鍵 2021-11-12 01:02:10 |
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銀さん、こんにちは。あの…、ねおあーむすとろんぐ何とかって、何ですか?( 積もった雪がきらきらと目に眩しい中、バイト先の茶屋で大量に貰った蜜柑をお裾分けしようと万事屋を目指し歩いていると、通りに面した公園から雪にはしゃぐ聞き慣れた声を耳にして。顔をそちらに向け3人の姿をみとめると同時に、神楽ちゃん新八君と視線が合い、にっこりと笑顔を浮かべては片手を上げて手を振って。会話ができる距離まで歩みを進めながら、皆で雪遊びなんて本当に仲が良いなあと内心ほのぼのしたのも束の間、園内中央のよく分からないけれど完成度の高い雪像が目に留まれば、ぎょっと息を呑んで。かぶき町で生活している身には、それが明らかに青少年の精神衛生上あまりよろしくない形をしていることは一目瞭然。手前にいた2人と暫く言葉を交わした後、両腕で蜜柑の入った風呂敷を大事に抱え足元に注意しながらゆっくりと、雪と同じ銀色の髪をした彼の元へと向かっては、挨拶もそこそこに恥ずかしそうに眉を歪めながら疑問を投げ掛け )
え"ッ……どうしても知りたいってんなら、銀さんが特別にあったかい部屋で教えてやっヘブァ!?( 寒さ故にマフラーに顔を埋め眉を寄せ、身体を震わせながら耐えていると耳に入る声がいつの間にか増えており。また別のガキが来たか、どうかそのまま神楽の相手をしてやってくれ。そんな事を思いながらもちらと顔をあげて声の方を見ればそこにいたのは見知った彼女で、いつの間にと驚きでぴしりと固まって。そのまま彼女が此方へ向かい話かけてくれば、なんともないようにゆっくりと姿勢を正しながらも、そのまま彼女の次の言葉に再び固まりながら。しかし恥ずかしそうな彼女を見ればもしや分かってて聞いてるのか?と。その仕草にまでぐっとくれば立ち上がり、キリリといつかのように表情を作り彼女の手を取ろうとするも、故意か偶然か此方に飛んできた雪玉に顔面を殴られそのまま無様に蹲り。耳に入ってくる2人の笑い声に青筋たてて地面の雪を握りながら )
!! 大丈夫ですか!銀さん、怪我は…( 立ち上がった彼を依然下がり眉で見上げていた時、突然目の前で白い何かがきらきらと勢い良く弾け。次の瞬間、彼の姿が視界から消え、あまりに突然の出来事に目を見開いたままただただ呆然と立ち尽くし。けれどすぐに状況を理解すると雪の上、彼のすぐ側に両膝をつき、雪像を目にした時より十数倍慌てた様子で声を掛け。返答を待つ間、自宅からここまで歩いて来たおかげでぽかぽかと熱を帯びている手で、沸々と怒りを滲ませている彼の髪の毛や頬に付いている雪をそっと払いながら、その顔に傷などが無いかを確認しつつ心配そうに覗き込んで )
あんのクソガキッ……銀さんは大丈夫、強い男の子だから。でもちょっと心が痛いから先に帰ろう( 地面の雪を大きな拳で固く握り、けらけらと此方を笑っている奴らへ復讐を、と思った矢先。蹲った隣にかかる影と優しい手付きで其方へと顔を向けると、雪景色のせいもあるのだろうか、それとも自身への心配のせいか、普段より数倍増しできらきらと輝くような彼女がそこにおり。これがゲレンデ効果、いや惚れた弱み。思わず握りしめた雪をぼろりと零し、冷たいであろうその手を彼女の手に添えればそのまま暖かなその手をきゅっと握り。先程の続きかのようなキメ顔で言い放ち立ち上がれば、既に何か喚いている様子の2人の事は眼中に無く )
でも、いいんですか、2人を置いていって…( 触れた手の、体の芯まで冷え切ってしまっているようなその冷たさに一瞬驚くも、どうやら本当に怪我は無いようだし、彼の表情からは既に怒りが消えていることに気がついて、内心で深く安堵…をしたのも束の間。もとは蜜柑を届けに来たのだから、このまま一緒に彼の家に行けるのであればそれを断る理由は無いのだけれど、気掛かりなのは此方に向かって何やら賑やかに声を発している2人のこと。ついさっきまで一触即発の雰囲気だったとはいえ、せっかく3人で遊びに来ていたのだ、彼だけ抜けてしまっては寂しいのではないか、と。相手につられるように立ち上がり、両者の間で視線をあわあわと数回往復させてから、無意識で未だ繋いだままでいる手指に微かに力を込めつつ気遣わしげに問いかけて )
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