匿名さん 2021-11-18 15:54:31 |
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だからそんな薄汚い野良犬みたいな格好してんのね。
( 己とは真逆の何をも敵にしませんとばかりの柔和な雰囲気と穏やかな笑みを見下ろしても尚嫌味は止まらず。それでもこのまま扉を閉めないのは単なる気紛れか。「部屋にある物に少しでも触れたらその場で消すわよ」物騒な発言をさらりと落としつつさっさと着いて来いとばかりに家の中へと入れば、真っ赤な炎を蓄える茶色の暖炉が目立つ所謂リビングルームが出迎える。続いてその奥、階段を上がった先には外観からは考えられない部屋数が三つ。その内の一番奥の扉を指さし「物置部屋だけど、雨風を凌げるだけマシでしょうに」今日相手が使える部屋を示して )
動きやすいのが一番なんで。
( 褒められていないことくらい承知の上。しかし無視されないだけ良い方だろう。好きの反対は無関心。放置されたらそのまま凍えるところだったのだから、ラッキーというもの。「はーい、わかりました」消す、だなんて言葉を耳にしても、尚恐怖は沸いてこなかった。扉を閉めて家の中へ。狭く思えた外観からは想像がつかないほど広く、思わず瞬きを数回。「有り難う御座います。助かります」軽く頭を下げた後、そっと部屋の扉を開く。物置とはよく言ったもので、確かに他の部屋よりは動ける範囲が狭い。とはいえ、このままさ迷い続けるのは遥かにまし。魔法の効果か埃っぽさも感じず、小さく頷いて。ふと思い出したことは初対面にしては図々しささえあるものの、生食は憚られて。控えめな声音にて問い掛け )
あ、そうだ。後でキッチン借りても良いですか?採ってきたきのこ、新鮮なうちに食べたくて。
( 部屋に到着するまでに返って来た全ての言葉は華麗に無視。相手が部屋の扉を開けた事で暫く空気の流れが留まっていた暗さを払拭した。魔法が掛かっているこの家の部屋、汚くなる事はないがそう言った氣は矢張り変わる。ぽつんと置かれた木製のシングルベッド息を吹き返したように見えた時、初対面とは思えない図々しい願いが落とされれば片手に持つ梶の杖をトン、と床に叩き付け。「寝床を強請ったかと思えば次は食事。流石ご立派な人間様ね。…まぁ、自分で作るだけいいわ」ペラペラとよく回る口で相変わらずの人間嫌いを発揮した後、それでも拒否はしないようでスタスタと階段を降りて行き、そこから右に曲がった小さめのキッチンスペースにて立ち止まり「余計な事はすんじゃないわよ」と念を押して )
( 返事がかえってこないことは特段嫌なことでもない。そもそも、初対面の己のことを受け入れてくれているというだけで特異な優しさが垣間見える。恐らくずっと使われていないだろうものも新品同様綺麗なまま。使うことに対して申し訳なさすら沸いてくるようだった。杖が床をつく音に少しだけ驚く。静かな室内では、小さな音でもよく響くのだ。沈黙を割いたのは、肯定の色。「何も食べなかったらさすがにお腹すきますから。有り難う御座います」当然のように織り混ぜられた嫌味には反応せず、やんわりとした言葉にて答え。口が悪いだけで根は優しい魔法使いなんだろう、なんて勝手に思いながら、そんなことは一切態度に出さず。きのこの入った袋を手についていった先はキッチン。一先ず焼くことができれば良い。味付けは塩胡椒だけで事足りる。「勿論。フライパンだけお借りしますね」ぐうと鳴った腹の虫が、ほぼ何も食べていなかったゆえの空腹を思い出させる。言葉少なにフライパンを振り、きのこを焼いたり炒めたりとしながら最低限食べられるものを生成し )
( 読めない相手だと思う。魔法を見せてくれでも、教えてくれでも、その他それに纏わる事は何も言わない。キッチンに響いた腹の虫が鳴る音を聞き人間は簡単に腹が減ると浮かんだ考えを打ち消すように腕を組み、壁に背を預けその様子を見据える。キノコの焼ける香ばしい匂いが充満してきた頃、す、と壁から背を離しリビングルームへと戻れば暖炉の前にあるアンティークなロッキングチェアに深く腰掛けて。相手の姿を確認したならば顔だけをそちらに向け「これからはキノコが食べたいのなら此処じゃない森に行く事ね。人間がこんな奥深くまで入って来て、狼に食い殺されても文句は言えねェのよ」一つの忠告を。後は何も言わず顔を前に戻し静かに瞳を閉じて )
( 相手が見ていることは気に留めず、平然と作業を進めて。やがて出来上がってリビングルームへと戻ったとき、聞こえた言葉。心配してくれているのだろう、静かな忠告。しかしそれは、己にとっては然程重要でもなかった。「そのときはそのときですよ。狼の胃袋に収まることで狼が空腹を満たせるなら、それはそれで本望なんで」きのこを咀嚼した後、何でもないように告げる。その言葉には緩さはあれど、温度は感じられない程に冷淡で。きのこを食べながら、うっとりと幸せそうな笑みを浮かべる。「やっぱりきのこって美味しいですね。お腹すいてたんで、尚更美味しく感じるのかも」軽く口をついて出た言葉は、忠告に答えたこと自体がなかったかのように普通だった )
