刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
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__本当0か100なんだから。何でそんなひねくれちゃったんだろ。
( 経験の全て、何でもかんでも“捜査”に重要か否かに結び付けバッサリと切り捨てた相手に不平不満を漏らすが勿論相手に届かない事は承知している。捲っていた手帳をパタンと閉じてから鞄の中のポーチを漁り取り出したのは先程相手の飲んだ物と同じ鎮痛剤。「明日も天気悪いし、念の為持ってて。」此処暫く天気が安定しないと言う予報ならばその頭痛が長引く可能性もあると薬を手渡した後「後でもう一度ジェイに話聞いて来る。…紅茶淹れるけど、何か飲む?」新たに生まれた可能性の有無を確認すべく、また、何か他の情報が得られる可能性の為に一息入れてからの予定を告げて )
( “捻くれている”と言われるのはいつもの事、当然気にする様子も見せず視線は既にパソコンのモニターへと向いていて。明日からも天気が悪いと鎮痛剤を渡されれば其れを受け取り、礼を述べるとジャケットのポケットへと入れておく。「…あぁ、同じものをくれ。」と、デスクに置いていたマグカップを相手に手渡し。ジェイに話を聞いた後、次に探るべきはペットショップだろう。ジェイが店長を勤め、リリーが店員として働いていたペットショップで新たな証言や関係者が見つかれば良いのだが。 )
( 相手からマグカップを受け取れば執務室を出て給湯室へ。警視正の趣味か、はたまた誰か他の人の拘りか此処には紅茶もコーヒーも結構な種類が揃っていて、今日は何にしようかと少し思案した後にダージリンに決めそのティーバックで紅茶を作り。__今日エバンズとミラーが大学に聞き込みに行っていた間、執務室には1人の男性が訪れていた。彼は総務課の派遣事務員で控え目で余り目立つタイプでは無いのだが、エバンズに書類を渡しに来たのだ。けれども相手は捜査に出ていて不在の為直ぐに出て来た。…のは建前。彼がデスクに置かれているエバンズのマグカップの縁に薄く塗ったのは紛れも無い“毒”で、それは時間を掛けてじわじわと相手の身体を蝕むもの。それを勿論の事知らないミラーは出来上がった紅茶を片手に再び執務室へと戻り、「お待たせ。」と、マグカップを相手に差し出して )
( 生憎、仕込まれた毒は全くの無味無臭で摂取していることにすら気付かなかった。効き目も未だ激しいものではなく、僅かな異変に留まり少しの不調として片付けられてしまう程度のもののため、直ぐに外的要因を訝しむ事などできずに。---相手に淹れて貰った紅茶を飲み、ジェイへの聞き込みへと向かうと、ジェイは”彼女の大学の友人は知らない。好意を抱いている友人がいる事も知らなかった“と証言した。それが本当であれば、ジェイとジョンの間に関係はないことになる。一方で店で気になる事を尋ねると、少し言い辛そうに”彼女に好意を持っている店員がいる“と話した。店員の名前はクリス、明日は出勤予定の筈だという。彼への聞き込みは明日にしようと署に戻る途中、再び強い頭痛に襲われた。キリキリと締め付けられるような痛みに眉を顰めこめかみを押す。昼から時間が経っているため構わないだろうかと、明日のためにと貰った鎮痛剤を口にして水で流し込んで。明日出勤前にでもドラッグストアに寄ろうと思いつつ目を閉じて。 )
( 聴取の結果、彼の話が本当であるならジェイはジョンの存在を知らない事になり署で話した“可能性”は当てはまらない事になるのだがそれはあくまでもジョンに対してだけ。新たに名前の上がった【クリス】には“可能性”が適用される状況の為結局何か変わる事はなく。クリスが2人が恋人同士だと知っていた場合、自分の所へ来てくれないと逆恨みの末リリーを殺害した可能性もある。全ては明日クリスに聴取してからだろうと署へ車を走らせるも、その道中で先程渡したばかりの鎮痛剤を服用する相手に一抹の不安を覚え。「…今日は早めに休んだ方がいいかもね。気圧じゃなくて風邪かもしれないし。」次の薬の服用時間的には少しばかり間隔が空いていないが、一度時間を守らなかったくらいでは然程酷い問題が起きる訳では無いと、そこには何も言う事無く代わりに早すぎる鎮痛剤の効果切れと相手の体調に心配そうに眉を下げて )
