めていた。身体が重たい感覚と指先の強張り。未だ普段の何気ない行動に影響が出る程のものではなかったものの、コーヒーを飲むためにマグカップを手にした時に違和感を感じ。しかし今は捜査に集中すべき時だと、その違和感を口にしたり気にする素振りを見せる事はせず、相手と共に署に向かい。 )
( __相手が感じた僅かな違和感は上手に隠された為に気が付く事が出来ず、署に着くや否やデスクから必要な物だけを持ち再び相手と共に車に乗り込み。「先にクリスの友達の家に行くね。」今日は昼から大学に行き聞き込みの予定。その前にクリスのアリバイの確認を済ませるべく車を走らせて。赤信号で停まる時に不自然にならぬ動作で隣の相手に何気無い視線を向けるも、昨晩の様な明らかな表立っての不調は見られず一先ずは安堵を胸に。__数十分後、目的地へと着くと、車を降りて呼び鈴を鳴らし。中から男性の声が聞こえ、直ぐにドアが開き顔を出したのはクリスに教えられた通りの友人。「…少しお話を聞かせて下さい。」警察手帳を見せ、時間は取らせないと告げてから「…リリー・ブラントさんの失踪の件はご存知ですよね?その日の朝、クリスさんとはご一緒でしたか?」目前の彼を真っ直ぐに見詰め、クリスのアリバイの真偽を確かめて )
( 相手の問いに友人は頷くと『その日は久しぶりに集まったメンバーで夜通し酒を飲んでました。みんな潰れて、面白がって撮った写真ならありますよ。』と答え、ポケットから取り出したスマートフォンを操作してカメラロールを遡ると、彼は此方に画面を向けた。たくさんのアルコールの空き缶とテーブルの上にはつまみの残り、床で4人の男が寝込んでいる写真だ。仲の良い男友達同士のその写真が撮影されたのは事件が起きた日の7:38。クリスの顔も確認出来るもので、すっかり酔い潰れて寝込んでいる様子。アリバイは立証されたと言って良いだろう。---礼を述べて戻った車内で、スマートフォンが着信を知らせる。電話先の相手は、聞き込みに奔走している捜査員の一人。リリーの恋人だったジェイが、”リリー以外の女性と付き合っている“という話が出たと言うのだ。証言したのはジェイの知り合い。”ジェイは学生の頃から知り合いだったハンナと5年近く付き合っている。時々2人を見かける事がある”という。「_____分かった。また何かあったら連絡してくれ。」と答えて電話を切ると「有力な証言が出た。ペットショップに向かってくれ。」と、予定の変更を告げると情報を共有して。 )
( 彼に見せられた画面には確かにクリスの姿があり、時間に間違いも無い。クリスの証言通りアリバイは成立され彼が被疑者の枠からほぼ外れる事は決定で。__さて、次は大学へ、とエンジンを掛けシートベルトを締めたその時。ふいに助手席に座る相手のスマートフォンが着信を知らせ、口振りからして恐らく捜査官の誰かと会話しているのだろう事がわかれば、発進する事無く電話の終わりを待ち。__電話を切った相手から共有された情報は思いもよらぬ物だった。ジェイはその事を一言も口にはしなかったし、現在進行形で【ハンナ】と言う女性と付き合っているのなら、邪魔になったリリーを誘拐、殺害する動機は十分有り得るのだ。「…もし本当だとしたら最低。」エンジンを掛け言われた通りペットショップに向かう道すがら、小さな溜め息と共に少しの嫌悪に塗れた言葉を吐き出して )
( 恋人がありながらリリーと付き合っていたジェイは、その事実を隠していた。動機があると判断されるのを危惧しての事かもしれないが、捜査員がもたらした情報によってジェイへの疑惑は一気に深まり。---ペットショップに行き恋人の件について問いただすと、暫しの気まずい沈黙の後『……確かに、僕が二股をしていた事は事実です。でも、リリーと適当に付き合っていた訳ではなくて…本気だったんです。事件には関係ないと思って言いませんでした。』と、顔を上げて訴えて。 )
( 事件に関係が無いと思った、では無く保身の為の隠蔽だろうと言わざるを得ない供述に自然と眉根には皺が寄り、その訴えに耳を貸す気など僅かも起きない気持ちになるのは当然だろう。険しい表情のまま「__ではハンナさんの方が遊びだったと?」と、問うた言葉には冷たさが滲み。それを咳払い一つで消し去ると、続いて「ハンナさんは貴方が二股をしている事はご存知ですか?」と尋ねる。__ジェイには十分過ぎる程の動機があるが、逆を返せばハンナにもそれこそ十分過ぎる程の動機がある事になる。ジェイを取り合い口論になり殺害してしまった可能性も…。被疑者が1人減ればまた1人増え、の繰り返しに加えてリリーの行方も未だ不明。思うように進まない捜査の中で相手の体調もまた気掛かりな所であり )
( 相手の的を得た言葉に少し言葉に詰まったものの、ジェイはハンナも遊びではないとばかりに首を振った。そして『ハンナは関係ありません。リリーとは面識はありませんでした。』と、二股をしていたことを彼女が知っていたかという問いに対する返事ではなく彼女は事件に関与していないという事の方を訴えて。「関係ないかどうかではなく、ハンナさんが二股の事実を知っていたかどうかです。」間髪入れずにそう尋ねると、ジェイは『…知っていました。少し前にメッセージを見られて…』と答えた。その言葉を手帳にメモしようとしたのだが、上手く手に力が入らずペンを取り落とす。床に落ちたペンを拾い上げ再びジェイに視線を向けたものの、立ち上がった瞬間に貧血を起こした時に近い感覚があり。 )
トピック検索 |