刑事A 2022-01-18 14:27:13 |
通報 |
ルイス・ダンフォード
( 一度呼吸が正常に戻れば、後はよっぽどの事が無い限り今直ぐ再び狂う事は無いだろうと安堵する。安定剤や解熱剤がその効果を発揮し、相手の苦しみを一時でも落ち着かせてくれるのも近いだろうか。背中を擦る手は止めぬままに『少し休め。』と一言声を掛け。_それにしてもあの瞳に浮かんだ恐怖の色は何だったのかと思案する。過去の記憶に苦しむ姿を見るのは決して初めての事では無いが、あそこまで目に見えてわかる“恐怖”を宿した瞳は初めて見たように思うのだ。考えている内に背を擦る手が止まり、ただ黙したままに相手を見詰めて )
( クラークの一件について、誰かに話す事はしなかった。それはいつか、妄言だと決めつけた医者が居たからか、或いは彼の存在自体を口にする事に言い知れぬ恐怖を感じるからか、話すまでの事ではないと思ったからか。自分でも理由は分からないが、ダンフォードにもその話をする事は選ばず、やがて再び眠りに落ちていて。---あと数日もすれば酸素マスクがなくても正常に呼吸が出来るようになるだろうと考えていたアダムス医師だったが、そもそも当初は此処まで重い症状が長引くとは想定していなかった。勿論日常的な揺らぎや捜査に追われて体調を崩す事も多々あるが、ミラーの存在がエバンズを主に”精神的に“支えていたのだと言うことを改めて知る結果となった。 )
( 相手が眠りに落ちたのを見届けたダンフォードは、心に巣食った僅かな疑念を残したままに一先ず残して来た仕事を片付ける為に病室を出、署へと戻り。__時刻は午後16時を少し過ぎた頃。難航していた事件が漸く揺るぎない犯人逮捕の証拠を見付けた事で解決する事が出来たミラーは、派遣先の署員達に挨拶を済ませるや否や警視正にメールを送り、レイクウッド署に戻るよりも先に車を飛ばしエバンズが入院していると聞かされた病院へと来ていた。駐車場に車を停め、助手席に上着を放り投げたまま鞄だけを引っ掴み、長い髪を後ろ一つで纏めたその姿は捜査終わりそのもの。駐車場から正面玄関までは全速力で、院内へと足を踏み入れれば早足で。入院病棟の詰所で看護師から、“エバンズは高度集中治療室から一般の病室に戻った”という旨の話を聞き、泣きたくなる程の安堵を胸に教えられた病室へと向かえば扉の横の壁には相手の名前があり。やや乱れた呼吸を落ち着かせ、扉を二度ノックする。「…失礼します。」と声を掛けて扉を開け病室へと入れば、真っ白なベッドの上に横になる相手の姿が視界に飛び込んで来たものだから、安堵も、やるせなさも、後悔も、何もかもの気持ちがごちゃ混ぜに「__…エバンズ、さん、」呼んだ名前は詰まり、情けなく震えて )
( 相手が病室に来た時は、浅い眠りの中にいた。胸は普段よりも僅かに浅く上下し、マスクの中に籠った呼吸音が響く。ふと、声が聞こえた気がして目を開いたのは相手が呼び掛けてから数十秒後の事。褪せたブルーの瞳に窓から差し込む光を受けて、やがて隣へと視線を向ける。相手に最後に会った日と比べれば、だいぶ窶れた印象を与えるだろう。白い肌は肉が落ちた事で薄く、目元のクマを濃く見せる。相手と視線が重なり少しして「_____ミラー、」と相手の名前を呼んだ。相手が此処に居る事に対する僅かな驚きが含まれた、ここ最近では少しばかりはっきりした声色。入院している事を相手に知られていた事への疑問や弁明よりも、何よりも先に出て来たのは「…事件は、解決したのか、?」という言葉だった。 )
