刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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( 身体を起こしておく事は疎か、目を開けて居る事すら酷く辛いのだろう、ベッドに身を横たえた相手は視界を閉ざしたままに身体の不調とは裏腹に正常に働く思考で捜査の指示を出した。それに軽く頷き「大丈夫、クリスにももう少し詳しく聞き直すから__何も心配しないで。」掛け布団を相手の肩付近まで掛けてサイドテーブルに一応の安定剤と目眩止め、それからミネラルウォーターのペットボトルを置いて家を出る。不調の相手を1人残してこの場を離れる事に不安が全く無い訳では無かったが、今は少しでも早くリリーの居場所に関する情報を得る事が優先だった。__車を走らせ先ずはペットショップへと戻ると店内へ。お客の出入りを知らせる扉に取り付けられた鈴の音が鳴り、此方の姿を見たジェイに、クリスともう一度話がしたい、と言えば再び店の奥へと案内してくれて。__クリスは先程と同じく小動物のゲージの掃除をしていた。「…先程確認しそびれた事がありまして、お忙しいとは思いますがもう少しだけお時間を下さい。」と話を切り出した後、「リリーさんとの関係について、直接店長と揉めた事はありますか?…それと、例えばリリーさんが誰かと揉めていたとか、彼女に好意を抱いていた人が別に居たとか、誘拐の動機がありそうな人物に心当たりは?」2つの質問を問い掛け手帳を開いて )
( クリスは掃除の手を止め再びやって来た相手に視線を向けると、相変わらず淡々と聞かれた事に答えた。『店長に直接何かを言ったり言い合いをしたりした事はないです。まぁ、特別仲良くやってるって訳でもないですけどね。_____あ、それなら1人思い当たる人がいます、よく来る客で。動物を見に来てるとかそういうのじゃなくて、あからさまにリリー目当てで迷惑してたんです。最近では待ち伏せ?かなんかをされたらしくて、その客が来たら彼女には裏の作業を任せて表に出さないようにしてましたよ。店長の方が詳しいとは思いますけど、あいつは調べた方が良いです。』_____クリスが挙げた男は、ジェイによるとマーティン・スコットという男だという。トラブルになった時に免許証で名前などを控えたのだと言うが、警察に届け出る事まではしなかったらしい。 )
( クリス、ジェイ共に【マーティン・スコット】と言う名前の男性を怪しい人物として挙げた。新たな容疑者の登場で絞込みは更に範囲を広げる事となり彼にも話を聞く必要が出て来たと思えば、ジェイから過去の防犯カメラ映像を見せてもらいマーティンの顔を確認し。後は署にてマーティンの前科の有無やリリーとの関係について話を聞く事が最初。それが終わり次第クリスの証言したアリバイが本当かを確かめる為に彼の友人に会いに行き、もう一度大学での聞き込みの必要性もあるだろう。__クリスに話を聞き終わりペットショップを出る際、ジェイに向き直り軽く頭を下げてから「ありがとうございました。…あ、最後に一つ。これまでリリーさんとの関係でクリスさんと揉めた事はありますか?」と、先程のクリスの話の真偽を確かめて )
( 相手の問いに、ジェイはクリスと同じく“揉めた事はない”と答えた。互いに何となく嫌悪感や気まずさのような物を感じているだけで、直接的な不和があったわけではないようだ。---相手が署に戻って来る頃、1人の男がエバンズの執務室へと足を踏み入れた。刑事課のフロアは人が行き交い各々忙しなく業務が行われているものの、警部補専用の執務室の電気は消えていてパソコンも閉じられている。捜査に出ているのか、はたまた彼に盛っている毒の効き目が出始めたか。マグカップは定期的に使われているようで目論見通り順調に事が進んでいるのだが、たったこれだけで根を上げられては困る。違和感のない自然な動作でマグカップの縁に毒を塗り付けつつ、資料を彼の机の上に置き。 )