__何アンタ、自殺願望でもあんの?
( 狼と出会した事が無い人間がその恐怖を知らないからこそ言える危機感のなさから来る油断とは違う、例えるなら“歪んだ他者愛”。それも獣相手に。そうして垣間見える“本気”。す、と眉間に皺を寄せると同時に再び双眸開けばやや低くなった声色で以てそう問い掛ける。狼に食われてもいいという相手と、キノコを美味しそうに頬張る相手。それはまるで陰と陽。見た所まだ十代後半位の子供、それっぽっちしか生きていない子供が何を経験すればそんな表情を浮かべ、そんな発言をするようになるのか、小さな小さな興味が確かに湧き出れば「じゃあ今此処で、アタシがアンタをどう扱ったって文句は無いのかしら?」本気か冗談かわからぬ口調と共にゆるく首を擡げて )
いえ。そういうわけではないですが……俺が役に立てるのなんて、そのくらいですから。
( 幾らか微妙な表情を視線で捉えるも、特に動じる様子もなく淡々と答える。本当の存在意義なんて見出せない。それならわかりやすく他者のために命を賭す方がよっぽど良い。価値を感じられないだけで、何事もないのならわざわざ命を無駄にしたいとは思わないのだから中途半端。「たとえば俺を消し去ることで、貴方が幸福だとか、安堵するのならば消しても構いませんよ。労働を強いるのも甘んじて受け入れます」当然とばかりに、考える時間を要さずに。微笑みを湛えながら、さらりと告げる。食べ終えて水筒のお茶で喉を潤し、真っ直ぐと見詰めて )
貴方はどうしたいですか?勿論先程の発言はすべて厳守しますけれど……ああ、静かな方が良ければちゃんと黙りますし。仰せのままに。
みあげた自己犠牲精神ね。八十やそこらしか生きないって言うのに。
( 全く以て理解出来ない。理解しようとも思わないが人間とは本当に謎な生き物だ。やれやれと肩を竦めると同時に窓の外で激しく叩きつけるような雨音が聞こえてくれば、それに伴い薄暗くなって来た部屋の壁に掛かるランプに杖先を向け。魔法の力は便利なもの。距離のあるそこからいとも簡単に明かりを灯すと続けて紡がれた言葉にハン、と鼻で笑い。「人間の餓鬼が生意気な事言ってんじゃないわよ。アタシの要望はただ一つ、アンタがさっさとこの家から出て行く事。欲求が満たされたんなら部屋に戻っておネンネする事ね」まだ眠る時間には到底早い、所謂夕方過ぎの時刻なのだがそう突き放すのは従来の性格か、興味が薄れたからか )
多分俺が特殊なんですよ。その日のご飯が美味しければそれで良いというか……危なかった。貴方がいなかったら今頃俺は濡れ鼠だった。
( からりと軽い笑みを浮かべつつ、ゆったりとした口調で持論を話す。己の場合は、やりがいが他者の存在によって出現する。やりたいことは他人のためになること。偽善者じみたこの心は、たとえ相手が同じ人間であろうと理解されないだろう。雨音に窓へと視線を向けては、腕を組んで戯けてみせる。「うわ、凄い……便利ですね、それ」スイッチを使わずとも、いとも簡単にほわりと明かりが灯る部屋。魔法なんて目にしたのは当然初めてで、視線を奪われた。「ですよね、わかっていますよ。明日の早朝には出ていきますから」嫌味を物ともせず頷くと、出ていく旨を告げて。居候させて貰えたらどんなに楽だろうか。我が儘は口から出ることなく、会釈へと変わって )
…アンタ、ホームレスか何かなの?
