Devil 2021-11-21 21:57:27 |
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……悪魔はどうか分からないけれど、貴方は、優しいですよ。
だって、本当に嫌なら力でもなんでも使って、僕を痛めつけることもできるでしょう。
( 鼻で笑う相手に、躊躇することなく平然と上記を述べた。悪魔が友好的か、それは知れたことでは無いが、少なくとも今目の前にいる彼は優しいのだと思う。言葉や態度こそ悪いが…それに、こうして話を聞いて返答してくれる。それは少なくとも、彼の優しさだろう。そう言って微笑めば、こんなこと言って、余計に怒らせてしまうだろうか、と僅かに首を傾げて様子を伺う。
そして、こちらの質問に続けて答えてくれる相手に、ほら優しい、なんて言わんばかりに再度微笑んだ。)
…天使らしくない、ですか。
喜んでいいのか分からないですね。
フフ、そんなことしなくても、僕はその好奇心に勝てなくて地上に来たんですよ。
好奇心が旺盛だって…貴方も、この短時間で僕のことそう知ってくれたのでしょう?
( 天使らしくない、の言葉に、それは嫌な奴ではないという褒め言葉なのか、それとも天使らしからぬ奴ということなのか、反応に困るなと目尻を下げて笑ってみせる。
すると、ふと、笑いかけてくれたと思えば、悪魔的なその笑顔と言葉に瞬きを数回。フフッ、とまた笑ってみせれば、これ以上引き出されることなんてないよ、と返答を続けた。
天界でもそこそこの地位にいたにも関わらず、大好きな人間を近くで観察し、その生活に触れてみたいと出世の話も断ってここまで来たのだ。地底に堕ちるつもりもないが、天界に帰る気もさらさらないようで。)
やめてくれ、悪魔に対して優しいは悪口だ。
…別にそこまでするほどのことでもないだろ。
お前が本当にどっかに聖水を隠し持って近づいてきたんなら話は別だけどな。
(心底嫌そうな顔をして身震いをする。悪魔である自分が天使に優しいと言われるなんて。
善意で言っているのだろうが優しいという褒め言葉は嬉しくない、悪魔にとっては悪口のようなものだと言っておく。
たしかに痛めつけて追い払うこともできるが、そこまでするほどのことでもないし、この悪魔は基本的に怠惰だった。
嫌悪感をあらわにはするが、自分に危険があったり、よっぽどのことでない限りは力を使う気は起きない。
他の天使であれば話に付き合うことなくとっとと公園を後にしていたのだろうが、目の前の天使に対する嫌悪感はそこまでのものでもなかったのだ。)
ヘェ、じゃあその好奇心のせいで半分堕天したわけだ。
地獄まで真っ逆さまじゃなくてよかったな。
…そりゃあ悪魔にホイホイ近付いてくるようなヤツ、好奇心旺盛と言わなくてなんて言うんだ。
(好奇心に勝てず自分から望んで、天界から地上に来たということは、半分堕天したようなものじゃないかと言ってのける。
地上で止まれてよかった、もっといろいろなものに興味を持って神の言うことや自分の置かれている場所に疑問を持つようになれば、簡単に地獄まで堕ちて行くのだから。
この天使が好奇心旺盛なのは数言を交わしただけでわかることだと肩をすくめて見せた。)
おっと、それは失礼。
( 優しいは悪口だ、と言われれば、そうなのかと言わんばかりに口元を手で隠して謝罪をする。そんなつもりはもちろん無かったが、確かに、言われてみれば悪魔からすると対して嬉しい言葉では無いのか、と納得する。
そして、続けられる言葉に 「 なら、それほど警戒されていないってことですね 」なんてポジティブな解釈をとる。相手からすれば、力を使うまでもなくどうでもいい存在なのだと言うことだろうが…やはり、この天使は能天気らしい。
そして、地上に来たことを半分堕天した、と表現されると、そのような言い方もあるのか、なんて妙に嬉しそうな顔をする。)
地獄に行くつもりは勿論無いですけど…
嫌なことをしているよりは、好きなことをしたいですから。
( 続けて、確かに言う通りだ、なんて笑いながら立ち上がる。公園で想い想いに過ごす人々をみて、それこそ好奇心のような、憧れのような、そんな眼差しを向けながら優しく微笑む。
相手は、半分堕天したも同然だと口にしたが、結果的にそうであれ、やりたいことが出来るのだから悔いはない。
まぁしかし、嫌いなことよりも好きなことを…と言っている手前、自分の好奇心に相手をこれ以上嫌々付き合わせる訳にも行かず、正直名残惜しいのだが、「 …お邪魔してすみませんでした。悪魔さん。」なんて言って再度相手に顔を向けると会釈をした。 )