( 真っ白の壁、真っ白の天井、真っ白の布団。その中で眠る相手を出会ってから何度見て来ただろう。その度に心臓に無遠慮に冷たい氷を押し付けられた様な痛みと恐怖を覚えるのだ。けれど相手は何時だって必ずその褪せた碧眼に光を通す。今だって。それを見て、今度は泣き崩れたくなる程の安堵を覚える。__繰り返し、繰り返し、そうやって時間は進むのだろうか。緑と碧が交わり相手の薄い唇が僅かに開き、そこから漏れた声に何度も首を縦に振る。“ミラー”の名前に応える様に、そうして続けられた問いに答える様に。一歩小さく踏み出された片足を切っ掛けに、後は心に従うまま小走りで駆け寄れば、途中相手の輪郭が歪み涙を堪えられなかった事を自覚する。その涙が頬を伝う事は無いが、たっぷりと濡れた瞳のまま腰を折り相手の頭を抱く様に腕を回し、「…ちゃんと、終わらせて来ました。」一度小さく鼻を啜って言葉にしたのは上司である相手に対する報告。行動と言葉のアンバランスさはそのままに震える息を僅かに吐き出しては「…間に合わなくて…大事な時に、エバンズさんの近くに居たかったのに…、…ごめんなさいっ、」事件から12年目の日、セシリアの命日、己が相手の側に居たからと言って相手の苦しみが無くなる訳では無く、あくまでも此方の勝手で、エゴだとわかって居るが間に合わせたかったのだと謝罪を口にして )
( 初めての1人での出張、捜査の進捗が思わしくなく帰る事が出来ないという電話を受けた時もその後も、不安定になるあの日に自分の側に居て欲しいと願うよりも相手の事がずっと気掛かりだった。だからこそ、例え時間を要したとしても相手が事件に区切りを付けて戻ってきた事は喜ばしい事だった。相手からの報告に「_____よくやった、」とひと言答える。上司らしい威厳もない状態ながら、相手の働きを労う必要があると思った。---あまりにも苦しい時間だった。追い詰められ、妹に想いを馳せる事も出来ないままに過ぎてしまった節目の日。謝る事はないと小さく首を振るも「……セシリアに、悪い事をした。墓参りにも行ってやれずに…」と言葉を紡ぎ、あの日の事を、そしてその夜の事を思い出し喉の奥がぎゅっと苦しくなるのを感じて浅く息を吐き。 )
( 酸素マスクに阻まれやや籠った声だったが、聞き逃す筈が無い。1人出張に行き時間こそ掛れど事件を解決してこの場に戻って来た己に対する最大級の労いの言葉。腕を解き、思わず弾かれた様に顔を上げ間近で相手の顔を見る。こんなにも窶れ、絶望の中に居ても心配し気に掛けてくれていたと言うのか。__“アルバートは貴女が全力で捜査に取り組む事を望んで、自分なりに努力した過程を評価する筈よ。”__ふ、と今度はクレアの言葉が脳裏を過ぎった。再び緩む涙腺を落ち着かせる為に一度深呼吸をして、それから少しだけ態とらしくも見えただろうか、誇らしい笑顔で「エバンズさんの部下だからね。」と、答え。__相手の苦しげに吐き出された言葉でハッとした。ずっと入院していた相手は大切な日にお墓の前に居る事すらも出来なかったのだ。それに気が付いた時、次に脳裏を過ぎったのは誰かの言葉では無く鮮明に浮かんだ“腕時計”。後は考えるよりも先に身体は動き、「エバンズさん、少しの間待ってて。…鍵借りるね、」ベッド脇の台の下、置かれている相手の鞄の中から家の鍵を取り出すと、相手が何かを言うよりも先に足早に病室を出て行き。___それから凡そ30分。次に病室の扉を開けた時、その手には“セシリアの腕時計”があり「……勝手に持って来ちゃってごめんなさい。でもこれ、今はエバンズさんの側にあるべきだと思って。」少しばかり切なさを含んだ柔らかな笑顔で、宝物を手渡す様に、その時計を静かに相手の掌へと移動させ。「少しくらい遅れても、きっと許してくれる。…折角会うなら少しでも元気なエバンズさんの方が、セシリアさんも安心する筈だよ。」ベッド脇の椅子に腰掛けつつ、まるで“お墓”では無く“生きている妹”に会いに行く話の様に、言葉を続けて )
