Devil 2021-11-21 21:57:27 |
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そりゃどーも。
お言葉に甘えて、もうちょっと飲んだら帰る。
(相手の家なんだから自分を送ることなんて考えず、眠くなったら好きに眠ればいいと言って空いたグラスにもう一杯ワインを注ぐ。
好きに出入りして、ベッドも使って構わないと言われるとそう返事をして、これを飲んだら帰ると告げた。
ソファーに体重を預けてウトウトと眠り始める相手を横目に、今日は天使を助けたと思えば友達になって、おかしな日だと思いながらワインをひとり楽しむ。
帰ると言いながらも意外にこの家は心地よく、さらには温かいブランケットにくるまっているものだから動く気が起きず、最後の一杯を飲み終えてもしばらくソファーに収まったままでいるとやがて自分も眠くなってきて、気づけば体を丸めて相手の隣で眠り込んでいたのだった___。)
(そうですね、そうしましょう!*)
__……、…。
( カーテンの隙間から覗く朝日に、ゆっくりと目を開けて瞬きを数回。なんだか、とても長い夢を見ていたような気がした。しかし、それは悪夢なんかではなく、懐かしいような、つい最近の事のような…そんな素敵な夢だった。
うーん、と小さく声を洩らしながら寝返りを打てば、そこには布団に包まって眠る相棒の顔がある。あの日も、翌日に起きたら相手の顔があって最初は驚いたな、と当時の事を思い返してクスリと笑う。
そういえば、昨夜一緒に飲んでそのまま2人で寝たんだったか、と記憶を手繰り寄せれば、相手の顔にかかった前髪を優しく払い除ける。
いつもならばとっくに起きている時間だが、隣で眠る相手の顔を眺めていると此方も再度睡魔に襲われそうになる。
とりあえず、奪われていた布団を半分取り返せば、此方も布団に包まって二度寝する気はないが、たまにはこうしてベッドの上でのんびりするのも良いだろう。 )
………ん゛ー…寒い、…
(カーテンの隙間から差し込む眩しさから逃げるように掛け布団の中に顔を引っ込めて、相手の分の布団まで自分の体に絡みつけて眠っていたものの布団が少し取られると不満そうな声を上げる。
悪魔は体温が低いせいか寒さには弱く、温もりを求めるように寝返りをうって天使の体を抱きしめた。
とてもなつかしい夢を見ていたようだと薄目を開けたものの、体が温まるとまた眠くなる。
「……昔の夢を見た…」と相手の胸元に顔をうずめたまま寝ぼけた声で言うのだった。)
…え、キミもかい?
実は、僕も昔の夢みてたんだ。
( 不満そうにしながらも、温もりを求めて此方を抱き寄せる相手に微笑ましそうに笑いかけては、寝ぼけた言葉に、偶然の一致だと嬉しそうに上記を述べた。
此方の胸に顔を埋める相手の頭部を優しく撫でつければ、その猫毛を自身の指に絡める。)
最初会った時、とても嫌な顔をされたのを思い出したよ。
( 懐かしそうに目を細めながら、もう一度夢で見た光景を辿れば、あの公園で初めて話しかけた時のことを思い返す。
天使に声をかけられ、喜ぶ方が可笑しいのは分かるが、今となってはあぁやって嫌な顔をされていたのも懐かしく感じてしまい、再度、思わず笑みが零れた。)
…なんだ、同じベッドで寝ると同じ夢を見るようなしかけでも付いてるのか?
(相手の温もりを感じながらウトウトと心地よくまどろんでいると、同じような夢を見たという言葉が降ってきて相手を見つめる。
撫でられるのは気持ちがいいと相手から離れることはなく、天使のベッドにはそんなおかしなしかけまで付いているのかと愉快そうに笑った。)
そりゃそうだ、仕事してたら急にお気楽そうな天使が近づいてきて世間話を持ち出してきたんだからな。
何か裏があると思うだろ。
(公園でやっている子ども向けの手品ショーでも見るような調子で天使が近づいてきて、急に声をかけられたんだから警戒して当然だ。
何かを企んでいて、隙を見て聖水でもかけられるんじゃないかとヒヤヒヤしていたと不服そうに言うが、そんな話をしながらも相手の背中に腕を回したまま。
今となっては隣で眠れるほど、いっさいの警戒心が失われているようだった。)
( 愉快そうに笑う相手に 「 まさか 」と、しかけについては此方も笑いながら否定する。しかし、確かに同時に同じ夢を見るなんて滅多にないし、自分の知らぬ間に力が働いてしまったのだろうか、なんてまだ少し寝惚けた頭で考える。)
フフッ、確かにその通りだね。
…でも、良かったよ。キミに嫌われなくて。
(そして、当時を振り返る相手の言葉に、それもそうだと言わんばかりに苦笑いをする。
あの時のことを客観的に見てみれば、確かにあれはお気楽すぎたなと自分でも思う。だが、同じ事をしないかと言われば自信はなく、その好奇心は健在だ。まぁ、今はフラフラし過ぎると叱ってくれる相手がいる為、少しはマシになっただろうか。
其れよりも、こんな自分を嫌わずに仲良くしてくれた相手に感謝の気持ちが湧いてくる。あの時、もしも嫌われていたら、今のような幸福は感じられなかっただろう。
暫くお互いに身を寄せあったままだったが、このままでは本当に二度寝してしまう、と上半身をゆっくりと起こし、もう一度相手の髪を撫でた。)
アル、今日は仕事ないのかい?