( 2人の話が一致した事で大きな揉め事は無かった事が一先ず証明された。着実に絞り込みを進める中署に戻る前にスマートフォンを確認するが相手からの連絡は無く、静かに身体を休ませる事が出来ているだろうかと思案するが、連絡も出来ない程に苦しんでいる可能性もある。何にせよ兎に角急ぎ聞き込みを終わらせ相手の様子を見たいとスマートフォンを鞄に戻し署へと車を走らせて。__やれ強盗だ、やれ事件だと刑事課のフロア内は相変わらず署員が忙しなく動き回っており時折疲弊した溜め息も聞こえて来る。自席に鞄を置きノートパソコンの電源を入れて何となしに頭を向けた先、暗い警部補専用執務室に気配を感じた気がして首を傾げる。体調が良くなった相手が戻って来たのかとも思うがそれならメールの一つ送られて来ていても可笑しくは無い筈だ。数秒間執務室を見詰めた後、静かに歩み寄り軽いノックに続き直ぐに扉を開ければ果たしてそこには暗い部屋の中男性の姿があり。「っ、」流石に驚いたと双眸が見開かれるが、フロア内の光を受けてその人物がたまに廊下で擦れ違う事のある別のフロアの派遣職員だと気付くと、口元に小さな笑みを蓄え「…お疲れ様です。警部補に用事ですか?」と、問い掛けて )
( 相手が執務室の扉を開けた時、ちょうど資料を置いて部屋を出ようとしていた所で男も驚いた表情を浮かべる。相手がいつもエバンズと行動を共にしているベル・ミラー刑事である事は当然知っていて、直ぐに同じように微笑むと『お疲れ様です。すみません、エバンズ警部補に捜査経費の書類を渡しに来たんですがご不在だったので。デスクの上に置いてあるので、確認後総務部に戻して頂くよう伝えて貰えますか?』と告げて。怪しまれないための下準備は念入りに行っているため説明にも淀みが無ければ、刑事課に関する業務を率先して請け負って来ているため書類も普段から彼が処理しているもの。怪しまれる要素はひとつもなく、説明と共にデスクの上に置いた書類を指差して見せ。ついでに『今日中に貰えるとありがたいんですが…何時ごろに戻られるか分かりますか?』と付け足し、彼の様子を間接的に窺い。 )
( 彼が派遣社員として雇われたのは確か数ヶ月前と、期間こそ短いものの度々捜査経費等の書類関係で刑事課のフロアで姿を目撃していた。だからこそ普段と変わらぬ様子でエバンズの居ない執務室に居た所で特別怪しむ事も無く、デスクに置かれた丁寧に端の揃えられた書類を一瞥した後に「わかりました、伝えておきますね。」と、快く頷き。己の横を通り過ぎて部屋を出て行くと思われた相手はどうやら書類に関してたっぷりの猶予を持っている訳では無いようだ。問い掛けのその裏の真意に気が付く事は出来なく、相手の奥の壁にかかる時計に視線を向けると「そうですね__…、」と考える素振りを。今のエバンズが何処まで調子を戻したのかがわからない以上下手に勝手な返事をする事も出来ず、少しの沈黙を置いた後。「…今日中に聴取をしなければならない被疑者が多くて。もしかしたら遅くまでかかるかもしれないんですけど……」エバンズはあくまでも今聞き込みに出ていると言う体で、やや眉下げた申し訳無さそうな、それでいてどうしたって曖昧になってしまう返事を返して )