そりゃあ良い、欲に忠実なヤツは嫌いじゃない。
(そのポジティブさに皮肉を言うのも面倒になって適当な返事をしていると、嬉しそうな笑顔を見せたので今度はなんだと訝しむような目を向けた。
そして「半分堕天してる」と言ったことを喜んでいるのだと知って、つくづく変な天使だと眉根を寄せながらお気楽な天使の姿を見るのだった。
満足したのか立ち上がり、律儀に会釈と挨拶までしてくる相手を見上げて「…じゃあな、天使様。」と返す。
天使に抱く、偉そうで上から目線なイメージから「天使様」と考えなしに口にしたのだが、これがいまだに続いている呼び名であることはまた別の話…。
天使が思いのほか近くにいるということを知っても、悪魔の行動はこれといって変わらなかった。
結局この公園は適当に人間を誘惑するのにうってつけだったし、買い物をしたり店に入ったりするのも近所の店なのだから。
週末の午後、悪魔は基本的にいつもの公園の同じベンチに座っている。カップルを誘惑するのに最適だからだ。____ただ、夏ともなるとそうはいかない。木陰のないベンチからは人がいなくなり、噴水の方に人は流れていく。
その上黒い服に身を固めているものだから、太陽の熱を吸収して暑くてたまらない。
少しその場所にいて、それからいよいよ我慢ならないと立ち上がった。このままじゃいくら悪魔とはいえ干からびてしまう。
人間の体を維持するためには水が必要だ。どこか店にでも入ろうと思ったのだ。)
( _例え日差しが照りつけようとも、天気さえよければ視察はかかせない。街の人々の様子、店の様子。全てが毎日新鮮で、仕事を行いながら日々を過ごしていく。
何度か、悪魔と出会った公園の傍まで行くことはあったが、少し遠慮して足を踏み入れることは無かった。仲良くなりたいという本心は変わっていないが、相手は話さえしてくれたが、天使のことをよく思っていないのを知っていて付きまとうのは気が引けたのだ。あの日も結局、迷惑をかけたな、とひたすらに反省してしまった。
そんな初対面から数日、この日も朝から出かけ、街の中を散歩していたが、少し涼みたくなって近くの喫茶店へと立ち入った。
基本服装が白いため清々しく見えるが、やはり幾らか汗はかく。窓際の席を好んで選べば、冷たいアイスティーをにこやかに店員へ注文し、そのまま店の前を行く人々を頬杖着いて観察していた。)
……….。
( すると、店の前を真っ黒な服に身を包んだ人物が通り過ぎるのをみて思わず背筋を伸ばした。あれは、きっと彼だろう。やはり、近くに住んでいるのだろうか…。気になるが、ここは静かに席に座ったまま、店員が運んできたアイスティーを受け取って、流れる水滴に視線を落とした。 )
(近くにあった喫茶店に逃げ込むように入り、少しでも涼しい場所を求めて店の奥の窓際の席へと向かう。
するとやけに白い姿が目に入り、それが少し前に公園で出会ったあの能天気な天使だと気が付くと微妙な表情を見せたものの、相手の隣の窓際の席に座りアイスコーヒーを注文した。)
……よお、奇遇だな。
何て言ったっけな…デーモンじゃなくて。
(暑さでそれどころではなく、前回ほどの嫌悪感は感じられない。相変わらず真っ白な服を着ているので、好奇心に負けて堕天するようなことにはまだなっていないようだ。
自己紹介をされた記憶はあるのだが、音を思い出そうとすると自分たち側の名前しか出てこず、店員が先に持ってきた水をひと息で飲み干した。)
……んッ、….。
…レイモンドですよ。
( そのまま再び、アイスティーを一口飲んで外に視線を向けていると、ふと、声を掛けられ其方へ振り向いた。すると、先程の彼が店内に入ってきていたらしい…、それ以前に、向こうから声を掛けられるとは思っていなかったようで、一間、瞬きを繰り返したまま固まってしまった。
だが、名を間違えられれば、途端に飲み込もうとしていたアイスティーでむせそうになり、それをなんとか制してはゆっくりと訂正した。)
随分とお疲れのようですね…。
あ、これもよければどうぞ。
( 改めて隣に腰を下ろした相手を見れば、暑さにやられてしまったのか汗をかいて疲労困憊といったような様子であった。そんな相手に心配そうに声を掛け、水を一気に飲み干したのを見ると、口の付けられていない自分の水を相手の方へと寄せた。
その直後、またお節介をしてしまったかと心配になるが、突き返されたらそれはそれで此方が飲もうと考える。)
あぁ、それだ。レイモンド。
…響きはデーモンの方がいいと思うけどな
