トラノコ 2021-10-09 01:38:13 |
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ゾロ
期待以上の美味い料理に俺は、食べさせてもらってる恥ずかしさも忘れるほど夢中になってメシを食ってた。俺が酒呑みてぇ時も何も言わねぇで手を止めるあいつに、本当に気が利くんだなァ、なんて思いながら酒片手にサンジを見つめる。今までの俺達からは誰も想像できねぇだろうが、そんな事はどうだっていい。こうやって少しでも進歩できたんだからよ。まぁ、でもこの状況がいつまで続くかなんて分かんねぇし、もしあいつの前に俺なんて相手にもなんねぇ程のあいつ好みの女が現れたらどうしようか、なんて不安になる事も多々ある。その時はその時だ、俺はあいつの負担になる事は一切しないつもりだ。だが、腹括って諦めるか、いっその事ぶった斬ってしまおうか。なんてバカみたいな考えをする自分に少し笑いそうになる。
目の前で幸せそうな顔をするこいつは何考えてんだろう。ちっとは俺の事考えてくれてんだろうなァ?もちろん。
…しかし、どうも俺はあいつの恥ずかしがる顔が好きみてぇで少しからかってみる
「あァ?どうせ後で脱ぐことになるんだからいいだろうがよ。それともなんだ、お前が脱がしてくれんのか?」
サンジ
最後のひと口をゾロの口に運び終えてそれが飲み込まれるまで見届けるとその口からとんでもなくこの甘いムードをぶち壊すほどの露骨なセリフが飛び出してくるものだから一瞬頭の中が真っ白になった。暫しの沈黙の後、遅れて言葉の意味を消化し始めた脳は予想されるこれからを否応なしに伝えてきてじわりと頬を染め「なっ、に、言って」などと拙いものしか喉から絞り出すことができなかったがタバコが緩んだ唇から外れ、軽くサンジの手の甲を炙ることにより、ぅあっつ!と叫びつつも少し調子を取り戻すことができた。落ちたタバコを拾って灰皿で潰してから頭を抱え、大きくため息をつく。
待て待て、キスはおろか手だって繋いだことないんだぞ。もしかしてこの筋肉マリモ、恋人との愛情表現はベッドの上でってことしかないのか!?いや、最終的にはそうだし、いきなりそういう展開もなくはねェが、おれ達の場合は飛躍しすぎてねェか?そんな考えがぐるぐる巡る。もちろん想像しなかったわけではない、いつかはと考えていたことだ。どちらが下にしろ今じゃない、最初こそ肝心なんだ、大事に…してぇから。ゆっくり顔を上げて困ったように目を逸らすと
「いや、まぁ…船の中とはいえデートなんだからよ。身だしなみ気にするだろってことだ
それに、順番……違ぇだろうがよ」
ゾロ
俺の言葉に対して頬を赤く染めるあいつの顔に大満足していると、あっつ!なんて言いやがるから、…ッおい!大丈夫か!?と声を掛け視線を移すとどうやら相当俺の言葉に動揺し、タバコを落としたらしい。まぁ、動揺するのも、仕方ねぇ事だ。もし、これが逆の立場だっとしたら、俺はこいつ以上に動揺しただろう。
だがよ、順番ってなんだ?俺はしたい時にしたい事をする。お互い好きなんだからよ、我慢しなきゃなんねぇって事はねぇだろ?まぁ、かと言って今すぐこいつとベッドで…ってなると多少は考える。やっぱりまだ早ぇのか、とか。
そんな事よりも俺はサンジどころか女ともそういう事をした事がねぇわけで。正直言って、自信はない。あいつの方が上手だったらそれはそれで俺の負けず嫌いがでそうだし、そのせいで喧嘩事になるのはごめんだ。…まっ、そういう事はまだまだ先の話だろうな。
まずは、目の前で困った顔をしてるコックをなんとかしねぇとな。
「へいへい、服着てくりゃあいいんだろ。照れ屋さん」
フッと笑い、頭を撫で服を取りにバーを出る。
サンジ
想いを通じ合わせて、デートをして、ドキドキしながら手を繋いでキスをして、そんな触れ合いを何度も繰り返してから夜の営みに望む。テンプレートのような恋人模様だけれど少しずつ距離を縮めている様はおれ達にピッタリだと思っている。だから、こんなにも奥手になっていて笑われてしまうかもしれなかったが大切にしたいというのは本気なのだ。くそ、笑うなら笑いやがれ。そう覚悟していたのに返ってきたのは嘲笑うものではなくあやすような、寄り添って同意してくれているような上手く表現できないが、そんな風で頭を撫でられて服を取りに行くのだろう。席を立って出ていった。