( 案の定、彼の部屋に居たことを怪しまれる事はなかった。実際に相手の言う通り聴取に追われているのかもしれないが、エバンズの戻り時間を明示しない事を考えると身体に不調が出始めている可能性も十分にある。既に継続して毒を盛っているため異変が出るのは想定通りだが、彼が署に来なくなって毒を盛る機会がなくなるのも、今病院に行かれて毒物が検出されるのも困るのだ。『そうですか…分かりました。そうしたらなるべく早めにお願いします。』とだけ伝えて軽く会釈すると刑事課のフロアを後にして。---一方のエバンズは、目眩を抑える薬を飲んで休んだ事が功を奏したのか、実際は摂取した毒物がようやく体内で薄まったのか、幾らか動ける程には回復していた。時刻は既に午後4時を過ぎているのだが、今からでも署で出来る事はあるだろう。座ったり横になったりしている方が楽なのだが、署にさえ行ってしまえばなんとでもなる。着たまま横になったことで少し皺の入ったジャケットを整え、“少し落ち着いた。今から向かう”と、相手のスマートフォンにショートメッセージを送り。 )
( 総務部の男性職員と会釈を交わし別れてから自席に戻り、確認したがマーティンに特別な前科は無く、とは言え前科が無いから犯罪を犯さないと言う事にはならない。時刻は午後4時を過ぎた頃で大学への再聞き込みとクリスの友人へのアリバイ確認は明日以降になると思案しつつ、今日中にマーティンの自宅へと話を聞きに行こうと。鞄を持ち席を立った時、ふいにスマートフォンが音を鳴らし手に取ればそこには相手からのメッセージが来ており、画面上の時間を確認する。__署に来れるだけの体調を持ち直したのかもしれないがマーティンへの聞き込みは未だ大きな負担になると思えば、“今からマーティンの家に聞き込みに行って来る事、総務部から捜査経費の書類が来ていてなるべく今日中に戻して欲しいとの事”を返事として送り、署を出てマーティン宅へと向かい )
( 多少なり回復したとはいえ、未だ捜査に奔走できる状態ではないと判断したのだろう。先に1人で聞き込みに行くという相手の返事を確認すると、タクシーを呼び署へと向かい。---フロアで会った署員たちに特別怪しまれる事もなく部屋に入ると電気をつける。デスクの上には幾つかの報告書と、相手が言っていた捜査経費の書類が置かれていてパソコンを起動するとデスクに置いていた眼鏡を掛けそれらの書類に目を通して。 )
( __【マーティン・スコット】の家に着いた時には既に午後5時近くになっていた。外で遊んでいた子供達がちらほらと家へ帰り始める中で扉を軽くノックすれば、中からは“少し待ってくれ”の言葉が聞こえそれから数十秒後に鍵の開く音と共に扉が開かれ。顔を出した男と監視カメラ映像で確認した男の容姿は同じ。彼がマーティンで間違い無いと判断すれば「レイクウッド署のミラーと言います。リリー・ブラントさん失踪の件で少しお話を聞かせてもらえますか?」胸元からFBIの警察手帳を取り出し見せ。少し考える素振りを見せたマーティンだったが、素直に家の中へと案内してくれて、互いに向かい合う形でソファに腰を下ろし聞き込みを開始する。“リリーに好意があったかどうか”“リリーが失踪した日のアリバイ”の2点を問うてその答えを待ち。__一方レイクウッド署では先程捜査経費書類を持って来ていた派遣職員が再び刑事課フロアを訪れていた。今度は嘘偽り無く総務部からの書類を署員に配る目的だったのだが、先程電気の点いていなかった警部補専用執務室の明かりが灯っているではないか。扉一枚隔てた其処に、自分の盛った毒を何も知らず摂取している相手が居る。…そう思うとどうしてもこの目で様子を見たくなってしまい、ノックの後『…総務部の者ですが、』と声を掛けて )
( マーティンは相手の問いに対して、好意はあったと答えた。しかし先に好意のある素振りをしてきたのは彼女の方でストーカー行為をしていたわけではないと主張するあたり、若い女性から仕事上で愛想良くされた事を“好意”と受け取ってしまう、よくある“都合の良い勘違い”のパターンと言えよう。被害者が失踪した日は、昼過ぎにペットショップを覗きに行ったものの、午前中のアリバイは無いという状況で。---書類を確認していると不意に部屋の扉が叩かれる。総務部という言葉に、相手が言っていた先ほどの書類を取りに来たのだろうと思えば入室を許可し、確認を終えてサインをした書類を相手に差し出す。「捜査経費の書類だったな、遅くなった。」と言葉を添えつつも、未だ顔色はあまり良くない。文字を見る限り手の震えのような症状が慢性的に起きている状況ではなく。 )