( 泣き出しそうな表情から、少しばかり得意げな表情へと変わるのを見てほんの少し口角を持ち上げる。相手は少し前の”何もできない新人“とは違う。1人でも立派に事件を解決へと導ける刑事に成長したのだと思えば心強さも感じ。---鍵を持って病室を出て行った相手が戻って来たのは数十分後の事だった。相手の手にしている物が何かを理解し、其れが掌に乗せられた時、言いようのない感情が一気に込み上がって来るのを感じた。週刊誌の報道で身に覚えのない遺族の証言により一方的に罵られやるせなさを抱えた事、一挙手一投足を悪印象に繋げようと嫌な言葉を投げ掛けて来た記者たちの事、妹の命日に墓参りをしてやる事もできない悔しさ、事件で被害者たちを見殺しにした以上苦しむのが当然だと冷たい目を向けてきたクラークへの恐怖心______ずっとそれらを1人で抱え、苦しくて堪らなかったのだ。報道は、同じく被害者である妹にも申し訳ない内容だった。腕時計を握り締め、抑えきれない涙が溢れるとあっという間に呼吸は浅く喘ぐようなものに変わる。押さえ込んでいた感情が溢れたような、子どもが泣きじゃくるような息遣い。「…っ、セシリア……!」妹の名前を紡ぐのが精一杯だったが、腕時計は握り締めたままで。 )
( 相手の“こう言う泣き方”を見たのは物凄く久し振りだったように思う。瞳を潤ませ、静かに涙を溢す事は多々あれど此処まで感情を前面に出し嗚咽に邪魔される泣きじゃくり方は滅多に無い。それ程までに辛かったのだろう。苦しかったのだろう。相手の心は既に限界を超えていた筈だ。心無い記者の言葉や記事の内容に心を殺したった1人で耐え、妹の命日に彼女と向き合う事も出来ずそのやるせなさを抱え、ただ真っ白のベッドの上で点滴に繋がれる__こんな時の過ごし方を相手自身が一番望んで居なかった筈。セシリアの名前を何度も呼びながら泣きじゃくる相手に“大丈夫”の言葉は掛けなかった。涙を流す事で後に襲い来る披露や呼吸の苦しさはあるだろうが、それよりも今は閉じ込めた感情を吐き出す事の方が大切だと思ったから。借りた鍵を鞄に戻し、腕時計を握り締める相手の手を包み込む。それから余計な言葉は何も無く、相手の肩を優しく擦り、流れる大粒の涙に構う事無く頬を撫で、相手が此処数日間抱え続けた痛みも苦しみも恐怖も、負と呼べる何もかもの感情が流れ出るその時まで隣で寄り添う事を決めて )
( 人目も憚らずに、というのはこういう事だろうか。声を上げて泣くことこそしないものの、抑えきれない嗚咽が漏れ涙が枕を濡らす。ずっと鉛のように重たいものが喉の奥にあるような感覚だった。週刊誌の報道は全て嘘だと訴えたかった、それでも話をした遺族にも何かしらの抱え切れぬ苦しい思いがあったのだとしたら、自分が声を大にして其れを否定する事は正しい事ではないかもしれないとも思ったのだ。1人で耐え切るはずだったのに無様にも署内で倒れ、妹の墓参りにさえ行けなかった事も、気持ちを暗く沈ませた。それでも今、妹の形見を手にして、相手が側にいる事で言いようのない安堵感を感じていた。 )
( 涙で濡れ仄かに赤みを帯びた目元を親指の腹で優しく撫でながら、相手の手の中にある形見の腕時計を一瞥する。既に壊れ秒針を刻む事の無いそれは無機質な物の筈なのに酷く優しい温かさを放つ様に思えて、強い強い想いのある人の魂は物にも宿り、その人を静かに護り寄り添う様な、そんな事が本当にあるような気持ちになるのだ。「__言いたい事ある?」何度も何度も喉元まで出掛かった、音として訴えたかった事が、それでも懸命に飲み込み抱え込んだ言葉と気持ちが、膨れ上がり今にも爆発してしまいそうな思いが相手にはある筈だと思えば、それをもう1人我慢する必要は無いのだと言い聞かせる。感情を吐き出せる様にとさり気無く導きながら全てを聞き届けると )