(この前は自分からヘラヘラと話しかけてきたくせに、今日は調子が違うのか、どこか困惑したような驚いたような顔をして見つめてくる。
名前を聞くとそうだったと頷きながらもう一度名前を口にして少し首を捻る。音の響きとしてはデーモンの方がずっといい。)
…地上の暑さは地獄的だ。いや、地獄でもここまでじゃないな。
地球がどうにかなってるんだ、昔はこんなんじゃなかった。
(差し出された水をありがたく頂くと半分ほど飲んでテーブルに置く。前会った時に比べてかなり饒舌で、あれほど話しかけられるのを嫌がっていたのに、今日は自分からペラペラ喋り始める。
機嫌がいいと言うよりは、この異常な天候について誰かに吐き出したくてたまらなかったという様子。
もっと昔はここまでじゃなかったと、聞く人が聞けば老人のような言い方。ようやく運ばれてきたアイスコーヒーのストローをくわえながら不満を垂れた。)
( 名を思い出して頷く相手を見ると、なんだか可笑しくてフフッと笑ってしまう。最初に話した時に比べると、随分と相手の方から口を開いてくれる。
差し出した水がそのまま受け入れられれば、少し安堵したように、そのまま暑さに不満を垂れる相手の話をにこやかに聞いている。相槌を打つように頷いては、アイスティーをもう一口飲み、なんだか若者に物申す老人のようで再度フフと笑みを零した。)
確かに、気温の変動が大きいですよね。
僕も、散歩から避暑しにここへ来たし……
ところで、もう地上生活は長いんですか?
………えっと…、…。
( 暑さへ同意を示すように上記を述べれば、先程の老人紛いな発言に釣られたように、相手がどのくらい地上にいるのか質問をする。その際相手の名を口にしようとするが、その時に初めて、まだ相手の名を知らないことに気付き、ゆく宛の失った言葉に、一気に歯切れが悪くなって視線が泳ぐ。教えてくれるか定かではないが「 あの、お名前は? 」と今更ながら恥ずかしそうに問うのだった。 )
こっちで暮らすようになったのは割と最近だが、昔からちょくちょく地上には来てた。
…ベリアルだ。
(地上で暮らすようになったのはここ数年のことだったが、昔から地上での仕事が多く来ることも多かったため、今より昔の地上のこともよく知っていた。
名前を聞かれ、天使に教えてもいいものかと少し悩んだものの名前を答える。
失礼ながら以前相手が自分で言っていたように、警戒するほどの天使ではないだろうと認識してのこと。
このときは相手の雰囲気から、上位の天使だなどとは思ってもみなかったのだ。上位の天使は全員そろいもそろって偉そうなヤツだと思っていたからだった。
少し涼しくなって落ち着いてくると、先ほどのようには喋らなくなったものの席を移動することはなく、ストローを噛みながら冷たいコーヒーを喉に流し込んだ。)
( 相手になんて思われていようと、とにかく、名乗ってくれた相手をみて、途端に顔を明るくさせると「 ベリアルさん 」なんて、敬称もこめて笑顔で復唱する。通常なら名乗り合えない相手だからというのもあるが、そもそも、地上では様々なリスクを避けるために、人間とは特別親しくはなれない。それ故、こうやって喫茶店で並んで座る相手もいなかったものだから尚更嬉しいようだった。
まぁ、悪魔と親しくする方が身分的にリスクは高いが、その事は本人も充分承知の上らしい。)
そうだったんですね。
僕も、暮らし始めたのは最近ですけど…立場上内部の仕事が多くて。正真正銘、地上に来たのは、今回の派遣が初めてです。
……後輩に猛反対されたんですけど、どうしても来たくて
( 相手の話へ興味深そうに再度頷き合図を打てば、なら、少し先輩ですね、なんて目を細めて笑いながら呟いた。
どちらかといえば、地上への派遣を命じる方で地位は安定していたし、不便な事など何一つ無かったが…やはり報告を聞くだけじゃなく、自分自身この目で人間と接して仕事がしたかった。自覚はなかったが、もしかして自分は、なかなかに熱血的な仕事好きなのかもしれない。
_いつか地上で一悶着あることも今は知らないまま、ある後輩に地上行きを反対された事を思い出せば苦笑いをする。それもつい最近のことだったが。 )
ベリアルでいい。かしこまったのは苦手だ。
(嬉しそうに名前を復唱するのを聞いていたものの、さん付けで呼ばれたことがあまりないため落ち着かない。
天使に親しげに名前を呼ばれるのも考えものだが、かしこまった呼び方のむず痒さに比べればいいものだと、ベリアルでいいと言っておく。)
……待て、もしかしてお前、箱入り天使か?