嫌ってたらここでこんな風に寝てない。
(あの時天使の話を聞かずにとっとと公園を後にしていたら、今のような友情はなかっただろう。今も自分はひとり、地上で仕事をしているだけだったかもしれない。
たしかに変な天使だとは思ったが、嫌なヤツだとは感じなかったとあの時のことを思い出しながら考える。
天使と友達なんておもしろそうだと思った当時の想像通り、今はこんなにも楽しい日々を親友と過ごしているわけで。
あの時の選択だけは間違っていなかったと断言できる。)
ないよ、だから夕方までだってゴロゴロしてられる。
(昨日のパーティーで仕事はかなり進めたし、月末までには決められたノルマ分の悪行を済ませることはできそうだ。
今日は特に仕事はないと言いながら、起き上がってしまった相手を寝転んだまま見上げて、まだ時間はたっぷりあるとばかりに笑みを浮かべた。)
( 本当にその通りだ、との意を込めて再度笑いかければ、変に寝癖の付いてしまった髪の毛を撫で付けながら欠伸を1つ。
あの時は、少なからず嫌われてはいなくとも、警戒するほどにも満たないただの変人程度にしか思われていないだろうと思っていた。しかし、あの日、思わずソファーで寝落ちしてしまうぐらいには自惚れてもいいのだろうかと考えたのを今でも覚えている。実をいえば、あの朝の光景は結構嬉しかったのだ。)
キミは本当にそれで一日潰してしまうから心配だよ。
…それに、僕もつい釣られちゃうんだよな。
( 欠伸したことで流れる涙を拭えば、ゴロゴロしていられると笑みを浮かべた相手に苦笑いを返す。布団に包まるのが大好きな彼は、用事さえなければ本当に一日中ベッドの上で過ごすため、此方としたは歯がゆいのだ。
だが、隣で暖かそうに横になっている姿をみると、不思議と自分までゴロゴロしたくなる、とせっかく起き上がった上半身を再びベッドに沈めて、安らかな誘惑に乗ってしまうのだった。 )
(天使と心ゆくまでのんびりとした時間を楽しんだ休日から数週間。
『頼みたい仕事があるから地獄に来るように』という連絡が急に入り、一人で心底嫌そうな顔をする。
一度降りれば大抵長引くことはわかっているが、しばらく地上を留守にすると天使に報告するほどのことではないだろう。
帰ったら声をかけようと思い、部屋を施錠して地獄に降りたのがもう2週間前のこと。
_____ようやく仕事を終えて地上に戻るころには、すっかり気分は沈んでいた。
散々悪さを働いて、あるいは借金がかさんで、はたまた自分の犯した罪に耐えきれなくなって、とにかく身動きの取れなくなった人間を何人も死に誘惑して地獄に落とした。
長く地獄にいて仕事をしていたためすっかり悪魔らしい、地獄の匂いが体にまとわりついているように思えるし、何より人を死に誘惑して地獄に落としていたなんて、あの天使に言えるわけがなかった。
自分がそんなことをしていたと知ったら人間のために悲しむだろうし、嫌われるに決まってる。
自分が長く留守にしている間に天使は家に来ただろうか。帰ったら一番に相手の家に行こうと思っていたのに、クタクタになって自分の家に戻ってくると、2週間ぶりにベッドにもぐりこんだ。)
(キリよくまとめていただいたので、地獄のお仕事をして帰ってきたベリアルを投下しておきますっ!)