( 極一般的な暮らしをしている者からは恐らくその単語は出て来ない。加えてキノコで腹を満たそうなんていう考えも。だとすればその日暮らしを上手く出来たら良しとする移住地を持たぬ者か。濡れ鼠云々は全てスルーする。相手が雨に濡れ更には風邪をひいて寝込んだって全くもって関係無いのだから。魔法によってリビングが明るさを取り戻した事で窓ガラスを叩く雨粒がより鮮明に光って見えるそれを、次は杖の先をそちらに向ける事でカーテンを閉めて。それにしても物分りの良い事。そうして強がりを繰り返す事。魔法で心を読まなくたって勘づいてしまう。「そんなペラッペラの言葉なんかじゃなくて、言いたい事は他にあるんじゃないの?」会釈をした相手を射抜くような瞳で真っ直ぐに見やれば、何の気紛れか、そんな言葉を口にして )
まあ、そうですね。住所のないアドレスホッパーなんで。
( 至極当然のようにこくりと頷く。隠すようなことでもないし、隠していたらそれはそれで無駄な心配を生むことだろう。緩い笑みを浮かべて社交辞令のような会話をしていればそれで終わり。油断していたところで、此方を真っ直ぐ貫くような視線に捕らわれる。誤魔化すことは許されないと、瞬間的に察した。「これまで転々としていたんですが、その何処よりも心地良かった……置いて頂けたらどんなに良いだろうって、思ってしまいました」叶わないだろう我が儘。手を小さく握り締め、不安を柔らかな笑みで覆い隠そうか。一蹴されたならば、そのまま物置部屋となっている一室へ戻るつもりで )
ハッ、こんな得体の知れない魔法使いに嫌味言われっぱなしの場所が心地良いって?ロクな部屋も与えられなかったってのに。
( 紡がれた本心は確かに本心とわかる。だが確かな驚愕があったのも事実。一瞬ぱちくりと瞬きするもすぐ様馬鹿にするかのように鼻で笑い。相手と出会ってからまだ数時間という短い時間しか経ってはいないがこれっぽっちも親切に接した記憶は無いというのに。本人は気付いているのか、固く握り締められた拳にちらりと視線を向けて深い溜息を一つ落とす。こんな人間の子供に焼きが回った。「__此処に居たいんだったら自分の事は全部きちんと自分でする事。アタシの生活の邪魔をしないで頂戴。それから、その気味の悪い感情の偽りと敬語もやめて。アタシは人形やロボットに部屋を貸し与える訳じゃないの」ツラツラと条件と呼べるそれらをあげていく。最後にさぁどうするとばかりに首を擡げては、その答えを待って )
まあ、確かに。でも、最初に追い返されてたら今頃どうなっていたことか。だから、有り難くて。
( 親切にしていない。言われてみれば、その言葉の方が正しいのかもしれない。しかし、己にとっては違う。少しなりとも受け入れてくれたというだけで、それはもう優しさなのだから。「!……わかった。勿論自分の事はちゃんとやるし、できるだけ迷惑は掛けないようにする」出されたそれらに瞬きしては、すぐにこくりと頷く。友人以外に敬語でない砕けた口調で話すのは、かなり久し振りだった。「あ、まだ名乗ってなかった。俺、シャノン・ガルシア。適当に呼んで」互いに知っていることといえば、まだほぼないに等しい。これから知っていけば良いのだと期待に胸を膨らませつつ、握手求めるように手を差し出して )
アンタ図太そうだし、アタシに追い出されたってそれはそれで生きてるでしょうよ。
( この家に招く事をしなければ相手の辿る今日は頭から雨粒を滴らせ、寒さに体を震わせ、それでも洞窟くらいは見付けられるだろうか。一向に止む気配を見せない雨が打ち付ける窓へと視線を向けつつ適当な言葉を返せば、続いて視界の端に映る此方に伸びる手をちらりと見やり。「ノアール」簡潔に名前だけを述べる。“よろしく”する気は無いのだから握手をする必要も無い。右手の人差し指を向けその指を下に下げる事で魔法発動。相手の差し出された手を下げたのならば「バスルームとキッチンも二階に作るわ。アンタ、お金は?」少しの移住地の区切りを。あぁ、これから考えなくてはいけない事が増えると気紛れで承諾した相手との共同生活を思い浮かべ僅かに眉間に皺を寄せて )