(地上に来たかったなら来られてよかったな、と答えようとしたのだが、立場上内部の仕事が多かったという言葉が引っかかって眉根を寄せる。
話を聞く限り、無理を言って地上に降りてきたらしい。もしかするとこいつは、下級の天使だから警戒心やら何やらがないんじゃなく、上位の天使で天界から出たことがなかったからなのか。
箱入り天使、なんて言葉があるかどうかは知らないが、上位の天使だとしたら気軽に話しているのもまずいのでは、と思えて再びその顔に警戒心が舞い戻る。
力があるならなおさら、無知を演じているだけの可能性もある。今にも「騙されたな、卑しい悪魔め!」などと豹変するかもしれないではないか。
天使に対する警戒心はかなり高いようで、グラスの中で氷が音を立てたもののじっと相手を見つめていた。)
あぁ、そうか…分かったよ、ベリアル。
……箱入り、かは分からないけれど、上での仕事は長いよ。
( 敬称はいらないと言われれば、それに了承したように笑顔でもう一度相手の名を呼んだ。そして、名は呼び捨てなのに語尾が畏まっていても可笑しいかな、と感じれば、未だ遠慮がちではあるが、少しフランクになったようで。
そして、“ 箱入り天使 ”と聞けば首を傾げ、とにかく天界での仕事歴なら長いと説明をしておく。)
…あ、もしかして、また警戒させちゃったかな?
隠してる気は無かったんだけど。
( 眉根を寄せて此方をじっと見つめる相手を見ると、どうやら此方への不信感をまた募らせてしまったらしい。
天使も悪魔も、地位の高い上級になればなるほど力は強くなるし、警戒するのは当たり前だ。自分の地位に至っては、問われていない分はっきりと言っていなかっただけなのだが、話すタイミングを間違えたようだ。
少しばかり相手が心を許してくれていそうだったのに、と残念そうにしながらも、困ったように小さく笑い、残りのアイスティーを飲み干した。)
俺の経験上、天使は油断ならないからな。
…まぁでも、せっかく念願叶って地上に来れたんだ。楽しむといい。ホームシックにはならないようにな。
(地位が高いほどに悪魔への態度も横柄になっていくのかと思っていたが、そういうわけでもないようだ。急に豹変する様子もないし、何かを隠し持って好機を伺ってるわけでもなさそうだと思えば、ようやく警戒を緩めたようでアイスコーヒーを音を立てて吸った。
天界である程度の地位についていたのに望んで地上に来たというなら、さぞ楽しい日々だろう。
天使好みのものがあるかはさっぱりわからないが、人や店、食事、場所、地上は天界とも地獄とも違うおもしろい場所であることは確か。
唯一困ることといえば、話し相手がいないことくらいだ。ただ逆を取れば、だから誘惑にもせいが出る。
寂しくなって天界に帰りたくなるかもしれないなと、からかうような口調で言うと、天使の顔を見た。)
……僕の周りも、悪魔嫌いが多かったなぁ。
行いが正反対なのだとしても、どちらもやりたいことをやったり、仕事をしているだけなのに。
( 経験上、と語る相手の顔をみれば、再度窓の外に目をやり、道行く人々を眺める。天使は皆、悪魔のことを下衆で下品だとか見下すが、そんなら周りに自分は愛想笑いをするだけだった。
善と悪に分けられてしまえば、それは確かに善が清く美しく聞こえる事だろう。それに、悪魔というのは一度堕天し天界から追い出されてしまった身、此方が同情したり分かってやれる部分も少ない。
自分としては、勿論悪魔の行いが良いとは思えないが、それでも、だからといって悪魔の全てを否定する必要がどこにあるのか、自分にはよく分かっていなかった。)
フフッ、その心配はご無用だよ。
でも、地上の隅から隅まで堪能出来れば、帰りたくなるかもしれないね。
( からかうように言葉を続ける相手に、もう一度視線を戻せば、にっこりと微笑んで、ホームシックの心配はないかな、と笑った。念願叶ってせっかく来れたのだし、確かに、こうして誰かと話して居られるのならそれに越したことはないが…今も毎日、朝から出かけて言っては随分と楽しんでいる。