( 締め付けるような頭痛に加えて車酔いのような気分の悪さがあり、相手に断りを入れることはせずに少し座席の背もたれを倒す。普段の不調とも違う感覚のため「……そうだな、」と、相手の提案に大人しく返事を返すと鎮痛剤が早く聞く事を願いながら目を伏せて。---翌日、起きた時には頭痛は治っていたものの昨日までは感じていなかった身体の重怠さがあり、やはり風邪だろうかと思いつつ出勤途中にドラッグストアで鎮痛剤を購入し。未だ容疑者は絞り込めておらず、同時に失踪した彼女についても身代金の要求もなければ遺体の発見も出来ていない状態。ペットショップで働くクリスに話を聞き、彼女の捜索に当たっている捜査員にも痕跡の発見を急ぐように伝えなければと思いつつ、頭をクリアにしておこうとマグカップを手に給湯室へと向かいコーヒーを淹れるとシンクの前に立ったままひと口飲んで。 )
( 今日はペットショップでの重点的な聞き込みをする日。此処で重要な手掛かりや証言を得る事が出来ればリリーを見付ける大きな一歩にもなり得ると気を引き締め昨日聴取内容を記録した手帳を確認し。数分後、席を立ち給湯室へと向かう。頭をクリアに、は相手と同じ考えだった。シンクの前に立ちコーヒーを啜る相手に視線を向け「おはようございます。」と先ずは朝の挨拶をすれば、自身のマグカップにコーヒーを淹れつつ「…具合はどう?」と続けて調子を尋ね。目下に住み着く隈は何時もの事、後他の不調は…と、無意識に思考は巡り。もし相手の調子が余り良くないのだとしたら今回の聞き込みは1人で行く事も視野に入れての事で、返って来る返事はわかっていながらも暗に滲ませた“行けそう?”を問として )
( 足音が聞こえ振り向くと、そこに居たのは同じくマグカップを手にした相手。捜査前に頭をクリアにしておこうと、自分と同じような理由で此処に来たのだろうと思えばコーヒーや紅茶のパックが取りやすいように一歩横へとずれて。続いた体調を問う言葉には「…あぁ、問題ない。」とだけ答え、当然捜査には行けると頷いて。鎮痛剤は持っている、捜査に支障を来たすほどの不調に悩まされている訳ではないと自分自身にも言い聞かせつつ「10時に署を出てペットショップに向かう。」と相手に告げ、部屋へと戻って行き。 )
( “問題無い”と言う相手の言葉を信じたのは、特別酷い顔色や不調が目に見えなかったから。当然その不調が毒物によるものだと思ってもいない訳だから矢張り気圧の関係や風邪の引き始めを疑うのは当然で。腕時計に視線を落とし時間を確認し頷いてから部屋に消える背中を見送って。__約束の10時。相手と共に署を出て予定通りペットショップへと向かう。中には数人の客と店員、それから店長であるジェイの姿が在り。「クリスさんに話を聞きに来ました。」と告げると、ジェイは軽く頷いた後に裏でケージの清掃をしているクリスの元まで案内してくれて )
( 一見しただけの印象ではあるが、ジェイとクリスには互いに気不味さを抱えているような、僅かなぎこちなさがあった。恐らく店長であるジェイに対するクリスの対応が事務的でやや冷たい事も、そう感じさせる要因だろう。ジェイがその場を離れると簡単に挨拶をし、単刀直入に質問を投げ掛けて。「_____あなたが、リリーさんに好意を抱いていたと聞きました。店長のマレックさんとの関係は知っていたんですよね?」クリスはほとんど間を空ける事なくその言葉に頷くと『勿論店長との関係は知っています。でも俺はずっとリリーが好きでした。彼女もその事は分かってくれていました。』と答えて。 )
( 相手の問い掛けに間髪入れず答えたその言葉に申し訳なさの様なものは感じられなかった。もしかしたら店長より自分の方がリリーを愛していると言う自信やプライドもあったのかもしれない。クリスの表情を黙って見ながらその話をメモに書き留め、矢張り大学で聞き込みをした印象通り、彼女は結構モテるタイプだったのかと思案して。「__リリーさんに店長と別れて欲しいと伝えた事は?」想いが強いあまり、リリーがジェイと付き合っている事が納得いかず自分の元に来て欲しいと願い口論になり殺害した可能性も視野に、続けて「もう一つ、最後にリリーさんと会ったのは何時ですか?」と、質問を続けて )