( 葛藤しながら、何度も何度も抑え込んだ思い。「_____週刊誌の報道は全部嘘だ。…遺族にあんな心無い言葉は浴びせていない、…あの時も自分なりに、事件と、遺族に誠実に向き合ったつもりだ…っ刑事を続けているのは、事件を踏み台にしてのし上がる為じゃない。あの事件の犠牲者と遺族に、報いる為だ。俺の気持ちも知らず好き勝手言われて_____白い目で見られて、揚げ足を取られて、悪者に仕立て上げられる、」マスクが白く曇るのも気にせず、初めはゆっくりと紡いでいた言葉は徐々に苦しげな色を含んで強い語気に変わって行く。「……どうしようもなく、苦しかった、」相手の目ではなく、天井を見つめてその言葉を紡いだのは情けない姿を見せている相手に対する精一杯の強がりか。 )
( 静かな病室の中で確かに吐露されていく相手の思い。__あの事件の犯人は罪を償う事無くまるで残された者に全てを背負わせるかの如く自害し、何年、何十年と癒えぬ絶望を知らぬ顔。大切な者を喪った遺族達は怒りも憎しみも悔しさもぶつける相手を無くし、結果的にあの事件に関わりのある今唯一生きている相手へとその憎悪を向ける。行き場を失った遣り場の無い思いをどうやったって消化出来ない気持ちが少しも理解出来ないとは言わない。言わないが。世間が傷付ける相手もまた、刑事であると同時に同じ痛みを知る“遺族”なのだ。「……わかってる。報道の全てが嘘だって事も、エバンズさんの気持ちも。」世間が信じた全てが嘘である事をちゃんとわかっていると、相手を信じていると伝えつつ、“苦しかった”には否定する事無く頭を縦に動かし。これだけの気持ちを吐露して尚、瞳を合わせないのは相手の心に残る最後の強がりか。無理にその顔を覗き込む事をせずに椅子の背凭れへと体重を掛ければ、目元から静かに手を離し。「__セシリアさんと2人で話す?」今此処に在るのは妹では無く腕時計。セシリアでは無いし、微笑む事も言葉を返してくれる事も無い。けれど、それをわかっていて時計に視線を落とせば、“彼女”に言いたかった事があるのならば、2人きりで居たいのならば、と微笑んで )
( ダンフォードさんも相手と同じように、分かっていると受け止めてくれた。近しい人はきちんと分かってくれているのだという安堵感は静かに胸に落ち、少しばかり気持ちを落ち着かせた。2人で話すか、という問いには暫しの間を空けた後に「…退院したら、セシリアの墓参りに行きたい、」と答えて。今病室で想いを馳せるよりも、彼女の一番近くで対話をしたいと思っての事。意識が靄掛かっている期間もあり、思っている以上に長い時間病院に居るような気がする。早く身体を回復させ、退院したその時には霊園まで連れて行って欲しいと。 )
( 形見である腕時計と共に想いを馳せるより、お墓参りに行きたいのだと言う要望を聞き届けて腰を上げる事を辞めた。“行く”では無く“行きたい”との言葉で1人で行くのでは無く自分も共に行っても良いのだとわかればそれだけで思わず破顔し。「何よりも優先して行こう。」と、頷いて。__それから数日後。クレアとダンフォードに見送られ無事に退院した相手と共にセシリアのお墓の前に居た。雲一つ無い晴天の下、優しい風が頬を撫でる様に吹き抜け木々の葉が音を奏でる。真っ白の野薔薇がまるで彼女を護る様に墓石に絡むのを見詰めながらしゃがみこみ、備えたのは何時かの日、彼女への贈り物として買ったリップグロス。相手が妹に一番似合う色だと選び、それ決めたのだ )
