優等生 2021-11-19 09:43:36 |
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…これで白谷さんも共犯だね。( ごくり、と流し込んだそれが喉を通る音を聞けば、あっさりと彼女の身体を解放する。冷たい目を細め、綺麗に整った微笑みを作ると、逃がすつもりはないという意思を示すように人差し指を扉の鍵部に置いたまま、どこか誘惑めいた響きで尋ね ) このことは、ふたりだけの秘密にしててくれる?
(絶句した。目の前の彼が酒を嗜んでいたとは微塵も思っていなかったのだ。更には軽い脅しとともに共犯にされ、混乱のせいで何も言い返せずにいて。共犯にされた以上、二人だけの秘密にしておきたいのは山々だったが、どこか腑に落ちない箇所があり)
秘密って… 久我山さん。どうして私にわざわざこんなことを…?それにまだあなたも未成年ですよね?
…どうして? ( 肯定でも否定でもなく、返ってきたのは疑問文。その意図を上手く汲み取れずに質問に質問で返す形になるも、二度手間になるのも面倒くさくて、回答が返ってくるより先に自己解釈の返答を重ねる。笑みすら失せ、白けたような表情で溜め息混じりに零し ) 酒を飲むのにも、キスするのにも理由なんか無いだろ。
(相手の白けたような表情には優等生の面影は無く。どうやら鬱憤を晴らすために酒を飲んでいるわけでもなさそうだった。尋ねたいことは色々あったが、まずは部室から出る方法を考えようと決め。鍵を開けてもらうには相手を刺激しないようにと考え、わざと余裕ぶった口調を)
他の皆が今の久我山さんを見たら…何て言うでしょうね。
…なに?僕を脅す気? ( 予想と反する彼女の態度に、ぴくりと眉を動かす。彼女はどちらかと言えば大人しい方で、そして少なからず僕に好意を抱いているものだと思っていた。簡単に言うことを聞いてくれると踏んでいたが、どうやら違うらしい。面倒なことになったな、と頭の端で考える。さて、これからどうしようか )
私は証拠を持っていないので…。
(なので脅す気はありませんよ、と流すと忘れ物の存在を思い出して、机の端に置いてある教材を手に取り。見るからに隠し事が多そうな相手に向き直ると、話を切り出して。友達を待たせるわけにはいかないが、相手の方も鍵を開けてくれないだろう)
あの。私、そろそろ戻らないといけないのですが…。
ふうん…証拠、いる? ( 何が彼女の神経を逆撫でしたのかは定かではないが、嫌味の一つでも言ってみたくなったのだろう。先程の発言をそう処理すると、缶の中の最後の一口を呷って、底で小さく音を立てる程度になったそれを目の前でゆらゆらと揺らして見せる。彼女の発言に窓の外にちらりと目を遣れば、言葉とは裏腹に退く様子はなく ) ──うん。女の子だし、暗くなる前に帰らないと危ないよね。
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