( 相手の問いにクリスは『…別れて欲しいと直接的に伝えた事はないですけど、“俺の方が幸せにできる”とは言いました。10も年下の、しかも未成年に手を出すなんて信用できないですよね。リリーは盲目って感じでゾッコンだったのであんまり強くは言えませんけど。』と答えて。その答えからも、先ほど感じたぎこちなさのようなものの理由が分かる気がした。クリスはジェイを良く思っておらず、店長という立場で10歳も年下の女性に手を出した事にも不信感を感じているという事だろう。『最後に会ったのは…バイトの時です。リリーが失踪したと言われている日の2日前ですかね。』クリスはゲージの中の子猫を触りながら、そう答えて。 )
( その返事からは、自分の方に来て欲しいのに来てくれないリリーへの怒りや恨みよりも、10歳も年下の未成年に手を出した店長への怒りや失望の方が強い様に感じられ、もし本当に殺害したいと言う気持ちがあるのならばそれは多分彼女では無く店長の方に向くのでは…と直感的に思った。勿論あくまでも推測の域を出る事は無いが。その話も手帳に書き留め、クリスに撫でられどこか気持ち良さそうに目を細めた子猫に無意識に視線を向け、それから直ぐにその視線を持ち上げると「…その時に普段とは様子が違ったり、何か気付いた事はありませんでしたか?」と質問を重ねる。その答えを聞きながら頭の片隅で考えるのは、クリスの言う通りリリーがジェイにゾッコンだったとして、それならば何故他の異性に好意があると言われた時確りと断らないのか。それが出来ない性格なのか、はたまた何か別の理由があったのか )
( 『疑われてるんでしょうけど、俺が犯人ならリリーは狙いませんよ。好きな子を殺したりしたら元も子もないじゃないですか。』と、相手の思考を察してかはたまた偶然か、クリスは冷静に言ってのける。未だ被害者の生存確認も出来ていなければ遺体も見つかっていない状況。『いつもと変わったところは特に。…まだリリーがどこに行ったか、手掛かりはないんですか?』と問われ。彼はリリーが失踪したと思われる日の朝、前日から夜通し友人と飲み明かし、友人の家で寝ていたと証言した。一緒にいた友人らが証言できるはずだと。---そんな供述を聞きながら、突然視界がぐにゃりと歪むような強い目眩に襲われ思わず近くにあったゲージを掴む。独特の金属音が鳴ったものの平衡感覚が分からなくなってしまうことはなく、額に冷や汗が滲むのを感じながらも立ったままで話を聞いて。 )
( 此方の思考を察したのだろう彼の言葉に一瞬僅かに眉が微動したのはその冷静さに対してでは無い。恋愛感情のある相手を狙うか狙わないかはその人の性格やその時の状況で幾らでも変わる為問題はそこでは無いのだ。好きな相手ならば、心を向けている相手ならば、何故“殺したりしたら”なんて言葉を選んだ。少なくともまだリリーの遺体は見つかっておらず殺害されたと断定された訳では無い。失踪では無く事件だと思っているとしても“誘拐したりしたら”が妥当では無いのか。クリスをじっと見詰めたまま、次いで今度は彼からの問い掛けに「__今全力で捜査をしています。」と答えるに留めつつも、果たしてアリバイがあるのならば犯行は難しいか、それとも友達も共犯、もしくは口裏を合わせてくれるよう頼んでいる可能性もあるのかと思案し。__事件の事でぎゅうぎゅうに圧迫されていた脳に金属音が響いたのはその時だった。突然の音に周りの動物達が忙しなく動き、反射的に音の鳴る方へ視線を向ければそこにはゲージを掴み立つ相手の姿があり。クリスは不思議そうな表情を浮かべただけだったものの、長く相手を見ていればその不自然な行動が不調と結び付くのに時間は掛からない。「…また何か思い出した事があればご連絡下さい。失礼します。」このまま長く此処に居るべきでは無いと、話はもう十分聞けたとばかりに話を終わらせては、相手に目配せをして店内へ、そうしてジェイにも軽く頭を下げ車に戻るや否や「__調子悪いね。」助手席に座る相手の手首に触れ脈拍を見つつ、問い掛けでは無い決定の言葉と共にその表情を伺って )
( クリスに聞きたい事は未だあった。ジェイに直接リリーとの関係について問いただしたり口論になったりした事があるのか。他にリリーを誘拐する動機のある者に心当たりはないか。しかし自身の体調が思わしくない事に当然すぐに気付いたのであろう相手は話を切り上げ、車へと戻る。もっと話を聞く必要があったと不服の声を上げようと思ったものの、目眩が酷くそれは叶わなかった。助手席の椅子を深く倒し首元を緩めるのだが、異常なまでに汗をかいていて背中を汗が滑るのを感じた。相手が触れた手は小刻みに震えて脈もかなり早く、自分で鼓動を感じるほど。ただフラッシュバックを起こす感覚とは違うのだ、体調を崩す時に胸の内に残る不安定さのようなものは無いはずなのに。 )