( 吹き抜ける風、木の葉が擦れる音、鳥の囀り。何度来てもこの霊園はとても静かで、まるで此処だけ時間が止まっているかのような錯覚に陥る。白い野薔薇の絡んだ墓石の前に供えられたリップグロスを見て、もし妹と相手が顔を合わせていたらどうなっていただろうかと思う。2人で化粧品の話にでも花を咲かせるのだろうか。そんな事を考えている間、事件の記憶は遠くに押しやられる。今想像の中にいるのは、明るい笑顔を湛えた生前の妹、其処に悲壮は感じられない。一切乱れのない幸せそうな妹の姿を鮮明に思い出せる事は多くはなかったと言うのに。墓の前で手を合わせ、静かに祈りを捧げる。命日に来られなかったことへの謝罪、刑事を辞める道は選ばないという決意、相手が供えたリップグロスの事。ずっと望んでいたように、きちんと妹と向き合って報告する事が出来たという安堵感が胸に落ち。 )
( 静かに手を合わせ祈りを捧げる相手を一瞥する。その表情に今は後悔や苦しみは見られず穏やかなもののように思え安堵が胸に落ちた。再び墓石と向き合い瞳を閉じれば野薔薇の優しい香りや、小鳥の囀り、頬を撫でる風の柔らかさが鮮明に感じられて切なさを感じる場所の筈なのに不思議と温かな気持ちになるのだ。相手も、少しでもそうであったらいい。__静かに瞳を開け視線をまた隣の相手に。妹とどんな話をしているのだろうか。きっと一番初めに来るのが遅れてしまった謝罪をして、もしかしたら日々の生活の中にあった他愛無い出来事を共有したりしているかもしれない。今だけは、この場所でだけは、何もかもの苦しみから一番遠い所に相手の心が在って欲しいと、そう思わずには居られないのだ )
( 仕事に復帰したのは、相手と共に墓参りに行った日から1週間ほど経ってからだった。新たな事件捜査を担当する事になったのは、其れからさらに数ヶ月後の事。---19歳の女子学生が失踪し、彼女の乗っていた車だけが発見されたという。当初強盗誘拐事件と睨んでいたが、要求の電話なども無いため殺人事件に切り替えて捜査をする事になったと話が降りて来たのが今朝の事。執務室にやって来て状況を説明すると、君に捜査を引き継いで欲しいと言った警視正だったが、近頃は“ミラーと2人で行ってくれ”と言うまでもなく資料を2部渡すようになり、此方もまた其れに特段の疑問を感じる事もなくなっていた。「______ミラー、出掛けるぞ。女子大生が失踪、殺人事件として捜査を引き継ぐ。」執務室の扉を開けてフロアの自席に居る相手へと声を掛けると、コートに袖を通しつつ必要最低限の説明を。 )
( __相手から声を掛けられたのは、自席にて証拠品の纏めを打ち込みそれに丁度一段落が着いた時だった。手渡された資料に目を通し、聞かされた必要最低限の説明と共に今回の事件の概要を頭に叩き込む。強盗誘拐事件から殺人事件へと切り替わっての引き継ぎ捜査と言う事は、既に被疑者として浮上している人も居るだろう。今わかっている人達にもう一度直接話を聞くのと、失踪した女子大生の家族にも会う必要があると思いつつ頷けば「先に彼女の家に行きますね。」と、相手と共に署を出て )
( 相手と共に女子大生の家へと向かうと、両親は憔悴した様子で自分たちを家の中へと迎えた。『どうか娘を見つけてください!何処かで1人閉じ込められているかもしれない…監禁されて助けを求めているかもしれないでしょう?!』此れから自分たちが捜査に当たる旨を伝えると、母親はそう語気を強めた。捜査は殺人事件として動いているものの、確かに彼女が何処かに監禁されている可能性もある。殺人事件だと断定する事は出来ないが、未だ生きているかもしれないと期待を持たせる事も得策とは言えず「…全力で捜査に当たります。」とだけ答えた上で「ここ数日、お嬢さんに何か変わった様子はありましたか?」と尋ねて。『変わった様子なんてありませんでした。本当ならあの子が居なくなった翌日、リリーの恋人が挨拶に来る予定だったんです。幸せだったはずなのに、どうして…!』と、母親は顔を覆った。 )
トピック検索 |