そうかなあ。もしだめだったらどうしたんだろう。
( 肩を落として帰ったのなら、歩き疲れて野宿をしただろうか。傘なんて持っていなくて、濡れで体温が奪われているだけだったかもしれない。だからこそ、幸運だったといえるだろう。「ノアールさん。それとも、さんづけはしない方が良いかな」いとも簡単に下げられた手。魔法の力はやはり凄い、されるがまま、不可抗力だった。「え、そんな簡単に増設を……?色々バイトしてるから、多少は。家賃払うのは厳しいかなー……なんて」リュックから取り出した財布の中身は、紙幣が数枚と硬貨が少々。その日暮らしの身、お世辞にもお金持ちとは言えない。眉を下げつつ言い辛そうに話せば、ちらりとそちらの様子を窺って )
呼び方なんて何だっていいわ。
( ロッキングチェアから立ち上がり黒のローブの裾を翻す。そのまま適当な返事をしつつ階段を上がり二階へと来ればその終わりで立ち止まり。「__…、」片膝をついた状態で片手を廊下に宛がえば無詠唱呪文の発動。途端に辺りの壁や床がぐにゃぐにゃと歪みそう時間かからずして相手に与えた部屋の横に扉を持たないキッチンルーム、その横に真っ白の猫足バスタブとシャワーを蓄えたバスルームが出来上がり。「シャンプーなんかは自分で好きなの調達して頂戴。後何か望みは?」壁に背を預け腕を組み、この際だから纏めてやってしまおうとの考えから要望を問うて )
そっか……ノアールさん。
( 実年齢は定かではないが、明らかに己よりも歳上だろう。さすがに最初から呼び捨てにするのには抵抗感をおぼえるため、嫌でないのなら取り敢えずはさんづけにしておこうと。何となくついていった先、階段の途中でぴたりと止まる。本当に時間を掛けずして増築されてしまった。魔法を見るのはもう初めてでもないのに、こうして目の当たりにするとやはり驚きが大きい。「わかった……え、寧ろ充分すぎるくらいだよ。衣食住が揃えば申し分ないし」更に何かを望むという選択肢すら浮かばず、瞬きをひとつ。今の状態で既に完璧ともいえるように思えて、首を傾けてはそのままを口にして )
このアタシの家に居て“不自由”なんて単語出されたらたまったモンじゃないからね。
( 名前の後に付いた敬称は無視。己が好きなように呼べと言ったのだから。ふん、と鼻を鳴らし、驚きに目を丸くし控え目なまでに欲望を口にしない相手に高圧的な態度をとっては「人間のくせに欲がないのねぇ。」なんて言って退ける始末。そのまま階段をおりて再びリビングへと戻る最中で「後は好きに過ごして頂戴。」と片手を閃かせてロッキングチェアへとその体を預け直して )
あはは、確かに。もう住ませて貰えるだけで嬉しいから。
( 最初怖いと思ったわけではなかったが、高圧的な態度にもすっかり慣れてきて。自然と浮かんだへらりと緩やかな笑みは、取り繕うものではなく無意識のそれで。「わかった。ありがと」階段を降りる背を見送り、さてどうしようか。出来上がったばかりの空間を見て回ろうか。キッチンルームは汚れひとつなくぴかぴかで、使うのが勿体無く感じてしまうほど。バスタブは足を伸ばしても充分な広さ。これだけのものをあの時間で作ってしまうのだから、本当に凄い。「うわあ、すご……」歩き回りながら、ぽつりと感嘆の声が漏れて )
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