扉が閉まる音を聞いてから、はぁーーー………とこれまた長い息を吐きテーブルに突っ伏す。冷静に今日一日を思い出したら調子狂わされてテンパってんのはおれだけ、だ。アイツは顔色ひとつ変えやしねェ。「おればっか、かよ…クソ……」と小さく呟いて、先ほどゾロが触れた場所を確かめるように手を置き髪をぐしゃりと握る。自分一人だけが余裕がないようで悔しくて、寂しい。まだ距離があるとはいえ恋人におれを焼きつけて、心を揺れ動かしてほしいと思うのは重い…だろうか。もう一度小さく息をついて空になった皿をまとめて、コップに酒を継ぎ足してから自分も席を立ってキッチンに戻ると皿洗いを始めた
ゾロ
服を着てバーに戻ると、もうサンジの姿はない。少しだけ寂しい気持ちになり、キッチンに行くと皿洗いをしてるサンジに何故かホッとする。そして、サンジの持ってる皿を取る「…今日ぐらい俺にやらせろ。」心なしか、少し寂しそうな雰囲気を纏ってるあいつに、一度ちゃんと話し合わねぇとな、なんて思いながら皿を洗う。この船に乗ってる以上、二人きりになれる時間なんて限られてるわけで、かと言ってまだお互い、肝心なことが言えねぇしなかなか素直になれねぇ。まぁ、すぐにってわけじゃねぇけど、言いたい事やしたい事があるなら言ってほしいし、もちろん俺も言いたいし、したい事だって山のようにある。
ゆっくりでもいい、これからもっとお互いがお互いのことを理解し合って、一つでも不安な事が無くなればいい。そんな事を思ってるとすぐに終わってしまった皿洗い。
「お前ちゃんと寝れてんのか?今日は早く寝ろよ。」
サンジ
ゾロが戻ってくるまでそう時間はかからないだろうが時間を余すのもなんとなく落ち着かないので数枚だけの皿なのにぼんやり考え事をしながらやけにゆっくりじっくり洗っていたら、ひょいと横から洗っていた途中の皿を取り上げられた。近づいてくるブーツの音で戻ってきたらしいのはわかっていたが、てっきり酒盛りを再開するものだと思っていたから代わりに皿洗いを始める姿に言葉が出なかった。案外手際よく磨かれ、水切りカゴに洗われた皿が並べられているのを手を泡だらけにしたままで呆然と見つめる。すると、おもむろに睡眠の確認が飛んできたからハッとするも何でいきなりそんなことを?と首をかしげながらも隣で手を洗いながら答える
「え?あ、あぁ…まぁ、一日中寝腐れてるオメーよりは少ないと思うがちゃーんと寝れてるぜ?」
ゾロ
まだ寝たくないのか、それとも俺の余計なお世話なのか、あいつの言葉に考える。
まぁ、今日は色々してもらった事だし、まだ寝るにはちょっと早ぇかもな。そう思い 「なぁ、あの時みてぇに一緒に呑まねぇか?」その方があいつもぐっすり寝れるだろ。そして、グラスを持ってきて酒を注ぐ。あいつにしてはちょっときつい酒だが、これから先俺の相手をしてもらうわけだから、これぐらい呑んでもらわねぇと困る。それもだが、何よりあいつの酔った姿は見てて飽きねぇからな。
今日は本当に俺達の中で確実に進歩したよな、なんて思いながら、サンジの持ってるグラスを合わせ乾杯をする。
「今日は期待以上に楽しませてくれて、ありがとよ。」
そう言い、酒を一気に喉に流し込む。
サンジ
まったく話しが見えなかったが次は酒のお誘いときた。なんだ、おれを早く寝かせたいのか?いつもなら準備させるくせに自分から次々とセッティングされていく酒の席に腹の底がモヤモヤと重くなっていく感覚がした。なるほど、皿洗いを買って出たのもそうか、立ち尽くしたままでいると注がれた強めのアルコール。決定的だとさえ思えた。そう、この時は……サンジは冷静じゃなかった、冷静だったならばゾロが嘘で楽しかったなどと言うわけはないと、それはゾロの本心だと気がつけただろうに、恋は盲目…というのか。不安とかそういうのが募りすぎて”早くこれを終わらせたくて寝かせたがっている”という勘違いを引き起こすほどには微塵もゾロがわからなくて、感情が振り回されているのはおれだけで、愛されている自信がない。なんだよ、わからねェよ、お前にとっておれは…やっぱり気に食わねぇ仲間か?今までおれの一人相撲か?悔しくて泣いてしまいそうだったが注がれた酒を一気に喉に流し込む、強いアルコールが喉を焼いて胃までもが燃えるように熱い。コップをダンッ!と強く置いて「まてよ、ゾロ。」と低く呼び、溜まっていた言葉全てを吐き出した
「そりゃあテメェの本心か?