( 相棒を見かけなくなって2週間。天使はぼんやりとしながら街をとぼとぼと一人歩いていた。
_休日明け、いつものように相手の家へお邪魔してみると、珍しく相手の方が先に外出しており、おまけにそれ以降、全く帰ってくる様子がなかった。
数日間は心配していたが、今のところ悪い予感などはしないし、恐らく下での仕事が入ったのだろうと察しよく考察に至った。だが、それで居てもなんだか落ち着かなくてこの2週間を悶々と過ごしていた。
これまた心配症だと馬鹿にされるかもしれないが、相手がいつ帰ってくるのかが気が気でなくて、ほとんど毎日相手の家へと寄っていけば、冷たく真っ暗な部屋に肩を落としていた。
しかし、今日もまた帰ってきていないだろうかと相手の家を尋ねれば、微かに悪魔の気配を感じ、慌てて相手の部屋へ )
__アルッ、おかえり!
帰ってきてたんだね。仕事にいってたのかい?
( 遠慮も無しに玄関の扉を開けて入ってみれば、いつものようにこんもりと盛り上がった布団が目に入る。
無事に帰ってきた、と安堵のため息をつきながらも、声色は嬉しそうに上記を述べた。)
( / ありがとうございます!
また、今回もよろしくお願いいたします!! )
…下での仕事だった。
帰ってきたばっかりなんだ、数日すれば匂いも取れると思う。
だから、何日かしたら出直してくれ。
(たしかに施錠したはずの扉が開く音が聞こえて、聞き慣れた足音が寝室に近づいてくる。
久しぶりに聞く相手の声がして、布団から目元を覗かせる。仕事で地獄に出向いていたのだと言い、自分が体にまとっている地獄の空気は天使には毒だからと今日は帰るように言った。
地獄に永く留まっていたからか、天使がいつも以上に神聖に見えて、近づいてはいけないと思ってしまう。
背中の痛みに苦しんだときにも少し似た、なんだか惨めな気分だったのだ。
悪いことをしてきたという負目も感じていたせいで、長い時間天使と話している気分ではなかった。)
(こちらこそお願いしますー!*)
やっぱりそうだったんだね。
お疲れ様。
……うん、分かった。
また、疲れが取れたら来ておくれよ、話したいことも沢山あるしさ。
( 仕事の内容を聞けば、予想していた通りだった為に、また安堵したように頷いた。何はともあれ、何らかの事件や事故に巻き込まれていなくてよかった。
布団の隙間から覗く相手の瞳をしゃがみこんで覗き返してみるが、言葉を続ける声色からも察するに元気が無いようだった。
覗いていた顔を退け、少し考えれば、出直してきて欲しいという相手の意思を了承するように、静かに返答をした。
いつかのように激しい苦痛に蝕われている訳でもなく、なにやら様子の可笑しい相手に疑問を抱きつつも、仕事で疲れているのだろうと自分を納得させた。
確かに、お互いに地獄や天国から地上に戻ってくれば、その色は一時的に濃くなるが、自分的には気にならない。だが、彼なりに気を使ってくれているのは感じ取れたのか、休んだ後にまた会おうと優しく笑いかける。
そしてまた、相手からも言われた通り、数日後には元気な相手の姿を想像しながら再度顔を出すことになるだろう。
しかし、胸の内にはずっと、どこか一抹の不安を抱えていた。 )
(その日は相手もすんなり納得してくれて、こちらを労ってから長居することなく帰っていった。
疲れが取れたら来てくれと言われていたにも関わらず、それから何日経っても相手のところに顔を出す気になれなくて気持ちはどんよりと沈んだまま。
むしろ地獄での仕事について考えていたせいか日に日に落ち込んでしまったような気もする。長期間地獄を離れて地上にくらしていることと天使と仲良くなったことで、思った以上に自分から悪魔らしさが失われていたことへのショックもあったかもしれない。
それに加えて仕事のことを知られたら天使に軽蔑されるという不安が膨らんで、今までになく塞ぎこんだ気分になってしまったのだ。
何をする気にもならないし食事はしなくてもあまり害はないので、1日中どこにも行かず布団にくるまっていることも多く、天使と顔を合わせないまま時間がけが過ぎて行くのだった。)
( _あれから幾ら経っても、悪魔が顔を出しに来ることは無かった。
数日後に此方からも出向くとは言っていたが、正直、此方から行く前にケロッと相手が顔を見せに来てくれると思っていたので、小さな欠片だった不安の種がどんどんと膨れ上がってくる。
自分も地上の仕事で手一杯になってしまったり、といったタイミングもあったが故、訪ねるのが遅くなってしまったが、何より、会いに行くのが少し怖いと感じてしまっていたのだ。)
……やぁ、ベリアル、大丈夫かい?
ワインとデザートを買ってきたよ
( 静かに玄関の扉を開けると、部屋の中はいつにも増して暗い雰囲気を漂わせ、丸くなっている布団の山を見るに、相手はずっと寝たきりなのかと心配そうに眉をひそめた。
持っていた紙袋を低く掲げれば、笑顔で上記を述べながら部屋の中へとやってきた。
直ぐに会いに来れなかった償いの意も含まれているのであろう、何時か初めて一緒に飲んだワインと、食べ損ねていたガトーショコラを探し出して買い直してきたらしい。 )
( / 上げ ありがとうございます!!