( マーティンに確かなアリバイは無く、加えて勘違いからの逆上によりリリーを拉致監禁しても可笑しくは無い程に“都合の良い”思考だ。「わかりました。また何かあれば伺います。」と頷き一先ずはその情報だけを持ち帰る事として。___入室の許可が降りた事で男性職員は静かに執務室へと足を踏み入れた。相手から捜査経費書類の話を出されると『いえ、急がせてしまって申し訳ありません。明日の朝でも間に合うようになったとお伝えするつもりで来たのですが、』と、此処に来た最もらしい理由をくっ付けて軽く頭を下げ書類を受け取り。その文字に歪みや薄さは無く表立って毒の影響が出ているのは感じられない。顔を上げて見詰めた相手の顔も、何処と無く顔色の悪さは伺えるが元々が白い為に大幅な変化は無いように思えて。不自然に思われない何気無い小さな動作でデスク上のマグカップを見、中身が入って無い事から毒を塗ってからまだ使用されてない事を知る。早く、何でも良いから飲め、と早る気持ちを抑えつつ『…では、失礼します。』と、再び深く頭を下げて執務室を出、そのまま総務部へと戻って行き )
( 明日の朝でも、と言う事だったが早く処理できるに越した事はない。相手の言葉に頷きつつ、また何か必要があれば声を掛けてくれと告げ相手を見送って。_____仕事に行き詰まった時、少し休憩を取りたいと思った時に温かい飲み物を欲するのは極自然な事だろう。少ししてマグカップを手に立ち上がると、紅茶を淹れる為に給湯室へと向かう。マグカップの縁に毒が塗られているなど当然思いもしなければ、無味無臭の其れに気付く事が出来る筈もない。午前中の酷い症状が幾らか落ち着いた事に安堵して、温かい物を飲みたいと思うだけの余裕が生まれた事も更に毒を摂取するきっかけとなった。ティーバッグからお湯に色が染み出すのを眺めつつ、今回の事件で被害者の行方が未だ掴めない事を考える。怪しい人物は数人上がっているものの、皆が皆被害者に好意を持っていて関係性がややこしい。ぼんやりしていて濃く出し過ぎてしまったティーバッグをゴミ箱に捨てると、冷蔵庫に入っている牛乳を入れ再び執務室へと戻り。 )
( __署に戻り、執務室の明かりを目にしたのは相手が紅茶休憩をとった少し後の事。メールにあった通り確りと戻って来る事が出来たのだと思えば一度自席に鞄を置いた後、扉を2度ノックしてから返事を待つ事無く入室し。椅子に座り此方を見た相手の手にはマグカップが握られており、具合の悪さから何も胃に入れる事が出来ていないのでは、と思っていたからこそそれも安堵を助長させた。ふ、と鼻から抜ける様な息を漏らした後に「戻りました。」と一言告げるとデスクを挟んだそこにあるソファへと腰を下ろしつつ「…少し落ち着いた?」未だ顔色が悪い事は悪いのだが、先程までの調子の悪さは少し休んだからか、それとも薬が効いた事によるものか、おさまっていると思えば体調を確認する様に緩く首を傾けて )