地上の全てを体験し、飽きるほど過ごしたのであれば、もしかしたらいつか帰りたくなるかもしれないが…それも随分とあとの事だろう。 )
だろうな、俺だってできることならああいう連中とは顔をを合わせたくない。
(悪魔嫌いが多かったと聞けば当然だとばかりに顔をしかめ、自分たち悪魔を目の敵にしているような天使とは自分も顔を合わせたくないと言った。相手のように危害を加えてこないならまだいいが。
地獄にいるよりは地上の方が天使との接触が増えるのは仕方ないと思っていた。しかし相手が派遣されて来たことによって、嫌なな天使に出会う確率も低くなるのではないかと思うと、それは良いものだ。)
なら地上を存分に楽しめよ。地上にいるうちにもっと下に堕ちたくなったら手伝ってやる。
言っとくが俺の仕事には手を出すなよ。
(そう言うなら存分に地上を楽しんで、もしその途中でさらに好奇心が抑えきれなくなるようなら堕天を手伝うと、いかにも悪魔らしい笑みを浮かべた。
人間の中に身を置けば、この天使も天界のつまらなさに気付いてしまうかもしれない。
近くにいるとはいえ、悪魔の仕事には干渉してくるなと強く伝えておこう。)
( 相手の言葉に、相当天使を嫌っているなぁ、なんて困ったように笑う。といっても、聞いている限り悪魔のことを軽蔑し、自分達の地位を確立するような天使達が嫌いとみえる。それでいえば、此方に対する警戒は少なからず薄まったのかな、と考えると少し安心したようだ。)
うーん…その予定も特にないので、お断りさせて頂くよ。
( そして、再び堕天を仄めかすような口ぶりの相手に、せっかくだけど、なんて笑いながら遠慮するのだった。正直いえば、自分の好奇心や探究心の末に堕天してしまうようなら、それはもう自分の性分で仕方のない事だと思える。ここまで開き直っているものだから、天使と悪魔という境に拘りがないのかもしれない。と改めて自分自身で納得する。
まぁしかし、だからといって今は天使を辞める気もなければ、堕とされる気もない訳で。
“ 仕事には手を出すな ”と続けられれば、それに対しても相も変わらず笑顔で勿論だと返答した。)
僕の仕事上…結果的に妨げてしまうことにはなっても
予め邪魔しよう、阻止しよう、なんて思ってはいないよ。
そりゃいい心がけだ。せいぜい地上での善行に精を出せ。
俺はそろそろ帰るぜ、夏の昼間は出かけるもんじゃない。
(まともな答えにつまらんとばかりに肩をすくめて見せると、地上で人間への導きとやらに精を出せと人ごとな風に言ってズズズ、と音を立ててコーヒーを飲み干した。
これほど近くにいるならまた仕事中に会うこともあるだろうが、仕事の邪魔をしないなら別にいいと言って席を立つ。
夏の昼間は外に出るものじゃない、日が沈んで涼しくなりはじめるころまでは家にいるのが最適だとぶつくさ言いながら、相手に別れを告げるのだった。)
うん、お互いにね。
( 決して悪行を良しとする訳では無いが、お互いがそれぞれ自分の仕事に精を出そうと、つまらなさそうに肩をすくめる相手に対して尚、礼儀の一環として笑顔でそう返した。
そして、アイスコーヒーを飲み終え、ぶつくさと言いながらも席を立つ相手を見れば、「 あ ッ 」と言葉を洩らしながら思わずそっと服の裾を引いてしまって )
ベリアル。
…また、ご一緒してもいいかな?
( 座りながら相手の顔を見上げ、やや恐る恐るではあるものの、変わらない優しい笑顔でそう言葉を続ける。
確かに付近でお互い仕事をしていることは分かったが、相手の仕事にあからさまな妨害なんてする気はない。しかし、こうして見かけた際に隣に座ったり、ドリンクを飲んだり、たまに会話をしたり…、そうすれば、彼の言っていたようにもっと地上を楽しめるだろうと思ったのだ。
だが、いくら話をしてくれたからと言って、相手から疎まれている事にはきっと代わりはないし、自分もどれだけ馬鹿な事を言っているのかは分かっている。それ故に、あくまで相手に尋ねるように首を傾げた。)
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