待たせ致しました!! )
(天使の気配がして、さすがにそろそろ来るだろうと思っていたのだが、気まずくてベッドに潜り込む。
手土産にワインとデザートを買ってきたと言う相手。いつものように2人で楽しくワインを飲みながらおいしいデザートを食べるなんて最高じゃないか。
そう思うのに、どうしても気分が上がらない。天使が好きだからこそ、地獄での出来ごとを知られて幻滅されるのが怖かった。)
……レイ、悪い。今はそういう気分じゃないんだ。
ひとりにしてくれ。もう少し休みたい。
(布団に潜り込んだままボソボソと話すものだから、天使は相当ベッドに近づかないと自分の言葉を聞き取れなかったことだろう。
相手のせいではないのだ。ただ自分が、気持ちを切り替えられないだけで。
帰ってきてからずっと寝ているのだが、もう少し時間が経てばきっと回復すると言いながら顔を見せることはない。
いつもの勢いはなく、すねた子どものような有り様だった。)
(いえいえよかったです!お帰りなさい!!)
………
( ベッドから顔を出さず布団の中から返答する相手に、静かに紙袋をテーブルに置けば、相手の傍らにそっと腰掛け耳をそばだてた。
所々聞き取れなかった中で、聞こえてきた“ 1人になりたい ”の言葉、そしてその声色に、更に抱えていた不安の種がミシミシと鈍い音を立てながら大きくなるのを感じる。
暫く黙った後、横で丸くなっている布団の上にそっと手を重ねると、やっとの事で口を開いた。)
…ねぇ、アル。
僕の顔、見たくないの?
( 優しくそう言った言葉には寂しさや不安もあり、それでいてどこか冷静さを持ち合わせていた。
布団を被り、いつもは覗かせてくれる大好きな赤い瞳さえ、一向に此方へ向けてくれる気配はなく、ただ、相手が今どう思っているのかが気になった。
拗ねているようにも感じる相手の言葉からは、身体の不調を訴えているものではなく、何か隠している、何か言いたい事がある、と安易に予測できた。それが何とまでは分からないが、これだけ一緒にいればなんとなく分かってしまうのだ。
これだけ篭っていれば、いつか人間の体を壊してしまうよ、なんていつものようにお節介じみた事を言おうと思っていたが、述べられたのは上記のみだった。 )
…今は見たくない。
俺に構わないでくれ。
__天使のお前が、悪魔に関わるべきじゃなかったんだ。
(帰ることはなく少しの沈黙の後に近くに腰をおろした相手が、布団越しに丸まっている自分の体に手を置いたのを感じてその温かさにまた気分が重くなる。
相手はいつだって人を気使える優しい天使だ。自分は地獄に人々を引きずり込んだばかり、吊り合うわけがないじゃないか。
八つ当たりじみた返事をしただけで布団から顔を出すことはしない。
ただ仕事としてやるべきことをしただけ。それだけのことなのに、天使と顔を合わせたら、悪魔のくせに罪悪感に押しつぶされそうな気がしていた。
気まぐれに相手と友達になったのがはじまりだったのだが、天使と悪魔の友情なんて元から成立するはずがなかったと呟いた。)
……“今は ”じゃないだろう。
( 相手の呟きに、布団に重ねられた手を僅かに震わせた。大きくなっていた種が破裂したような感覚があれば、頬へ静かに涙が伝った。相手に聞こえるか定かではない声で上記をつぶやくと、重ねていた手を退ける。
相手はきっと何かに悩んでいる、力になりたいが、凡そ、何に悩んでいたのか、憶測だったものが今、相手の言葉を受けて勝手ながらも確信に変わった気がした。
_もう、天使である自分が、嫌いになったのだ。
元々、自分が能天気にも話しかけたことがきっかけでこの関係が始まった。自分は最初から悪魔や天使などの種族に囚われる考え方は好きではなかったが、相手はそもそも天使が嫌いだった。
久し方ぶりに地獄での仕事に専念して、やっぱり天使の存在が煩わしくなったに違いない。
「 ごめんね 」とだけ、乾いたように笑いながら涙を拭えば、逃げるように腰を上げて、荷物は置いたまま、家を出た。
似たように喧嘩をしたこともあったが、それとは比べ物にならないぐらい胸が苦しく、涙が流れる。だって、もう会ってはいけないと思ってしまったから。
__まだ日は高いと言うのに、此方は雷雨に打たれ沈んだように下を向いたまま、濡れた頬を寒風に晒しながら一人、街の中を歩いていた。 )
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