違ぇだろ、ほんとは早く終いにしちまいてェんだよな。だったらそう言えよ、なんならこんな関係もやめるか?好きなのはおれだけだもんな!悪かった、気づいてやれねェで」
ゾロ
何だか、腑に落ちねぇみたいな顔つきに気にはなっていたが、まさかこんな状況になるとは思ってなかった。どうやらこいつは勘違いしてるらしい。まぁ、俺も言葉が足りねぇだったり、悪い部分はあるが、この空気を壊してまで怒ることか?確かに早く寝ろって言ったのは俺だ、でもそれはあいつの事を思って言ったんだ。それに、あいつの被害者ヅラにも呆れたもんだ。俺がお前を弄んだ、とでも言いてぇのか?じゃあ、今まで俺が言ってきた言葉も全部あいつの中では冗談だったって、そう言いてぇのか?
…あァ、抑えようと思ったけど、考えれば考えるほど腹が立つ。俺が抑える事はねぇ、あいつが勝手に勘違いしてやがるだけだ。
こういう時に冷静になって、あいつをあやす事でもできればいいんだが、今の俺には到底無理な事だ。俺もまだまだガキだな。なんて思いながら、わざと冷たく言葉を放つ
「…てめぇ、なにキレてやがる。終わりにしたけりゃ勝手にしろ。」
言い終えると、顔も見ねぇで出て行く。
サンジ
頭に血が上りやすいというのは本当に厄介で強めの酒を一気に煽ったというのも良くなかった。口論した直後はそっちもその気なら知ったことか!という気持ちだったのに、ほとぼりが冷めてくるとやってくるのは後悔だ、またやっちまった。今度は笑えねェくらいのやつ。酒がそこまで強くないくせ強いアルコールをイッキだ、頭がクラクラしてきた。ゾロが不器用なことくらいわかってたはずだ、でもあるだろ。気持ちが欲しいってとき。平衡感覚が危うい。誘っておいてこのザマとはラブコックが聞いて呆れるぜ、もう口も聞いてくれないかもな。「ごめん…な」言うと、ふらりと体が傾き、手がコップを弾いて床に落ちると派手な音を立てて砕け散り、酔いつぶれて気絶するように床に倒れ込む。そして探すように僅かに手を伸ばし、うわ言で何度もゾロの名前を呼んでいた
ゾロ
勢いで出てきてしまったものの、自分の言った事に段々腹が立ち、壁にもたれ掛かる。よく考えろ、そもそもこうなった原因は俺じゃねぇか。呑めねぇあいつに強い酒まで呑ませて、好きにしろ、なんて都合良すぎんだろ。なんて情けねぇんだ俺は。あいつの事になるとどうも、考えが鈍る。今更後悔したって遅せぇよな、あいつもあの怒りようだ。俺の顔なんざ、見たくねぇはずだ。明日になりゃ、あいつも落ち着いてるはずだ、ちゃんと話さねぇと。
…今日のところは寝るとするか。そう思い離れようとすると、コップの割れるでけぇ音に嫌な予感が的中する。…あいつッ!!急いでキッチンに入ると、倒れてるサンジに駆け寄り、散らばってるガラスも関係なしに倒れてるサンジを抱きかかえ移動させる。怪我はしてねぇな。しかし、顔を真っ赤にして、手を伸ばし俺の名前を呼ぶあいつの顔が忘れられず、思わずニヤけそうになる。ったく、こんな時に何考えてんだ俺は。しっかりしろ。自分に言い聞かせ、強い酒を呑ませた事に酷く後悔をする。でも、俺をちょっとでも必要としてくれた事が嬉しくて、堪んねぇぐらい愛おしくなり、寝てる…ってかほぼ気絶してるサンジを強く抱き締める「…悪ぃな、サンジ。」そう言い頭を撫で、キッチンに向かい床に散らばってるコップを片付ける。
サンジ
夢心地のまま、体があっちぃし目を開けるのも億劫でぼんやりする意識の中で心地いい揺れと包まれているような安心感、なんとなく離れがたくて頭をその温もりに擦り寄せ、サンジはその居心地のよさに逆らわず、ゾロの声を聞いたような気がしながらまた意識を手放した。
次に意識を浮上させたのは、まだ夜中のうちで数十分間の気絶だったようだ。うーん…と唸りながら目を開けてぼんやり天井を見つめてからゆっくり自分の状況分析を始める。確か…ゾロと喧嘩別れして、アルコールでぶっ倒れて……あれ?おれこんな所で倒れたっけ、自分で移動したのか?それさえも曖昧だ。気だるさを感じながらも体を起こし、頭痛を覚える頭をおさえて床に視線を落としたまんまで自分が口走ったことを思い出し盛大に落ち込んでしまう。おれはとんでもなく取り返しのつかねぇこと言っちまったんだ、関係修復も難しいだろうし、更に悪くなるかもしれねぇ。自嘲気味に軽く鼻で笑って
