魔法使いくん 2021-09-30 08:41:39 |
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うん、よろしくお願いします。( 事務連絡への切り替えの速さに多少戸惑いつつも、こちらも腕時計を確認し仕事モードに戻って。自席へ向かう彼の後ろ姿を不思議そうに数秒眺めるも、両頬を軽く叩いて気合いを入れればデスク仕事を再開し )
…あのー、五和くん。今って時間大丈夫かな?( 休憩室に先程まで同じ会議室にいた同僚の姿が見えると、資料を抱えたまま遠慮気味に声を掛け )
…はい。( ちらりと声のする方見遣れば、どことなく疲れた様子で短く返答。しかし、それだけでは素っ気ないと思ったのか「どうしました?」と付け足して )
今度担当する結婚式のことでちょっと相談があったんだけど、…休憩中だったよね。( 心なしか顔色の冴えない彼の返答に、相談内容を一度飲み込んで。柔らかな表情を浮かべながらそれとなく相手の調子を気遣うように述べ )全然緊急じゃないし、なんだったら日を改めてもいいんだけど。
今日はやけに下手ですね。言いにくいことですか?( こちらの様子を窺うような彼女の態度に、ほのかな違和感を覚えればゆるく首を傾げつつ )
あーううん!いつも通りだよ、私。( 確かに先日の不可解な告白から、何か起こるのかと変に身構えていたが、さほど気にしていなさそうな相手を見る限り心配は無用そうで、首を横に振り。考え過ぎはやめよう、と早速本題に入り、資料の中からとあるホテルの広告を引っ張り出して )…実は、私が担当してるお客様から要望があって、ここのホテルにケーキをお願いすることになったんだけど。ここって前に五和くんが担当した式でお世話になったよね?契約に行かなくちゃなんだけど、面識のある五和くんがいてくれた方が上手くいくかと思って…。
…なるほど。( いつも通り、の言葉はあまり腑に落ちなかったものの、仕事の話になれば意識を切り替えて。ホテルの広告に目を通しつつ、一言ぽつりと零すとスマートフォンのスケジュールを開いて )契約に行くのはいつですか?調整します。
えーと、…一応来週末の金曜日、午後からです。( 忙しいからと一蹴される可能性も頭に過ぎったが、案外あっさりと話が進めば、こちらも手帳を開いて日程を確認し「厳しそうだったら遠慮せず言ってね」と念を押して )
野々原さんの頼みなら、多少の無理くらいはします。( 伝えられた日程を探し、そのまま登録。スマートフォンの画面で周辺の予定を確認しつつ、何でもない調子で彼女の気遣いに返答して )
五和くん…忙しい中ありがとう。本当に助かる。( 同僚の優しさが心に沁み入り、スケジュール帳をぎゅっと握っては丁寧にお礼を述べて )詳しいことはまた追って連絡するね。
うん、私からは。( 比較的手短に済ませたのには、彼も自分の仕事があるだろうからこれ以上引き止めるのは悪いだろうとの思いがあり。それでも一つ思い出した言葉を付け加えるように口にして、後半部分はやや小声で嬉しそうに )…あっ、企画会議お疲れさま。あのね、五和くんのアイディアにいつも助けられてるって、さっき課長が言ってた。
日頃から頑張ってるからだよ、私も五和くん見習って頑張る!まずはこれ全部、資料室に片付けてきます。( つられて笑みを零すと、企画会議に使った大量の資料を抱え直し、気合い充分といった様子で頷いて )
野々原さん。( 今にも休憩室を出て行ってしまいそうな彼女を咄嗟に呼び止め。何かを考えるような少しの間があって、ようやく口を開き )頑張っているので、もう少し付き合ってくれませんか。…コーヒーが、まだ飲める温度にならなくて暇なんです。
( 呼び止められることは想定外で、思わず「はい!」と勢いよく返事を。仕事以外の交流が少ない相手からの提案にしては意外性があったため多少驚いた表情を浮かべるも、すぐに微笑みに変わって )もちろん、私でよければ。
( 柔らかな笑みと共に了承を得ると、安堵したようにこちらもつられて表情緩み。彼女の分のコーヒーを用意すると、第一声に )やっぱり野々原さん変ですよね。
( コーヒーを用意されればお礼を述べて、彼の隣に腰掛け。かと思えば相手から心外な言葉が零れ落ち、特に気に留めない様子で軽く笑い飛ばすも意趣返しとばかりに言い返して )
失礼なこと言うー。五和くんだって、私から見たら変だよ。変っていうか、不思議。
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