( “可笑しい”と瞬間的にそう思った。脈は触れただけでわかる程に早くその手も小刻みに震え、何時その震えが全身に回り痙攣と言う形になっても不思議では無いと思える程。額にたまのように浮かぶ汗も異常事態を物語っており、こんな状態じゃまともに捜査など出来る筈が無いと。気圧の変化や風邪では無いと思ったが矢張りそれ以上の…毒には結び付かなければ、考えられるのはこれまで幾度となく見て来た状態から導く“フラッシュバックによる発作”で、だからこそ必要なのは鎮痛剤では無く安定剤だと誤診した結果、相手の鞄の中から普段服用している見慣れた薬と、ミネラルウォーターのボトルを取り出し「大丈夫、大丈夫、」と落ち着かけるように声を掛けつつ肩付近を擦り、少しでも飲み込む事が出来そうならば薬を、と )
( 相手から差し出されたペットボトルは受け取ったものの、安定剤には首を振り口にする事はなかった。これまで幾度となく発作に苦しめられて来たが、だからこそ今の症状が過去のフラッシュバックに起因するものではないと直感的に感じたのだ。ほんの少量の水を口に含んだものの、未だ手は震えていて目眩によるものか、視界が日差しの強い外から屋内に入った時のように可笑しな色をしている。「…っ、…少し休ませてくれ、」と辛うじて言葉を紡ぐと深く倒したシートに身体を預け、少し背中を折るようにして目を閉じてしまい。捜査を進めなければならないのに、この状況では到底動けない。少し休む事で体調が戻れば良いのだがと思いつつ、以前目眩が酷い時に飲むようにと処方された目眩止めの薬があるのを思い出す。今は鞄の中を探る動作さえできそうになく「_____鞄から薬を取ってくれ、…ピンク色の小さい錠剤だ、」と相手に頼み。 )
( 普段の相手ならば捜査に支障をきたす事が無い様にと直ぐに安定剤を服用する筈が、今回はどういう訳かそれを拒否した。額に滲む汗や手の震え、脈の速さは何か別の理由から来るものなのかと僅かに眉を寄せ考えるも、その間に相手は倒した背凭れに身体を預け休憩の体勢に。余程辛いのだろう苦しげに吐き出される呼吸音を聞いて今のベストが何かを思案すれば、先ずは相手の要望通りに安定剤を鞄にしまい代わりに奥の方にあるもう一つの袋を取り出し、中からピンク色の錠剤を相手に渡し。__様子を見る限り、明らかに風邪や気圧の変化、少しの体調不良などでは無い。こんな状態で捜査の続行は当然不可能な訳で、目眩止め薬が効き、落ち着くまでの間車の中ではろくに休む事も出来ない筈だ。そうしてそれは署の仮眠室でも恐らく同じ事。仮眠室に行くまでに何人の署員に調子の悪い相手を認識されるか。この場所からなら相手の家より己の家の方が近い…となれば。「__エバンズさん家で休もう。そっちの方がちゃんと休めるし、私1人此処に戻って来ても良い。」辛うじて、と言った言葉がピッタリな程に何とか身体を起こした相手が目眩止めを服用したのを確認してから、今一度軽く肩を擦りこの先の行き先を。これは提案では無く己の中では既に決定事項だ。なるべく車を揺らさぬ様運転に注意を払いつつ自宅まで向かう事として )
( 捜査に注力すべきだと思いはするものの、今は相手の提案を拒絶する事はしなかった。出来なかったと言う方が正しいだろうか。この状態では何も仕事が手に付かないのは目に見えているし、署に戻った所で他の署員の目もある。少し落ち着くまでの数時間だけでも家で休むのが最善だと思えば、頼む、とだけ答えて目を閉じて。---車が停まると相手に支えて貰いながら家に戻ったものの、相変わらず視界は嫌な揺れ方をしていて目を開けているのが辛い。ジャケットも脱がずにベッドに横になると、メールを打つことは出来そうにないため何かあれば電話をするとだけ伝えて目を閉じて。「…悪いが、他に怪しい人物に心当たりがないか、被害者のクラスメイトやバイト先の人間に聞き込みをしてくれ。今捜査線上に上がっている被疑者ももう少し絞り込みたい…アリバイの確認も頼む、」頭は正常に働いているからこそ、やらなければならない事は整理できるのに何も出来ない事がもどかしい。少し落ち着いたら署に戻ると告げて。 )
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