「なに、してんだろうな…おれ。
別れたくなんかねぇよ、ゾロ……」
ゾロ
片付けが終わるとバーの椅子に腰掛ける。楽しく呑むはずが、まさかこんな事になるとはな。今日ぐらいあいつの傍に居て、一緒に寝てやりてぇけど、正直今の俺にはそんな事する資格がない。もう終わったことで、後悔してもしょうがねぇのは分かってる。あいつの事になると本当に俺は別人のような気がする。今だって、あいつがちゃんと寝てるかとか、起きて気分悪くしてねぇとか、頭の中はもうサンジの事でいっぱいだ。それほど俺は、あいつに惚れてる。
惚れてるにしても、こんなに情けなくなるのは男して恥だ。こんな俺が、サンジに対して素直になったら気持ち悪ぃだろうよ、引くだろうな。そんな事を思いながら椅子に腰かけたまま目を閉じる。でも、明日からはあいつに対してちゃんと、向き合わねぇとな。そう思いながら眠りにつく。
サンジ
わだかまりはその日のうちに解決すべし、とはよく言うしまったくその通りだと思う。しかし、謝りたいけど気まずいというのは年齢関係なく感じる大きな壁だろう。夜風にあたって頭を冷やそうとキッチンを出た。それからは仲直りのための脳内大作戦会議が行われ、いくつかの計画を立てておいたが有言実行がまた難しいのだ。今夜のことを戒めにきちんとできればいいのだが。考えてから酒と考えすぎのせいで疲れた脳を休めるために寝室へと戻っていった。
翌朝、少しだけ気分が悪いような若干の二日酔い傾向を感じつつもいつも通りに起床し朝食の用意を始める。今日一日を乗り切るための大事な一食、必然的にやる気が出る。クルー全員の顔と不思議と緑が鮮やかに映るマリモ野郎を思い浮かべながら気持ちを新たにするのだった
ゾロ
あのまま寝てしまった俺は、少し痛む身体に目を覚まし朝を迎える。朝から耳が痛くなるほど騒いでるルフィ達に思わずフッと笑ってしまう。皆が集まってるであろう場所に向かい、あいつの姿を探す。ここに居ねぇなら、キッチンで朝食の準備をしてるはずだ。そう思った俺は考えるより先に足がもうキッチンに向かってた。まず、あいつにちゃんと謝って、礼をしねぇとな。あいつの事を考えると、歩く速さが少しだけ速くなる。そしてキッチンの扉の前に立ち、深呼吸する。「入るぞ」そう言って扉を開ける。
そして、あいつの姿を見て、俺の中で色んな感情が出てきた。こんな一気に色んな感情が出てくんのは初めてで戸惑う。
「少し、話してもいいか。」
サンジ
食材が焼ける音と共に徐々に賑やかな話し声が増えてくる、どうやら続々と目覚めたようだ。普段はサンジが朝食の用意を終えて呼びに行くまで自由時間、扉一枚隔てているとはいえ声を聞くと皆の活力になれる事にまた一層喜びを感じるのだ。ラストスパートに盛り付けにとりかかろうとしたところに背後から声が聞こえた気がした。それも関係値が最悪になったと思われる男の、だ。最初は考えすぎた影響での幻聴だと思ったのだが入ってきたのは間違いなく当の男で驚いた。しかも朝なんて起こしに行かないと起きてこない男が自分で起きて来るなど二重で驚きだ。振り返り「ああ、おれもだ。」と答える。まさか、向こうから話しがしたいなんてなんだろう。まぁ、言われっぱなしも腹が立つから一言言いに来たのかもしれねェな。そう考えつつも作業を一旦止め、ゾロと向き合った。どんな言葉をかけられようとおれの言うことは変わらない。受け止める覚悟はできてる。
「なんだ、言ってくれ」
ゾロ
あいつの表情になんとも言えない気持ちになるが、そんな顔にさせたのは俺なわけで、今すぐにでも謝ってちゃんとあいつに気持ちを伝えたいとこだが、どうも欲求には勝てねぇみたいで、気付いたら無言であいつを抱き締めてた。「悪かった」一言だけ言うと更にきつく抱き締める。
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