物書キ見習イノ青葉子 2021-11-22 18:31:02 ID:ad3241738 |
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注意
一応BLですが、GLも含まれております。
大丈夫な方だけお読みください。
注意を無視して不快になられても責任は負いません
...死のう、と思った。
「ただいまー...あれ、母さん仕事かな」
慣れた手つきで鍵をまわして開ける。部活が長引いてすっかり暗くなった午後七時。いつも通りなら、母さんはいるはずだが。
たまに仕事が入って、と夜遅くに出掛けることがあったから、それかな。
特に気にせずリビングに向かって、目を向けた机の上に一枚の紙。
『暁へ
お母さんはもう、お父さんと暮らすのに疲れました。どうかお父さんと、幸せに暮ら「ふ...ふざけんなぁッ!」
バシッと床に叩きつけられて、紙が音をたてた。
それは日常が壊れる合図...いや、もしかしたら、もっと、ずっと前から壊れていたのかもしれない。
「そ...うだ。父さん...父さんは」
わずかな希望を胸に、スマホをだす。
電子音を響かせて、手のなかの板は鳴り続ける。
一回...出ない。二回...出ない。三回...
「なんで、なんで出ないんだよッ!」
聞けども答えが返ってくる筈も無し。
日常が、当たり前が、虚構の幸せが。壊れて...こわれて...コワレテ...
嘆くことしか、出来なかった。
今思えば、僕の家は世間一般的な幸せには当てはまらないだろう。
元々、両親の仲は最悪だった。僕がいようが、目の前で言い争ってみせた。時には、僕にまで矛先が向かうことも...
でも、そのあとに見せる嘘みたいな優しさが。逃げたいという思いをなくしてしまうほどに暖かかった。もしかしたら、この優しさがホンモノで。あの、こわいおかあさんはおとうさんは、ニセモノなんだって。信じてたかった。
大きくなればなるほど、それは幻想にすぎないんだってわかった。わかってて、隠した。
幸せになれないなら、幸せを演じてみせた。優等生で居て欲しそうだったから、優等生を演じた。親思いで、優等生で、幸せな僕。その僕が、両親の求めるものだった。バイトも初めて、家にほとんど一人だったから、家事もして。成績もしっかりとって。
結局、全て台無しになったのは、いうまでもない。どっちも、新しい恋人と逃げたんだから。お互いにお互いが、僕を引き取ってくれると思って。
信じてたのになんていっても、心のどこかで分かっていたから、恨むに恨めないし。もう、最悪だ。
でも、そんな苦しい思いも、今終わる。
「さっむ。まったく、何で日本の冬はこんなに寒いんですかね。某熱血テニスプレイヤーとか、10人くらいいたらあったかくなりますかね?」
高層ビル...とまではいかないが結構な高さ。屋上ということもあって、ここは寒い。
これから死ぬというのに、こんなに寒かったら、凍ってしまうぞ。楽に**ないぞ、このやろう。
「ま、死ぬにはいい日ですね。先のばしにして未練たらたらになるよりは、吹っ切れて飛び降りる方が楽でしょう。ねぇ...だれもいないんですけど」
どう頑張っても転落防止になりそうもないフェンスを上って反対側に出る。
見下ろせば遥か下にみえる地面。足を踏み出せば、簡単に僕を肉塊にしてくれるだろうに、
震える。寒さと...恐怖で
「ああ、ちくしょう。なんだってこんなところで怖じ気ついてんですか。もうなにも残すことは無いでしょう。無い、のに...どうしようもないですね、ほんと。生存本能って奴は」
独り言は、感情を整理してくれる。けれども、このどうしようもない「死にたくない」は、どう頑張っても整理してくれない。
イラつく。生にしがみつく自分に。そのせいで、後ろから近づく人影にも、気付かなかった
「...あ、えーと...だいじょぶ?」
「え。っあ、うわっ」
あ、落ちる。てか、落ちてる。後ろの人のせいで、踏み外したんだが!?
「あっおい!」
グイッと腕が引っ張られる。若干肩が死にそうなんだが。
「だいじょぶか?あがれる?」
「あー、えーと。無理ですね」
「そっか。じゃ、引き上げるから離すなよ」
よっこらせっと、なんて爺くさい台詞で僕を引き上げる彼。少しして、僕はフェンスの内側まで引き上げられた
「ありがとうございます...?」
「なんで疑問系なんだよww」
心底愉快そうな彼にイラつきながら考える。疑問系になったのは、死にたかったのに引き上げられたことと、彼の姿。白い髪と満月と同じ色の瞳。男の僕がいうのもなんだが、綺麗な顔で。目元の朱が妖艶な雰囲気を出していた。それと...耳と尻尾...耳と尻尾!?
「耳と尻尾!?」
「あは、そんな驚くなよー。まあ、気にしないでくれよな!」
「気にするけど!?」
にぱーと明るく笑う彼...なんか、さっきちょっと気まずそうに話しかけてただろうが。どこいったし。
「な、こんな夜中にひとりじゃ危ないよな。よし、オニイサンが部屋までついてってあげるぜ」
「いや、それストーカーですよね?」
「でも一人で帰ったら補導されるぞー?」
「あー、うー...」
「ほいじゃ、決まりな」
「俺、天狐リク。お前は?」
「雨宮...暁です」
雨宮 暁 (あまみや あかつき)
16歳 男性
至って普通の男子高校生。剣道部所属
黒髪。少し深いアメジストの瞳
170cmくらい。体格はほそめ
天狐リク (てんこ りく)
20歳前半くらい? 男性
不思議なひと。命の恩人
暁曰く、白い髪と満月と同じ色の瞳。男の僕がいうのもなんだが、綺麗な顔。目元の朱が妖艶。それと耳と尻尾。
暁より10cmくらい高い。体格はほそめ
(細かい容姿はご想像にお任せしますが、ご要望がありましたら、なんらかの画像でなんとかします)
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