( 扉がノックされ相手が顔を出すと視線を重ね、体調を尋ねる言葉に小さく頷くと「…あぁ、手間を取らせて悪かった。」と答えて。体調は万全とは言えないものの午前中と比べれば幾らかマシになっていて、紅茶をひと口飲むと相手の聞き込みの成果を聞き。相も変わらず、怪しい人物こそ上がっているものの容疑者を絞り込むに至らない状況に息を吐きくと「…分かった。現時点では、全員被害者に好意を持っていたと言う事以外の情報が未だ薄い。犯人が白昼堂々彼女を誘拐すると言う暴挙に出ている以上…何か事件に繋がる決定打があった筈だ。被害者自身についてもう少し調べる必要がありそうだな。何か犯人を駆り立てたきっかけ______自分の好意を蔑ろにされたと受け取ってしまう状況や、トラブルがなかったか、彼女の友人やペットショップの関係者を中心に広く情報を聞きたい。」と告げて。相手はよく動いてくれている、自分も捜査に集中しなければと。 )
( 謝罪の言葉に「平気。」と答えたのは強がりでも何でも無く素直に問題無いと思えたからで。「流石にマーティンの名前まで挙がるとは思わなかった。被疑者を絞り込む筈だったのに。」ソファの背凭れに軽く体重を掛け、今日新たに登場した被疑者に溜め息を。アリバイがあり直ぐに被疑者枠から除外する事が出来れば良かったものの、彼にアリバイは無く更には“リリーからの好意”を勘違いしてる以上相手の言う事件に繋がる決定打的な揉め事を起こしていても不思議では無い。未だ被害者の行方がわからないのも釈然としなかった。「…大学には昼休みを目掛けて行くとして、朝一でクリスのアリバイ確認もとりたい。」と、要望を口にしつつ、今一度相手の体調を伺う様に視線を向けた後「__エバンズさん、今日泊まってもいい?」と少し声を潜め此処暫く無かったお泊まりを望んで )
( 車が見つかったスーパーの監視カメラは店の入り口にしか向いておらず駐車場の状況は記録されていなかった。そのため車を降りてからの彼女の行き先を掴めずにいるのだが、其の捜査も急がせなければと。翌日の聞き込みの計画に同意を示すも、続いた問い掛けには暫し返事に躊躇する。原因こそ分からないものの夜も体調を崩す可能性はある訳で、敢えて相手を巻き込み気を遣わせるのも憚られる。「_____未だ体調が安定しない。お前も捜査の疲れがあるだろう、」と答えて。 )
( 案の定相手はこの要望に言葉を詰まらせ曖昧な表情を浮かべた。特別何も無い状況であるならまだしも、体調面で不安がある以上夜中に目を覚まし此方の眠りも妨げてしまう可能性があるとでも考え首肯しかねて居るのだろう。不安定な遠回しの言葉に少し考えてから「…じゃあ駄目?」と、珍しく相手からの明白な言葉を待つ問い掛けを続けた後、それでも許可が降りる様少しだけ悪戯に笑うと「夜中に目が覚めた時、あったかいホットミルク飲めるよ?」己が居る事による物理的なメリットを挙げて、その答えを待ち )
( 駄目だと断言しきる程の事でもないため言葉を詰まらせたものの、相手は引く事をせずメリットもあるのだとばかりに言葉を続ける。「…分かった、好きにして良い。」と、此方が折れる形で家へ来る事を許可すると、この所相手に翻弄される事が増えたと1人溜め息を吐いて。---紅茶を飲んでからちょうど2時間程が経った頃、当然その因果関係には気付いて居ないのだが、突然パソコンのモニターが歪んだように感じてまたかと眉を顰める。頭痛と目眩の症状は未だ午前中ほど酷くはないものの、視界に映るものが二重に歪んで見えて思わず眼鏡を外して眉間を解す。そのまま仕事を続けていたものの、パソコンに打ち込んでいた資料の文字は途中からスペルミスや打ち間違いが増え、誤植を示す赤い波線が表示されているのを見て手を止めて。手が震えてキーボードを上手く打てていないのか、それとも視界が歪んでいるせいでキーボードの正しい位置を認識できていないのか、どちらにせよ正常ではない。既に退勤している者も多くフロアには人が少ない。部屋を出るとそのままトイレへと向かうのだが、入ってすぐの手洗い場の所で酷い目眩に襲われその場へと座り込んでしまい。 )
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